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騎士団との旅立ち。
レオノールの傷。③
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暫くすると、スーッと呼吸が楽になったようだった。
「・・おっ、顔色戻って来たようだぜぇ?
やったな。間に合ったぞ、嬢ちゃん・・!!」
お母さんの側にしゃがみ込んだままの女の子は私の服の袖を掴んだ。
「ねぇ、お姉ちゃん。お母さん助かる・・??」
茶色の大きな瞳で私を見上げていた。
不安そうなその瞳は、縋るように私の水色の瞳を見つめていた。
「貴方のお母さんには解毒薬を飲ませたの。
だから・・、きっと大丈夫よ。
今は呼吸もちゃんと出来てる。・・助かるわよ!!」
「さっき私の事・・・。
お母さん、私のこと解らないって。
忘れてたんだよ。
もし、命が助かっても私のことを覚えていないかもしれないよね・・。」
苦しそうに眉根を寄せたまま呟いた。
その瞳は涙で溢れていた・・。
私は泣いているその女の子を腕の中に抱きしめた。
「・・さっきは薬のせいで記憶が混乱していたのよ。例え薬で記憶を奪われてしまったとしても・・。心が覚えているはずだもの。」
どうかお願い・・・。
彼女のお母さんが無事に助かりますように。
そしてどうか彼女の事を思い出して。
彼女を大切に思っていたお母さんを再びあの子が取り戻せますように・・。
私は目を瞑ると
息を吐いて心の中で強くそう願った。
「ひっく。・・・うんっ!!そうだね・・。
お母さんが私のことを忘れないよね・・。」
テントの隅にいたレオは、
その少女の言葉にぎりっと自分の指に爪を立てて握りこんでいた。
テントの中は、沈黙が広がっていた。
息を殺したように静かに私達を見るエーテルとルカ・・・。
過る不安と胸の痛みに耐えていた。
その時・・・。
レオノールが無言でテントを後にした。
そのレオの後ろを追いかけるようにエリアスが出て行ったことをこの時の私は気づかなかった。
そのレオの蒼い瞳には言い様のないほどの
悲痛な色が浮かんでいた。
広い救護テントが並んでいた。
ざわざわと多くの人間がテントの中へと出入りを繰り返していた。
レオがテントの外へと出ると、空は真っ暗になっていた。
薄い暗闇の中にはまだ星は瞬いていない。
大勢の人間たちが救護され、テントの外では騎士団による夕飯の炊き出しが行われていた。
レオは言葉を発せずに蒼い瞳で空を見上げた。
「・・・大丈夫か、レオ?」
後ろから聞こえた聞き覚えのある声に
レオはゆっくりと振り返った。
女神レオノーラの再来と呼ばれるその美貌はその地でも輝きを放っていた。
「エリアスか・・。今から帝宮の庭園へ転移して、少しでも多くのエターナルアプローズ
を持ってくる。」
「・・・今からか?」
少し驚いた声を出したエリアスに、レオは微笑んだ。
「・・・あの頃のように・・。何も出来ない子どもではないからな。」
レオはその宵闇に消え入りそうな表情でエリアスを見ると
次の瞬間には、宵闇に溶けてしまったかのようにそこにレオの姿はなかった。
「お前の言う通り、お前はもう無力な子どもではないんだ。
レオにとってあの光景はあまりにも酷だ・・・。
・・・そんなに簡単に、大切であればあるほど
その記憶や傷を、簡単に忘れられる訳がないのだろうからな。」
エリアスは、荒く息を吐くと漆黒に塗られた夜の空を見上げた。
庭園の噴水は今日も激しい水音を立て、暗闇の中で輝かしいライトが照らされていた。
その美しさはこの広い庭の中でも大きな存在感を放っていた。
レオは、青薔薇が立ち並ぶ庭園の端へと歩き出した。
「またですか!?一体、何処に行っていたんですか、レオノール様っ!?」
乳母であるカーラのいつもの怒鳴り声が聞こえてきたような気がして、振り向いた。
「レオノール様!!また、お勉強の時間を忘れてエリアスと遊び惚けてましたね!?」
恰幅の良い乳母のカーラは呆れたようにため息交じりにいつもの説教を始めた。
「エリアス、あんたもあんたよ!!レオ様をお守りし、導くのがあんたの役目でしょう??今日の夕飯は抜くからねっ!」
「まぁまぁ・・。カーラはちょっと怒り過ぎよ?
レオノールが駄々こねたに違いないもの。
・・・そうでしょう、レオノール??」
輝くような金色の美しい長い髪を緩く横で束ねて、レオと同じ海のように濃いサファイアブルーの
瞳を細めて線の細い女性は呑気に笑っていた。
困った表情のエリアスの頭をそっと撫でると、小さなレオノールを見下ろしていた。
「・・いけないわね、レオノール?
貴方は天帝の息子なのよ・・。そ
の自覚を持つことは大切なのよ?
そうは言っても、うーん・・・。
貴方たちの遊びたい気持ちは私、とってもわかるのよねぇ・・?
勉強なんて、気持ちが向かなきゃ駄目よ。
集中出来っこないもの!!
午後からちゃんと集中できるのなら、今からお昼ご飯前までの時間で思いっきり遊んで来なさいな!」
そう言って楽しそうに笑い声を上げた女性に、カーラはいつもの呆れ顔で窘めていた。
「レムリア様・・!??
はぁ・・。また、貴方様は適当な事ばかり・・。
正気なんですか!?」
「あら、正気に決まってるわよ??
わたしは効率が悪いと言ってるのよ?
私も昼食後はあまりの眠さに調薬の仕事に集中できなくて諦めてよくお昼寝をするんですもの。」
「んまぁ・・。レオノール様の前でまた良い見本にならないそんな話を・・。んもう、お止めくださいよ、レムリア様ったら!!」
「母上からの許しが出たぞ。
やったぁ・・!!よーし、行くぞエリアス・・!!
母上、帰りに母上の大好きなお花を摘んで帰りますね!!」
その言葉に、カーラの叱責をつまらなそうに聞いていた女性は顔を上げると嬉しそうに目を細めて笑った。
ジャバジャバジャバ・・。
噴水の水音に、ハッと我に返ったレオはふっと口角を上げた。
「・・・母上。」
「・・おっ、顔色戻って来たようだぜぇ?
やったな。間に合ったぞ、嬢ちゃん・・!!」
お母さんの側にしゃがみ込んだままの女の子は私の服の袖を掴んだ。
「ねぇ、お姉ちゃん。お母さん助かる・・??」
茶色の大きな瞳で私を見上げていた。
不安そうなその瞳は、縋るように私の水色の瞳を見つめていた。
「貴方のお母さんには解毒薬を飲ませたの。
だから・・、きっと大丈夫よ。
今は呼吸もちゃんと出来てる。・・助かるわよ!!」
「さっき私の事・・・。
お母さん、私のこと解らないって。
忘れてたんだよ。
もし、命が助かっても私のことを覚えていないかもしれないよね・・。」
苦しそうに眉根を寄せたまま呟いた。
その瞳は涙で溢れていた・・。
私は泣いているその女の子を腕の中に抱きしめた。
「・・さっきは薬のせいで記憶が混乱していたのよ。例え薬で記憶を奪われてしまったとしても・・。心が覚えているはずだもの。」
どうかお願い・・・。
彼女のお母さんが無事に助かりますように。
そしてどうか彼女の事を思い出して。
彼女を大切に思っていたお母さんを再びあの子が取り戻せますように・・。
私は目を瞑ると
息を吐いて心の中で強くそう願った。
「ひっく。・・・うんっ!!そうだね・・。
お母さんが私のことを忘れないよね・・。」
テントの隅にいたレオは、
その少女の言葉にぎりっと自分の指に爪を立てて握りこんでいた。
テントの中は、沈黙が広がっていた。
息を殺したように静かに私達を見るエーテルとルカ・・・。
過る不安と胸の痛みに耐えていた。
その時・・・。
レオノールが無言でテントを後にした。
そのレオの後ろを追いかけるようにエリアスが出て行ったことをこの時の私は気づかなかった。
そのレオの蒼い瞳には言い様のないほどの
悲痛な色が浮かんでいた。
広い救護テントが並んでいた。
ざわざわと多くの人間がテントの中へと出入りを繰り返していた。
レオがテントの外へと出ると、空は真っ暗になっていた。
薄い暗闇の中にはまだ星は瞬いていない。
大勢の人間たちが救護され、テントの外では騎士団による夕飯の炊き出しが行われていた。
レオは言葉を発せずに蒼い瞳で空を見上げた。
「・・・大丈夫か、レオ?」
後ろから聞こえた聞き覚えのある声に
レオはゆっくりと振り返った。
女神レオノーラの再来と呼ばれるその美貌はその地でも輝きを放っていた。
「エリアスか・・。今から帝宮の庭園へ転移して、少しでも多くのエターナルアプローズ
を持ってくる。」
「・・・今からか?」
少し驚いた声を出したエリアスに、レオは微笑んだ。
「・・・あの頃のように・・。何も出来ない子どもではないからな。」
レオはその宵闇に消え入りそうな表情でエリアスを見ると
次の瞬間には、宵闇に溶けてしまったかのようにそこにレオの姿はなかった。
「お前の言う通り、お前はもう無力な子どもではないんだ。
レオにとってあの光景はあまりにも酷だ・・・。
・・・そんなに簡単に、大切であればあるほど
その記憶や傷を、簡単に忘れられる訳がないのだろうからな。」
エリアスは、荒く息を吐くと漆黒に塗られた夜の空を見上げた。
庭園の噴水は今日も激しい水音を立て、暗闇の中で輝かしいライトが照らされていた。
その美しさはこの広い庭の中でも大きな存在感を放っていた。
レオは、青薔薇が立ち並ぶ庭園の端へと歩き出した。
「またですか!?一体、何処に行っていたんですか、レオノール様っ!?」
乳母であるカーラのいつもの怒鳴り声が聞こえてきたような気がして、振り向いた。
「レオノール様!!また、お勉強の時間を忘れてエリアスと遊び惚けてましたね!?」
恰幅の良い乳母のカーラは呆れたようにため息交じりにいつもの説教を始めた。
「エリアス、あんたもあんたよ!!レオ様をお守りし、導くのがあんたの役目でしょう??今日の夕飯は抜くからねっ!」
「まぁまぁ・・。カーラはちょっと怒り過ぎよ?
レオノールが駄々こねたに違いないもの。
・・・そうでしょう、レオノール??」
輝くような金色の美しい長い髪を緩く横で束ねて、レオと同じ海のように濃いサファイアブルーの
瞳を細めて線の細い女性は呑気に笑っていた。
困った表情のエリアスの頭をそっと撫でると、小さなレオノールを見下ろしていた。
「・・いけないわね、レオノール?
貴方は天帝の息子なのよ・・。そ
の自覚を持つことは大切なのよ?
そうは言っても、うーん・・・。
貴方たちの遊びたい気持ちは私、とってもわかるのよねぇ・・?
勉強なんて、気持ちが向かなきゃ駄目よ。
集中出来っこないもの!!
午後からちゃんと集中できるのなら、今からお昼ご飯前までの時間で思いっきり遊んで来なさいな!」
そう言って楽しそうに笑い声を上げた女性に、カーラはいつもの呆れ顔で窘めていた。
「レムリア様・・!??
はぁ・・。また、貴方様は適当な事ばかり・・。
正気なんですか!?」
「あら、正気に決まってるわよ??
わたしは効率が悪いと言ってるのよ?
私も昼食後はあまりの眠さに調薬の仕事に集中できなくて諦めてよくお昼寝をするんですもの。」
「んまぁ・・。レオノール様の前でまた良い見本にならないそんな話を・・。んもう、お止めくださいよ、レムリア様ったら!!」
「母上からの許しが出たぞ。
やったぁ・・!!よーし、行くぞエリアス・・!!
母上、帰りに母上の大好きなお花を摘んで帰りますね!!」
その言葉に、カーラの叱責をつまらなそうに聞いていた女性は顔を上げると嬉しそうに目を細めて笑った。
ジャバジャバジャバ・・。
噴水の水音に、ハッと我に返ったレオはふっと口角を上げた。
「・・・母上。」
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