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マルダリア王国の異変。
さよならの言葉は青い薔薇に託して。⑥
しおりを挟む「キィィーーッ!!!」
そこに真っ赤な翼を持った大きな鳥が頭上からレオの元へと降下してきた。
「炎のフェニックス・・・。父上の神聖獣か!?」
紅い炎に包まれた巨大な鳥はバサッと羽を羽ばたかせると熱い風が巻き上がった。
何かを落としてレオを見ると
再び空へと舞い上がっていく。
「リオルグ様からの・・。餞別かぁ??
それにしてもよぉ。
いつ見ても赤くて派手な鳥獣だなぁ。」
「この世界に君臨している天帝の神聖獣に対して無礼で失礼だから・・。フェニックスが赤いの普通だし。・・・もうルカは黙っててね?」
「うわぁ・・。初めて見た。迫力あるなぁ・・・。」
ユヴェールが急な事で事態が飲み込めずに何度も瞬きをしていた。
平原の地面にそっと降ろされた白い絹の包みをレオは恐る恐る確かめた。
「これは、・・天帝の器。どうしてここに??」
レオは長い脚を屈めてその布から現れた黄金色の長剣に息を飲んだ。
足からおよそ腰まで程の長さのある黄金色に輝く剣は緑と青の宝石が嵌め込まれていた。
その持ち手を掴んで引き上げると、太陽の光がその長剣を照らして光り輝いた。
空の雲が一斉に晴れると、天帝リオルグの姿がそこに映し出された。
「「アルトハルト神聖国天子レオノールよ・・。聞こえるか??」」
「父上・・!?何故ここに、父上の大切な器があるのですか・・???」
「「それは、私の器ではないのじゃ・・。それは神殿ピレウサリアに眠る
女神レオノーラが亡くなった時に共に眠りについていたレオノーラの宝剣なのじゃ・・。そなたが生まれた時に、神殿の神官から授かった剣だ。
もしも、お前が自らの器を手に出来ない内に大きな争いに巻き込まれてしまった際には、伝承の通りこの宝剣を貸し出すと・・。」」
「伝承・・!?
父上、何を仰られているのですか??
それに、このような貴重な宝剣・・。
俺には強い神力はあっても、神獣の召喚も出来ていない身なのです。
このような宝・・。我が身に余ります!!」
「「いいから持ってけ、レオノール・・!!
いいか?マルダリアは器で守られたアルトハルトとは違うのだぞ???
自由自在に神力を長時間に及んで使用は出来ないのだ。神獣を持たぬお前が・・。
身一つであの組織に歯向かってもこっ酷く返り討ちにあうだけじゃ・・!!!」」
「・・・ああ。グサっと来ますね。
その通りだと思いますが、父上に言われると軽く腹が立ちます。しかし・・。この宝剣は貴重な物ですよね??アルトハルトの国外に持ち出しても
本当に宜しいのですか??」
「「なぁに・・。伝承と言ってもな。
代々の天子達に用意された特権的な条件じゃ。
儂もレムリアとかの組織との闘いの際に使用したのじゃぞ???
お前自身の器が現れた時、その宝剣は役目を終え・・。
元在ったレオノーラの眠る神殿の棺に戻るのじゃ・・!!
しっかり戦って来いよ、レオノール。
お前には、そこにいるエリアスや仲間がいる・・。
さっさと、儂の大好きなアレクシアちゃんを連れ戻して来い!!
・・儂は侍女達といつものお茶会があるからのう。・・そんじゃぁ。宜しくなぁ!!」」
ブッツ・・・。
誰もが唖然とした表情で虚空の空を見上げていた。
「最後の台詞は・・・。
この状況で必要なのか・・。」
「緊張感のない天帝だなぁ・・。
俺も美女達と楽しく淫らなお茶会してぇなぁ・・。羨ましいぜぇ。」
「淫らなのはあんたの頭の中だけよ?
リオルグ様への不適切な批判はおやめなさいっ!!」
エーテルに足を踏まれたルカは痛そうに慌てて口を噤んだ。
レオは静かに立ち上がるとスッと姿勢を正したまま身を起こして長剣を翳した。
「これが女神レオノーラの・・宝剣・・。」
自分の蒼い瞳がその黄金色に輝く刀紋に映し出されると目を細めて息を吐いた。
その剣の羽のような軽さに驚き、尋常ではない剣の放つ輝きに圧倒されるような力が漲る。
ユヴェールとクリスは、激しく興奮してレオの持つ長剣に目を輝かせていた。
エリアスは遥か天高い空を見上げて口角を上げた。
「・・・もうすぐだ。
お前の目覚めは、もうすぐそこまで来ている・・。」
小さく呟くとそっと瞼を閉じた。
「ああっ!!・・・しまったぁ。
うちのエリザベートをさっきの場所にうっかり置いてきちゃったわ!!」
目にも止まらぬ速さで空を駆け抜けるファーレルの背にしがみ付きながら
私は思い出したように大きな声で叫んだ。
「はぁ?シア・・。本気で忘れたの??神聖獣サラマンダーでしょ!?
でも、普通の神獣は主が呼べば主の元に戻るんじゃない?」
「うちのファーレルも私が呼ぶまで青龍の世界でハーレムの中で暮らしてますわよ?
中に閉じ込めるのを嫌う青龍なので、この子は放し飼いにしております。
放し飼いで飼われている神獣でも主の呼びかけには何処へでも駆けつけますわ。
アレクシア様もエリザベート様もきっとお声をかければ、すぐに主の元へと駆けつけますわよ?
・・・えぇと、一般的な神獣の話ですが。」
放し飼い出来る神獣もいるのね・・・。
エリザートに限っては放し飼いなんかしようものなら地の果てまで破壊し尽くすわね!!
「えーと・・。今、呼んで来なかったら凹みそうだから。あっちに着いたら戻すわね。
どうもエリザベスには、一般的な価値観が通じなそうなのよねぇ・・。」
その言葉に他の2人は目をぱちくりしながら沈黙した。
多分激しく同意してるんだろう・・。
信用のない奴って一体。
「あ、ああっ・・、そ、そろそろマルダリアに着きますわ!!
先方には、馬車を用意してもらう手はずにはっております。あっ・・。すでに馬車が到着しているようですね!?」
何故か激しく話ずらった声のミリアが北東にある河川の近くに停められた馬車を指さした。
「前もって僕が連絡してあるから、シアは安心して僕たちに着いてくればいいからね。」
カイルが爽やかに金色の瞳を細めてキラースマイルを私に向けた。
ど、どういう話になっているのかしら??
敵地に単独で乗り込むのに安心して着いて行くってないでしょ!?
「え、ええ・・。
お言葉通りに安心して着いて行くわね?」
私は焦げたままのドレスを握りしめ苦く笑った。
「あそこね!!・・ファーレル、あの馬車の前へお願い・・!!」
「ォォン・・・。」
小さく吠えたファーレルは下降を始めた。
マルダリア王国の外れにある大きな街を目指して降り立った。
そこには、懐かしい人の顔があって驚いた。
見覚えのあるその顔に私は唖然としていた。
アッシュブロンドの長い髪を後ろで纏めて、
切れ長の碧眼の男性は優しく微笑んだまま手を上げた。
柔らかい表情で笑うその人物の存在を確信したカイルの頬が引きつっていた。
「・・・嘘??まさか・・。クロードなの??」
緑色の瞳は穏やかな色を湛えた青年は
少し会わぬ間に大人びた雰囲気を醸し出していた。
「シア、久しぶり。元気そうだね??
ずっと会いたかったよ・・・。」
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