転生伯爵令嬢は、裏切り者からの寵愛に戸惑う。

館花陽月

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マルダリア王国の異変。

消えたマルダリア国王。⑤

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邸宅を調べて戻って来たエリアスが、玄関口に現れたエヴァンを確認するとピクリと眉を顰めた。


「・・・入れって?
ローゼングローリーのメンバーなんですって自己紹介されて、シアが攫われてた今、警戒心を解いて気軽に中には入れないんだが・・??」

レオは、鞘に納めた剣の柄の部分を握ったままエヴァンを見た。


「ふふっ。そうだよね・・!!
君の言葉は、至極当然な物言いだね。
僕はローゼングローリーの人間ではあるけど・・、今は裏切り者として追われている身だ。
組織の人間は、君の友人であるカイルと、ミリアとその手の者ぐらいしか中にはいない。
・・彼らは、私の選択を選んでこの件に協力してくれたんだ。」

エヴァンは、落ち着いた様子で首を傾げて口角を上げた。

調査を終えて戻ってきたエリアスがレオの横に並び小声で耳打ちをした。

「レオ、エヴァン王太子の話している事は真実のようだ・・。ここには、マルダリア王国の兵士が数十人確認出来た・・。
危険な気を纏った者はいなかった。」

「優秀ですね。
しかし、外には私を含めて、アレクシア嬢と貴方がたを追跡している組織の連中は多くいる。
この領地の手前には、私が簡単には入れないように神力をかけておいたので大丈夫です。安心して中へお入り下さい。」

「皆さん!!アレクシアも中におりますし、ここは大丈夫ですよ??マルダリア王国の兵士が貴方達に危害を加えないことは、この私がお約束致します!!」

アルノルドの言葉に、レオは不安気な様子で頷くと後ろのルカとエーテルに合図をして玄関口から中へとゆっくりと歩を進めた。

先頭を歩くアルノルドの横にいたエヴァンが、エリアスの肩を掴んで微笑んだ。

「・・久しぶりだね?エリアス。
君は、また強く逞しくなったようだ。」

「そうか??エヴァンの方こそ、まるで別人のようだぞ。あんなに泣き虫だったのに、あの頃の面影は全く見えないがな・・?」

穏やかに微笑み合ったエリアスと、エヴァンの慣れた会話にレオ以外のエーテルとルカは驚いた様子だった。

「えっ、今の・・。呼び捨てですか??
エリアス様って、何者なんですか・・。
鬼の騎士団長だけじゃなくて、実はどっかの王子様とかですか??」

コソッと呟いたエーテルに、エリアスとエヴァンの後ろを歩く3人が目を見合わせた。

「はぁぁ??馬鹿な事言うんじゃねよぉ、エーテル。どこをどう見ても、脳味噌まで筋肉の脳筋馬鹿じゃねぇか?王子さまって顔じゃねぇだろ??
どっちかと言えば人殺しの顔に・・ぐぉっ!!!」

鞘に入ったままの剣先で腕を叩かれたルカは、痛みに顔を歪ませて悶えていた。

「黙れ、ルーカス。
隣国の王太子の前で品のない物言いは辞めろ。
・・・お前の方こそ、脳味噌が空洞か性欲の塊で出来ているのではないのか?」

「・・いっ、痛ぇな。
・・お前は後ろの会話まで聞こえるのかよ?
・・ったく、相変わらずの地獄耳だなぁ!!」

「エリアスとエヴァン様は昔からの顔馴染みなんだ。亡き母の姉上である王妃様が、エヴァン様の母上に当たる方なのだ・・。
幼少の頃は、俺もエヴァン様によく遊んでもらった記憶がある。」

赤い絨毯が広く長く続く廊下を歩きながら思い出すように記憶を辿っていた。

幼い頃を思い出したレオは、少しだけ緊張が解けたように目を細めて笑った。

「懐かしいですね・・。あの頃は楽しかった。毎年、夏にはアルトハルトの王宮を眺める
メディスの丘でかくれんぼや、剣の稽古を一緒につけたものだ・・。」

「・・・そうだ。母が亡くなった年の辺りからですかね??エヴァン様は毎年のように訪れていたアルトハルトに来なくなったのは。
父上の大きな行事や、盛大な祝い事の際に来られるのみで・・。」

その言葉に、エヴァンは答えず困ったように微笑んだ。

「お前がローゼングローリーのメンバーになっているなんてな・・。少し驚いた。
だが、お前のことだし、何か狙いがあってあの組織に所属したのだろう??」

エリアスの問いに、ため息交じりにエヴァンが苦しそうに上を向いた。

くるりと振り向いて後ろを歩くレオノールと向き合ったエヴァンは悲しそうな表情でレオに力なく笑った。

「本当は、こんな風に王宮から逃げ出すような真似はしたくなかった。しかし・・。あのままでは、父が危険な状況だったんだ。
もう少し、組織の動きを把握していたかったんだが・・。レオノール、君の神聖獣の出現や、グロリアが現れるのを待って動き出そうと思っていたんだが。・・もう、限界だったよ。」

「貴方は・・。
最初から組織を裏切るつもりだったのですか??
では、どうしてあんな蛮行の数々で民を苦しめたりしたのですか!?」

複雑な想いと、疑惑の数々・・・。

苦しむ民や、母に忘れられた小さな子どもの涙を思い出したレオは静かに目を瞑った。

「アルトハルトの天帝リオルグ様やレムリア様に解体された組織を再び再生し築き上げて、神の国であるアルトハルトに反旗を翻そうと考えた者がいた。
どちらにしろ、私には逆らえなかったからな・・。
組織の思惑を阻む抑止力となろうと、内部に入りあの青薔薇の栄光ローゼングローリー
私自身の手で作り上げたのだ・・。だが、話はそんなに簡単ではなかったんだよ・・。」

表情を曇らせたまま、エヴァンは苦しそうに廊下の絨毯を睨んでいた。

「お前が作った組織なのだな??
どうしてそれが、お前がいないところで機能している??裏切り者として追われているのなら・・。
誰がお前を追うのだ??」


「どうなってんだぁ??
何だか裏切りとか、更に複雑じゃないか・・・。
あんたの選択って何よ??こんな立派で偉そうな王太子より、偉い人物なんてさぁ・・。」


その言葉にレオは何かを思い出したようにエヴァンを見た。

目が合ったエヴァンは、レオの瞳を見ると顔色がサッと変わった。

「・・・そうだ。
ユヴェールは??
ユヴェールは、ここにはいないのか??」

その震えるような言葉に、レオノールは弾かれたように蒼い瞳を大きく見開いて声を上げた。

「しまった・・!!
ユヴェールと、クリスが危ないっ・・。」


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