転生伯爵令嬢は、裏切り者からの寵愛に戸惑う。

館花陽月

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マルダリア王国の異変。

サラマンダーの目覚め。①

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「長いな・・。流石に足が疲れたな。」

「頑張って、クリス・・。もうすぐだ・・!!」

ユヴェールや、クリスが必死で暗がりを城の中へと続く階段を必死に登っていた。

その様子を、城の中にいた女性が見ていた。

「フフン・・フンフン、フフン♪♪」

咲き誇る種類の違う薔薇たちの芳しい香りが部屋には漂っていた。

赤いダマスク柄の重厚なカーテンが降ろされた部屋に、一人の女性がカップの紅茶を飲みながら、銀色のテーブルの上に映し出されていた暗がりの階段を登る2人の姿を見ながら鼻歌を歌っていた。

「タイミングが悪いわね??
こんな時に・・・。まぁ、でもいいわ。
アルトハルトに攻め入る時には、も回収しなければいけなかった事だしね??
ねぇ、この階段・・・。
何処に繋がっていたかしら???」

「恐らく・・。図書室のあの大鏡の前へと繋がる道かと。如何いたしましょうか・・??」

白髪交じりの白い騎士服に青薔薇の紋が入った服を身に着けた男性が、恭しく緊張の面持ちで頭を下げていた。

カチャンと、空になったカップをソーサーに荒く置いた女性は紅い口紅が塗られた口元でにやっと笑った。

「そう・・。
じゃあ、鏡を開けて出て来たらすぐに確保して?
そうねぇ・・。あの子共々・・。牢獄へ入れて頂戴ね。・・・ふふっ、必死ね。
・・でもね?馬鹿な子ほど、可愛いものねぇ。」

「左様でございますな・・。では、そのように兵たちには伝えて参ります。」

重いマカボニー調のドアは奇妙な音を立てて閉じられた。

その女性は、ゆっくりと椅子から立ち上がるとすらりとした肢体に長い栗色の髪を揺らし部屋の隅の大きな窓辺に並んでいるプランターへと歩を進めていく。

様々な品種の薔薇がそこには並んであった。

ピンク色、深紅の薔薇・・。白い薔薇、黄色・・。
カラフルな色どりの名前の薔薇たちがそこには美しく咲き誇っていた。

隅に咲いていた大輪の紅い薔薇の花びらに触れた女性は、口角を上げて微笑んだ。

「ふふっ・・。さぁ、誰を一番に摘み取ろうかしら?どの薔薇も美しいものね。
うふふっ、選べないわぁ・・。ふふっ。あはははっ・・。あはははっ。」

暗がりの部屋では、控えの者が去った後・・。

廊下の端まで甲高い女性の笑い声が響き渡っていた。






夜もとっぷりと沈んだ頃。

同じマルダリア王国の端にあるアルスタイン侯爵領。

そこには、呼吸を楽にして眠るマルダリア王国の国王ダルトンと、その看病を続けていたアレクシアが椅子に腰かけたままで軽い眠りに落ちていた。

その部屋へと足を踏み入れたのは、家の主の息子であるクロード=アルスタインだった。

アッシュブロンドの髪は風呂上りで濡れたまま、お盆の上にはクラブハウスサンドを乗せたクロードは、ラフなシャツ姿でその部屋を訪れていた。

「シア・・・。シアっ??
夜食の追加を持ってきたよ??あれぇ・・???」


「んっ、んんっ・・・。
ユヴェール?・・。気をつけて・・。」

魘された声を出しているアレクシアの姿を捉えた。

大きな椅子に寄り掛かったまま上を向いて眠りに落ちた様子のアレクシアは頬が血色の良いピンク色に輝いたまま天井の明かりに照らされていた。

「これは・・。寝てるのかな??
うーん、この夜食・・・。どうしよう??」

瑞々しいピンク色の唇にクロードがゴクリと留飲を飲んだ。


「そうだ・・。よしっ!!眠り姫には、王子様からの目覚めの接吻を・・・。」

瞼を閉じたままホカホカの石鹸の香りを身に纏ったままのクロードが、口を窄めて寝入った様子のアレクシアの顔へと近づいていた。

「ゴイン・・・!!!」

下のアレクシアからは頭突きを見舞われ、
ドア側から駆けこんで来たレオノールが頬に殴りかかっていた。

「「誰が王子様だっ、・・この屑がっ!!」」

「「誰が王子様よ・・??浮気魔のくせにっ!?」」


私はハッと見知った顔に驚いてガバッと立ち上がった。

床に気絶したまま倒れ込んだクロードを挟んで向き合った
レオノールの姿に私は水色の大きな目を見開いた。


「あれ・・。レオ??
私、また変な夢を見てたの・・・。
でも、あれ??ここに、レオがいるのは現実!??それともやっぱりこれって夢かしら!?」


レオノールが私の頬を両手で掴んで引き寄せた。

「よく見ろ・・。現実に居るだろ??」

蛍光灯のように眩しいその蒼い瞳と、筋の通った鼻・・。
均等の取れた唇がそこにはあった。

「ブハッ・・。本物だ!!ちょっと寝起きにドーパミン出させるような真似しないでよ??血圧低いのに、出血死するでしたらどうするのよ・・。」

急な至近距離に鼻血が出そうな衝撃を受けた・・。

「あのなぁ、シアは・・。どうして見境なく手の届かない遠くへ行くんだ??
何度、誘拐されたら気が済むんだよ!?もはや本当に誘拐されるのが、趣味なのか・・??」

(夢見てないで起きろ阿呆が。・・こっちは毎度毎度、迷惑なんだよ!!)


「ええ、もう趣味よ!!趣味でいいわよ、面倒臭いわねぇ・・。
これでも、今回は私には私の意図があってここに連れて来られたの・・にいっ!?」

(前回のは考えなしだったけど、今回は作戦の内だっつの!!読めよ、この解らず屋っ・・!?)

急に大きな腕に包まれた私はポカンとした表情でレオに抱きしめられていた。

厚い胸板に押し込められて固い体に押し付けられた。

「心配した・・・。死ぬほど心配したんだ。
今回は、三度は心臓止まったぞ。馬鹿シアっ!!」

レオの甘く、優しいエターナルアプローズの香りが懐かしく感じる。

「・・ごめんね。でも、・・誘拐はまたされるかも。レオは、こんな私じゃ不安でしょう?
いっその事、婚約破棄してくれる??」

「それだけは絶対に嫌だ・・。婚約破棄なんかしなくていい。今度誘拐されたら、もう一度俺がシアを必死で探して見付けたらこうやってシアを抱きしめる・・。俺は、ただそれだけでいい。」

瞼を閉じたままで、私はレオの腕の中に閉じ込められていた。

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