転生伯爵令嬢は、裏切り者からの寵愛に戸惑う。

館花陽月

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マルダリア王国の異変。

サラマンダーの目覚め。④

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開かれたままになっていたドアから、数人のマルダリア兵士が国王が眠る部屋へと走り込んで来た。

尋常ではない様子に、部屋の中に緊張が走った・・。

「たっ、大変です・・。エヴァン様!!何者かが、このアルスタイン侯爵領に侵入した様子です!!」


驚愕の表情で振り返ったエヴァンは、眉根を寄せたまま兵を見た。

「何だと・・!?可笑しい・・。
ここには、存在を隠す神力が込められたバリケードが張ってあるのだぞ??」

焦った兵は、目を見合わせてたじろいでいた。

「しかし・・。領内にすでに侵入者を発見したと言う者の連絡があったのです。再度こちらから、その者に連絡を入れても反応がありません!!」

「馬鹿な・・・。そんな事があるはずがないんだが。出るぞ、アルノルド・・。
レオノール君、ここを・・。父を頼んだ。
先ほど話した通り、弟も・・。
ユヴェールも心配だ!!まずは、父上の安全を強固なものにして王城へと急がねばならない・・。
クロード、地図はあるか??」

「あっ・・。確か。父の執務室に・・!!
・・持って行きます!!」

「エヴァン様・・。
こちらはお任せください!!
・・・どうぞ、お気をつけて。」

頷いたレオにエヴァンは目で視線を送ると、兵を連れてアルノルドと共に急ぎ部屋を後にした。

静まり返った部屋でレオが、王様の様子を見ながらルカと何かを話し合っていた。


「レオ・・。マルダリアの国王陛下をこのままここに置いたままで、ユヴェールやクリスを助けになどいけないぞ??・・どうする??」

エリアスが渋い顔で国王陛下を見下ろした。

「急ぎ、父上に連絡を取ってアルトハルトへ、ダルトン王を運ぶ手はずを整えようと思う。
エーテル、ルカ・・。国王と、シアを頼んで良いか??」


「勿論でございます!!
・・・このまま、ここに国王陛下を置いておくのは危険ですもの。お任せを・・。」

「安心して行ってこいよ。今日は酒も飲んでないから、眠くないぜぇ?」

「今日は??遠征中なのに、飲んだくれてるんじゃないわよ。・・アル中!!」

「何だよ、エーテル。今回の旅では突っかかってきてばっかだなぁ??
女を抱いてないと寝れなくてさぁ・・。酒でも飲まなきゃやってらんねぇんだわ。
下手したら、隣で寝てるクリスにまで手を出しそうだったわぁ・・。」

その言葉に、エーテルはとカッと赤い瞳を見開いてルカを睨んだ。

「見境のない獣ですわね!?・・お兄様に手出しをしたら全身凍らせてから崖から突き落として、粉々にして差し上げますわよ!?」

始まった痴話喧嘩に驚いていたレオは、ため息交じりのエリアスと共に私に目配せをすると部屋を後にした。



「キュウウン・・。ブブブッキュ・・・。」

苦しそうに息を荒げるエリザベートに、私は落ち着かなかった。

身体が熱くなり、心なしかゴツゴツした肌(?)の赤みが増してきていた。

「エリザベート・・・。しっかりして!!
私の夜食のクラブハウスサンドもあなたにあげるからっ!!」


唸りながらも苦しそうなエリザベートを見下ろして、私は同時に来たピンチに焦っていた。


「あれっ??おい、ミリアじゃねぇか??」

窓側の長椅子に座っていたルカが、ドアの入り口に立っていた金色の髪の少女を見付けて驚いた声を上げた。

「ルカ・・。あんたもここまで来ていたのね・・。
ダラス様は??・・・ダラス様は、今・・。
どちらに行かれたのかしら??」

突然、廊下から現れたミリアに私とエーテルは驚いて振り向いた。


「ミリアっ??・・あんた!?
よく堂々と顔を出せたわね??アレクシア様を裏切って攫っといて。よくもっ!!」


「・・・ああ。貴方もいたの?
そう何度も言わせないで・・。
私が忠誠を誓っているのは組織だけよ??
その命に従っただけ・・・。
騙されたのは、愚かなそちらが悪いのよ??
ふふっ・・、愚鈍な連中。」

エーテルが、紅い瞳でキッと睨むとミリアが唇を綻ばせ笑い出した。

「うふふっ・・。あははははっ・・。」

何故か薄ら寒く感じたその笑顔に、違和感を覚えた。

いつもは穏やかな濃い茶色の瞳が血走っていた。

チラッと心地よい寝息を立てて眠る国王陛下を見たミリアは、何かを思いながら目を閉じた。


「・・・もう、国王陛下は助かったんですよね??
ダラス様の・・。
あの方のお父上の命が助かって良かったわ・・。
となると・・。アレクシア様は、もうここには用済みですわね?」

「はぁ???ミリア、あんた頭悪すぎよ!?
アレクシア様に対して、何て失礼な事を・・。きゃぁぁっ!!?」

一瞬、髪が巻き上がるような大きな風が部屋の中を駆け抜けた。

その強い風が吹き止むと強い闘志を宿したミリアが、こちらを睨みつけて右手には銀色に輝く短剣を握っていた。

「・・・ミリア??ちょっと、それ!?どうしたの??」

腕の中で魘されるサラマンダーを抱えたまま、
私は背中に冷たい汗が流れた。

エーテルは息を飲んで、私の前へと立ち塞がった。

右手に氷の剣を出して構えを取る。

「怖ぇぇな・・。
この旅で女のイメージ変わりすぎだぜ。不能になとったらどうすんだぁ!?」

その前には、椅子から立ち上がったルーカスが腰に差してあった剣を取ってニヤっと笑った。

「・・お前さ、さっきから何言ってるんだよ??
ミリアは、ダラスの仲間だろう??
あいつの選択に共感したメンバーしかここにはいないから安心しろって・・。そのダラスが言ってたぞ??お前さっきから矛盾だらけだな。」

「うるさいっ・・!!そこを退け、ルーカス!!
・・・アレクシア様には、私と一緒に王城まで来てもらいます。あの方がアレクシア様をお待ちなのです・・。もう限界なんです!!
そろそろ、誤魔化しが利かない・・。
痺れを切らして・・。ダラス様の命を摘み取って・・。どうしよう・・。嫌・・。」

ブツブツと青ざめた表情で呟くミリアは異常な様子だった。

少し離れた大きなベッドに横たわる国王陛下をチラりと確認したエーテルは剣を構えたまま叫んだ。

「・・・ここは、危険です。アレクシア様、エリザベート様とお逃げください!!」

「窓から出るぞぉ!おいっ、ガンつけてないでエーテルも来い!!ここから逃げるぞっ・・。」

バンッ・・!!!

庭へと続く大きな窓を開いて、私達三人は部屋から飛び出した。

大きな木や草で出来た迷路のような庭園へと全力で逃げ出した。

庭に飛び出して一目散に走り出した私の後ろで、剣戟の繰り広げられる音が響いていた。

「何なのよ・・!?一体!?」

ミリアの様子は可笑しかったわ??

まるで何かに追いつめられてそうだったけど・・・

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