187 / 187
青薔薇の栄光。
マルダリア王城に咲く薔薇。⑧
しおりを挟む
私はまた遠い過去の記憶を見ていた・・。
まだ小さなレオとエリアスが神殿ピレウサリアに向かって歩いていた。
夕日が沈みかけて真っ赤な大きな日が水平線上に消えていく。
幼いレオは、涙を拭うようにして歩を進めていた。
「レオ・・・。仕方ないだろ??
お前の今の心では、神獣なんて召喚することは出来ないだろ!?今は時ではない。」
「解ってるよ、エリアスっ!!
だけど、もっと強くならなきゃ・・。
アレクシアに好きになって貰えるように。彼女に選んでもらえる男にならなきゃいけないんだ!」
「・・そんな、一度会った女の子がそんなに忘れられない程良かったのか??
不思議なんだよ。お前、今までどんな女性にも靡かなかったのにな。そんなに美人なのか??」
エリアスは不思議そうに、レオの顔を見下ろしていた。
少し頬を赤らめたレオが、エリアスの問いかけに口を窄めていた。
白いシャツに長いズボンと乗馬ブーツをはいていたレオは、無言のまま立ち止まった。
「綺麗だと思ったんだ・・。
あっ、あのなぁ。顔とかじゃないぞ??
そりゃあ、可愛くて水色の大きな瞳が印象的な可憐な少女だったけど・・。
俺が気に入ったのは、そんな事じゃないよ!!」
「・・・はぁ??
可愛くて可憐な少女の心が気に入ったとでも??
初めて会って、レムリア様の大切に育ててきたエターナルアプローズを渡すなんて暴挙に近いだろ。
お前、騙されたんじゃないのか??」
「エリアス・・。例え、幼い頃から仲の良いお前でも、これ以上俺とアレクシアの事を
馬鹿にするような発言をしたら、許さないからな?それに、俺はアレクシアになら騙されてもいいと思える・・。」
「はぁ??大丈夫か???
恋に落ちる神力でも掛けられたんじゃないか??
今までそんなの聞いたことはないけど・・。
恋は盲目って本当だったんだな・・。
騙されてもいいなんて、俺はそんな感情怖いだけだがな・・!!凍えるぞ!!」
呆れた表情のエリアスはレオを通り過ぎてスタスタと行ってしまった。
レオは、青い瞳を揺らして丘に建つ立派な神殿を見上げて言った。
「この感情は盲目ではないよ。
あれは、必然の出会いだった。
だって、母上がいつも言っていた相手だぞ・・・。
ファーマシストになる資格を持つ、選ばれし運命の相手が彼女で良かったって心から思ったんだ。
少しだけ笑うと、金色の髪が揺れて母上にも似てる・・。明るくて優しい少女だった。」
淡い色のドレスがよく似合う、妖精のような軽やかな印象の少女を思い出したレオは、少しだけ心が温かくなった。
「アレクシア、もう少し待っててくれ・・。
早く大人になって、君に会いに行くから。」
女神レオノーラが眠る神殿に、祈りを捧げた。
彼女を守れる男になれるように・・・。
母を亡くした痛みを堪えて、その誓いが・・。
レオの新たな生きる目的となった。
嬉しそうに目を細めると、かなり遠くまで行ってしまったエリアスに追い付くように土を蹴って走り出した。
幼い頃から、私だけを思って一途に努力を重ねてきたレオの姿に涙が出そうになった。
まだ小さなレオの背中を見つめながら、届くことのない手を伸ばした。口元から零れた言葉は宙に消える。
「レオ・・・。私、貴方が好き・・・。」
どうして、この言葉がいつもちゃんと素直に伝えられないのだろう。
いつからこんなにレオの事が好きだったんだろう??
・・ずっと、側にいたいと思うほどに。
涙が滲みそうな眩しい景色が消えていく・・。
ハッと目が覚めると、目の前には信じられないような景色が広がっていた。
冷たい床の感触に、そっと指先にその石に触れる。
「・・・ここは何処??」
目の前には大きなドーム型の天井が見えていた。
精緻な木彫りの女神が掘られて、青と金で出来たタイルで飾られた聖堂のような
建物の中に寝かされていた。
起き上がると、並べられた椅子が左右に数十列の長さで続いていた。
祭壇の方を見ると、女神レオノーラの黄金像が中央に立てかけられていた。
長い髪をかき上げて、頭を整理しながらキョロキョロと周りを見ると
祭壇近くの椅子の上に見知った男性の姿が見えた。
茶色の髪に、緑色の瞳の美貌の王子・・。
麒麟を撫でながら、見知らぬ女性と話をしている様子だった。
私は、驚きと同時に心からの安堵を浮かべて起き上がった。
「・・・ユヴェールじゃない!!良かった。
貴方、無事だったのね???
一度掴まったって聞いて居たけど、元気そうで良かったわ・・!!」
私の問いかけに、驚いたようにこっちを振りむいたユヴェールはガタッと椅子の上から立ち上がった。
もう一人の女性が何かを囁くと、ユヴェールは小さく頷いていた。
あれは誰??
華奢な女性は、ユヴェールと同じ茶色の髪と緑色の瞳を持っていた。
確か??
何処かで・・。
私は、過去の記憶を辿りながら見覚えのある人物の姿を探していた。
「シアっ!!会いたかったっ。無事に会えるなんて思ってなかったよ!!」
ユヴェールは、私に思い切り抱き着くと嬉しそうにぎゅうっと私の身体を強く締めあげた。
「・・ユヴェール??ちょっと、痛いくらいなんだけど・・。ねぇ、あの女性はどなた??
それに、クリスは何処にいるの??」
私の問いかけにピタリと動きを止めたユヴェールは、ゆっくりと身体を離して私の顔をまじまじと見下ろした。
なんだか、自棄にじーっと見つめてくるから恥ずかしくて顔をそむけたくなった。
「ごめんごめん‥!!シアに会えてすごく嬉しくて。
怪我はしていない??・・・大変だったようだね。兄上の手先だったカイルに攫われて・・・。
怖い目に合ってない??」
「えっ??あの・・。全然大丈夫だったのよ??
エヴァン様は、私を傷つけるような真似はしないわよ??それよりも、私・・。
ミリアに攫われてここに来たの・・。
第一、カイルや、エヴァン様は私達の味方でしょう??レオ達もユヴェールとクリスに合流しに城へ潜入しているはずよ。
・・・貴方は、どうしてこんな所にいるの?」
私は、目を丸くしたままユヴェールの顔を見上げていた。
「シアこそ、どうしたの?
レオや、カイルや兄さんはこの国を脅かそうとしている裏切り者だよ??
兄上達に騙されては駄目だよ!!母上が、シアを助けてくれたんだ!!ほら、あそこにいるよ。」
祭壇の椅子の上から、私とユヴェールをニヤニヤしながら見つめる女性はユヴェールの母上なの??
紅い口紅で縁取られた唇で笑っていた。
だけど、その緑色の瞳は全然笑っていないように見えた。
「・・あっ。そうだ!!
あの人は、レムリア様の・・お姉さま??」
絶対記憶で思い出したレムリア様と花冠を乗せ合っていた茶色の髪の幼い少女の姿と重なった。
「レムリア・・。ああ、レオの母上だね。
マルダリア王妃である母上は・・。
確かに、レオの母上の姉だけど。
何故、その事実をシアが知ってるの??」
「・・・だって「見た」から。
レムリア様と一緒に笑っていた幼い日の王妃様を・・。」
その言葉が聞こえたアンブリッジは、驚いた様子でアレクシアを見た。
ゆっくりと椅子から降りると、深い赤みの深紅のドレスをずるりと床の上で引きずりながら近づいて来た。
「初めまして。
アレクシア=グレース=ブランシュ伯爵令嬢。
私は、このマルダリア王国の王妃、アンブリッジよ。ユヴェールがお世話になっているそうね・・。」
向き合ったアンブリッジは、私に優しく微笑みかけた。
私の背中からは、ゾクリと感じる寒気が全身を駆け抜けていた。
指先まで凍えるような、違和感と恐怖・・。
あの頃の笑顔は失われたような、瞳には絶対零度の冷酷さが映っているように見えた。
「・・あっ、あの。
は、初めてお目にかかります!!
ユヴェール王子とは、王立学院時代から大変お世話になっております・・。あの、私・・。
侍女だったミリアにここに連れて来られたみたいなんです。あの、ここは一体何処なんですか??」
「ここは、マルダリア王城の聖堂だよ。
もう、シアったら・・。
堅苦しい挨拶は抜きでいいんだ。ねぇ、母上??」
ユヴェールが、私の肩を掴んで自分の側へと強い力で抱き寄せた。
「・・ちょっと、ユヴェール??
どうしたのよ??離してくれない??」
「シア・・。
俺はね、母上と一緒に裏切り者達を返り討ちにしてやるんだ。王国を裏切り、アルトハルトと手を結んだ裏切り者の兄をこの手で倒すことに決めたんだ!!」
はぁ・・??
自信満々に高らかと頓珍漢な発言をしているユヴェールに、ポカンと口を開けて驚いていた。
「え、えーと・・。コレ、何かのドッキリ!??
冗談でしょう???
だって、ユヴェールがエヴァン様にちゃんと城で会ったら話したいって・・。一緒に、この世界の為に戦おうって伝言を寄越してきたんじゃない??
ユヴェールの神獣の麒麟を使ってそう伝えて来たでしょう・・。」
「えっ・・。そんな事あったかな??
シアの思い違いじゃないかな・・。
俺が裏切り者に協力するなんて、有り得ないよ・・!!夢でも見たんじゃない??」
夢か・・。
確かに夢はさっきまで見ていたけどねぇ・・。
でも、違うわよ!!
あれは夢だけど、これは夢じゃないってばよ!!
私は昨夜見た夢を思い出して、青ざめた表情でユヴェールを見上げた。
「ユヴェール??
貴方、何か可笑しい気がする・・。
何か薬でも盛られていないの??あ、解らないか!」
「何も飲まされてないよ??
どうしたんだよ、シア・・・。
それよりも、母上がシアに聞きたいことがあるみたいなんだ。」
何時もと同じ様子のように見えて、ユヴェールに感じる違和感に言いようのない不安に襲われていた。
なんか嫌!!
「ユヴェール、貴方いつものユヴェールじゃないわ!!変だもの。」
「ふふ・・。可笑しなことを言うお嬢さんね。
第二王子のユヴェールよ??
よく知っているのでしょうに・・。
貴方に聞きたい事があるのだけど、いい??」
鋭い視線を向けられた私は、瞳を揺らして王妃様を見た。
そうか・・。
この人だったんだ!!
「私を・・・。
ミリアに攫わせたのは、貴方だったのね??」
カッと大きく開いた碧色の瞳で楽しそうに微笑んだアンブリッジは、私の頬をクイッと掴むと至近距離で言った。
「そうよ。
私が、ミリアを使って貴方をここに呼んだの。
だって、貴方ってば・・。
勝手にエヴァンの方へ行ってしまったんだもの。
先に貴方を呼んだのはこの私なのにねぇ・・。
うふふっ。」
「それは、、わたしだって全く予期してなかったんですけど。それより、質問て何ですか?」
「レオノールの器は何処にある??
・・その鍵を、お前が持っているはずなんだがな。」
鋭い質問に息を飲んだ。
やはり、この人はレオの器を狙っていた・・。
ゴクリと留飲を飲むと、呼吸を整えるように
目を閉じた。
荒く息を吐いた私は、心の声を閉ざして正面を見上げた。
「器の話はよく知らないです。・・鍵って何?!」
私の背中は汗でびっしりだった。
「器の出現条件だ・・。
お前は聞かされておらぬのか??ふん、まぁいい・・。器の発言条件は3つある。
強い神力を持つこと、神獣を呼び出して加護を受ける者であること。そして、もう1つ・・。」
「アレクシアよ、レオから受け取った物があるはずだ・・。それを私に渡すのだ!!」
「そんな話は一切聞いておりませんし、全く鍵などについても存じ上げませんが・・??
先ほどから、一体何の話をされているのでしょうか!?」
怪しい色香を纏うアンブリッジの瞳を水色の瞳で睨みつけていた。
まだ小さなレオとエリアスが神殿ピレウサリアに向かって歩いていた。
夕日が沈みかけて真っ赤な大きな日が水平線上に消えていく。
幼いレオは、涙を拭うようにして歩を進めていた。
「レオ・・・。仕方ないだろ??
お前の今の心では、神獣なんて召喚することは出来ないだろ!?今は時ではない。」
「解ってるよ、エリアスっ!!
だけど、もっと強くならなきゃ・・。
アレクシアに好きになって貰えるように。彼女に選んでもらえる男にならなきゃいけないんだ!」
「・・そんな、一度会った女の子がそんなに忘れられない程良かったのか??
不思議なんだよ。お前、今までどんな女性にも靡かなかったのにな。そんなに美人なのか??」
エリアスは不思議そうに、レオの顔を見下ろしていた。
少し頬を赤らめたレオが、エリアスの問いかけに口を窄めていた。
白いシャツに長いズボンと乗馬ブーツをはいていたレオは、無言のまま立ち止まった。
「綺麗だと思ったんだ・・。
あっ、あのなぁ。顔とかじゃないぞ??
そりゃあ、可愛くて水色の大きな瞳が印象的な可憐な少女だったけど・・。
俺が気に入ったのは、そんな事じゃないよ!!」
「・・・はぁ??
可愛くて可憐な少女の心が気に入ったとでも??
初めて会って、レムリア様の大切に育ててきたエターナルアプローズを渡すなんて暴挙に近いだろ。
お前、騙されたんじゃないのか??」
「エリアス・・。例え、幼い頃から仲の良いお前でも、これ以上俺とアレクシアの事を
馬鹿にするような発言をしたら、許さないからな?それに、俺はアレクシアになら騙されてもいいと思える・・。」
「はぁ??大丈夫か???
恋に落ちる神力でも掛けられたんじゃないか??
今までそんなの聞いたことはないけど・・。
恋は盲目って本当だったんだな・・。
騙されてもいいなんて、俺はそんな感情怖いだけだがな・・!!凍えるぞ!!」
呆れた表情のエリアスはレオを通り過ぎてスタスタと行ってしまった。
レオは、青い瞳を揺らして丘に建つ立派な神殿を見上げて言った。
「この感情は盲目ではないよ。
あれは、必然の出会いだった。
だって、母上がいつも言っていた相手だぞ・・・。
ファーマシストになる資格を持つ、選ばれし運命の相手が彼女で良かったって心から思ったんだ。
少しだけ笑うと、金色の髪が揺れて母上にも似てる・・。明るくて優しい少女だった。」
淡い色のドレスがよく似合う、妖精のような軽やかな印象の少女を思い出したレオは、少しだけ心が温かくなった。
「アレクシア、もう少し待っててくれ・・。
早く大人になって、君に会いに行くから。」
女神レオノーラが眠る神殿に、祈りを捧げた。
彼女を守れる男になれるように・・・。
母を亡くした痛みを堪えて、その誓いが・・。
レオの新たな生きる目的となった。
嬉しそうに目を細めると、かなり遠くまで行ってしまったエリアスに追い付くように土を蹴って走り出した。
幼い頃から、私だけを思って一途に努力を重ねてきたレオの姿に涙が出そうになった。
まだ小さなレオの背中を見つめながら、届くことのない手を伸ばした。口元から零れた言葉は宙に消える。
「レオ・・・。私、貴方が好き・・・。」
どうして、この言葉がいつもちゃんと素直に伝えられないのだろう。
いつからこんなにレオの事が好きだったんだろう??
・・ずっと、側にいたいと思うほどに。
涙が滲みそうな眩しい景色が消えていく・・。
ハッと目が覚めると、目の前には信じられないような景色が広がっていた。
冷たい床の感触に、そっと指先にその石に触れる。
「・・・ここは何処??」
目の前には大きなドーム型の天井が見えていた。
精緻な木彫りの女神が掘られて、青と金で出来たタイルで飾られた聖堂のような
建物の中に寝かされていた。
起き上がると、並べられた椅子が左右に数十列の長さで続いていた。
祭壇の方を見ると、女神レオノーラの黄金像が中央に立てかけられていた。
長い髪をかき上げて、頭を整理しながらキョロキョロと周りを見ると
祭壇近くの椅子の上に見知った男性の姿が見えた。
茶色の髪に、緑色の瞳の美貌の王子・・。
麒麟を撫でながら、見知らぬ女性と話をしている様子だった。
私は、驚きと同時に心からの安堵を浮かべて起き上がった。
「・・・ユヴェールじゃない!!良かった。
貴方、無事だったのね???
一度掴まったって聞いて居たけど、元気そうで良かったわ・・!!」
私の問いかけに、驚いたようにこっちを振りむいたユヴェールはガタッと椅子の上から立ち上がった。
もう一人の女性が何かを囁くと、ユヴェールは小さく頷いていた。
あれは誰??
華奢な女性は、ユヴェールと同じ茶色の髪と緑色の瞳を持っていた。
確か??
何処かで・・。
私は、過去の記憶を辿りながら見覚えのある人物の姿を探していた。
「シアっ!!会いたかったっ。無事に会えるなんて思ってなかったよ!!」
ユヴェールは、私に思い切り抱き着くと嬉しそうにぎゅうっと私の身体を強く締めあげた。
「・・ユヴェール??ちょっと、痛いくらいなんだけど・・。ねぇ、あの女性はどなた??
それに、クリスは何処にいるの??」
私の問いかけにピタリと動きを止めたユヴェールは、ゆっくりと身体を離して私の顔をまじまじと見下ろした。
なんだか、自棄にじーっと見つめてくるから恥ずかしくて顔をそむけたくなった。
「ごめんごめん‥!!シアに会えてすごく嬉しくて。
怪我はしていない??・・・大変だったようだね。兄上の手先だったカイルに攫われて・・・。
怖い目に合ってない??」
「えっ??あの・・。全然大丈夫だったのよ??
エヴァン様は、私を傷つけるような真似はしないわよ??それよりも、私・・。
ミリアに攫われてここに来たの・・。
第一、カイルや、エヴァン様は私達の味方でしょう??レオ達もユヴェールとクリスに合流しに城へ潜入しているはずよ。
・・・貴方は、どうしてこんな所にいるの?」
私は、目を丸くしたままユヴェールの顔を見上げていた。
「シアこそ、どうしたの?
レオや、カイルや兄さんはこの国を脅かそうとしている裏切り者だよ??
兄上達に騙されては駄目だよ!!母上が、シアを助けてくれたんだ!!ほら、あそこにいるよ。」
祭壇の椅子の上から、私とユヴェールをニヤニヤしながら見つめる女性はユヴェールの母上なの??
紅い口紅で縁取られた唇で笑っていた。
だけど、その緑色の瞳は全然笑っていないように見えた。
「・・あっ。そうだ!!
あの人は、レムリア様の・・お姉さま??」
絶対記憶で思い出したレムリア様と花冠を乗せ合っていた茶色の髪の幼い少女の姿と重なった。
「レムリア・・。ああ、レオの母上だね。
マルダリア王妃である母上は・・。
確かに、レオの母上の姉だけど。
何故、その事実をシアが知ってるの??」
「・・・だって「見た」から。
レムリア様と一緒に笑っていた幼い日の王妃様を・・。」
その言葉が聞こえたアンブリッジは、驚いた様子でアレクシアを見た。
ゆっくりと椅子から降りると、深い赤みの深紅のドレスをずるりと床の上で引きずりながら近づいて来た。
「初めまして。
アレクシア=グレース=ブランシュ伯爵令嬢。
私は、このマルダリア王国の王妃、アンブリッジよ。ユヴェールがお世話になっているそうね・・。」
向き合ったアンブリッジは、私に優しく微笑みかけた。
私の背中からは、ゾクリと感じる寒気が全身を駆け抜けていた。
指先まで凍えるような、違和感と恐怖・・。
あの頃の笑顔は失われたような、瞳には絶対零度の冷酷さが映っているように見えた。
「・・あっ、あの。
は、初めてお目にかかります!!
ユヴェール王子とは、王立学院時代から大変お世話になっております・・。あの、私・・。
侍女だったミリアにここに連れて来られたみたいなんです。あの、ここは一体何処なんですか??」
「ここは、マルダリア王城の聖堂だよ。
もう、シアったら・・。
堅苦しい挨拶は抜きでいいんだ。ねぇ、母上??」
ユヴェールが、私の肩を掴んで自分の側へと強い力で抱き寄せた。
「・・ちょっと、ユヴェール??
どうしたのよ??離してくれない??」
「シア・・。
俺はね、母上と一緒に裏切り者達を返り討ちにしてやるんだ。王国を裏切り、アルトハルトと手を結んだ裏切り者の兄をこの手で倒すことに決めたんだ!!」
はぁ・・??
自信満々に高らかと頓珍漢な発言をしているユヴェールに、ポカンと口を開けて驚いていた。
「え、えーと・・。コレ、何かのドッキリ!??
冗談でしょう???
だって、ユヴェールがエヴァン様にちゃんと城で会ったら話したいって・・。一緒に、この世界の為に戦おうって伝言を寄越してきたんじゃない??
ユヴェールの神獣の麒麟を使ってそう伝えて来たでしょう・・。」
「えっ・・。そんな事あったかな??
シアの思い違いじゃないかな・・。
俺が裏切り者に協力するなんて、有り得ないよ・・!!夢でも見たんじゃない??」
夢か・・。
確かに夢はさっきまで見ていたけどねぇ・・。
でも、違うわよ!!
あれは夢だけど、これは夢じゃないってばよ!!
私は昨夜見た夢を思い出して、青ざめた表情でユヴェールを見上げた。
「ユヴェール??
貴方、何か可笑しい気がする・・。
何か薬でも盛られていないの??あ、解らないか!」
「何も飲まされてないよ??
どうしたんだよ、シア・・・。
それよりも、母上がシアに聞きたいことがあるみたいなんだ。」
何時もと同じ様子のように見えて、ユヴェールに感じる違和感に言いようのない不安に襲われていた。
なんか嫌!!
「ユヴェール、貴方いつものユヴェールじゃないわ!!変だもの。」
「ふふ・・。可笑しなことを言うお嬢さんね。
第二王子のユヴェールよ??
よく知っているのでしょうに・・。
貴方に聞きたい事があるのだけど、いい??」
鋭い視線を向けられた私は、瞳を揺らして王妃様を見た。
そうか・・。
この人だったんだ!!
「私を・・・。
ミリアに攫わせたのは、貴方だったのね??」
カッと大きく開いた碧色の瞳で楽しそうに微笑んだアンブリッジは、私の頬をクイッと掴むと至近距離で言った。
「そうよ。
私が、ミリアを使って貴方をここに呼んだの。
だって、貴方ってば・・。
勝手にエヴァンの方へ行ってしまったんだもの。
先に貴方を呼んだのはこの私なのにねぇ・・。
うふふっ。」
「それは、、わたしだって全く予期してなかったんですけど。それより、質問て何ですか?」
「レオノールの器は何処にある??
・・その鍵を、お前が持っているはずなんだがな。」
鋭い質問に息を飲んだ。
やはり、この人はレオの器を狙っていた・・。
ゴクリと留飲を飲むと、呼吸を整えるように
目を閉じた。
荒く息を吐いた私は、心の声を閉ざして正面を見上げた。
「器の話はよく知らないです。・・鍵って何?!」
私の背中は汗でびっしりだった。
「器の出現条件だ・・。
お前は聞かされておらぬのか??ふん、まぁいい・・。器の発言条件は3つある。
強い神力を持つこと、神獣を呼び出して加護を受ける者であること。そして、もう1つ・・。」
「アレクシアよ、レオから受け取った物があるはずだ・・。それを私に渡すのだ!!」
「そんな話は一切聞いておりませんし、全く鍵などについても存じ上げませんが・・??
先ほどから、一体何の話をされているのでしょうか!?」
怪しい色香を纏うアンブリッジの瞳を水色の瞳で睨みつけていた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(45件)
あなたにおすすめの小説
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
やぎこさん>
感想どうも有り難うございます✨
びっくりして見直したらマルダリア王国編のプロローグが入れ替ってましたね!!
編集作業のとき、手が当たって順番が入れ替わってしまっていたようです😭
ご指摘、どうも有り難うございます😄
これからも宜しくお願い致します✨
クリームソーダさん>
いつも感想有難うございます!!
そうですね、恋愛面でのシリアスは私も苦手気味なのでサラッと書かせてもらいました。
みんな傷がある訳ですが、その歪みをどのタイミングで誰との出会いで正していけるのか
ってのも作品の中でちゃんと示していくことも必要かなと思ってます。
各キャラそれぞれの背景って不思議に出来てくるので、どのキャラにも愛着がわいてしまいます!!
あの変態がどのようになっていくのかと、シスコン兄の空回りを楽しみにしてて下さい!!
これからもどうぞ宜しくお願いします(^^)
クリームソーダさん>
そうそう、更新のタイミングの問題ですいません!!
これからも楽しめるような作品を書いていきたいと思ってます。
宜しくお願いします(^^)