転生したらストーカーも転生したようなので、魔術師団に入ります。

館花陽月

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古代神殿都市「エストラルド」

神話の真実②

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私たちは、神殿の時の広間に戻る・・。

先程のエルドラの発言が、不安で仕方がないのだった。

「ランドル様、あの人は神官と言ってましたよね。
神官は神に仕える神聖な身ですし・・。
何かをするなんて事はないですよね・・。」

青ざめた頬と、緑の瞳が揺れる様を心配したランドルはくしゃっと髪を撫でる。

「そうだな・・。でもカイルとアヴァは幸せそうだった。
神巫女も、神官も人間なんだ。
欲だってきっと、抑えているだけなのだと思う。
私だってそうだったよ。
誰か大切な人と会えた時に、それは試されるのだと思う。」

少しだけ、分かる気がする。

私も好きな人と出会って、それが分かった。
ここへ転生する半年前のあの日・・。
空港で会えなかった時、タガが外れたように電車内でボロボロと泣いた。

あんな気持ちも、私も初めてだった。

何かを・・自分の大切なものを失ったような気持ち・・。

ランドルと離れた時もそうだった。

大切な何かを、自分よりも大切な何かを見つけたら
それなしではいられなくなる・・。

ガタン・・・・。

石が今度は先の時間に向けて転がりだす。
その間、目の前にはボウッと、アヴァとカイルのエストラルドでの逢瀬や、アヴァの神へと祈りのビジョンが壁に映し出された。

嬉しそうに笑うアヴァ、愛しそうに見つめるカイル。

「幸せそう・・。でも・・えっ?!」

私は、あるシーンに驚いた。

立ち上がって映し出された早送りに過ぎて行くビジョンへと走った。

「ちょっと・・何が起きてるの!?」

目を見張って、その映像を見る。

「・・あ、ああ。
何故だ!?あのカイルと言う男が・・・。」

ランドルも動揺を隠せない表情で、ビジョンを見つめ唇を震わせていた。

石がピタリと止まった瞬間に、私とランドルは真っ青になってその場から駆け出していた。

神殿の外へ!!

アヴァとカイルの元へ!
気持が逸るのだった。

神殿の外に出た瞬間、沢山の人がその入り口へと押し寄せていた。

私達はその人々をすり抜けるように走る!

「ランドル様!!こっち・・。」

私は、大勢の人々が神殿から塔や、広場の方へと松明を持って向かって行くのを見て、そちらの方へと人をぐんぐんすり抜けながら駆け抜けた。

「なんだ・・これは・・・!!
何故、こんな惨い事を・・・。」

先に到着したランドルは瞳を震わせて、を見上げていた。

嫌な予感がして、私は恐る恐る顔を見上げていく。

一番人が群がっていた、神殿の先の塔を見上げた。

・・・そこにはカイルが磔にされ、唇から血を流し息を引き取っていた。

目を疑うような、凄惨な光景に私の膝はガクガクと震える。

「カイル・・っ!!カイル・・どうして貴方がこんな目に!!?
お願い目を開けてカイル!!」

取り乱しながら、その塔の前で泣き崩れる姫をグレンと、エルドラが抱きかかえていた。

「姫様!!大衆の前です・・。
落ち着かれて下さい・・。」

グレンが、苦しそうにカイルの姿を見つめながら一筋の涙を流していた。

アヴァは、泣き叫んでパニックのような状態になっていた。

こんなの、無理もない・・・。

あんな姿になった大切な人を見たら
私ならば・・気が触れてしまう。

一瞬、神殿の広場に倒れたクリスの姿が脳裏に過った。

アヴァの金切り声が耳に届き続ける。

「アヴァ・・・。なんて可哀想な・・。
何もしていないのに、どうしてカイルが磔になるの?」

私の瞳からもポロポロと涙が溢れていた。

「アヴァ様!!貴方の心を乱す人間を殺しました・・。
これで貴方は心を乱さずに、この世界の為に神に祈りを捧げられますね。」

私は、大衆の中の一人が彼女に目掛けた言葉に耳を疑い顔を上げた。

アヴァも、泣きながら驚くような瞳でその男を見つめていた。

「そうですね・・。もう、姫は心乱すことはないでしょう。
皆さん、安心して下さい!!」


サラリと銀の髪を揺らしたエルドラが、立ち上がり嬉々とした顔で集う人間たちに高らかに叫んだ。

そうか・・この男だ!!

アヴァを・・カイルを引き離す為に嘘を大衆に吹き込んだのは。

大衆の不安を煽り、尚且つ大衆心理に付け込んだのだ。

「許せない・・。エルドラっ!!あの男が全部謀ったのね!」

私は、エルドラを睨み殴り掛かりに行く。
ランドルは焦って私を引き留めにかかる。

「セレーナ、無理だ。時間が違う・・。これは過ぎた過去の映像だ・・。しかし、こんなの。。何て惨い事を・・。」

ランドルは、紅い瞳を苦しそうに揺らし塔の息絶えて、静かに目を閉じた男の姿を見上げる。

「ただ・・彼は、アヴァと一緒にいるだけで良かったんだろうな。
それだけであんなに幸せそうだったのに・・。」


私たちの前で、大衆たちはエルドラの言葉に奮起し、喜び合っていた。

それを地面に頽れたアヴァは・・緑の涙に濡れた瞳を揺らし信じられないような表情で見つめていた・・。

グレンも、アヴァを支えながら涙を流し天を仰いだ。

「姫様!!大丈夫ですか?
手をお貸しいたしましょうか・・・。」

エルドラが、差し出した手をアヴァは思い切り弾いた。

驚いた表情を見せたエルドラは、青い瞳を細めて彼女を見下ろした。

「貴方は・・神巫女でしょう?
何を野蛮な人間などの死に心動かされているのです?
そもそも、関わってはいけない二人・・。
会うはずのない者だったのです。
忘れれば良い・・・。」

その言葉にグレンはエルドラに掴みかかり殴った。

ドサッと倒れたエルドラは、微かに笑い出し・・その笑いはどんどん大きくなっていく。

「あはははっははは!!傑作だな・・。
神巫女が野蛮な人間の死に、心を動かされるとは・・。
貴方はこの世界を創る者・・。自分が作った者に恋をして、世界の均衡を崩すなんて愚かだ!!
貴方は、この世界の唯一の人間・・。
誰の物にもならぬ人なのだ!!」

アヴァは銀の長い髪を揺らし、アレキサンドライトの瞳は赤い色の怒りを浮かべた。

「エルドラ!!・・どうしてなの。
貴方はカイルに何の怨みがあってそんな言葉を吐くのです?
カイルが貴方に何をしたのよ!!!」

「・・貴方の心を奪いました・・。
それは私にとっては、死んで償うぐらいの大罪です。
貴方は神の物・・。
私の物にはならぬと・・ずっと諦めて来たのに!!!
貴方の側にずっと仕えながら・・しまい込んで来た貴方への想いを
横から急に表れたこの男が・・我慢の全てを壊してしまったのだ!!」

「そんな・・。そんな事で・・。
貴方は自分の為に、人を殺したの?
ただ邪魔だったから・・。私が好きだと・・そんな理由・・で・・。」

ポロポロと涙を流す儚いアヴァを見つめる、エルドラは青い目を見開き笑った。

アヴァへと近づき、赤い宝石に手をかけた。

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