満員の球場が見たいの

ぎらす屋ぎらす

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24. 唯一明るい選手

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3月24日(火)。

昨日は全体練習がオフ、本日からまた練習が始まる。
ジュピターズは開幕シリーズを0勝2敗で終えた。昨年9敗しかしていないこと、そして女子プロ野球が開幕して以来10年連続でプレーオフに出場していることを考えると、珍しい負けっぷりである。
特に開幕戦はもう少しのところでノ―ヒットノーランを食らってしまうほどの拙攻ぶりで、何ともジュピターズらしくない展開だった。

「はーい!オーライオーライ!」

外野ノックで一際大きな声を出しているのは、この2連戦で目覚ましい活躍をした華だ。開幕戦こそノーヒットだったが、2戦目で合計3安打を放ち、守備では明らかにヒットであろう当たりを3度捕球した。昨年はフェザンズに所属しており、1年でトップチームに昇格し開幕スタメン。まさに夢を一気に掴んだと言える。

「華ちゃん、明るいね。開幕戦で最後まで声出してたの、華ちゃんだけだったもんね」

チーム1のベテランである土狩淳奈が言った。ジュピターズの弱点である「元気のなさ」を唯一克服しつつあるのが華なのだ。

「華ちゃん、この3連戦でチームで一番グッズが売れたんですよー!」

チームの広報担当である松井真衣が淳奈の走ってきた。

「明るいし、顔も可愛いし、人気出るのも当然だよね。まだ20歳でフレッシュだし。私なんか…」

「淳奈さんもまだまだいけますよ!大人の魅力ってものがあります」

「慰めても無駄よ」

淳奈は女子プロ野球リーグの1期生であり、今年35歳になる。今年20歳になる華を見ていると、少し辛くなったようだ。

「華ちゃんナイスキャッチー!」

グラウンドで大きな声がした。華が練習にもかかわらず華麗なダイビングキャッチを決めたのだ。このハッスルプレーこそ、3日間で一気に人気が出た要因である。

「見てください、ファンレターもたくさん届いたんですよー!」

真衣は段ボール箱いっぱいの手紙を淳奈に見せた。

「これ、ぜーんぶ華ちゃん宛てなんですよー!」

育成球団フェザンズには、インターハイで活躍した直後に入団する選手が多い。女子高校野球が大人気であり、そのファンがそのままフェザンズに入った選手を応援するため、トップチームよりもフェザンズの試合の方が観衆が多いということはよくある。それどころか、インターハイ優勝投手がフェザンズに入団した年などは、練習日にもかかわらずトップチームの試合よりも多くのファンが駆けつけることすらある。
しかし華はこの例に当てはまらないのだ。インターハイに出場してはいるものの、華は1回戦で敗退、しかもヒットを一本も放つことができなかった。女子高校野球ファンでさえ、彼女の名を知るものはほとんどいない。
それでいてこのファンレターの数なのだから、華が女子プロ野球ファンに与えた衝撃がどれほど大きいか分かるだろう。

「お疲れ様でーす!」

華がノックを終えてダッグアウトへ戻ってきた。

「華ちゃん、ファンレターの数凄かったらしいじゃん?開幕3連戦で一気にファンが増えたね」

祥子が満面の笑みで華の肩をポンポンと叩いた。

「いやー、たまたまですよ。偶然チャンスで回ってきて、そこでヒットが出て。そもそもそのチャンスも先輩方が出塁してくださったおかげですし」

「一本のヒットで一気にファンが増える。一つのアウトでファンが減る。それがプロなのよ」

祥子は3月とは思えない陽気の中、汗を拭いながら言った。


 
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