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8. バスケ経験者
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4月25日。
今日、1年生は入部届を提出することになっている。これまでに2度仮入部の機会があり、生徒たちは皆、どの部活に入ろうかという話題で持ち切りだ。
朝のショートホームルーム前、ノリたちはいつものメンバーで話をしていた。
「ねえ、優子は何部にするの?」
なーちゃんが言った。
「私はテニス部かな。なんかキラキラしてそうな感じだし。先輩たちみんな美人だった!私もあんな風になりたいなと思って。なーちゃんは?」
「私は吹奏楽にする!これからも音楽は続けたいし」
なーちゃんは3歳、ノリたちと出会う前からピアノを習っており、その実力は県のコンクールで金賞を取るほどである。
「ノリと光二はバスケ部でしょ?」
優子となーちゃんが口をそろえて言う。
「うん、もちろんバスケ部だよ」
光二が答えた。
光二はノリと一緒に6年間ミニバスケットボールをやっていた。背も高く、中1の4月時点で170センチを超えている。なーちゃんや優子とも大変仲が良く、小学校の時から4人でよく過ごしていた。
「ノリと光二が入ったら、バスケ部めちゃくちゃ強くなるんじゃない?他の小学校にもミニバスやってた子何人かいたでしょ、あの子たちも入部したら相当すごいことになるよ。応援に行かなくちゃ」
なーちゃんが目を輝かせて言った。
「さすがに3年生が引退する前に試合に出るのはなあ。いくら何でもそれはあり得ないと思う」
光二が謙遜して言う。
◇
1年生の部活は4月28日(土)からスタート。ついに入部当日を迎えた。新入部員の自己紹介が始まる。
「石原規広です。ミニバスやってました。ポジションはシューティングガードです。よろしくお願いします」
「大森光二です。石原と一緒にミニバスやってました。ポジションはセンターです。よろしくお願いします」
バスケ経験者がいるということを知って、訝し気にノリたちを見ている男がいた。バスケ部2年の川本瑛太(かわもとえいた)だ。
彼は中学校で初めてバスケを経験し、これまで努力を重ねてきたが、残念ながら公式戦出場はまだ一度もない。
彼の努力は凄まじいもので、毎日早朝練習の前に5キロランニングをし、家に帰ってからもシュート練習を毎日続けているらしい。
もう一人、光二を睨みつけている生徒がいる。こちらもバスケ部2年、安藤清一(あんどうきよかず)である。彼もミニバスは未経験で中学からバスケを始め、未だに控えに甘んじている。
特に努力家というわけでもなく、のほほんと部活をしているタイプの人間だ。
さあ、練習が始まった。この中学校のバスケ部は練習がきついことで有名で、それゆえにミニバス経験者でも入部を拒んだ例がたくさんある。今年も例外ではなく、新1年生のミニバス経験者でこの中学校に入学した12名のうち、バスケ部に入ったのはノリと光二以外にわずか4名。
半分が別の競技に転向してしまったのだ。
バスケ未経験者は4人入部し、1年生は合計で10名でスタートすることになった。
最初のランニング。アップダウンのある校庭の周りの道路を5周。距離にして約3.6キロ。これが終わると早くも1人脱落者が出た。脱水症状を起こしているようだ。
次はフットワーク。脚中心の筋トレのようなものだが、ここでも脱落者が1人出た。
一通り体力作りの基礎練習が終わると、中木二郎先生(なかぎ じろう)が言った。
「えー、今から1年とAチーム(2・3年)で分かれて練習します。石原君、大森君はAチームに混ざって練習してください」
川本と安藤が騒めいた。
「おい、あいつら1年のくせにAチームの練習に入るだと?ちょっと気に入らんなあ」
「俺たちがAチームに入るのにどれだけ苦労があったか知ってるのか。呼び出しだな」
今日、1年生は入部届を提出することになっている。これまでに2度仮入部の機会があり、生徒たちは皆、どの部活に入ろうかという話題で持ち切りだ。
朝のショートホームルーム前、ノリたちはいつものメンバーで話をしていた。
「ねえ、優子は何部にするの?」
なーちゃんが言った。
「私はテニス部かな。なんかキラキラしてそうな感じだし。先輩たちみんな美人だった!私もあんな風になりたいなと思って。なーちゃんは?」
「私は吹奏楽にする!これからも音楽は続けたいし」
なーちゃんは3歳、ノリたちと出会う前からピアノを習っており、その実力は県のコンクールで金賞を取るほどである。
「ノリと光二はバスケ部でしょ?」
優子となーちゃんが口をそろえて言う。
「うん、もちろんバスケ部だよ」
光二が答えた。
光二はノリと一緒に6年間ミニバスケットボールをやっていた。背も高く、中1の4月時点で170センチを超えている。なーちゃんや優子とも大変仲が良く、小学校の時から4人でよく過ごしていた。
「ノリと光二が入ったら、バスケ部めちゃくちゃ強くなるんじゃない?他の小学校にもミニバスやってた子何人かいたでしょ、あの子たちも入部したら相当すごいことになるよ。応援に行かなくちゃ」
なーちゃんが目を輝かせて言った。
「さすがに3年生が引退する前に試合に出るのはなあ。いくら何でもそれはあり得ないと思う」
光二が謙遜して言う。
◇
1年生の部活は4月28日(土)からスタート。ついに入部当日を迎えた。新入部員の自己紹介が始まる。
「石原規広です。ミニバスやってました。ポジションはシューティングガードです。よろしくお願いします」
「大森光二です。石原と一緒にミニバスやってました。ポジションはセンターです。よろしくお願いします」
バスケ経験者がいるということを知って、訝し気にノリたちを見ている男がいた。バスケ部2年の川本瑛太(かわもとえいた)だ。
彼は中学校で初めてバスケを経験し、これまで努力を重ねてきたが、残念ながら公式戦出場はまだ一度もない。
彼の努力は凄まじいもので、毎日早朝練習の前に5キロランニングをし、家に帰ってからもシュート練習を毎日続けているらしい。
もう一人、光二を睨みつけている生徒がいる。こちらもバスケ部2年、安藤清一(あんどうきよかず)である。彼もミニバスは未経験で中学からバスケを始め、未だに控えに甘んじている。
特に努力家というわけでもなく、のほほんと部活をしているタイプの人間だ。
さあ、練習が始まった。この中学校のバスケ部は練習がきついことで有名で、それゆえにミニバス経験者でも入部を拒んだ例がたくさんある。今年も例外ではなく、新1年生のミニバス経験者でこの中学校に入学した12名のうち、バスケ部に入ったのはノリと光二以外にわずか4名。
半分が別の競技に転向してしまったのだ。
バスケ未経験者は4人入部し、1年生は合計で10名でスタートすることになった。
最初のランニング。アップダウンのある校庭の周りの道路を5周。距離にして約3.6キロ。これが終わると早くも1人脱落者が出た。脱水症状を起こしているようだ。
次はフットワーク。脚中心の筋トレのようなものだが、ここでも脱落者が1人出た。
一通り体力作りの基礎練習が終わると、中木二郎先生(なかぎ じろう)が言った。
「えー、今から1年とAチーム(2・3年)で分かれて練習します。石原君、大森君はAチームに混ざって練習してください」
川本と安藤が騒めいた。
「おい、あいつら1年のくせにAチームの練習に入るだと?ちょっと気に入らんなあ」
「俺たちがAチームに入るのにどれだけ苦労があったか知ってるのか。呼び出しだな」
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