6 / 16
スノゥふたたび
しおりを挟む
スノゥはあっさりと帰っていった。
俺の誘い方がめちゃくちゃだったのも良くなかった。
まあでも、全く懐かれなかったし、仕方ない。
街を歩くと、前以上に物乞いが目につくようになった。
腕を失ったもの。目を失ったもの。
痩せた子供。飢えた老人。
そんなものたちが道の両端にゴロゴロいる。
今の予算では、とてもとても力になれない。
だが、目に入ったコップや水瓶に次々と魔法で水を注いでいく。
4区画も歩くと、魔力切れでクタクタになってしまった。
肩で息をしていると、前から役人が馬に乗ってやってきた。
朱色の上等な絹製の衣服に、肩から装飾が豪華な刀剣を差している。
「おいお前、通行税だ。金を払え」
ゴミムシを見るような独特な目。おそらく貴族の三男坊あたりに違いない。
「手持ちが少なくて申し訳ございません」
丁重な口調を心掛け、懐から5000ギルを差し出す。
「フンっ、酒の足しにもならんわ。まあ良い。殊勝な態度に免じて通行を許可する」
「感謝いたします」
頭を下げ、逃げるように通り抜ける。
腐れ貴族が。なにが許可するだ。通行税を払うのは関所のみである。
あれは完全に私服を肥やすためだけの違法行為だ。
いろいろ言いたいことはあるが、この世は貴族に非ずんば人にあらずな平安末期のようなな世界だ。
郷にいっては郷に従え、という教えにのっとりやりすごす。
はあ、早く田舎に拠点を作って、こういう嫌な気持ちにならずに済む生活がしたい。
金だ。金が必要だ。
そろそろマスタード大尉の元へ行き、ひと稼ぎしに行くのもいいかもしれない。
◯
しばらく歩くと、先程見た通行税とイチャモンをつけ、金をむしり取る役人を見つけた。なにやら物乞に絡んでいるらしい。
「だから!お前を一晩抱いてやると言っているんだ!早く立ちなさい」
「やだ」
「乞食風情が口答えするな!早く立て」
役人が物乞いの腕を掴み、引っ張り上げた。
物乞いはスノゥだった。
あちゃー、どうしようかな。
貴族だし、大金貰えるチャンスかもしれないし、勝手に割って入るのも悪いかな。
「やだ。生理なの」
「それでも構わん!いいから来い」
いやいや、お前が構うかどうかは知ったこっちゃないのよ。
「お役人さん。その娘、いくらで買うんですか?」
俺は怒りをかわないギリギリの口調で聞いてみた。
「貴族の私が、抱いてやると言っているんだ!その事実が、報酬だ!」
言葉はわかるのに、何を言っているのかわからない。
いや、わかるんだけど、わからない。わかりたくない。
「あ、タック。助けて。このロリペド変態に犯されちゃう」
頭を抱える。
おいおいおいおい、切り捨てられちゃうよ、君も俺も。
貴族の顔はみるみる赤くなっていく。
拳がわなわな震えている。
「タックと言ったか。この娘に、私に抱かれる素晴らしさを教えてやれ」
すぐに手が出ないだけ、まだまともな貴族かもな。
「お役人様。その者無知故にご無礼致しました。ですが、本日は体調が優れぬようです。お役人様であれば、いくらでも慕う女性がおりますでしょう。今日のところは、ご勘弁を」
丁重に、スノゥは勘弁してくださいと伝える。
「まあな。よくわかっておるではないか。だが、今日はこの物乞いと決めたのだ!さあ、説得する相手を間違うでないぞ」
駄目だな。
「スノゥ、走れるか?」
ん。と短く返事すると、貴族の腕を振り解き、こちらへ走り寄ってくる。
「じゃあな!ロリペド変態貴族!おイタが過ぎないように気をつけろよ!」
捨て台詞と共に、役人たちの足場を一旦ぬかるませ、固めた。
「ぐっ、なんだこれは!おい!貴様!死罪に処すぞ!おい待て!おい!」
ガニ股で役人が怒っているが、殺すと言われて待つやつがいるか。
◯
温泉宿に戻り、すぐに荷物をまとめた。
「スノゥ、俺はこれから西部の魔獣戦線に参戦しひと稼ぎする。お前も来るか?」
「タックは会社を作ると言っていた。わたしを雇うなら、ついていく。食事付き」
スノゥにしては珍しく、口角が上がっていた。
「わかった。社食もつけてやる。よろしく頼むぞ」
俺の誘い方がめちゃくちゃだったのも良くなかった。
まあでも、全く懐かれなかったし、仕方ない。
街を歩くと、前以上に物乞いが目につくようになった。
腕を失ったもの。目を失ったもの。
痩せた子供。飢えた老人。
そんなものたちが道の両端にゴロゴロいる。
今の予算では、とてもとても力になれない。
だが、目に入ったコップや水瓶に次々と魔法で水を注いでいく。
4区画も歩くと、魔力切れでクタクタになってしまった。
肩で息をしていると、前から役人が馬に乗ってやってきた。
朱色の上等な絹製の衣服に、肩から装飾が豪華な刀剣を差している。
「おいお前、通行税だ。金を払え」
ゴミムシを見るような独特な目。おそらく貴族の三男坊あたりに違いない。
「手持ちが少なくて申し訳ございません」
丁重な口調を心掛け、懐から5000ギルを差し出す。
「フンっ、酒の足しにもならんわ。まあ良い。殊勝な態度に免じて通行を許可する」
「感謝いたします」
頭を下げ、逃げるように通り抜ける。
腐れ貴族が。なにが許可するだ。通行税を払うのは関所のみである。
あれは完全に私服を肥やすためだけの違法行為だ。
いろいろ言いたいことはあるが、この世は貴族に非ずんば人にあらずな平安末期のようなな世界だ。
郷にいっては郷に従え、という教えにのっとりやりすごす。
はあ、早く田舎に拠点を作って、こういう嫌な気持ちにならずに済む生活がしたい。
金だ。金が必要だ。
そろそろマスタード大尉の元へ行き、ひと稼ぎしに行くのもいいかもしれない。
◯
しばらく歩くと、先程見た通行税とイチャモンをつけ、金をむしり取る役人を見つけた。なにやら物乞に絡んでいるらしい。
「だから!お前を一晩抱いてやると言っているんだ!早く立ちなさい」
「やだ」
「乞食風情が口答えするな!早く立て」
役人が物乞いの腕を掴み、引っ張り上げた。
物乞いはスノゥだった。
あちゃー、どうしようかな。
貴族だし、大金貰えるチャンスかもしれないし、勝手に割って入るのも悪いかな。
「やだ。生理なの」
「それでも構わん!いいから来い」
いやいや、お前が構うかどうかは知ったこっちゃないのよ。
「お役人さん。その娘、いくらで買うんですか?」
俺は怒りをかわないギリギリの口調で聞いてみた。
「貴族の私が、抱いてやると言っているんだ!その事実が、報酬だ!」
言葉はわかるのに、何を言っているのかわからない。
いや、わかるんだけど、わからない。わかりたくない。
「あ、タック。助けて。このロリペド変態に犯されちゃう」
頭を抱える。
おいおいおいおい、切り捨てられちゃうよ、君も俺も。
貴族の顔はみるみる赤くなっていく。
拳がわなわな震えている。
「タックと言ったか。この娘に、私に抱かれる素晴らしさを教えてやれ」
すぐに手が出ないだけ、まだまともな貴族かもな。
「お役人様。その者無知故にご無礼致しました。ですが、本日は体調が優れぬようです。お役人様であれば、いくらでも慕う女性がおりますでしょう。今日のところは、ご勘弁を」
丁重に、スノゥは勘弁してくださいと伝える。
「まあな。よくわかっておるではないか。だが、今日はこの物乞いと決めたのだ!さあ、説得する相手を間違うでないぞ」
駄目だな。
「スノゥ、走れるか?」
ん。と短く返事すると、貴族の腕を振り解き、こちらへ走り寄ってくる。
「じゃあな!ロリペド変態貴族!おイタが過ぎないように気をつけろよ!」
捨て台詞と共に、役人たちの足場を一旦ぬかるませ、固めた。
「ぐっ、なんだこれは!おい!貴様!死罪に処すぞ!おい待て!おい!」
ガニ股で役人が怒っているが、殺すと言われて待つやつがいるか。
◯
温泉宿に戻り、すぐに荷物をまとめた。
「スノゥ、俺はこれから西部の魔獣戦線に参戦しひと稼ぎする。お前も来るか?」
「タックは会社を作ると言っていた。わたしを雇うなら、ついていく。食事付き」
スノゥにしては珍しく、口角が上がっていた。
「わかった。社食もつけてやる。よろしく頼むぞ」
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~
渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。
彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。
剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。
アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。
転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった!
剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる