124 / 259
第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!
宣教
しおりを挟む
お茶会を終えてから一度研究所へと向かった。
今年のマンネルハイムは終わったのであと一年経たないと特にイベントもない。
なのでわたしが定期的にモチベーションを上げてあげないといけない。
シュティレンツの研究所へと足を運ぶ。
「はぁ、もう今日は疲れました。まさかアクィエルさんが来るなんて……」
愚痴を零すとステラが笑った。
「ですが一気にやりたいことが終わってよかったではありませんか」
「確かにそうですが、どうせなら心の準備をしてから会いたかったです」
再度ため息が出るのを抑えて、シュティレンツの研究所の前まで行くとわたしは驚き固まってしまった。
シュティレンツの研究所に大量の人集りができていた。
「ええい、押すな! 魔鉱石を使った亜魔導アーマーの製造はまだ秘密だ! それに製造を知ったところで魔鉱石はまだほとんど流通していない。分かったら帰るんだ!」
領主候補生であるカオディが大きな声で叫んでいる。
どうやら騎士祭で圧倒的チカラをみせたことで、研究所に入りたい他領の学生が押し寄せてきたのだ。
だがカオディの言う通り、まだ数が少ないので魔鉱石を他領には出していない。
そのため、十分な量の魔鉱石が他領に行き渡るようになるには数十年単位掛かるだろう。
ここはわたしが対処してあげなければならない。
「みなさん、研究熱心ですね」
わたしの声が聞こえた者が振り返り、それがどんどん詰め掛けている者たちに広がっていった。
わたしが通る道を作るように全員が整列した。
「ですが、まだシュティレンツではたくさんの学生を受け入れるゆとりがございませんので、どうか今日のところはお戻りくださいませ」
わたしに逆らう者は誰もいないため、一人の例外なく帰っていった。
カオディもホッとしたようでわたしに話しかけてくる。
「マリアさまのおかげで助かりました」
「いいえ、騎士祭であれほどの結果を出しのですからこちらももう少し警戒すべきでした。それとまだ貴方の労を労っていませんでしたね。素晴らしい成果です。わたくしは貴方たちを誇りに思います」
「それこそ、マリアさまのおかげです。我が領土のネツキがマリアさまに大変無礼を働いたにも関わらず、魔鉱石をわたしどもに分けてくださいました。研究者としてこれほど楽しい時間はありません。よろしければ、どうぞ中にお入りください。もうすでにアスカさまとラケシスさまも来られております」
「二人が?」
ラケシスとアスカはシュティレンツを担当してくれていたが、騎士祭が終わったあとも来ているとは思わなかった。
入るとすぐにラケシスが台の上に乗って演説のようなことをしていた。
何人もの学生が熱心に耳を傾けている。
「そう! そしてそこでマリアさまが最強の騎士であるセルランさまですら勝てない魔物を一瞬で倒しました! わたくしもその姿を見たかったですが間に合わず。そしてその後にはアビ・シュティレンツに対して、王者として振る舞い、続くシルヴィの会議では重鎮たちを相手に交渉を成立させたその手腕、怨敵ヨハネさまと互角の戦いと次期当主としての片鱗をみせつつあります。いいですか、みなさん! 騎士祭が終わったからと言って気を抜くことがないように!」
「「はい!」」
わたしは口を開けて呆けてしまった。
一体ラケシスは何をしているのだ?
だがわたしがやろうとしていた気合いを入れるという目的は達成されたのでいいとしよう。
わたしは一人で納得して、再度ラケシスを見るとまた固まってしまった。
「ラケシスさま、こちらが研究内容でございます!」
「ラケシスさま、こちらがお飲み物になります!」
「ラケシスさま、こちらの室温に不快はないでしょうか!」
「ラケシスさま、こちらーー」
複数の男子生徒に女子生徒も混ざり始めていた。
どんどんファンクラブは大きくなっているようだ。
彼女のカリスマ性はわたしより大きいのではないだろうか。
「あれマリアさま? ちょうどお呼びしようと思っていました!」
元気よくぴょんぴょん跳ねるようにアスカが走ってきた。
いつも元気なこの子に微笑ましい気持ちになる。
「どうかしました? ものすごく嬉しそうですが」
「ええ、マリアーマーにも魔鉱石を入れたり、シュティレンツに現れた魔物の素材を使ってさらなる強化をしたのです」
「それは凄そうですね。前より強くなったのかしら」
「全然違います。機動性も上がっておりますし、弱い魔法でも、触媒を大量に内臓しておりますので、かなり高威力になります。魔力を込めれば決まった魔法を発動できるようにしてますから、かなり使いやすいはずです」
「では早速試用運転をしてみましょうか」
わたしがウキウキしながらマリアーマーのところに行く前にステラに止められた。
目が訴えている。
わたしがもうすぐ居なくなるのに、まだ心配事を増やすのかと。
扇子を口にやってオホホホと誤魔化した。
今年のマンネルハイムは終わったのであと一年経たないと特にイベントもない。
なのでわたしが定期的にモチベーションを上げてあげないといけない。
シュティレンツの研究所へと足を運ぶ。
「はぁ、もう今日は疲れました。まさかアクィエルさんが来るなんて……」
愚痴を零すとステラが笑った。
「ですが一気にやりたいことが終わってよかったではありませんか」
「確かにそうですが、どうせなら心の準備をしてから会いたかったです」
再度ため息が出るのを抑えて、シュティレンツの研究所の前まで行くとわたしは驚き固まってしまった。
シュティレンツの研究所に大量の人集りができていた。
「ええい、押すな! 魔鉱石を使った亜魔導アーマーの製造はまだ秘密だ! それに製造を知ったところで魔鉱石はまだほとんど流通していない。分かったら帰るんだ!」
領主候補生であるカオディが大きな声で叫んでいる。
どうやら騎士祭で圧倒的チカラをみせたことで、研究所に入りたい他領の学生が押し寄せてきたのだ。
だがカオディの言う通り、まだ数が少ないので魔鉱石を他領には出していない。
そのため、十分な量の魔鉱石が他領に行き渡るようになるには数十年単位掛かるだろう。
ここはわたしが対処してあげなければならない。
「みなさん、研究熱心ですね」
わたしの声が聞こえた者が振り返り、それがどんどん詰め掛けている者たちに広がっていった。
わたしが通る道を作るように全員が整列した。
「ですが、まだシュティレンツではたくさんの学生を受け入れるゆとりがございませんので、どうか今日のところはお戻りくださいませ」
わたしに逆らう者は誰もいないため、一人の例外なく帰っていった。
カオディもホッとしたようでわたしに話しかけてくる。
「マリアさまのおかげで助かりました」
「いいえ、騎士祭であれほどの結果を出しのですからこちらももう少し警戒すべきでした。それとまだ貴方の労を労っていませんでしたね。素晴らしい成果です。わたくしは貴方たちを誇りに思います」
「それこそ、マリアさまのおかげです。我が領土のネツキがマリアさまに大変無礼を働いたにも関わらず、魔鉱石をわたしどもに分けてくださいました。研究者としてこれほど楽しい時間はありません。よろしければ、どうぞ中にお入りください。もうすでにアスカさまとラケシスさまも来られております」
「二人が?」
ラケシスとアスカはシュティレンツを担当してくれていたが、騎士祭が終わったあとも来ているとは思わなかった。
入るとすぐにラケシスが台の上に乗って演説のようなことをしていた。
何人もの学生が熱心に耳を傾けている。
「そう! そしてそこでマリアさまが最強の騎士であるセルランさまですら勝てない魔物を一瞬で倒しました! わたくしもその姿を見たかったですが間に合わず。そしてその後にはアビ・シュティレンツに対して、王者として振る舞い、続くシルヴィの会議では重鎮たちを相手に交渉を成立させたその手腕、怨敵ヨハネさまと互角の戦いと次期当主としての片鱗をみせつつあります。いいですか、みなさん! 騎士祭が終わったからと言って気を抜くことがないように!」
「「はい!」」
わたしは口を開けて呆けてしまった。
一体ラケシスは何をしているのだ?
だがわたしがやろうとしていた気合いを入れるという目的は達成されたのでいいとしよう。
わたしは一人で納得して、再度ラケシスを見るとまた固まってしまった。
「ラケシスさま、こちらが研究内容でございます!」
「ラケシスさま、こちらがお飲み物になります!」
「ラケシスさま、こちらの室温に不快はないでしょうか!」
「ラケシスさま、こちらーー」
複数の男子生徒に女子生徒も混ざり始めていた。
どんどんファンクラブは大きくなっているようだ。
彼女のカリスマ性はわたしより大きいのではないだろうか。
「あれマリアさま? ちょうどお呼びしようと思っていました!」
元気よくぴょんぴょん跳ねるようにアスカが走ってきた。
いつも元気なこの子に微笑ましい気持ちになる。
「どうかしました? ものすごく嬉しそうですが」
「ええ、マリアーマーにも魔鉱石を入れたり、シュティレンツに現れた魔物の素材を使ってさらなる強化をしたのです」
「それは凄そうですね。前より強くなったのかしら」
「全然違います。機動性も上がっておりますし、弱い魔法でも、触媒を大量に内臓しておりますので、かなり高威力になります。魔力を込めれば決まった魔法を発動できるようにしてますから、かなり使いやすいはずです」
「では早速試用運転をしてみましょうか」
わたしがウキウキしながらマリアーマーのところに行く前にステラに止められた。
目が訴えている。
わたしがもうすぐ居なくなるのに、まだ心配事を増やすのかと。
扇子を口にやってオホホホと誤魔化した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる