悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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第五章 王のいない側近

国の裏側

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 ガイアノスはドルヴィと話をしていた。

「マリア・ジョセフィーヌはまだ殺せないのか?」

 初老を越えても未だ活力ある体躯をしているドルヴィは冷酷な眼でガイアノスを見ていた。
 普段では見ることのない善とは程遠いほどの醜い目だ。

「父上、何度も言いますがあの女を簡単に殺すのは勿体無いです。泣いて謝るまで地下牢に入れてーー」

 楽観的なガイアノスの言葉にドルヴィの目はカッと見開く。


「何を悠長なことを言っている? 蒼の髪は残してはならん。何度も命を狙ったのにしぶとく生き残るのは偶然ではなく、運命が味方をしているからだ。闇の神も怒っている。早く殺すのだ!」


 ドルヴィはまるで何かに取り憑かれているようにわたしを殺すことに執着している。
 もしかするとドルヴィもウィリアノスのように操られているのか?
 だがガイアノスは慌ててドルヴィに言葉を重ねる。

「父上、もう少しだけお待ち下さい。よい情報が入ってきているのです。もうあいつも逃げようがありません」
「本当か? あまりわたしを失望させるなよ? お前を次代の王へとしてやるんだ。もしあの女を逃せば今度こそお前の命は闇の神へ捧げることになる」

 ゴクリとガイアノスは喉を鳴らした。
 実の息子なのに容赦のない言葉は、それほどわたしの死への執着があるようだ。
 どうしてそれほどまでにわたしに死んで欲しいのか。


「父上は一体あの女の何を恐れているのですか?」

 ガイアノスは慎重に言葉を続けた。
 すると突然ドルヴィの姿が変わり始めた。
 金と黒が混ざり合った泥のような皮膚を持ち、顔の部分に目玉が六個ある。
 異形のその姿はまさに怪物だった。

「やつは神々の最後の置き土産なのだろう。長き宿敵との戦いはこれで終わりだ。これで我が敵は完全に消え去り、我の永遠の栄華が約束される。もう死を怯える必要もない。人間共は我々の餌になればいい。永遠に魔力を送り続けるだけの家畜なのだからな」


 ドルヴィの正体が魔物であることに誰もが目を疑った。
 一体この魔物はいつからドルヴィに化けていたのか。
 なぜ人間の王に化ける必要があったのか。

「信じられない。ドルヴィが魔物だと? すぐさまシルヴィに伝えなければならない」

 アビ・グレイルヒューケンはあり得ない光景を見てただそう言うしかなかった。
 だがわたしは次の言葉にさらなる衝撃を受けた。

「分かっております父上、いえ光の神デアハウザーさま」


 その言葉はどう言った意味なのだ。
 どうしてガイアノスは我らが敬愛する神の名前をその化け物に言うのだ。

「ドルヴィが光の神ですか。どうにも胡散臭い話ですね」
「だがよクロート。どうして光の神と闇の神がマリアさまの命を狙うんだ?」
「それは分かりませんが、我々のやることは一つです」

 クロートはヴェルダンディへと向き直り、眼鏡を上げた。

「姫さまを死んでも守ること。護衛騎士の仕事は単純にそれだけをすればいいのです」

 わたしはその言葉を聞いてホッとすると同時に体の力がさらに抜ける。
 魔力がずっと吸われているので、そろそろ消そうと思った直後に他にも部屋へ入ってくる者がいた。

「お呼びということでお伺いしましたが」

 それはゼヌニム領で貢献度でも三位となった優秀な領土の領主、アビ・フォアデルへだった。
 突然目の前の映像が途切れた。

「魔力を止めてしまいました」

 申し訳なく小さくなる。
 わたしは驚きのあまり魔力の供給をやめてしまったのだ。
 もう一度魔力を込めたいがどこから吸い上げられたのか全くわからない。


「マリアさま、誰も責めません。大変な直後に起きた奇跡です。見られただけでもよしとしましょう」
「ルキノ……」

 彼女の言う通りだ。
 思いがけない幸運だったのは間違いない。
 何をしようとしているのかは分からないが、王族が何かしでかそうとしていることはわかった。

「あのガイアノスはいい加減ぶっ飛ばしてぇな! マリアさまを物か何かと勘違いしているんじゃないか?」
「本当だよ。もし王族がこの国に不利益を与えようとするなら彼らこそ地下牢行きだ」

 ヴェルダンディと下僕はお互いに顔を見合わせて、意見の一致で絆を深めていた。
 だが彼らの気遣いは有り難い。
 わたしも元気が湧いてきた。
 パラっとページがめくれると、そこにはこの部屋の見取り図が出てきた。

「この部屋の見取り図です!」

 わたしが叫ぶとすぐさまクロートが中身を解読した。

「なるほど、どうやらあの謎の者たちが一瞬で各地に移動した理由が分かりました」

 わたしたちはおおっ、と声を上げてクロートの解説を待つ。

「どうやら魔法陣を発動すれば転移が出来るみたいですね。おそらくは……」

 クロートが反対方向へ向かって進んだ後、地面を見るためにしゃがみこむ
 わたしたちも向かうとそこには魔法陣が描かれていた。

「どうやらここですね。ここで、魔力の高い踊り手が行き先を想像すれば行きたい領土の決まった場所に辿り着くみたいですね。場所は……ふざけているのですかね?」

 クロートが少しドス黒いオーラを出していた。
 何か紙が落ちていたみたいで、その紙をわたしに見せた。

「えっと、スヴァルトアルフに行きなさい、スヴァルトアルフに行きなさい……」


 同じ言葉がいくつも並べられていた。
 おそらくあの謎の人物たちが残していったのだろうが、あまりにも怪しい。
 だがこの場所へ連れて来るくらいなので敵ではないような気がする。
 わたしは仕方なく、踊りを舞って魔力の奉納を行い思い浮かべたスヴァルトアルフへ一瞬で移動した。

「ここですね」

 わたしたちは無事移動ができたと思ったら突然ドサっと音がした。
 クロートとヴェルダンディはわたしを守るために前に出た。
 だがすぐに二人は気が抜けていた。
 わたしは一体何があったのか見ると、両手両足を縛られたアリアとラケシスが居た。


「むぐううむぐううう!」

 ラケシスがどこか嬉しそうに何かを喋っていた。
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