悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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最終章 希望を託されし女神

ヨハネの真意

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 心の内を見せないようにヨハネは扇子で口元を隠していた。
 だがそれは不安の証だ。

「何かしら? どうしてわたしが偽物の神に味方しているのか気になるの?」
「もちろん、それも気になるけど、わたしの出自を出すタイミングはもっとあったはずよ。それにデアハウザーのミスは貴女がいれば起きるはずがないわ」
「買いかぶりよ」
「ならこれまで貴女に苦しめられていない」


 わたしは少しずつ矛盾点を突いていくことでヨハネの余裕を無くしていく。
 ヨハネは実力行使に出てきて、黒い稲妻をわたしへ放ってくる。

「そんな攻撃がわたしに効くわけないでしょ」


 自分の魔道具が勝手に守ってくれる。
 わたしの魔力を超えない攻撃は全て無効化した。

「どうして攻撃してこないのかしら? わたしを倒さないとここから抜け出せないわよ」

 ヨハネの言う通りだ。
 彼女を倒さないとわたしは閉じ込められたまま。
 しかし今は優先すべきことがある。

「わたしが攻撃しないことに何か不都合があるの?」


 相手の言葉を跳ね返す。
 ヨハネは忌々しげにわたしを見た。

「そんなわけないでしょ。出でよ魔物たち」

 周りからどんどんデビルが出現する。
 ガーネフと協力して魔物を倒していく。


「義姉上、もうおやめください! アビ・フォアデルヘはもう死んだ。貴女を縛るものはないはずです!」
「縛られる? わたしが何に縛られていると言うの?」

 その時またもや時が止まる。
 鏡がまた増えた。
 わたしがそれを覗くと、今度は小さなヨハネがいた。
 そしてわたしも。
 わたしを誘拐した日であり、わたしを地下室に閉じ込めたのだ。


「ねえ、マリアちゃん。ここなら大丈夫」
「嫌だ!助けて!」

 わたしは泣き叫んで助けを求める。
 しかしヨハネがわたしをきつく縄で縛った。

「時間がないの。今から貴女に色々教えないといけないから」

 ヨハネがわたしを無理矢理従わせようとナイフを取り出した。
 この後下僕が助けに来てくれて助かる。
 だがわたしには怖くて恐ろしい時間だった。
 また別の鏡を見た。
 そこではデアハウザーとヨハネが話している。

「もう待てぬ。即刻、蒼の髪を差し出せ」

 ヨハネはデアハウザーの命令に頷く。

「お前が提案したマリア・ジョセフィーヌの魔力を食らう。もう良い頃合いだろう」
「そうですね。あとはわたしがそうなるよう仕組みます」
「お前なら任せられる。だが抜かりはないだろうな?」

 デアハウザーはギロリとヨハネを見る。
 しかしその目は信頼している目だった。

「もちろんです。人間には人間の攻め方があります。もしよろしければ、わたしの夫役のサタンに協力を貰いたいので、御命令をしてもらえますでしょうか?」
「それくらいなら我の命で縛って聞かせよう。自由に使うがいい」
「ありがとうございます」


 おそらく毒殺事件はヨハネたちが仕組んだのだ。
 部屋を出たヨハネの独り言が聞こえてきた。

「もう時間がないわね。これがもう最後のチャンス」

 そして数日後の映像が流れてきて、毒殺の失敗をアビ・フォアデルヘから告げられた。

「くそっ、どうしてあのタイミングでマリア・ジョセフィーヌが来る」

 冷静そうな彼が悪態を吐く姿は意外だった。
 ヨハネが宥める。

「そう気にせず、まだ時間はあります。これからわたしも動きますので」
「ふんっ、わしは暇ではないからな。せいぜいしっかり働け」

 なかなかドライな関係のようだが特にヨハネは気にしていないようだ。
 アビ・フォアデルヘがいなくなってから、気が抜けたように机にうつ伏せになる。

「良かった。しっかり動いてくれたのね」

 ヨハネは心の底から安堵していた。
 そして場所は移り、次はジョセフィーヌの城になった。
 ちょうどお母さまを殺して、お父さまを剣で突き刺し玉座に貼り付けていた。

「シルヴィ、ご無事ですか!」

 入ってきたのはジョセフィーヌの騎士団長であるグレイルだ。
 惨状を見て、実の娘がやったことだとすぐに気付いた。

「ヨハネ、お前はなんてことを……エイレーネさま、お救い出来ずに申し訳ございません」

 死者を悼み、すぐにヨハネへトライードを向けた。
 シルヴィを攻撃するのが実の娘なんてまるで悪夢を見ているようだろう。

「お父さま……これはわたしの罪ね。彼女が苦しむのならわたしもーー」

 その時、空から雷が落ちてきた。
 一瞬の反応も許さずにグレイルに落ちてきて、彼は死んでしまった。
 扉から現れたのはアビ・フォアデルヘだった。

「邪魔な輩は始末してやった。実の親を代わりに殺してやるんだ、感謝しろよ」

 一瞬ヨハネの何かが切れたように感じた。
 しかしすぐに笑みを作って、お礼を述べる。

「ふふ、ありがとうございます」
「それとこの魔物を使えば死体を操れる。これであの女どもを始末するんだな」

 小さな人形が現れてヨハネの肩に乗ってきた。
 まるでペットのようだがヨハネは可愛いと思ってない様子だ。
 そしてまた時が動き出した。
 先ほどからフォルセティによってヨハネの過去を見せられる。
 どれを見ても彼女には別の思惑があるように見える。


「義姉上、貴女はマリアさまが活躍されるごとに喜んでいたではないですか! そちらは相応しくない、こっちへ戻ってきてください!」
「ガーネフちゃん、大きな誤解よ。暇を潰していただけにすぎない。それにわたしはこちらにこそ相応しいの!」


 ヨハネは水の濁流を生み出してガーネフを吹き飛ばした。
 しかしガーネフは立ち上がる。


「ならどうしてマリアさまに手紙なんて書いていたのですか!」

 ガーネフは思い掛けない言葉を放つのだった。

「どういうこと? わたしは手紙なんて一度もーー」
「そうよ、わたしが送るわけないわ」

 ヨハネの動揺で何か忘れていたことを思い出しそうだ。

「隠しても無駄です。あの手紙の魔道具は僕が作って、その内容を自動で複製します。ずっとマリアさまに助言を与えていたではありませんか!」

 やっとわたしは忘れていたことを思い出した。
 ずっとわたしに送られてきた手紙があった。
 何故か先々のことを伝えてくる手紙が送られてきて、わたしの最初の行動を決める重要なものになっていた。
 白い口ーー未来の下僕であるクロートーーが送ってきていると思っていたが、本人から別の人間が送っていると教えられた。

「ヨハネがわたしに? あれは貴女が送っていたの?」

 あまりにも信じられないが、確かに敵側からの内部告発ならばあの情報を送れてもおかしくない。
 ヨハネはそれでも否定する。


「何を言っています。ガーネフちゃんはちょっと勘違いしているだけよ。どうしてわたしが助けないといけないのよ」


 助ける、そうあれは確かにわたしを助けてくれた。
 わたしの始めの一歩を踏み出すきっかけとなった。
 毒殺やメルオープたちの喧嘩も止めた。
 そして魔物が大発生した時もわたしは背中を押された。
 これまでの苦労があったから今のわたしがある。
 つまりはーー。

「わたしを育てようとした?」

 その瞬間、上空から何かの口が出現してきた。
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