氷の薔薇~日の出と日入り~

夢鳴 奏

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氷の薔薇

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氷の薔薇、この花は世界に一つしかない。
1916年、登山家ダイナ・モスートが雪山に登っている途中休憩の際に、偶然、それを見つけた。その花は、日の光を浴びているというのにも関わらず、水を滴らせる様子も見せずに、きらきら光を反射させ、輝いている。モスートはそれを見たとき美しいと思ったが、それと同時にこう思った、「人に売れば、大金を手に入れることができるのではないか」と。それからの彼の行動は早かった、花に近づき、そっと優しく薔薇に触れてみると、横にずれた。まさかと思って、下からすくってみると、簡単に持つことができた。なんと根っこが無かったのだ。その後、丁寧にバッグの中身をすべて出し、必要なものと花を中に入れ、クッションになるように着替えをその周りに敷き詰めた。幸いなことに登山を始めてからあまり時間が立っていなかったため、スムーズに自宅へ持って帰ることができた。その間、花は溶ける様子を微塵も見せず原型をとどめていた。
三日後、この花はなぜ溶けないのだろうかと考えているとき、ドアをたたく音が聞こえた。玄関を開けてみると、そこにいたのは親友のアレックス・ホイマーと知らない男だった。実は昨日、モスートは彼に花を見つけたことを相談し、知り合いの美術館の人に会わせてくれると約束してくれていたのだ。
「いらっしゃい」というとホイマーが 
「こちら紹介しようとしていた美術館の館長さん」と隣にいる人に指をさして教えてくれた。
「どうして館長さんが?」とひどく動揺した様子で動揺した様子でいうと、
「いろいろあったんだよ、とりあえず中で話そうぜ」と言われ、二人を家の中に招き入れ、館長を前にホイマーを隣に座らせた。飲み物を持ってくると館長が口を開いた。
「私は美術館の館長をしております、アスピノ・ジナリルでございます」
「本日は話を聞きに来てくださりありがとうございます。でも、なんで館長さんが?」
「昨日、ホイマーさんから話を聞いた館員が、私に教えてくれて、本当ならばすごいことなので代わりに参った次第です」
なるほどと頷くとモスートは、
「早速、実物を持ってきますね」というと、花を取りに部屋を出て行った。数分もしないうちに部屋に戻ってきて、机の上にその花を置いた。すると二人は、その花の美しさに目が釘付けになってしまった。
「本当にこのようなバラがあるとは、半信半疑でしたが来てよかった」と館長がつぶやくと、それに応じるようにホイマーが「すげえ」と言った。館長さんがこの花をとても気に入ったらしく、早口になり、前かがみになって「いくら払えばこの花を変えるのですか」と、目を血走らせて言った。館長の変貌ぶりに驚きながらもモスートは「まだ、値段は決め手なくて、今日見てもらってから決めようかと思っていました」。
何かを考えているらしい館長を横目にホイマーは「こういうのははっきりと値段を言ったほうがいいぞ」とこっそり教えてくれた。そんなやり取りをしているうちに館長が「これくらいの値段でどうでしょうか」と、言いながら紙を差し出した。その紙には、家を一軒ぐらい買える値段が書かれていた。
「あと、花の様子をいつでも見に来ることのできるように美術館の入場料を免除しましょう」と提案してくれた。モスートは、少し悩んだ様子を見せた後に、返事をしようと口を開けようとすると、隣にいるホイマーが「本当にこの値段でいいのか。もしかしたらもっと価値のあるものかもしれないぞ」と言ってきたが「この値段でいいんだ。しかもここは田舎だから鑑定できる人を呼ぶと金がかかるだろ」と決意を固めたことを伝えた。
「この値段でお願いします」というと館長は、「これにサインを」と言いながら契約書を取り出した。契約書には、花の所有権を認めることと、この値段で買い取ることに同意するという内容が書かれていた。サインしても大丈夫かとホイマーに聞くと頷いてくれたので、再度、契約書を読み直し、大丈夫か確認して、サインをすると館長が「契約成立ですね」と言いながら立ち上がり、サインした契約書を鞄に入れて、「お金を取ってまいります」と言い、足早に玄関へと向かっていった。
二時間後、二人の男を引き連れて館長が戻ってきた。
「お金の用意ができました。後ろの二人はボディーガードです」
その後、モスートと館長は、お金と薔薇を取り換え、無事に売買が成立した。

薔薇を持って家に帰ってきたジナリルは、さっそく展示の準備に取り掛かった。三日もしないうちに、展示の準備は終わり、氷の薔薇を展示しているぞと町中に宣伝した。すると、町中の人が一目見ようと、客足はみるみる増えて行った。だが、町中でしか情報が広まらなかったために、最初の一か月程度で、客足は遠退いて行った。

 あれから一年がたった。薔薇は見つけたままの状態で美術館に展示されていた。美術館はというと、薔薇の展示をする前よりかは客の数は増えていた。また見たいと町から来る人がいたり、その情報を聞きつけて見に来る人がいたからだ。たまに、モスートも様子を見に来てくれていた。

 1947年、世界は急速にネットワークが成長していた。そんな中、薔薇の展示をしている美術館は町の過疎に伴い、経営難に陥っていた。そこで、元館長であるアスピノ・ジナリルから美術館を引き継いだアスビノの息子、シーク・ジナリルは、インターネットを使い、世界へと、氷の薔薇の写真とともに美術館の宣伝をした。ところが、あまり話題にもならず、客足は遠退いていくばかりであった。
それから、五か月経ったもう店じまいをしようかと考えていた時に、何の前触れもなく突然、客が大量にやって来た。そのほとんどの客の目当てが氷の薔薇であったため、展示されている部屋に人が雪崩のように入ってきた。
なぜこんなにも客が来ているのかと気になっていると会話が聞こえてきた。
「ここがニュースでやっていた氷の薔薇のある美術館かぁ」
「本当にそんなものあるのかな」
「実際に見たっていう人が何人もいるんだからあるに決まっているだろ」
すぐにインターネットで調べてみると氷の薔薇に関するニュースがずらりと並んでいた。それに驚いている暇もなく、客はやってくるのでチケットを発行し続けた。夕方になり閉館時間も近くなり、客も少なくなったので改めてそのニュースを見てみることにした。
「本当にあるのか氷でできている薔薇」「人工物なのか自然にできたものなのか」などなど
さまざまなニュースが出ていた。記者が取材に来たりして、さらに美術館が有名になり、巨万の富を得ることができた。そこから、数年間、客足は減ることがなく連日大盛況だった。

1958年移動手段が増加したことで、今まで距離が理由で見に来ることの出来なかった人たちが、来ることのできるようになった。そのため、美術館の来場者は年々増えていた。
 そんなある日、薔薇の花びらが一枚落ちた。そのことは、ニュースになり、一部では専門家や芸能人がさまざまな見解を出していたが、大した騒ぎになるようなことはなかった。代わりに、その花びらが欲しいと人が殺到した。そのようなことが起きていても、シークは今まで一度も落ちることが無かった花びらが落ちたので、焦っていました。もしかしたらついに薔薇の寿命が来てしまったのかと考えた、シークは、このことでもっと客を増やそうとして、もう見ることのできなくなるかもしれないということをネットにあげた。実際にその宣伝をしたことによって今まで以上に人は来たが、花びらは依然として落ち続けていた。新たにシークは、花びらが欲しいという人たちに目をつけ今まで落ちた花びらをオークションに出し、大金を得ることができるようになった。だが、枚数に制限があるためあまり良い商売方法ではなかった。
 それから、年月が経ち、花びらが落ちてからもっと人気が出て、美術館は繁盛していました。そんなある日、氷の薔薇から24枚目の花びらが落ちた。それを見た来館者から、歓声が沸いたが、すぐその歓声が悲鳴へと変わった。なぜならば、花びらが落ちたと同時に薔薇がすべて砕け散り茎だけ残ってしまったからだ。

数日後、誰もいなくなった部屋では、茎だけが飾られていた。音が何もしない、まるで振動を伝えるものがないかのように...
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