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責任感
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部員に、15分の休憩を指示して、外へと向かう。
今日はやけに疲れるのが早いような気がする。
いつもなら息は切れているが、まだ余裕で体力が余っていて、15分の休憩でほぼはじめの状態に戻るのに、今日は元には戻らなさそうだと直感した。
冬でも熱気に満ちている体育館から出て、少し冷たい風に当たろうと思ったのだ。
外へと向かって歩く中で、いきなり、目の前が歪んで見えた。自然とその場で足が止まる。景色がぐにゃぐにゃと原型を留めず、地面も硬いのか柔らかいのか分からないような感覚に、立っていられなくなった。
正常ではない脳みそでは「座る」という結論は出てこなくて、何とかそこでとどまろうと必死にもがいた。
あ、やばい。
そう思った時にはすでに体は傾いていたと思う。目の前の歪みが酷くて、上下左右が分からなくなって、気持ち悪くて、目を瞑っていたから正確なことはわからない。
辛うじて保った意識の中で誰かに支えられているのは分かったが、それ以上のことは分からなかった。
休憩のはじめの方よりも息が上がってきて、息が上手く吸えない。と言うよりは、吸っても苦しい。それが過呼吸だということは経験上知っている。頭ではゆっくりと吐くことを意識しなければ、とわかっているが何故か出来ない。
「はっ、はっ、ひゅ」
苦しくて、吐こうとしもすぐに吸いたくなる。それが悪循環だということがわかっていても。
「はっ、ひっ…はっ、ふっっ」
「光弥!落ち着け!息はいて!!吸うなって。」
誰かに手を握られている気がする。けどそれが誰なのかはわからない。高音で耳鳴りがしてる中で聞き取れたのは「光弥」と「はいて」だった。
わかっている。吐かなくてはいけないことは。
だけどうまくいかない。練習のしすぎでなることはたまにあるのに。慣れている、はずなのに。今日ばかりは出来ない。
息が苦しい。
助けて欲しい。
出来ない。どうすればいい。楽にして。
「ひゅ。はっ、はっ、、」
「直生、光弥どうだ!?」
「だめ。パニックになってる。タオル持ってきて。」
「わかった!」
「はぁっ、、ふっ、!?」
口を抑えられて、息が出来なくなる。
吸っても、抑えられているせいでそんなに空気が入ってこない。吐くことも出来くて、どうしていいのかわからなくなる。
さらにパニックになりかけた時、耳鳴りの中でも、はっきり聞こえる声量、声色で聞こえた。
「大丈夫。俺を信じて。落ち着いて。ゆっくり息して。」
「か、、はっ、な、お…はっ。。なお……」
「うん。大丈夫。ここにいてるよ。ゆっくり。」
意識を吐くこと、から、ゆっくり息をすること、に集中して抑えられているせいでしずらい呼吸を必死に行った。
掛けられ続ける光弥の声に本当に安心した。
治まるまでだいぶと長い時間を要したが、全力疾走直後くらいにまでは回復した。
「はっ、はぁ」
「落ち着いたみたいでよかった。」
だいぶ周りが見えるようになってきて、現状把握のために周囲を見回すと、目の前には副部長の賢斗がいて、俺は幼なじみでマネージャーの直生に後ろから抱きしめられるような体勢でいた。
「体、だいぶ熱い。熱結構高そうだね。」
「ねつ。。」
「自覚なかったの…?」
「え…」
自覚は全くなかった。疲れやすいとか、過呼吸が戻らない、とかはオーバーワークではなく、体調不良だったからか、と言われて納得した。
「…あぁ、それで、か。」
「納得?」
「うん…」
「まあ、体調不良のせいだけじゃないよ。」
どういう意味かわからなかった。
「賢斗、みんなに『自主練、時間になったら各自帰るように』って伝えて。その後、こっち戻ってきて。」
「了解。」
直生は賢斗にそう言った。賢斗が走ってみんなが集まっている方に行った。
直生は何も言わずに、俺の頭を数回撫でた。一応、体を動かしていたのだから汗でべとついて、触って気持ちのいいものでは決してないだろうに。
「無理してたんでしょ。そろそろ3年は卒業だから。」
「…え」
無理していた、のかもしれない。それこそ自覚はなかった。今は学校に3年がいるから、困ったことがあれば聞きに行けばいい。しかし、3月いっぱいで3年は卒業なのだ。引退とは意味が違う。自分たちでやっていかなければいけないのだ。
その点で気を張っていた自覚はある。がそれが無理しているという自覚はなかった。
「気ぃ張りすぎてたんだって。みんなお前の頑張りは見てるよ。ちょっとくらい休んだって大丈夫。」
「でも、さんねんになったら、、」
「先輩がいなくなるわけじゃないでしょ。簡単に聞けなくなるだけ。聞けばいつでも答えてくれる位置にいるでしょ。もし困ったら、僕達にだって頼ってくれていい。今はちょっと休みな。」
そう言われると、なんとなく知らないうちに張っていた気や意地がどんどん抜けていくような気がした。
「ありがとう。」
「えっちょっ、しんどくなってきた!?」
自然と出てきた涙のせいで直生を混乱させてしまっているみだいだ。俺は弁解を試みたが、上手くいかなかった。
「わるい、、ちがっ、、ちょと……あんしんが。なん、か…きがぬけ、た…かんじ」
「そうか。よかった。…落ち着くまで泣きなよ。吐き出さないとこの先やってけないよ。」
俺の前に回ってきて、顔を肩に寄せられた。
誰も見ていないし、休んでもいいって言われたし。なんて、誰に言い訳しているのか、誰に責任転嫁しているのか。
俺は直生の肩で泣いた。
今日はやけに疲れるのが早いような気がする。
いつもなら息は切れているが、まだ余裕で体力が余っていて、15分の休憩でほぼはじめの状態に戻るのに、今日は元には戻らなさそうだと直感した。
冬でも熱気に満ちている体育館から出て、少し冷たい風に当たろうと思ったのだ。
外へと向かって歩く中で、いきなり、目の前が歪んで見えた。自然とその場で足が止まる。景色がぐにゃぐにゃと原型を留めず、地面も硬いのか柔らかいのか分からないような感覚に、立っていられなくなった。
正常ではない脳みそでは「座る」という結論は出てこなくて、何とかそこでとどまろうと必死にもがいた。
あ、やばい。
そう思った時にはすでに体は傾いていたと思う。目の前の歪みが酷くて、上下左右が分からなくなって、気持ち悪くて、目を瞑っていたから正確なことはわからない。
辛うじて保った意識の中で誰かに支えられているのは分かったが、それ以上のことは分からなかった。
休憩のはじめの方よりも息が上がってきて、息が上手く吸えない。と言うよりは、吸っても苦しい。それが過呼吸だということは経験上知っている。頭ではゆっくりと吐くことを意識しなければ、とわかっているが何故か出来ない。
「はっ、はっ、ひゅ」
苦しくて、吐こうとしもすぐに吸いたくなる。それが悪循環だということがわかっていても。
「はっ、ひっ…はっ、ふっっ」
「光弥!落ち着け!息はいて!!吸うなって。」
誰かに手を握られている気がする。けどそれが誰なのかはわからない。高音で耳鳴りがしてる中で聞き取れたのは「光弥」と「はいて」だった。
わかっている。吐かなくてはいけないことは。
だけどうまくいかない。練習のしすぎでなることはたまにあるのに。慣れている、はずなのに。今日ばかりは出来ない。
息が苦しい。
助けて欲しい。
出来ない。どうすればいい。楽にして。
「ひゅ。はっ、はっ、、」
「直生、光弥どうだ!?」
「だめ。パニックになってる。タオル持ってきて。」
「わかった!」
「はぁっ、、ふっ、!?」
口を抑えられて、息が出来なくなる。
吸っても、抑えられているせいでそんなに空気が入ってこない。吐くことも出来くて、どうしていいのかわからなくなる。
さらにパニックになりかけた時、耳鳴りの中でも、はっきり聞こえる声量、声色で聞こえた。
「大丈夫。俺を信じて。落ち着いて。ゆっくり息して。」
「か、、はっ、な、お…はっ。。なお……」
「うん。大丈夫。ここにいてるよ。ゆっくり。」
意識を吐くこと、から、ゆっくり息をすること、に集中して抑えられているせいでしずらい呼吸を必死に行った。
掛けられ続ける光弥の声に本当に安心した。
治まるまでだいぶと長い時間を要したが、全力疾走直後くらいにまでは回復した。
「はっ、はぁ」
「落ち着いたみたいでよかった。」
だいぶ周りが見えるようになってきて、現状把握のために周囲を見回すと、目の前には副部長の賢斗がいて、俺は幼なじみでマネージャーの直生に後ろから抱きしめられるような体勢でいた。
「体、だいぶ熱い。熱結構高そうだね。」
「ねつ。。」
「自覚なかったの…?」
「え…」
自覚は全くなかった。疲れやすいとか、過呼吸が戻らない、とかはオーバーワークではなく、体調不良だったからか、と言われて納得した。
「…あぁ、それで、か。」
「納得?」
「うん…」
「まあ、体調不良のせいだけじゃないよ。」
どういう意味かわからなかった。
「賢斗、みんなに『自主練、時間になったら各自帰るように』って伝えて。その後、こっち戻ってきて。」
「了解。」
直生は賢斗にそう言った。賢斗が走ってみんなが集まっている方に行った。
直生は何も言わずに、俺の頭を数回撫でた。一応、体を動かしていたのだから汗でべとついて、触って気持ちのいいものでは決してないだろうに。
「無理してたんでしょ。そろそろ3年は卒業だから。」
「…え」
無理していた、のかもしれない。それこそ自覚はなかった。今は学校に3年がいるから、困ったことがあれば聞きに行けばいい。しかし、3月いっぱいで3年は卒業なのだ。引退とは意味が違う。自分たちでやっていかなければいけないのだ。
その点で気を張っていた自覚はある。がそれが無理しているという自覚はなかった。
「気ぃ張りすぎてたんだって。みんなお前の頑張りは見てるよ。ちょっとくらい休んだって大丈夫。」
「でも、さんねんになったら、、」
「先輩がいなくなるわけじゃないでしょ。簡単に聞けなくなるだけ。聞けばいつでも答えてくれる位置にいるでしょ。もし困ったら、僕達にだって頼ってくれていい。今はちょっと休みな。」
そう言われると、なんとなく知らないうちに張っていた気や意地がどんどん抜けていくような気がした。
「ありがとう。」
「えっちょっ、しんどくなってきた!?」
自然と出てきた涙のせいで直生を混乱させてしまっているみだいだ。俺は弁解を試みたが、上手くいかなかった。
「わるい、、ちがっ、、ちょと……あんしんが。なん、か…きがぬけ、た…かんじ」
「そうか。よかった。…落ち着くまで泣きなよ。吐き出さないとこの先やってけないよ。」
俺の前に回ってきて、顔を肩に寄せられた。
誰も見ていないし、休んでもいいって言われたし。なんて、誰に言い訳しているのか、誰に責任転嫁しているのか。
俺は直生の肩で泣いた。
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