理由のない不安

トウモロコシ

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理由のない不安

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どうしても、泣きたくなる時がある。そんな時は我慢せずに泣いてしまおう。そう思うのだけれど、やっぱりこの歳で…という若干の理性がそれを妨げる。泣きたいけれど、必死にこらえる。どうして。何故。何を気にして。泣けばいいのに。自分の中で第三者のようにそう思う自分がいる。



「っ…」

目元が熱い。少し、気を緩めれば涙が溢れてしまいそう。
目の前には好きな人。両片思いにようやく気づいて、最近やっと恋人になれた人。この人の前で泣きたくない。いずれ泣いてしまう時が来るだろうけれど、まだそれはしたくない。格好良くなくても、せめて「普通」の男でいたい。




普通、ってなんだろう。




「浩?どうかした?」
「いや、なんでも、ない。」 
「おいで。?目が充血してる。」

一瞬固まってしまった俺に気づいて、小春さんがソファの自分の隣のスペースを叩いた。
充血しているのは泣きそうになったときは毎回のことだから、驚くことではなかったけれど、小春さんに気づかれたくなくて、驚くようなフリをした。好きな人にうそをつくようで、さらに泣きそうになるのを唇を噛んで耐える。

小春さんの隣に座っても特に話題は出てこない。俺一人が涙をこらえている状況に傍から見たらわけのわからない光景だろうな、なんて考えては、なぜが気分が沈む。

どこに視線を向けるでもなくただひたすらに涙を堪えていると、不意にぽんぽん、と頭を撫でられた。確認するまでもなく小春さんで、隣に座る小春さんを見上げた。
見えた目はどこまでも優しく綺麗で、包み込んでくれるような温かさを感じた。

「大丈夫。大丈夫。」

そう言いながらなんども頭を撫でてくれる。上手く言えない安心感に堪えていた涙はなんの抵抗もなく溢れてくる。
頬を次々と流れる涙を意味が俺はわかっていないのに、小春さんは全て分かっているような顔している。

「こ、はる…さん。」
「ん。」

小春さんはそっと俺の肩を抱いて、頭に手を添えて、自分の方に引き寄せた。
頭を撫でられた時より大きくなった安心感に、涙の量が増える。
止めたいと思っても止まらないそれは俺の意思とは真逆にどんどん量を増していく。嗚咽さえ漏れてしまう始末で、頭の中はパニックだ。

「浩。泣いていいよ。」

頭や背中を撫でてくれる手は母親とはまた違う優しさがあった。不安や悩みを全て引き受けてくれるような、そんな温かさがあった。




ちょっとしたミスで人を怒らせてしまったこと、朝急いでいて少しお茶を零してしまったこと、そんな小さな嫌な思い出。その時にはあまり気にしなかった事がとても大きな事のように思えて、今になってどうしてそうしたのだろう、なんて後悔が湧いてくる。




「ごめ、っなさ…い…」
「いいよいいよ。そういう時もある。」




小春さんの優しさに、今は、存分に甘えることにしよう。
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