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それぞれの不安
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「熱中症は誰にでもなり得る」そんなことを言われ続け、頭では理解していたはずだった。しかし、どこかで他人事と捉えていたのだ。
まさか、目の前で倒れるなんてことがあるとは、思っていなかった。
真夏の暑い中、体育館での体育。冷房がついていても、声を出して動き回っていれば自然と温度はあがってくる。
「暑い!」と叫ぶ奴を見ては、叫ぶと気温が上がるだろばか。なんて心の中で悪態をつきながら、先生から指示されたことを淡々と終わらせていく。
課題を終わらせて、無駄に動くことなく、その場にボーッと突っ立っておく。この際、上手いかどうかは別の話だ。
俺はこんなに体力を削らないように行動しているのに、双子の弟の陽祐のほうは、元気に友達とはしゃぎまくっている。
「よくやるなぁ」と年寄りじみたことを口にした瞬間、俺の視界で陽祐が倒れた。
あまりに、突然の出来事すぎた。
口からは「は…?」という間の抜けた声しか出てこない。
それでも、頭の中で陽祐が倒れた、と理解した時には自然と体が動いた。
「陽祐!!」
ザワザワとして陽祐のまわりで狼狽えているクラスメイトをかき分けて、陽祐の元へ行く。
そして、荒い呼吸を繰り返す陽祐の肩を軽く叩く。
「陽祐、聞こえる!?手、握って。」
陽祐の体を横向きにして支えつつ、手を握って呼びかける。
「っえ、、げほっ、うえ。。」
「っ。よしよし、辛いな。」
軽く、本当に別のことを気にしていたら、気が付かなかっただろう、というくらいの力ではあるが、手を握り返された。
それとほぼ同時で嘔吐してしまったが、意識があるなら、まず安心していいだろう。
苦しそうに嘔吐する姿は見ていて、こちらまで辛くなるようだ。支えているのと手を握っているので、背中や頭を撫でてあげられない。少しでも辛いものを除いてやることが出来ない。それは、酷く悔しくて、精神的に俺がやられそうだ。
誰かが、先生を呼んできてくれたらしく、先生が俺の名前を呼んだ。
「光莉!」
「先生、陽祐が!」
「吐いたのか。」
「どうしよう…!」
「落ち着け。光莉の行動は正しい。保健室に連れていくから、付き添ってくれ。」
「分かりました!」
先生に落ち着け、と言われて初めて自分がかなり焦っていたことに気づいた。
心臓はバクバクとうるさく、手は震えていた。歯もカチカチとなっていて、どちらが病人かわからない、と頭の中でつぶやいた。
途中合流した保健室の先生と体育の先生と、俺で保健室に向かい、陽祐をベッドに寝かせる。
本当なら車椅子でエレベーターなどで移動するところなのだが、陽祐が俺を離さなかった。
ほどこと思えばほどけるほどの力ではあったが、不安や恐怖から逃れるように、俺に縋るように抱きついてくる陽祐を振りほどこうなんて思考には到底ならなかった。結果、俺が陽祐を抱き上げて、移動することとなったのだった。
「陽祐。」
「ひかり……?」
「大丈夫か…?」
「ちょっと、くらく、らするけど、さっき、よりまし、、」
「自覚症状あったのかよ。」
「わかんない、、じぶんでも。。いきなり、めのまえ、まっくらになっ、た。」
「そうか。今は休んでていいよ。」
体育の授業でかいた汗か、倒れた直後にかいた冷や汗か、しっとりと濡れた髪を梳くように、頭を撫でる。
不安は残っているようだが、さっきよりはだいぶ落ち着いた顔で目を閉じた陽祐に、俺自身もほっとした。
「そんなに、心配かけさせないでよ。」
安心して、気が抜けて、無意識に我慢していた俺の不安が、一気に爆発して、涙となって出てきたが、先生方が、それを指摘することはなかった。
まさか、目の前で倒れるなんてことがあるとは、思っていなかった。
真夏の暑い中、体育館での体育。冷房がついていても、声を出して動き回っていれば自然と温度はあがってくる。
「暑い!」と叫ぶ奴を見ては、叫ぶと気温が上がるだろばか。なんて心の中で悪態をつきながら、先生から指示されたことを淡々と終わらせていく。
課題を終わらせて、無駄に動くことなく、その場にボーッと突っ立っておく。この際、上手いかどうかは別の話だ。
俺はこんなに体力を削らないように行動しているのに、双子の弟の陽祐のほうは、元気に友達とはしゃぎまくっている。
「よくやるなぁ」と年寄りじみたことを口にした瞬間、俺の視界で陽祐が倒れた。
あまりに、突然の出来事すぎた。
口からは「は…?」という間の抜けた声しか出てこない。
それでも、頭の中で陽祐が倒れた、と理解した時には自然と体が動いた。
「陽祐!!」
ザワザワとして陽祐のまわりで狼狽えているクラスメイトをかき分けて、陽祐の元へ行く。
そして、荒い呼吸を繰り返す陽祐の肩を軽く叩く。
「陽祐、聞こえる!?手、握って。」
陽祐の体を横向きにして支えつつ、手を握って呼びかける。
「っえ、、げほっ、うえ。。」
「っ。よしよし、辛いな。」
軽く、本当に別のことを気にしていたら、気が付かなかっただろう、というくらいの力ではあるが、手を握り返された。
それとほぼ同時で嘔吐してしまったが、意識があるなら、まず安心していいだろう。
苦しそうに嘔吐する姿は見ていて、こちらまで辛くなるようだ。支えているのと手を握っているので、背中や頭を撫でてあげられない。少しでも辛いものを除いてやることが出来ない。それは、酷く悔しくて、精神的に俺がやられそうだ。
誰かが、先生を呼んできてくれたらしく、先生が俺の名前を呼んだ。
「光莉!」
「先生、陽祐が!」
「吐いたのか。」
「どうしよう…!」
「落ち着け。光莉の行動は正しい。保健室に連れていくから、付き添ってくれ。」
「分かりました!」
先生に落ち着け、と言われて初めて自分がかなり焦っていたことに気づいた。
心臓はバクバクとうるさく、手は震えていた。歯もカチカチとなっていて、どちらが病人かわからない、と頭の中でつぶやいた。
途中合流した保健室の先生と体育の先生と、俺で保健室に向かい、陽祐をベッドに寝かせる。
本当なら車椅子でエレベーターなどで移動するところなのだが、陽祐が俺を離さなかった。
ほどこと思えばほどけるほどの力ではあったが、不安や恐怖から逃れるように、俺に縋るように抱きついてくる陽祐を振りほどこうなんて思考には到底ならなかった。結果、俺が陽祐を抱き上げて、移動することとなったのだった。
「陽祐。」
「ひかり……?」
「大丈夫か…?」
「ちょっと、くらく、らするけど、さっき、よりまし、、」
「自覚症状あったのかよ。」
「わかんない、、じぶんでも。。いきなり、めのまえ、まっくらになっ、た。」
「そうか。今は休んでていいよ。」
体育の授業でかいた汗か、倒れた直後にかいた冷や汗か、しっとりと濡れた髪を梳くように、頭を撫でる。
不安は残っているようだが、さっきよりはだいぶ落ち着いた顔で目を閉じた陽祐に、俺自身もほっとした。
「そんなに、心配かけさせないでよ。」
安心して、気が抜けて、無意識に我慢していた俺の不安が、一気に爆発して、涙となって出てきたが、先生方が、それを指摘することはなかった。
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