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またいつものように笑って。
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最近元気がないように見えるから、放課後空き教室で自習をしようと誘ってみた。
いつもこちらまで笑顔になる笑顔で承諾してくれる月弥だが、今日は誘いを断ることこそされなかったが、ニコリと笑ってくれるだけだった。
月弥の表情はこちらの心を強く動かす。
儚く切ないような笑みは俺が苦しくなるようだ。
ーーーーー
「お待たせ、ごめん。」
「いいよ、別に。座りなよ。」
先生に呼び出されたから、先に空き教室に入っておいて欲しいと言われて、その通りにした。いつも使っている空き教室が今日も運良く空いていて、定位置に座ってノートの白紙のページを開いて何をするでもなく月弥を待っていた。
月弥の定位置を指さして促すと、軽くお礼を言って座った。
その声にも少し、曇りがあるように感じる。確信にまでは至れないのが恋人として悔しいところである。それが全てではない。純粋に心配だというのもある。
「何か言われたの?」
「いや。特に重要な話って訳でもないよ。クラスのことを少しね。」
「ふーん。」
彼はクラス委員をしているから、その事だろう。困ったように笑っている。特に重要な話でもない、間違いではないが今の月弥にとっては荷が重いことなのかもしれない。一般的にどうであろうと、その人の、その時の心情などで変わるものだ。
月弥が言ったのは一般的に、の話だろうか。
「悩んでんの?」
「…えっ?」
「なんか、最近元気ないように見えるから。」
「…」
「話、聞くよ?助けになれるとは言いきれないけど。」
どうしようも出来ないこともある。俺がどう動いたってどうにもならないことはこの世には沢山ある。それも、大きなことではない。身近なことでそれはある。
だから、本当に断言はできない。ただそれでも、話して欲しいと思った。
「……うん。ありがとう。大丈夫、、だよ。」
「あまり大丈夫そうには見えないけれど…。俺が聞くと支障が出る話?無理にとは言わないけれど、」
「……いや、、支障は、ない。けど、困らせて、しまう気がするから。」
話すことを、迷っているのだろうか。口を開いては、閉じて、別の言葉で隠してしまう。
それでも俺の事を思ってのことだということもわかる。
泣きそうに口を詰むんで、静かに目を伏せた。
数秒後、目を開いて、目の前に開いた問題集の問題をノートに書き写していく。
下を向いて、必死になにかに耐えるように。
「困るか困らないかは、俺が決める。一旦話してみな?」
「……」
「どうにもならないことはある。けど、状況が変わらなくても、話すことで軽くなることってあるからさ。」
「…なぁ…」
対面では話しづらいかと、月弥の横に椅子を持って行った。
俺に月弥がしてくれたことだ。俺が、二年の時に、部長になって戸惑って、感情がぐちゃぐちゃになった時に、月弥がしてくれたこと。
あの時と同じように、月弥の頭をポンポンと撫でた。俺が、月弥にされて、安心できたから。
小さく発せられた話の始まりは、静かに重く、泣きそうで苦しそうな声をしていた。
「…オレさ、この学校で、、良かったの、かな。」
「うん。」
「大学も、母親と、、相談してさ…。母親の、言うところ、、に行けたよ。先生のおかげでも、あったし、応援してくれた、友達の、、、おかげでもあると、思ってる。とても感謝してる。。もちろん、耀真も、その一人、だよ。。ありがと。」
「…うん」
「自分で言うのも、、どうかと、おもうんだけどさ。、オレも、がんばった、んだ。」
「頑張ってたと思うよ。」
話の内容とは正反対の声色。
月弥の支えになれたことは嬉しいが、そんなに悲しそうな声で言われると、素直に喜んでいいのか迷うところかもしれない。
「、友達も、いい人に、出会えた。。周りは、オレのことを、支えてくれる。。委員としての、仕事も、手伝ってくれる。クラスにオレの、居場所は、常にあった。」
「…」
「なにより、耀真に、であえたし、、友達になって、、恋人にも、なってくれた。男が、恋愛対象な、オレを、受け入れて、くれる人が…。オレを好いて、くれる人が、いるっ。」
「うん。大好きだよ。」
「今、すっごい、、幸せなんだよ。」
苦しい声で、泣いて言う。とても、幸せそうには見えない。お世辞ではない。本心ではあるのだろう。それは何となくわかる。けれど、確実にもうひとつの本心があることもわかる。
「でもさ、、母親がさ。言う、からさ。」
「…なんて?」
「あっちの、、高校だったら、、どうっだったって…。…どうしようもない…。オレは、ここに、入学したし、、母親に無理を、、言った自覚がないわけじゃ、ない。、けど最後に、ここ、受験、、することをさ。母親は認めてくれた。納得、した上でのことだった…はずなんだよ。」
「…そう…。」
「オレは、ここに、、入学できて、本当に、、幸せだと、思ってる…。自分で、納得した、高校で、、自分の友達と、、、バカやったり、してさ。楽しいよ…。」
俺は、母親に言われてこの学校に入学して、行きたかった高校には行けていない。初めは行くのが嫌で、無断遅刻ばかりしてたくらいだ。
それが、月弥と出会って変わったんだ。
月弥がいたから、学校が楽しいと思えたんだ。
入学までの経緯が違う。なんとも言えない。どう声をかけていいのか、正直わからない。
「母親と、仲が悪いわけじゃない……。もう、卒業も近い。。。どう足掻いたって、、これから、転校することなんて、無理なんだよ。。なんで今になって、、あっちの高校のほうが、よかったかも、なんて、言ってくるんだろ…。」
「わからない。俺からはなんとも言えない。けど、月弥が頑張って三年間過ごしたから、今ここにいるのは事実だよ。」
声をかけることが全てではない。
月弥の前に行ってそっと抱きしめた。体勢は正直辛いが、今辛いのは月弥なのだから。
「頑張ったからこそ、迷うこともあるのかもしれない。泣いていいよ。一旦吐き出そ。」
「…、ごめっ、、っ…やっぱ。困らせた…んじゃ…」
「困ってはない。月弥が言ってくれて、嬉しいよ。頼られてる、って思うよ。」
「っ、…。あぁ、ぁああ」
授業料とかを出すのは親だ。だから、その点逆らえない部分はどうしたってある。
一方で俺の、月弥の人生だ。いくら親でも踏み込んで欲しくない部分だってある。
両方わかる。わかっているつもりである。
そして、それ故に悩み苦しむことがあることも。
今はただ、月弥がまたいつものように笑ってくれるように、願う。
いつもこちらまで笑顔になる笑顔で承諾してくれる月弥だが、今日は誘いを断ることこそされなかったが、ニコリと笑ってくれるだけだった。
月弥の表情はこちらの心を強く動かす。
儚く切ないような笑みは俺が苦しくなるようだ。
ーーーーー
「お待たせ、ごめん。」
「いいよ、別に。座りなよ。」
先生に呼び出されたから、先に空き教室に入っておいて欲しいと言われて、その通りにした。いつも使っている空き教室が今日も運良く空いていて、定位置に座ってノートの白紙のページを開いて何をするでもなく月弥を待っていた。
月弥の定位置を指さして促すと、軽くお礼を言って座った。
その声にも少し、曇りがあるように感じる。確信にまでは至れないのが恋人として悔しいところである。それが全てではない。純粋に心配だというのもある。
「何か言われたの?」
「いや。特に重要な話って訳でもないよ。クラスのことを少しね。」
「ふーん。」
彼はクラス委員をしているから、その事だろう。困ったように笑っている。特に重要な話でもない、間違いではないが今の月弥にとっては荷が重いことなのかもしれない。一般的にどうであろうと、その人の、その時の心情などで変わるものだ。
月弥が言ったのは一般的に、の話だろうか。
「悩んでんの?」
「…えっ?」
「なんか、最近元気ないように見えるから。」
「…」
「話、聞くよ?助けになれるとは言いきれないけど。」
どうしようも出来ないこともある。俺がどう動いたってどうにもならないことはこの世には沢山ある。それも、大きなことではない。身近なことでそれはある。
だから、本当に断言はできない。ただそれでも、話して欲しいと思った。
「……うん。ありがとう。大丈夫、、だよ。」
「あまり大丈夫そうには見えないけれど…。俺が聞くと支障が出る話?無理にとは言わないけれど、」
「……いや、、支障は、ない。けど、困らせて、しまう気がするから。」
話すことを、迷っているのだろうか。口を開いては、閉じて、別の言葉で隠してしまう。
それでも俺の事を思ってのことだということもわかる。
泣きそうに口を詰むんで、静かに目を伏せた。
数秒後、目を開いて、目の前に開いた問題集の問題をノートに書き写していく。
下を向いて、必死になにかに耐えるように。
「困るか困らないかは、俺が決める。一旦話してみな?」
「……」
「どうにもならないことはある。けど、状況が変わらなくても、話すことで軽くなることってあるからさ。」
「…なぁ…」
対面では話しづらいかと、月弥の横に椅子を持って行った。
俺に月弥がしてくれたことだ。俺が、二年の時に、部長になって戸惑って、感情がぐちゃぐちゃになった時に、月弥がしてくれたこと。
あの時と同じように、月弥の頭をポンポンと撫でた。俺が、月弥にされて、安心できたから。
小さく発せられた話の始まりは、静かに重く、泣きそうで苦しそうな声をしていた。
「…オレさ、この学校で、、良かったの、かな。」
「うん。」
「大学も、母親と、、相談してさ…。母親の、言うところ、、に行けたよ。先生のおかげでも、あったし、応援してくれた、友達の、、、おかげでもあると、思ってる。とても感謝してる。。もちろん、耀真も、その一人、だよ。。ありがと。」
「…うん」
「自分で言うのも、、どうかと、おもうんだけどさ。、オレも、がんばった、んだ。」
「頑張ってたと思うよ。」
話の内容とは正反対の声色。
月弥の支えになれたことは嬉しいが、そんなに悲しそうな声で言われると、素直に喜んでいいのか迷うところかもしれない。
「、友達も、いい人に、出会えた。。周りは、オレのことを、支えてくれる。。委員としての、仕事も、手伝ってくれる。クラスにオレの、居場所は、常にあった。」
「…」
「なにより、耀真に、であえたし、、友達になって、、恋人にも、なってくれた。男が、恋愛対象な、オレを、受け入れて、くれる人が…。オレを好いて、くれる人が、いるっ。」
「うん。大好きだよ。」
「今、すっごい、、幸せなんだよ。」
苦しい声で、泣いて言う。とても、幸せそうには見えない。お世辞ではない。本心ではあるのだろう。それは何となくわかる。けれど、確実にもうひとつの本心があることもわかる。
「でもさ、、母親がさ。言う、からさ。」
「…なんて?」
「あっちの、、高校だったら、、どうっだったって…。…どうしようもない…。オレは、ここに、入学したし、、母親に無理を、、言った自覚がないわけじゃ、ない。、けど最後に、ここ、受験、、することをさ。母親は認めてくれた。納得、した上でのことだった…はずなんだよ。」
「…そう…。」
「オレは、ここに、、入学できて、本当に、、幸せだと、思ってる…。自分で、納得した、高校で、、自分の友達と、、、バカやったり、してさ。楽しいよ…。」
俺は、母親に言われてこの学校に入学して、行きたかった高校には行けていない。初めは行くのが嫌で、無断遅刻ばかりしてたくらいだ。
それが、月弥と出会って変わったんだ。
月弥がいたから、学校が楽しいと思えたんだ。
入学までの経緯が違う。なんとも言えない。どう声をかけていいのか、正直わからない。
「母親と、仲が悪いわけじゃない……。もう、卒業も近い。。。どう足掻いたって、、これから、転校することなんて、無理なんだよ。。なんで今になって、、あっちの高校のほうが、よかったかも、なんて、言ってくるんだろ…。」
「わからない。俺からはなんとも言えない。けど、月弥が頑張って三年間過ごしたから、今ここにいるのは事実だよ。」
声をかけることが全てではない。
月弥の前に行ってそっと抱きしめた。体勢は正直辛いが、今辛いのは月弥なのだから。
「頑張ったからこそ、迷うこともあるのかもしれない。泣いていいよ。一旦吐き出そ。」
「…、ごめっ、、っ…やっぱ。困らせた…んじゃ…」
「困ってはない。月弥が言ってくれて、嬉しいよ。頼られてる、って思うよ。」
「っ、…。あぁ、ぁああ」
授業料とかを出すのは親だ。だから、その点逆らえない部分はどうしたってある。
一方で俺の、月弥の人生だ。いくら親でも踏み込んで欲しくない部分だってある。
両方わかる。わかっているつもりである。
そして、それ故に悩み苦しむことがあることも。
今はただ、月弥がまたいつものように笑ってくれるように、願う。
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