夏バテと笑顔

トウモロコシ

文字の大きさ
1 / 1

夏バテと笑顔

しおりを挟む
数日前、というか本格的な暑さとなってからずっと体がだるい様な気がしていた。だけど、ここまで酷くなるなんて、想像もしていなかったのだ。多少夏バテしているだけだろう、くらいにしか思っていなかった。

徐々に食欲が落ちてきて、それに逆らうことなく食べられる量だけ食べていたら、どんどん体重が落ちてきて、連日軽い頭痛がするようになった。
職場の人にはバレていないが、さすがに恋人で同居人の晴人にはバレた。


椅子に座って机の上に手を組んでその上に頭をのせる。
心臓の動きに合わせて波打つように痛む頭に出来るだけ刺激を与えないように。
そして、胸のあたりをグルグルと渦巻く不快感も刺激しないように。

「大丈夫?サラダうどんにしてみたけど、食べれそう?」

晴人が二人分の晩御飯を持って台所から出てきた。
体を起こして晴人と目を合わせて「食べる。」と答える。

「無理して食べなくていいからね。」
「うん。」

とは言ったものの、食べなければいけないことはわかっている。
けれど、今無理に食べれば戻してしまう気もしている。
そんな真逆の考えを持ちつつ、晴人が机に置いてくれたあっさりとしたうどんを啜った。

「どう?」
「うん。美味しい。」
「味じゃなくて。いや嬉しいんだけど。」
「…」

食べれる、とも食べられない、とも言えず、ただ微笑んで晴人を見つめた。
それに対して晴人は困ったように笑いながら、それでも笑顔を返してくれた。

少しずつ口に運んでいたうどんも、だんだんペースが落ちてきた。それは自分でもわかるほど。それに晴人が気づいていないはずはない。僕をずっと見て、自分の食事が止まっていることからそれはわかる。
これ以上は僕自身も、無理だと思うし、晴人にそんな顔をして欲しい訳でもない。

「ご馳走様。ごめんね。もう…ちょっと、、」
「いいよ。無理しちゃダメだから。」 

そう言って笑顔を向けてくれる晴人は本当に優しい。

「今日はもう先休んでおく??」
「あはは…今日、も、だけど…。そうする。」

片付けもやってくれるという晴人に、それは申し訳なさすぎるから、と自分の分だけは片付ける。もちろん、捨てるなんて選択肢はないから、キチンとラップをして冷蔵庫に入れる。

晴人のお大事に、という声にもう一度笑顔を向けて、寝室に向かった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

お兄ちゃん大好きな弟の日常

ミクリ21
BL
僕の朝は早い。 お兄ちゃんを愛するために、早起きは絶対だ。 睡眠時間?ナニソレ美味しいの?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...