婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

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30. 辺境伯邸⑤

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 話が終わった後、帰ろうとしていた私はソフィア様に呼び止められていた。


「貴女が嫌でなかったら、ローザニア王国のお話を聞かせてもらえないかしら?」

「大丈夫ですよ。よろしければ、私もグレイヴ竜王国のお話を教えていただきたいです」

「ふふ、ありがとう。お茶の準備をしてくるから、テラスで待っててね」

「分かりましたわ」


 私がそう答えると、ソフィア様は廊下を進んで部屋に入っていった。

 それを見届けてからテラスに向かおうとしたのだけど……私、テラスの場所分からないじゃない。
 気付いた時にはもう遅かったみたいで、周りに場所を聞けるような人はいなかった。

 どうしたらいいかしら?


 私が迷っていると、トレーにお茶とお菓子を乗せたソフィア様が前の扉から出てきた。


「先に行っていて良かったのよ?」

「すみません、場所が分からなくて」


 私がそう説明すると、しまったという顔をするソフィア様。
 教えてなくてごめんなさいと言われたけど、聞き忘れてごめんなさいと返した。


「ところで、なぜソフィア様がお茶の準備をされているのですか?」

「場所の準備をお願いしているからよ。あまり負担はかけたくないもの。
 やれることは自分でやる主義なの」


 元王女のソフィア様だけど、優しそうな雰囲気の通り、使用人に対しても温かいかたみたい。


 お話をしながら1分ほど廊下を進むと、日当たりの良いテラスに使用人さん達が集まって何かをしているのが見えた。


「申し訳ありません、トゲが無いか確認中ですのでもう少しだけお待ちくださいませ」

「分かったわ。慌てなくても大丈夫よ」


 ソフィア様はそう微笑むと、私の方に振り向いてこう口にした。


「待たせてしまうけど大丈夫かしら?」

「はい、大丈夫ですわ」


 私は使用人さんに無理を言ったりするのが元々嫌だから、すぐに頷いた。

 それからすぐに準備が整い、私達はクッションが置かれた木の椅子に腰を下ろした。


「そういえば、ソフィア様はローザニアに来られたことはないのですよね?」

「ええ。機会がなかったのよね。
 この前夫が家督をジークに譲ったから、そろそろ暇になるの。その時に二人で行こうと思ってるわ」

「家督を譲ったっということは、今はジーク様が辺境伯様なのですか?」

「そうよ。家の掟があるから修行が終わるまでは統治に関われないけど、修行が終われば名実共に辺境伯よ。
 お嫁さんがいるのも条件なのよ」


 最後にそう付け加えるソフィア様。
 この言葉を聞いた私が驚いたのは言うまでも無いと思う。


「ジーク様はもう辺境伯様だったのですね……。驚きましたわ」


 それからソフィア様に詳しく説明してもらって、アトランタ家では成人を迎えたら書類上で家督を譲り受け、修行を終えて結婚が決まっているか既にしていれば事実上の当主になるのだと分かった。


「言い忘れていたわ。貴女に一つ提案があるの」


 説明の後に付け加えるソフィア様。


「提案、ですか?」

「ええ、貴女を客人として本邸に迎え入れようと思うの。貴女が良ければ明日にでも泊まれるようにするけど、どうかしら?
 今のままだと、間違いが起きそうで怖いもの」


 確かに、年頃の男女が同じ屋根の下で暮らすのは一般的に問題とされる。
 でも、ティアナさん達が見ててくれているからそこまで気にしなくても良いと思うのよね。

 それに、ジーク様の家から離れたらアルディアさんを抱きしめられなくなる。
 あのもふもふが無くなるのは嫌かも……。


「今のままで十分ですので、大丈夫です。
 それに、私は国を追い出された身です。ソフィア様達にご迷惑をかけてしまうかもしれませんので、お気持ちだけ受け取らせて頂きますね」

「そう……。ジークに何もされていないみたいで安心したわ。
 何か不都合があったら気軽に言ってくれると助かるわ」


ソフィア様はジーク様が私に何かしていないか心配だったのね……。


「はい、ありがとうございます」


 私はそう口にして頭を下げた。

 それから少し雑談を交わした後、二人だけのお茶会はお開きになった。


 帰り際、辺境伯家の方々が外まで見送りに来てくれた。


「お気を付けて~」

「は~い。今日はありがとうございました」


 私がアルディアさんの上から手を振ると、彼が力強く羽ばたいて空へと舞った。
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