ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多

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1. 縁談と私の日常

「アレシア、喜べ! お前の婚約者が決まった!」

 普段は冷たいお父様が喜ぶ姿を見て、私は不安を感じずにはいられなかった。

「お相手はどなたですの?」
「アルバラン公爵令息のクラウス様だ」

 突然すぎる知らせに不安を抱えながら問いかけてみれば、そんな答えが返ってきて。私は頭を抱えた。
 婚約者に示されたクラウス様にはよくない噂がいくつもあったから。

 曰く──

 仮面を付けているのは顔に醜い傷跡があるから。
 醜いのは顔だけではなく性格も。
 婚約者が出来ず、娼館に通っている。
 女性に配慮ができないダメ男。
 しかし、婚約したら爵位を譲られることを約束されている。

 などなど、全てを挙げるには時間がいくらあっても足りない。

 そんなお方が相手だなんて……。

 顔が醜いだけなら良かった。
 でも、性格までもが醜い。これだけは見過ごすことはできなかった。

 今の家族に虐げられる日々の繰り返しになる……そう思ったから。

 そんな時、目の前に婚約を結んだ証の書類が差し出された。
 この婚約をお断りすることは出来ない。そう分かって、泣き出したくなった。

「婚約はもう結ばせてもらった。公爵夫妻も本人も君を歓迎すると言っていた。
 明日、向こうにお邪魔して、ご挨拶をするように。お前は出来損ないなのだからな、早めに準備した方がいいだろう」

 お父様はそんなことを口にして、部屋から出ていった。
 去り際にこんなことを呟きながら。

「これであの娘を追い出せる……」

 キツい性格だった母に似ている私のことを、お父様は良く思っていない。
 お父様の実の娘なのだけど、そんな理由から距離を置かれていた。
 前妻の娘という理由で嫌がらせや暴力を受けていても、知らないフリをされている。

 一方で亡きお母様は教育熱心で、少しサボっていると怒ってくる時もあった。
 でも、それが愛情の証だと分かっていたから、嫌いにはなれなかった。

 暴力を振るうお父様から必死に逃げるお母様の姿も、悲鳴も、私を守ろうとしてくれていたことも。全て覚えている。
 でも、私が10歳の誕生日を迎える前、お母様が病で命を落としてからは思い出す余裕がなくなってしまっていた。

 喪が明ける前にお父様が連れてきた後妻とその娘が執拗に私を攻撃するようになったから。
 彼女達は使用人を巻き込んで、私の食事が用意されないようにしたり、お茶すら飲めないようにしてきた。

 厳しいお母様のことを良く思っていなかった使用人達はそれに協力していて、1週間も食事を用意されない時もあった。
 水は魔法で作り出せたからなんとかなったけど、食事に関してはどうにもならなかった。

 他にも……

「あら、暇そうね? お茶を入れなさい」

 ……こんな風に、使用人の真似事もさせられていた。
 
 最初はもちろん反抗した。でも、そうすればひどい暴力を振るわれる。
 そうと分かってからは、私は大人しく彼女達の言う通りに動いた。

 そうすれば義母も義妹も満足そうにして、酷い暴力を振るってはこなくなった。

 それでも。

「こんなお茶渋くて飲めたものじゃないわ! 本当に貴女って奴隷以下ね!」

 こんな風に、毎日のように暴言をぶつけられていた。

 だから私はこの屋敷から早く抜け出したいと思っていた。
 でも、パーティーのためのドレスは用意してもらえず、招待状も隠されてしまっていて。婚約者が出来ずに諦めていた。

 そして、この日の夜、執事からこんなことを聞かされた。

 この婚約は私を追い出したい父が、評判の良くないアルバラン公爵家のクラウス様との婚約を無理を言ってお願いした。
 上手くいけば、私の実家ということで取引で融通してくれるかもしれない。
 ついでに私が酷い目に遭うのは間違いないから、お母様が生きていた頃の鬱憤を晴らせる。

 最初の2つは政略結婚では良くあることだけど、最後のは……。

 うん、クソ親父。人の心はないのでしょうか?

 
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