水巫女はハレムで溺れる

愛月なみ

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アンナ、召喚(1)

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「あ、これ可愛い」

 無事大学を卒業して就職、もうすぐしたら四月入社の後輩ができる。

 一年頑張った記念に何か……と、買い物へきてみたら、一軒目で早速かわいいピアスを発見した。

 それは一年前、お風呂場で夢というにはあまりにもリアルだったものをみて、寝ぼけて溺れかけてジタバタしたときにどうやらなくしてしまったらしい、小さなハートのピアスに似ていた。

 なくしたものは金だけでできていて、はめていても目立たない小さなものだった。

 今見つけたものは小ぶりだけど、ハートの真ん中に小さな輝きがある。
ダイヤか、ジルコニアか、石がはまっているようだ。

 お値段も普通に買うにはちょっと高いけれど、記念として買うなら十分許容範囲。

「すみませーん。これ、ください」

 他にも見て回ればいいけれど、なくしたピアスは気に入っていたし、ちょうどいい。

 迷うことなく、このピアスを記念の一品にすることにした。


----

「ふふ♪」

 耳元のピアスにふれて、きちんとその場にあることを確認する。

 買ったばかりのピアスをつけているから今日の出社の道のりは気分があがっている。

 いつもは憂鬱な月曜日だけど、今日だけは別。

「やっぱり、買ってよかったなぁ~
ダイヤもついて社会人になったからバージョンアップって感じ!」

 あのなくしたピアスを思うと、同時に生々しい夢のことを思い出してしまった。

 熱い肌をもった精悍なエキゾチックイケメン……

 うあぁー!!!朝から恥ずかしい!!

 ダメだ、ダメだ!考えちゃだめだ!!

 胸中もだえまくっていたら、突然の叫び声と響く音に強制的に意識が夢から外へとむけられた。

 目の前をみると、斜めに傾いたトラックが見えた。

 そこからは、音は消えて、すべてがスローモーションで景色は流れはじめた。

 慌てて走ったり、叫んでいるだろう大きな口を開ける通行人。

 歩道に乗り上げたトラックに多分私は当たったのだろう。

 体が大きく空に飛んだ。

 痛いだろうに、まったく痛みは感じない。

 ただ、目の前に青空が広がっている。

 目の端には紺色のセーラー服のスカートがひらめくのが見えた。

 そのまま、冷たい感触に体が包まれた。

 ぶくぶくと泡が体中にまとわりついては上に立ち上っていくのが見える。

 あぁ、河に落ちたんだな。

 そう思ったとたん、意識が突然消えた。



----


 がばっと起き上がって体を抱きしめる。

 すごく怖い夢だった。

 トラックにはねられて、河に落ちた夢。

 ものすごくリアルだった。

「はぁ」

 大きく息を吐き出したけれど、まだ落ち着かない。
心なしか、息もあがっている気がする。

 でも、何かおかしい。

 夢からさめたのに、私のまわりは私の部屋じゃない。

「あれ?」

 見回してみるとぼんやりとした水色がひろがるばかり。

「まだ夢?」

 よく見たら、自分が寝ていたと思う場所もベッドじゃなくてふわふわとした水色の何か。

 触れるとどこまでも手は沈むのに、たしかにそこに私は座っている。

 思い切って足に力をいれて立ち上がってみる。

 やぱり、床が足に当たった感触はないのに、なぜか立つことができた。

 360度まわりをみまわしてみるけれど、上も下も、右も左もずっと水色。

 一人ぼっち。

 さっきとは別の意味で怖くなった。

「誰かいませんかー」

 誰もいないけど、無音が怖くて声にだしてみた。

「はーい!目がさめました?!」

「ぎゃー!!」

 返事があるとは思っていなかったので思い切り叫んでしまった。

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