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第7話
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ギルドホールは、朝の活気に包まれていた。
リリィは詠唱を口ずさみ、時折レオンに温かい笑みを向けた。
カインは弓の弦を丁寧に磨き、ガルドは盾を手に突きの動作を繰り返していた。
「今日のダンジョンは魔獣の巣窟だ。リリィ、後衛を任せる」
レオンの語気は確信に満ちていた。
次の瞬間、ギルドの扉が勢いよく開いた。
甲冑を身にまとった使者が六人の衛兵を伴い、堂々と踏み込んできた。
「レオン、これは王命だ!」
使者の宣言がホール全体に轟き渡り、仲間たちは息を呑んだ。
「王都へ参内せよ。神の啓示により、そなたに魔王討伐の使命が下された」
レオンの心に激しい衝動が走った。
「魔王……?」
思わず呟いた問いに、使者は無機質な眼差しを向け、羊皮紙を差し出した。
「仲間と共に、今すぐだ」
レオンは仲間を見回した。
カインの額には深い皺が刻まれ、ガルドは唇を固く結んでいる。
リリィが戸惑い、細い指先がそっと動いた。
レオンは短く言い放った。
「行くぞ、みんな」
王城の謁見の間には、凍てつく雰囲気が漂っていた。
石柱が深い影を落とし、大理石の床が足裏を冷たく感じさせた。
王の瞳は奈落のように深く、レオンを捉えていた。
隣には純白のローブを纏った聖女ルミアが立ち、金髪が輝いている。
「レオン、そなたを勇者に任命する。神の啓示により、魔王ヴァルスを討て」
王の宣言は重く、レオンの胸を締めつける。
レオンは一歩進み、力強く答えた。
「承知しました。仲間と共に必ず成し遂げます」
ルミアが囁く。
「勇者よ、使命は重い。私の加護こそがそなたを導く。神殿の秩序を体現し、魔王を討つことで、その力を確かなものとするのだ」
滑らかな口調の奥で、彼女の目つきはレオンの背後をさまよい、不自然な笑みが浮かんだ。
王が続けた。
「聖女ルミアこそ真の加護の源。勇者よ、不要な者は切り捨てろ。リリィを追放せよ」
レオンの拳がわずかにこわばる。
「リリィは仲間だ! そんな命令は受け入れられない!」
衛兵が剣に手をかけ、カインがレオンの肩を掴む。
「王命だ。逆らえば俺たち全員が滅びるぞ」
レオンはリリィに目を向けた。
彼女の表情に悲しみがにじんだ。
「……私、どうすれば」
彼女の細い指先は震えていた。
レオンの胸が強く締め付けられた。
「リリィ、すまない……出て行ってくれ」
彼女はうつむき、唇を噛んだ。
その時、レオンの心の奥で何かが砕け、拳が固く握られる。
これから起こる悲劇を、彼はまだ知らなかった。
そして、運命の歯車は静かに、だが確実に回り始めていた。
リリィは詠唱を口ずさみ、時折レオンに温かい笑みを向けた。
カインは弓の弦を丁寧に磨き、ガルドは盾を手に突きの動作を繰り返していた。
「今日のダンジョンは魔獣の巣窟だ。リリィ、後衛を任せる」
レオンの語気は確信に満ちていた。
次の瞬間、ギルドの扉が勢いよく開いた。
甲冑を身にまとった使者が六人の衛兵を伴い、堂々と踏み込んできた。
「レオン、これは王命だ!」
使者の宣言がホール全体に轟き渡り、仲間たちは息を呑んだ。
「王都へ参内せよ。神の啓示により、そなたに魔王討伐の使命が下された」
レオンの心に激しい衝動が走った。
「魔王……?」
思わず呟いた問いに、使者は無機質な眼差しを向け、羊皮紙を差し出した。
「仲間と共に、今すぐだ」
レオンは仲間を見回した。
カインの額には深い皺が刻まれ、ガルドは唇を固く結んでいる。
リリィが戸惑い、細い指先がそっと動いた。
レオンは短く言い放った。
「行くぞ、みんな」
王城の謁見の間には、凍てつく雰囲気が漂っていた。
石柱が深い影を落とし、大理石の床が足裏を冷たく感じさせた。
王の瞳は奈落のように深く、レオンを捉えていた。
隣には純白のローブを纏った聖女ルミアが立ち、金髪が輝いている。
「レオン、そなたを勇者に任命する。神の啓示により、魔王ヴァルスを討て」
王の宣言は重く、レオンの胸を締めつける。
レオンは一歩進み、力強く答えた。
「承知しました。仲間と共に必ず成し遂げます」
ルミアが囁く。
「勇者よ、使命は重い。私の加護こそがそなたを導く。神殿の秩序を体現し、魔王を討つことで、その力を確かなものとするのだ」
滑らかな口調の奥で、彼女の目つきはレオンの背後をさまよい、不自然な笑みが浮かんだ。
王が続けた。
「聖女ルミアこそ真の加護の源。勇者よ、不要な者は切り捨てろ。リリィを追放せよ」
レオンの拳がわずかにこわばる。
「リリィは仲間だ! そんな命令は受け入れられない!」
衛兵が剣に手をかけ、カインがレオンの肩を掴む。
「王命だ。逆らえば俺たち全員が滅びるぞ」
レオンはリリィに目を向けた。
彼女の表情に悲しみがにじんだ。
「……私、どうすれば」
彼女の細い指先は震えていた。
レオンの胸が強く締め付けられた。
「リリィ、すまない……出て行ってくれ」
彼女はうつむき、唇を噛んだ。
その時、レオンの心の奥で何かが砕け、拳が固く握られる。
これから起こる悲劇を、彼はまだ知らなかった。
そして、運命の歯車は静かに、だが確実に回り始めていた。
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