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第5話 いつの間にか魔王の魂が入っていた件 1/3
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1
追放決定を言い渡された直後――。
俺は特に追放とは関係のないピンチに陥っていた。
浴室に一人置き去りにされたのだ。
浴室の中には、タオルの一枚もない。
それどころか、身体を隠せるようなものも一切なかった。
なんという徹底ぶりだろうか。
いやいや、感心している場合じゃない。
これから、俺はどうすればいいというのだ!
助けを呼んだらあらぬ誤解をされてしまうことになるだろう。
この家において、俺の信用は紙よりも薄いのだ。
とすれば、出来ることは一つ。
誰もいないタイミングを見計らって、自分の部屋まで急いで戻ること。
隠密ミッションである。自宅で。
追放が決定された直後にやることがこれか……。
俺は周囲に誰もいないことを確認しながら、こっそりと廊下を歩く。
冷たい石造りの床に、裸足の足音はほとんど響かない。
だからと言って、油断をすることは出来ない。
使用人たちの声や足音、息遣いなどから気配を探る。
そして、彼らと出くわさないよう注意を払いながら移動する。
こういうこそこそとした動きは、得意なのだ。
その特技が十分に発揮されたのか――。
俺は無事に部屋の前まで辿り着くことが出来た。
ここまで、一人の使用人とも出会わなかった。
本来なら、それをおかしいと思うべきだったのだろう。
だが、この時の俺は油断していた。
そして、安堵とともにドアを開け――。
部屋の中には、アンダーウッド家の使用人が集まっていた。
男女を問わず、五人ほど。
騒いでいたため、ドアが開いたことにも気づいてないらしい。
彼らは、俺の私物を集めてカバンに詰め込んでいた。
学院行きのための準備をしてくれているのだろう。
そう思ったのだが――。
「ほれ、ネク様のパンツだぞ」「それ、放り投げるのやめてくださいよ?」「うわっ、投げた!?」「ネク菌が付着しちゃった!?」「えんがちょ、えんがちょ」
彼らは、俺の服を汚物でも摘まむかのように持ち、投げ合っていた。
どうやら俺は使用人たちにここまで嫌われていたらしい。
あるいは、馬鹿にされていたのか。
これまでは、それを表に出さないようにしていたのだろう。
アンダーウッド家から追放された今、最低限の敬意すら払われなくなったわけだ。
俺は頭に血がのぼるのを感じた。
そして、感情のままに使用人たちを責め立てた。
「お前たち――ここで何をしている?」
「ネク様……。いえ、あの、これはデレク様の命令で――」
女性使用人が、視線を泳がせながら答える。
その手は、俺のパンツを汚物のように摘まんでいる。
なんだか、少しだけ興奮を覚え――いや、なんでもない。
「衣服を汚物のように扱えという命令があったのか?」
「それよりも、ネク様、その姿は――」
「お前たち、今すぐこの部屋から出ていけ!」
「いや、しかし」
「出て行けと言った。それに従わないというのなら――今の俺は何をするか分からないぞ?」
俺は使用人たちを睨みつける。
そして、一歩ずつ奴らに近づいていく。
使用人たちは、それから逃れるべく後ずさった。
「く、来るな」
「来るな? アンダーウッド家からの追放が決定されたとたんに、その態度か」
「だから――」
「この無礼者どもが!」
俺はそう言うと、部屋にいた使用人たちに襲い掛かった。
すると、部屋の中は阿鼻叫喚の渦に包まれる。
「きゃーーーー!?」「ネク様ご乱心だー!」「割といつも通りじゃね?」「変態よ! 変態が本性を現したわ!」「いや、だからいつも通りじゃね?」「マッパマンが襲ってきたぞ!」「全員、一旦部屋を出ろ!」
マッパマン? あ、やべ。
怒りのあまり、自分が服を着ていなかったことを忘れていた。
そりゃあ、マッパの男が迫ってきたら逃げるよな。
使用人たちは、蜘蛛の子を散らしたかのように逃げて行った。
というか、俺は何をしているんだ?
あちらも動揺しただろうが、俺はもっと動揺していた。
意味不明にも程がある。
とにかく、今は少し落ち着こう。
服を着て少しすれば、何とかなるはずだ。
そのはずなのだが――。
「あれ?」
突然、体に力が入らなくなった。
違う。体の感覚を失うほどまでの激痛が俺を襲ったのだ。
体が焼けるように熱い。
全身から汗が噴き出ている。
立っていることが出来ず、床に膝をつく。
「ぐ、ぐあああ……っ!?」
全身に痛みと怖気が広がる。
身体が熱いのに寒さを感じる。
体が崩壊してから再構築されるような訳の分からない感覚。
それが延々と繰り返され、俺に地獄の苦しみを与えた。
その苦しみがあまりに酷いため、動ける気がしない。
せめて服を着ようとは思ったが、それも出来ない。
もしかして、俺はこのままここで死ぬのか。
なにも成し遂げることが出来ないまま。
マッパマンのまま死ぬのか。
死ぬなら、もう少しまともな姿でいたかった。
そう考えたのを最後に、俺は意識を失った。
2
「おい、起きろ」
気が付くと、俺は真っ白な空間にいた。
どこかで見たことがあるような光景だ。
不思議と安心感を与えてくれるような空間。
突然の展開ではあるが、俺は焦る気にはならなかった。
だが、安心感があったのは――この空間に対してのみだ。
この空間内には、安心感とは無縁の『異物』があった。
そう――。
目の前には、裸の美女がいた。
一糸まとわぬ裸体だ。
服という概念をどこかに忘れてきたかの如く、堂々たる様で。
仰向けに倒れている俺の上に立っていた。
俺の顔をまたぐようにして、腕組みをした状態だ。
そのおかげで、とてつもない大迫力が俺の目の前にはあった。
年齢は20代前半くらいだろうか。
張りのある大きなおっぱいが突き出ており、その頂点にはピンク色の乳首が存在感を示していた。
股の間もはっきりと見えており、足を開いていることでその奥の部分も少しだけ見えてしまっている。
だが、それよりも大きな特徴は、その相貌の美しさだった。
顔のパーツが、一つ一つ微調整でもしたかのように整っている。
ややキツめの目つき。
ほんのりピンク色の唇。
腰まで伸びた黄金色に輝くストレートの髪。
ただ見ただけで吸い込まれそうになるほどの美貌がそこにはあった。
まさか、この女性の正体は――。
「イヴ……?」
「違うのう。イヴというのは、お主の妹の少女であろう? その少女はこのようなセクシーボディをしておったか?」
そんなはずはない。
イヴの身体は、未だ成長過程。
対して、目の前の美女の身体は十分に成長している。
成熟していると言ってもいい。
だからこそ、俺はじっくりとその肉体を観察しているのだ。
そのあまりに堂々とした様に――。
「……成程。そういう性癖の痴女か」
俺がうっかりそう言うと、その痴女は俺を踏み抜こうとした。
俺はすんでのところでそれを避けて、立ち上がる。
「誰が痴女じゃ! ぶっ殺すぞ、この痴れ者めが!」
目の前の美女は、何故かひどく怒っていた。
しかし、裸の美女が自分を見ろと言っていたのだ。
痴女以外の何物でもあるまい。
「ところで、お前誰だ?」
「分からぬか?」
「全然分からないけど。どこかで会ったことがあるか?」
「いや、おそらくないじゃろうな」
「だったら、知ってるわけないだろ。痴女なうえに、自意識過剰とか、笑うしかないよな」
「な……っ」
女は不服そうにしていた。
本当に有名人か何かなのだろうか。
「ま、まぁ、よいじゃろう。お前は誰かと聞かれたら、答えてやるのが世の情けというものじゃ。とくと聞くがよい! わが名はソフィー! ある時は数多の人間に恐れられる漆黒の魔女! そして、ある時はその美しさで老若男女を問わず骨抜きにする魔性の女! しかして、その実態は――魔界を統べる魔王グレゴールであるぞ!」
女性は、尊大に、扇ぐような姿勢で言った。
そのせいで、色々と丸見えだが、気にならないのだろうか。
まぁ、どうせ夢だからどうでもいいけど。
追放決定を言い渡された直後――。
俺は特に追放とは関係のないピンチに陥っていた。
浴室に一人置き去りにされたのだ。
浴室の中には、タオルの一枚もない。
それどころか、身体を隠せるようなものも一切なかった。
なんという徹底ぶりだろうか。
いやいや、感心している場合じゃない。
これから、俺はどうすればいいというのだ!
助けを呼んだらあらぬ誤解をされてしまうことになるだろう。
この家において、俺の信用は紙よりも薄いのだ。
とすれば、出来ることは一つ。
誰もいないタイミングを見計らって、自分の部屋まで急いで戻ること。
隠密ミッションである。自宅で。
追放が決定された直後にやることがこれか……。
俺は周囲に誰もいないことを確認しながら、こっそりと廊下を歩く。
冷たい石造りの床に、裸足の足音はほとんど響かない。
だからと言って、油断をすることは出来ない。
使用人たちの声や足音、息遣いなどから気配を探る。
そして、彼らと出くわさないよう注意を払いながら移動する。
こういうこそこそとした動きは、得意なのだ。
その特技が十分に発揮されたのか――。
俺は無事に部屋の前まで辿り着くことが出来た。
ここまで、一人の使用人とも出会わなかった。
本来なら、それをおかしいと思うべきだったのだろう。
だが、この時の俺は油断していた。
そして、安堵とともにドアを開け――。
部屋の中には、アンダーウッド家の使用人が集まっていた。
男女を問わず、五人ほど。
騒いでいたため、ドアが開いたことにも気づいてないらしい。
彼らは、俺の私物を集めてカバンに詰め込んでいた。
学院行きのための準備をしてくれているのだろう。
そう思ったのだが――。
「ほれ、ネク様のパンツだぞ」「それ、放り投げるのやめてくださいよ?」「うわっ、投げた!?」「ネク菌が付着しちゃった!?」「えんがちょ、えんがちょ」
彼らは、俺の服を汚物でも摘まむかのように持ち、投げ合っていた。
どうやら俺は使用人たちにここまで嫌われていたらしい。
あるいは、馬鹿にされていたのか。
これまでは、それを表に出さないようにしていたのだろう。
アンダーウッド家から追放された今、最低限の敬意すら払われなくなったわけだ。
俺は頭に血がのぼるのを感じた。
そして、感情のままに使用人たちを責め立てた。
「お前たち――ここで何をしている?」
「ネク様……。いえ、あの、これはデレク様の命令で――」
女性使用人が、視線を泳がせながら答える。
その手は、俺のパンツを汚物のように摘まんでいる。
なんだか、少しだけ興奮を覚え――いや、なんでもない。
「衣服を汚物のように扱えという命令があったのか?」
「それよりも、ネク様、その姿は――」
「お前たち、今すぐこの部屋から出ていけ!」
「いや、しかし」
「出て行けと言った。それに従わないというのなら――今の俺は何をするか分からないぞ?」
俺は使用人たちを睨みつける。
そして、一歩ずつ奴らに近づいていく。
使用人たちは、それから逃れるべく後ずさった。
「く、来るな」
「来るな? アンダーウッド家からの追放が決定されたとたんに、その態度か」
「だから――」
「この無礼者どもが!」
俺はそう言うと、部屋にいた使用人たちに襲い掛かった。
すると、部屋の中は阿鼻叫喚の渦に包まれる。
「きゃーーーー!?」「ネク様ご乱心だー!」「割といつも通りじゃね?」「変態よ! 変態が本性を現したわ!」「いや、だからいつも通りじゃね?」「マッパマンが襲ってきたぞ!」「全員、一旦部屋を出ろ!」
マッパマン? あ、やべ。
怒りのあまり、自分が服を着ていなかったことを忘れていた。
そりゃあ、マッパの男が迫ってきたら逃げるよな。
使用人たちは、蜘蛛の子を散らしたかのように逃げて行った。
というか、俺は何をしているんだ?
あちらも動揺しただろうが、俺はもっと動揺していた。
意味不明にも程がある。
とにかく、今は少し落ち着こう。
服を着て少しすれば、何とかなるはずだ。
そのはずなのだが――。
「あれ?」
突然、体に力が入らなくなった。
違う。体の感覚を失うほどまでの激痛が俺を襲ったのだ。
体が焼けるように熱い。
全身から汗が噴き出ている。
立っていることが出来ず、床に膝をつく。
「ぐ、ぐあああ……っ!?」
全身に痛みと怖気が広がる。
身体が熱いのに寒さを感じる。
体が崩壊してから再構築されるような訳の分からない感覚。
それが延々と繰り返され、俺に地獄の苦しみを与えた。
その苦しみがあまりに酷いため、動ける気がしない。
せめて服を着ようとは思ったが、それも出来ない。
もしかして、俺はこのままここで死ぬのか。
なにも成し遂げることが出来ないまま。
マッパマンのまま死ぬのか。
死ぬなら、もう少しまともな姿でいたかった。
そう考えたのを最後に、俺は意識を失った。
2
「おい、起きろ」
気が付くと、俺は真っ白な空間にいた。
どこかで見たことがあるような光景だ。
不思議と安心感を与えてくれるような空間。
突然の展開ではあるが、俺は焦る気にはならなかった。
だが、安心感があったのは――この空間に対してのみだ。
この空間内には、安心感とは無縁の『異物』があった。
そう――。
目の前には、裸の美女がいた。
一糸まとわぬ裸体だ。
服という概念をどこかに忘れてきたかの如く、堂々たる様で。
仰向けに倒れている俺の上に立っていた。
俺の顔をまたぐようにして、腕組みをした状態だ。
そのおかげで、とてつもない大迫力が俺の目の前にはあった。
年齢は20代前半くらいだろうか。
張りのある大きなおっぱいが突き出ており、その頂点にはピンク色の乳首が存在感を示していた。
股の間もはっきりと見えており、足を開いていることでその奥の部分も少しだけ見えてしまっている。
だが、それよりも大きな特徴は、その相貌の美しさだった。
顔のパーツが、一つ一つ微調整でもしたかのように整っている。
ややキツめの目つき。
ほんのりピンク色の唇。
腰まで伸びた黄金色に輝くストレートの髪。
ただ見ただけで吸い込まれそうになるほどの美貌がそこにはあった。
まさか、この女性の正体は――。
「イヴ……?」
「違うのう。イヴというのは、お主の妹の少女であろう? その少女はこのようなセクシーボディをしておったか?」
そんなはずはない。
イヴの身体は、未だ成長過程。
対して、目の前の美女の身体は十分に成長している。
成熟していると言ってもいい。
だからこそ、俺はじっくりとその肉体を観察しているのだ。
そのあまりに堂々とした様に――。
「……成程。そういう性癖の痴女か」
俺がうっかりそう言うと、その痴女は俺を踏み抜こうとした。
俺はすんでのところでそれを避けて、立ち上がる。
「誰が痴女じゃ! ぶっ殺すぞ、この痴れ者めが!」
目の前の美女は、何故かひどく怒っていた。
しかし、裸の美女が自分を見ろと言っていたのだ。
痴女以外の何物でもあるまい。
「ところで、お前誰だ?」
「分からぬか?」
「全然分からないけど。どこかで会ったことがあるか?」
「いや、おそらくないじゃろうな」
「だったら、知ってるわけないだろ。痴女なうえに、自意識過剰とか、笑うしかないよな」
「な……っ」
女は不服そうにしていた。
本当に有名人か何かなのだろうか。
「ま、まぁ、よいじゃろう。お前は誰かと聞かれたら、答えてやるのが世の情けというものじゃ。とくと聞くがよい! わが名はソフィー! ある時は数多の人間に恐れられる漆黒の魔女! そして、ある時はその美しさで老若男女を問わず骨抜きにする魔性の女! しかして、その実態は――魔界を統べる魔王グレゴールであるぞ!」
女性は、尊大に、扇ぐような姿勢で言った。
そのせいで、色々と丸見えだが、気にならないのだろうか。
まぁ、どうせ夢だからどうでもいいけど。
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