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8. 悪役令嬢リーリア・サルバトレー③
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「……なるほど。そこまで詳しく話せるなら貴女がベネット・ローガン公爵令嬢であると信じるしかなさそうですね」
リチャードは私が自己紹介をするまでは私を睨みつけるばかりだったが、その後ベネットに纏わる色んな質問をしては私の答えを聞き、まだ警戒は完全には解けてはいないが、少しだけ穏やかな表情をして視線を合わせてくれている。
(本来の性格はきっと穏やかな人なのね)
今の彼を見ているとゲームでヒロインとリチャードが打ち解け、更には悪役令嬢を断罪するのに協力した後の話を思い出す。
リーリアを断罪した卒業パーティーの会場から出たリチャードとヒロイン。
2人とも無言で歩くがヒロインが立ち止まり、リチャードに問いかける。
「何故、私の味方になってくれたの?」
という言葉にリチャードも立ち止まり、ヒロインに申し訳なさそうに応えるのだ。
「姉上の間違いを血の繋がった僕が正せねばならないと気が付いたのです」
そして俯くリチャードの手をヒロインは取って、
「私のせいで重い決断をさせてしまってごめんなさい。リーリア様にあそこまでさせてしまった理由は私にもあるから……リチャード、貴方は自分を責めないで」
とリチャードを励ます。
彼はヒロインの優しさに感銘を受け、
「ジェシカ嬢、血は繋がっておりませんが貴女を"姉上"とお呼びしてもいいですか?」
「はい……でも私はずっと貴方を弟のように思っていたわ」
そして姉弟愛ルートを迎える。
その時のリチャードの表情は暖かくて無邪気で年相応だった。
攻略した時は胸がジーンとしてほっこりしたけど。
──思い出してみたら、ヒロインの言い方にモヤモヤする。
『リーリア様にあそこまでさせてしまった理由は私にもあるから』
このゲームをプレイしていた私が言えた事ではないが、リーリアを怒らせてしまった理由はヒロインが"婚約者のいる令息達に粉おかけまくった"のが理由だろう。
……リーリアにも断罪される理由はちゃんとあるが。
(だからこそ、私がリーリアならそんな間違いを起こしたりしないわ!)
リチャードにも媚びを売るしかない。
「リチャード様が私の話を信じてくれて嬉しいです」
「……実は姉上が誕生日を迎えられるまで行動が怪しかったので、日記をこっそり読んでいたのです」
リチャードは申し訳なさそうに続ける。
「日記を読んでから何を企んでいるのかますます分からなくなり、悩んでいる内に湖で溺れてしまわれました」
「そして、目を覚ました私が"記憶喪失"だと聞いて私がリーリア嬢でないことに気が付いたのですね?」
「はい……記憶喪失にしては淡々としていて、余裕もありそうだったので怪しく思いました。それで姉上の『ヒロインに成り代わる』という文が真っ先に思い浮かびました」
「貴方の事情を教えてくれてありがとう、リチャード様」
リチャードの目を見たままお礼を言うと、彼は視線を逸らしてしまった。
「……いえ、こちらこそ気絶までさせてしまい申し訳ありませんでした。また、姉上の悪巧みにより安らかに眠っていた魂を呼び起こしてしまったことは謝罪するだけでは済まないことです」
(リチャードは私がベネットだと本当に信じてくれたみたいだけど、魂の保証は神以外誰も証明できないのになんで信じてくれたんだろう……)
リチャードってこんな信じやすい性格だったけ?
心配になってきた。
「リチャード様、私のことを信じて頂けて嬉しいのですが、1回話しただけなのにこんなに信じていたらこの先様々な人に騙されますよ?」
自分は信じて欲しいのに相手には『信じるな』なんて矛盾してるな……とは思ったものの、15歳の少年が打ち解けた瞬間に無防備になるのが凄い心配で堪らなかったので忠告をした。
私の忠告にリチャードは笑った。
「嘘を付いている人はそんなことを言わないので、僕は貴女に騙されているとは思いませんよ」
「私も自分が言っていることはおかしいとは分かっているのよ?……でも」
「忠告、感謝しております……その、あまり僕の心配をしてくれる人はいなかったから驚いてしまって」
リチャードは照れ笑いをしていた。
(……私が彼よりも驚いているわ)
1週間前よりもコロコロと変わる表情にビックリした。
「ベネット嬢の願いごととは別に、僕からお願いを叶えて下されば1つと言わず貴女の願いを全て叶えます」
「……えっ?」
(……私の全ての願いを叶えてくれるなら、少なくともリチャードからの断罪は防ぐことは出来るのかしら?)
それでもリチャードのお願いの内容によっては、私が不利な状況になるかもしれない。
「……叶えられるか分からないけれど、リチャード様のお願いを聞いてから判断してもいいですか?」
「はい、もちろんです。僕の願いは……貴女がどのような道に進むにしろ、皇太子殿下の婚約者として振舞って欲しいのです」
……意外だ。
もっと無理難題を言われると思っていたのに、意外にも当然のことを言われた。
(リーリアに皇太子殿下の婚約者としての器がないから心配なのかしら?)
「それは当然のことなので受け入れます……その願いを聞く代わりにもし皇太子殿下が私にあらぬ疑いをかけた時には、私の味方になって頂きたいのです」
「ありがとうございます。何があっても僕は貴女の身の潔白を証明するために動きます」
先程のリチャードの言葉通り、私のお願いを簡単に聞いてくれた。
──けど、私には思うところがあった。
「……あと、私のお願いを全て叶えてくれるのは有難いのですが、それでは不公平すぎるので私とリチャード様で交互にお願いをして望みを叶えていくのはいかがですか?」
確かにリチャードの願いを1つ叶えただけで私のお願いを全て叶えてくれるという提案は魅惑的だ。
(……でも、それを受け入れることによって私とリチャードの中に亀裂が入るかもしれない)
お互いに頼り合うことでより親しくなれるだろう。
「……やはり、貴女は僕と似ていますね。計算して行動しているけどそのことに対して、少なからず罪悪感を抱いてますよね?」
哀れむような視線を向け、そのまま続けた。
「それでも僕は貴女と"仲良く"なりたいのでその提案を有難く受けさせて頂きます」
リチャードは私が自己紹介をするまでは私を睨みつけるばかりだったが、その後ベネットに纏わる色んな質問をしては私の答えを聞き、まだ警戒は完全には解けてはいないが、少しだけ穏やかな表情をして視線を合わせてくれている。
(本来の性格はきっと穏やかな人なのね)
今の彼を見ているとゲームでヒロインとリチャードが打ち解け、更には悪役令嬢を断罪するのに協力した後の話を思い出す。
リーリアを断罪した卒業パーティーの会場から出たリチャードとヒロイン。
2人とも無言で歩くがヒロインが立ち止まり、リチャードに問いかける。
「何故、私の味方になってくれたの?」
という言葉にリチャードも立ち止まり、ヒロインに申し訳なさそうに応えるのだ。
「姉上の間違いを血の繋がった僕が正せねばならないと気が付いたのです」
そして俯くリチャードの手をヒロインは取って、
「私のせいで重い決断をさせてしまってごめんなさい。リーリア様にあそこまでさせてしまった理由は私にもあるから……リチャード、貴方は自分を責めないで」
とリチャードを励ます。
彼はヒロインの優しさに感銘を受け、
「ジェシカ嬢、血は繋がっておりませんが貴女を"姉上"とお呼びしてもいいですか?」
「はい……でも私はずっと貴方を弟のように思っていたわ」
そして姉弟愛ルートを迎える。
その時のリチャードの表情は暖かくて無邪気で年相応だった。
攻略した時は胸がジーンとしてほっこりしたけど。
──思い出してみたら、ヒロインの言い方にモヤモヤする。
『リーリア様にあそこまでさせてしまった理由は私にもあるから』
このゲームをプレイしていた私が言えた事ではないが、リーリアを怒らせてしまった理由はヒロインが"婚約者のいる令息達に粉おかけまくった"のが理由だろう。
……リーリアにも断罪される理由はちゃんとあるが。
(だからこそ、私がリーリアならそんな間違いを起こしたりしないわ!)
リチャードにも媚びを売るしかない。
「リチャード様が私の話を信じてくれて嬉しいです」
「……実は姉上が誕生日を迎えられるまで行動が怪しかったので、日記をこっそり読んでいたのです」
リチャードは申し訳なさそうに続ける。
「日記を読んでから何を企んでいるのかますます分からなくなり、悩んでいる内に湖で溺れてしまわれました」
「そして、目を覚ました私が"記憶喪失"だと聞いて私がリーリア嬢でないことに気が付いたのですね?」
「はい……記憶喪失にしては淡々としていて、余裕もありそうだったので怪しく思いました。それで姉上の『ヒロインに成り代わる』という文が真っ先に思い浮かびました」
「貴方の事情を教えてくれてありがとう、リチャード様」
リチャードの目を見たままお礼を言うと、彼は視線を逸らしてしまった。
「……いえ、こちらこそ気絶までさせてしまい申し訳ありませんでした。また、姉上の悪巧みにより安らかに眠っていた魂を呼び起こしてしまったことは謝罪するだけでは済まないことです」
(リチャードは私がベネットだと本当に信じてくれたみたいだけど、魂の保証は神以外誰も証明できないのになんで信じてくれたんだろう……)
リチャードってこんな信じやすい性格だったけ?
心配になってきた。
「リチャード様、私のことを信じて頂けて嬉しいのですが、1回話しただけなのにこんなに信じていたらこの先様々な人に騙されますよ?」
自分は信じて欲しいのに相手には『信じるな』なんて矛盾してるな……とは思ったものの、15歳の少年が打ち解けた瞬間に無防備になるのが凄い心配で堪らなかったので忠告をした。
私の忠告にリチャードは笑った。
「嘘を付いている人はそんなことを言わないので、僕は貴女に騙されているとは思いませんよ」
「私も自分が言っていることはおかしいとは分かっているのよ?……でも」
「忠告、感謝しております……その、あまり僕の心配をしてくれる人はいなかったから驚いてしまって」
リチャードは照れ笑いをしていた。
(……私が彼よりも驚いているわ)
1週間前よりもコロコロと変わる表情にビックリした。
「ベネット嬢の願いごととは別に、僕からお願いを叶えて下されば1つと言わず貴女の願いを全て叶えます」
「……えっ?」
(……私の全ての願いを叶えてくれるなら、少なくともリチャードからの断罪は防ぐことは出来るのかしら?)
それでもリチャードのお願いの内容によっては、私が不利な状況になるかもしれない。
「……叶えられるか分からないけれど、リチャード様のお願いを聞いてから判断してもいいですか?」
「はい、もちろんです。僕の願いは……貴女がどのような道に進むにしろ、皇太子殿下の婚約者として振舞って欲しいのです」
……意外だ。
もっと無理難題を言われると思っていたのに、意外にも当然のことを言われた。
(リーリアに皇太子殿下の婚約者としての器がないから心配なのかしら?)
「それは当然のことなので受け入れます……その願いを聞く代わりにもし皇太子殿下が私にあらぬ疑いをかけた時には、私の味方になって頂きたいのです」
「ありがとうございます。何があっても僕は貴女の身の潔白を証明するために動きます」
先程のリチャードの言葉通り、私のお願いを簡単に聞いてくれた。
──けど、私には思うところがあった。
「……あと、私のお願いを全て叶えてくれるのは有難いのですが、それでは不公平すぎるので私とリチャード様で交互にお願いをして望みを叶えていくのはいかがですか?」
確かにリチャードの願いを1つ叶えただけで私のお願いを全て叶えてくれるという提案は魅惑的だ。
(……でも、それを受け入れることによって私とリチャードの中に亀裂が入るかもしれない)
お互いに頼り合うことでより親しくなれるだろう。
「……やはり、貴女は僕と似ていますね。計算して行動しているけどそのことに対して、少なからず罪悪感を抱いてますよね?」
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「それでも僕は貴女と"仲良く"なりたいのでその提案を有難く受けさせて頂きます」
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