今度こそ長生きしたいけど、憑依先が悪役令嬢とは聞いてませんっ!?

竹林 花奏(たけばやし かなで)

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13. 皇后陛下主催のお茶会②

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──ガーデンパーティー当日。


「リーリアお嬢様とリチャード様。今から宮廷へと出発します」


御者からの掛け声で馬車が走り出す。


「……姉上、今日は僕が皇太子殿下の居る場所までエスコートをするので安心して下さいね」


反対側に座るリチャードの顔を見て昨日の忠告を思い出す。


(……リチャードは私を皇太子殿下から守るために宮廷までエスコートをすると言ってくれたのかしら?)


それならそうと言ってくれたらいいのに。


でも理由を聞いてしまうと彼は恥ずかしがるか私に気を使って本当の理由を隠してしまう。


「ありがとう」


だからお礼だけ伝えることにした。




































「気をつけて降りてください」


宮廷に到着して馬車から降りると先に降りていたリチャードから手を差し伸べられた。


「うん」


リチャードの手を取り、馬車から降りた。


先に来ていた貴族達のひそひそ声が聞こえてくる。


(いくらリーリアの性格が悪いからってあからさま過ぎじゃない?)


「……?」


ふとリチャードを見ると貴族たちを見る瞳がいつもと違う。


睨みつける目には僅かに殺意も感じられた。


「リチャード……私は笑ってる素のリチャードが好きよ。だから笑って?」


私のために貴族たちに牽制してくれたのがわかった。


けれど、私は私より若い少年――いや、身体の年齢的には同い歳なんだけれど精神年齢は私の方が歳上だから助けらることに抵抗があるあるし、何より彼の年相応な可愛らしい笑顔が好きなのだ。


「姉上……わかりました」


リチャードはぎこちなくだが微笑み返してくれる。


2人で宮廷に入ると沢山の使用人や貴族たちに頭を下げられる。


(ベネットの時は当たり前の光景だと勘違いしていたから何とも思わなかったけど、美緒として平凡な生活を送っていた記憶を思い出すと彼らが私に頭を下げてくれること自体が凄いことなのよね)


彼等は左右に寄って道を開き、私たちが通り過ぎていくのを待っている。


そうやって何十人の人々の間を抜けると行き止まりに大きな扉があった。


私はベネットの時に何度か宮廷の中に入ったことがあるのでこの大きな扉の先には何があるのか知っている。


「サルバトレー公爵家のリチャードとリーリアだ」


リチャードは自分と私の名前を大きな扉の前に立っている騎士に伝えた。


「ようこそお越しくださいました!どうぞお通り下さい!」


扉が開くまで少し待ったが騎士たちの威勢のいい声に頷き、中へと入った。


部屋の中には、ヘーリオス帝国の皇帝陛下と皇后陛下、皇太子であるクリストファーと第二皇子のウィリアムが座って優雅に紅茶を飲んでいる。


「やあ!リーリアにリチャード。君たちが来るのを待っていたよ」


手を上げ、私たちに最初に声を掛けたのは皇帝陛下だ。


そう、この部屋は皇族と皇族により招かれた貴族しか入ることを許されないティールームだ。


……皆、変わらず元気そうだ。


「帝国の太陽、守護する国母、帝国に光をもたらす皇子にご挨拶申し上げます」


リチャードの掛け声を合図に私も頭を下げた。


ちなみにこの挨拶は『帝国の太陽』が皇帝陛下、『守護する国母』は皇后陛下、『光をもたらす皇子』は皇太子殿下と第二皇子を意味する挨拶だ。


今はこの場に居ないが皇女キャロラインへの挨拶は皇子たちと同じ『光をもたらす皇子、皇女にご挨拶申し上げます』と結ばれる。


この挨拶だけは唯一、皇子や皇女に"様"を付けなくても許される場面だ。


「リーリア!心配したわ……大丈夫なの?」


皇后陛下はおもむろに立ち上がると私の所まで小走りで近づき、私の両手を包むように握ってくる。


「……は、はい。大丈夫です」


びっくりしてリアクションが遅れてしまった。


ベネットの時にこのような優しい扱いを受けたことがあっただろうか?


(──いや、ないわね。いつも皇后は優しくしてくれていたけど、こんなに"自分の娘"みたいな優しさでは無かったわ)


これが幼馴染みの娘の効力なんだろう。


「キャサリン。急に近付いたからリーリアが驚いてしまっただろう」

 
皇帝陛下もこちらに来て、優しく皇后を自分側に抱き寄せた。


見つめ合う2人は、こちらが見ていて照れてしまうぐらいに熱々だ。


「……ところで君の"記憶喪失"はリカルドから聞いているよ。困ったことがあれば私か皇后、子供達に相談しなさい」


私の視線に気が付いたのか、少し頬を赤くしながら話を振ってくる。


「ありがとうございます」


この2人を見ていると心が暖かくなった。


「お父様とお母様はこっちがいつも恥ずかしくなるくらい熱々ですからね。サルバトレー公女もそう思わない?」


ウィリアムがこちらに来て微笑みかける。


彼の微笑みは悪戯っぽくはあるが無邪気だ。


裏表が無いから安心する。


「ウィリアム……あまり気安く令嬢に声を掛けてはいけないよ」


皇太子であるクリストファーも来て、やんわり注意している。


(……やっぱり胡散臭いのよね。その作り笑い)


「リーリアどうかしたの?」


クリストファーを凝視していたせいか彼から声が掛かかる。


「いえ……婚約者様の顔を見たら記憶を思い出せるかなと思ったのですが」


「思い出せない?」


「はい……顔を見つめてしまい、申し訳ありません」


「いいよ。それに焦ると余計思い出せなくなるから無理しないで」


右肩を軽くポンポンたたかれ、ゾワゾワした。


見ていたことを怪しまれたら困る。


だから"婚約者との記憶を思い出そうとした記憶喪失のリーリア"のフリをしたが、気持ち悪いくらい見せかけの優しさを出されたから身体中に悪寒が走ってしまう。


「お気遣い、感謝します」


震えてしまったけどなんとか愛想笑いは出来た。


「クリストファー、リーリアを連れてマーガレット庭園に行ってなさい。私も皇后もリチャードに用事があってね……まぁガーデンパーティーが終わるまでには皇后を解放するから」


「貴方ったら……」


皇帝は皇后をぎゅーと抱きしめながらこちらにウインクして、皇后は突然の行動に照れながらも抱きしめ返していた。


「兄上、早く行かないと両親のラブラブっぷりを永遠に見せつけられますよ」


「そうだね」


ウィリアムが笑い、クリストファーは穏やかに頷いた。


「リーリア、君をマーガレット庭園まで案内するよ」


「はい、よろしくお願いします」


クリストファーが私に手を差し出してきたので、『これはエスコートだ』と何度も心の中で唱え、彼の手を取る。


クリストファーの背後で顔を強ばらせているリチャードが見えた。


彼に笑顔を向けてから、クリストファーのエスコートで部屋から出た。


微笑み返すくらいしか、私には彼を安心させる方法が思いつかなかった。
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