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29.不思議な夢と瞳の色
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『……ここは、どこ?』
私は真っ白な空間で目を覚ました。
私の独り言が反響して聞こえる。
『我が愛しの娘――マーガレットよ』
背後から男性の声がして振り返ると、長いシルバーブロンドにブルーサファイアの瞳を宿した20代後半の男が居た。
急に背後に立たれていたというのに、怖いという感情は無く、むしろ懐かしくて泣きそうな切ない気持ち駆られた。
『……私は、リーリア・サルバトレーです。マーガレットという名前ではありません』
真面目に名前を訂正すると、男はおかしそうに笑った。
『ククッ……そうだったな、現在の体の名前はリーリアであったか。しかし、お前の本来の魂の名前はベネットであり、マーガレットなのだ――まぁ、良い。ここではリーリアと呼ぼう』
『貴方の名前を聞いても?』
言っていることはよく分からないが、それに頷いてから名前を聞く。
『私の名前はオーロラという。皆、私のことをセーラス神と呼ぶがな』
その言葉に固まった。
(……嘘でしょ)
セーラスというのは、光の神様の名前だ。
『家族として久しぶりの再会を喜びたいが、今の私にはそこまで時間が無くてな……本題に入らせてもらう』
男は人差し指で私の額に触れると、そこから温かい黄色い光が注がれた。
『お前はリチャードという名の人間を助けるために無理をして、魔力を解放しただろう』
『えぇ、そうですね。魔力が使えないと思っていたので実際に使えて驚きましたが……』
正直に思ったことを伝えると、セーラス神は困ったように微笑んだ。
『まだ魔法が使える段階では無かったのに、無茶をする――だが、もうこれで次からは心置きなく光魔法が使えるようになったぞ』
『闇魔法ではなく、ですか?』
今後普通に魔法が使えるようになったことにも驚きだが、リーリアの体ならば闇魔法が使えるはずだ。
疑問を口にするとセーラス神は答えてくれた。
『属性とは魂によって分類されるものだ。いくら元の体の持ち主が闇属性だったとはいえ、お前の魂は光属性だから光魔法しか使えない』
それだけ言うと『時間だ。リーリア、お前の無事を祈る』と大きな手を頭に置く。
父のような温かさを感じ、『ちょっと待って――』と叫んだがセーラス神は笑うだけで何処かに居なくなってしまった。
その瞬間、現実世界のリーリア・サルバトレーの体は意識を取り戻した。
「なんだったの、夢?」
保健室のベッドから勢い良く起き上がるとつぶやく。
「姉上!」
「リーリア嬢、大丈夫か!?」
起きてから直ぐにカーテンが開き、リチャードとジャックが顔を覗かせた。
2人は目が合って安堵してから、今度は驚愕の表情を浮かべた。
「どうされたのですか?私の顔になにか付いてますか?」
首を捻って尋ねるとやや気まずそうに顔をビクつかせながら、リチャードが言った。
「姉上、顔というよりかはその……瞳の色が違います」
(瞳の色が違う?……どういうこと?)
余計分からなくなり、首を傾げたままにしているとジャックが僅かに離れ、少ししてから手鏡を持って現れた。
「リーリア嬢、これを……」
言われるままにジャックから手鏡を受け取り、自分の瞳を確認した。
「……え、どういうこと?」
そこには懐かしい瞳の色――ベネットの時にはよく見ていたブルーサファイアの瞳が宿っていた。
瞳の色で属性が分かるのだが、今までリーリアは濡れ羽色の瞳であったから闇属性だと思っていた。
けれど、これでは本当に私は光属性だということだろうか。
夢だと思っていたセーラス神とのやり取りを思い出す。
私の額に手を置いて、『もうこれで次からは心置きなく光魔法が使えるようになったぞ』と言っていた。
(もしかして、それで!?)
混乱で呆然としている私にリチャードが言った。
「もしかして今の姉上なら、魔法が使えるんじゃないですか?」
そんなことを言われ、傷だらけのジャックとリチャードに両手をかざして念じてみた。
私の手から黄色い光が流れ、2人の傷がたちまち癒えていく。
それを確認してから、傷だらけの自分にも治癒を施した。
「……本当ね」
未だに信じられない気持ちで自分の手のひらを見ながら言う。
「……リーリア嬢は、闇属性だったのではないか?」
「……そうですね。姉上は闇属性でした。しかし、過去の文献でも一時的に魔法が使えなくなった人間が、次にまた魔法が使えるようになったら、別の属性が使えるようになったと書いてありました」
そこまで言ったリチャードは、しまったという表情をした後に手で口を覆った。
「その文献とはどんなタイトルの、どの本に収録された話だ?」
ジャックが怪しげなリチャードの態度に追い討ちをかけるように質問した。
顔を青くしながら押し黙った姿を見て、これは『スコタージ王国の禁忌魔法に関する文献』ではないかと私は瞬時に理解した。
「……ここでは言えません」
リチャードが頑なに首を振るので、ジャックは溜息を吐くと言った。
「なら、放課後に場所を設けるから、話してくれ――リーリア嬢もまだ全回復とは言えないだろうが、付き合ってくれるな?」
有無を言わさぬジャックの言葉に私たち姉弟はただ頷くことしか出来なかった。
私は真っ白な空間で目を覚ました。
私の独り言が反響して聞こえる。
『我が愛しの娘――マーガレットよ』
背後から男性の声がして振り返ると、長いシルバーブロンドにブルーサファイアの瞳を宿した20代後半の男が居た。
急に背後に立たれていたというのに、怖いという感情は無く、むしろ懐かしくて泣きそうな切ない気持ち駆られた。
『……私は、リーリア・サルバトレーです。マーガレットという名前ではありません』
真面目に名前を訂正すると、男はおかしそうに笑った。
『ククッ……そうだったな、現在の体の名前はリーリアであったか。しかし、お前の本来の魂の名前はベネットであり、マーガレットなのだ――まぁ、良い。ここではリーリアと呼ぼう』
『貴方の名前を聞いても?』
言っていることはよく分からないが、それに頷いてから名前を聞く。
『私の名前はオーロラという。皆、私のことをセーラス神と呼ぶがな』
その言葉に固まった。
(……嘘でしょ)
セーラスというのは、光の神様の名前だ。
『家族として久しぶりの再会を喜びたいが、今の私にはそこまで時間が無くてな……本題に入らせてもらう』
男は人差し指で私の額に触れると、そこから温かい黄色い光が注がれた。
『お前はリチャードという名の人間を助けるために無理をして、魔力を解放しただろう』
『えぇ、そうですね。魔力が使えないと思っていたので実際に使えて驚きましたが……』
正直に思ったことを伝えると、セーラス神は困ったように微笑んだ。
『まだ魔法が使える段階では無かったのに、無茶をする――だが、もうこれで次からは心置きなく光魔法が使えるようになったぞ』
『闇魔法ではなく、ですか?』
今後普通に魔法が使えるようになったことにも驚きだが、リーリアの体ならば闇魔法が使えるはずだ。
疑問を口にするとセーラス神は答えてくれた。
『属性とは魂によって分類されるものだ。いくら元の体の持ち主が闇属性だったとはいえ、お前の魂は光属性だから光魔法しか使えない』
それだけ言うと『時間だ。リーリア、お前の無事を祈る』と大きな手を頭に置く。
父のような温かさを感じ、『ちょっと待って――』と叫んだがセーラス神は笑うだけで何処かに居なくなってしまった。
その瞬間、現実世界のリーリア・サルバトレーの体は意識を取り戻した。
「なんだったの、夢?」
保健室のベッドから勢い良く起き上がるとつぶやく。
「姉上!」
「リーリア嬢、大丈夫か!?」
起きてから直ぐにカーテンが開き、リチャードとジャックが顔を覗かせた。
2人は目が合って安堵してから、今度は驚愕の表情を浮かべた。
「どうされたのですか?私の顔になにか付いてますか?」
首を捻って尋ねるとやや気まずそうに顔をビクつかせながら、リチャードが言った。
「姉上、顔というよりかはその……瞳の色が違います」
(瞳の色が違う?……どういうこと?)
余計分からなくなり、首を傾げたままにしているとジャックが僅かに離れ、少ししてから手鏡を持って現れた。
「リーリア嬢、これを……」
言われるままにジャックから手鏡を受け取り、自分の瞳を確認した。
「……え、どういうこと?」
そこには懐かしい瞳の色――ベネットの時にはよく見ていたブルーサファイアの瞳が宿っていた。
瞳の色で属性が分かるのだが、今までリーリアは濡れ羽色の瞳であったから闇属性だと思っていた。
けれど、これでは本当に私は光属性だということだろうか。
夢だと思っていたセーラス神とのやり取りを思い出す。
私の額に手を置いて、『もうこれで次からは心置きなく光魔法が使えるようになったぞ』と言っていた。
(もしかして、それで!?)
混乱で呆然としている私にリチャードが言った。
「もしかして今の姉上なら、魔法が使えるんじゃないですか?」
そんなことを言われ、傷だらけのジャックとリチャードに両手をかざして念じてみた。
私の手から黄色い光が流れ、2人の傷がたちまち癒えていく。
それを確認してから、傷だらけの自分にも治癒を施した。
「……本当ね」
未だに信じられない気持ちで自分の手のひらを見ながら言う。
「……リーリア嬢は、闇属性だったのではないか?」
「……そうですね。姉上は闇属性でした。しかし、過去の文献でも一時的に魔法が使えなくなった人間が、次にまた魔法が使えるようになったら、別の属性が使えるようになったと書いてありました」
そこまで言ったリチャードは、しまったという表情をした後に手で口を覆った。
「その文献とはどんなタイトルの、どの本に収録された話だ?」
ジャックが怪しげなリチャードの態度に追い討ちをかけるように質問した。
顔を青くしながら押し黙った姿を見て、これは『スコタージ王国の禁忌魔法に関する文献』ではないかと私は瞬時に理解した。
「……ここでは言えません」
リチャードが頑なに首を振るので、ジャックは溜息を吐くと言った。
「なら、放課後に場所を設けるから、話してくれ――リーリア嬢もまだ全回復とは言えないだろうが、付き合ってくれるな?」
有無を言わさぬジャックの言葉に私たち姉弟はただ頷くことしか出来なかった。
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