84 / 101
83.クリストファーの誕生日②
しおりを挟む
宮廷に到着し、馬車から降りると私は3人と別れ、使用人から宮廷内へと案内された。
案内された先には皇帝と皇后、それからクリストファーにウィリアム、キャロラインが居た。
私は4人に挨拶をする。
「帝国の太陽、守護する国母、帝国に光をもたらす皇子、皇女にご挨拶申し上げます」
「リーリア。よく来てくれた」
皇帝が私に話しかけた瞬間、その横を小さな人が私めがけて駆けてきて「お姉様!ずっと、会いたかったわ」と私の足に抱きつく。
「はい。久し振りですね」
彼女と顔の高さをあわせて微笑めば、ウィリアムがクリストファーに「兄上、キャロラインに先を越されましたね」と話しかけている。
クリストファーも「本当だね。でも、キャロラインはリーリアにずっと会いたがっていたから、今回は可愛い妹を許すよ」と笑って言った。
クリスは家族の前だとこんなにも優しいのに、何故彼らが居ない時は人を舐め回すように見たり、態度が悪くなるのだろうか。
私がそんなことを考えつつ、クリスを見ていると不意に彼と目が合った。
「そんなに見つめられると、さすがの私でも照れてしまうよ」
綺麗に微笑まれて、普通の令嬢ならこの笑顔に皆が騙されるのだろうなと思った。
「……不躾に見つめてしまい、申し訳ありません」
私は申し訳無さそうになふりをして、顔を下に向けた。
さっき、彼と目が合った時の視線が前世の義兄に似たものを感じたから、長時間クリスの顔を見ていると、美緒の頃みたいに引き攣った笑みを浮かべてしまいそうになる。
「遠慮しないで。今までとは違って、君は私の婚約者なんだから、遠慮せずに見てくれても構わないよ」
私の右手が急に中に浮かんだ。
それがクリスから手を取られたからだと、すぐに分かった。
そのまま右手の甲に柔らかい感触がした。
私は小さく深呼吸をして、にっこりと笑顔を作ってからクリスを見て、言った。
「ありがとうございます。そう言っていただけて、とても嬉しいです」
やはり、クリスの唇が私の右手の甲にあった。
気持ち悪くて手を振り払いたくなるが、それをすれば不敬になるだろう。
(いつまで、このままなのかしら?)
クリスは私の手の甲にキスをしたまま、ニヤニヤとした顔で私を見ていた。
彼の後ろに皇帝陛下と皇后陛下、それからウィリアムがおり、私たち二人を微笑ましそうに見ているが、表情に気が付いた私は固まり、私の足元に居るキャロラインは眉を寄せてクリスのことを見ている。
「……ねぇ、お兄様!時間までお姉様と2人で話してちゃだめ?」
クリスの表情に戸惑っていた私と、目が合うとキャロラインは私に小さく頷いた後、クリスにまるで強請るように聞いた。
彼はやっぱり家族には弱いようで、ニヤニヤとした笑顔を引っ込め、唇を離すとキャロラインの頭を撫でた。
「もうすぐ呼ばれるから、それまでなら良いよ」
「やったぁ!お兄様、大好きっ!」
わざとらしくクリスの足に抱きついたキャロラインは、すぐに体を離すと私の手を取った。
「それじゃあ、お姉様!あそこでお話しましょ」
「慌てなくても、大丈夫ですよ」
テラスへと案内された私は、キャロラインに頭を下げる。
「キャロライン、ありがとう。助かったわ」
「いいの……お兄様がごめんなさいね。私、初めてよ。お兄様を気持ち悪いと思ったの」
肩を竦めて言ったキャロラインに笑ってしまう。
見た目は7歳だというのに、大人っぽい仕草が妙に似合っていた。
「……ベネットお姉様、今日はお兄様の魂が一段と濁っているの。もしかしたら、お姉様に何かするつもりかもしれないわ――気を付けて」
(キャロラインはクリスが私を手篭めにすることは知らないはずなのに……魂の色一つで私の身に危険があるかもしれないと判断するなんて、正直驚いたわ)
「ええ、分かったわ。実はジャックからクリストファー様に関することで忠告を受けているの。そのための対策もしてきたから安心して」
不安そうな顔で私を見つめてくるキャロラインを安心させたくてそう言えば、彼女は途端に笑顔を浮かべた。
「さすが、お姉様の王子様だわ!やっぱり、逞しくって頭が良く回る人がお姉様とはお似合いね!」
キャロラインがジャックを褒めるので、私は自分の事のように嬉しくなった。
けれど、私は本当に彼とお似合いなのだろうか?
ついつい不安で7歳の女の子に本音を言ってしまう。
「ありがとう……ジャックとお似合いだと思ってくれて嬉しいわ。でも、私は彼に何かしてもらってばかりで、何も返せてないのがもどかしいの」
するとキャロラインはきょとんとした顔で呟いた。
「お姫様は王子様に守られるものではないの?」
純粋な彼女からの質問に苦笑しながら答えた。
「確かに、物語の中の主人公たちだったらそうかもしれないわ……でも、本当に人を好きになったら相手を支えたいと思ってしまうものよ」
「……お姉様、分からないわ」
私の話を聞いて、一生懸命考えてくれたがまだキャロラインにはこの内容は早かったようで、首を横に振った。
その物言いが年相応で可愛らしい。
小さく笑っていると、テラスの扉を叩く音が聞こえた。
「もう時間みたいね。戻りましょうか」
「うん……あのね、どうやったらお姉様の気持ちを理解出来るようになる?」
私が差し出した手を握り返しながら、キャロラインが聞いてくる。
「そうね……恋を知った時かしらね」
「……わかった」
分からなそうに頷いたキャロラインはやっぱり可愛かった。
案内された先には皇帝と皇后、それからクリストファーにウィリアム、キャロラインが居た。
私は4人に挨拶をする。
「帝国の太陽、守護する国母、帝国に光をもたらす皇子、皇女にご挨拶申し上げます」
「リーリア。よく来てくれた」
皇帝が私に話しかけた瞬間、その横を小さな人が私めがけて駆けてきて「お姉様!ずっと、会いたかったわ」と私の足に抱きつく。
「はい。久し振りですね」
彼女と顔の高さをあわせて微笑めば、ウィリアムがクリストファーに「兄上、キャロラインに先を越されましたね」と話しかけている。
クリストファーも「本当だね。でも、キャロラインはリーリアにずっと会いたがっていたから、今回は可愛い妹を許すよ」と笑って言った。
クリスは家族の前だとこんなにも優しいのに、何故彼らが居ない時は人を舐め回すように見たり、態度が悪くなるのだろうか。
私がそんなことを考えつつ、クリスを見ていると不意に彼と目が合った。
「そんなに見つめられると、さすがの私でも照れてしまうよ」
綺麗に微笑まれて、普通の令嬢ならこの笑顔に皆が騙されるのだろうなと思った。
「……不躾に見つめてしまい、申し訳ありません」
私は申し訳無さそうになふりをして、顔を下に向けた。
さっき、彼と目が合った時の視線が前世の義兄に似たものを感じたから、長時間クリスの顔を見ていると、美緒の頃みたいに引き攣った笑みを浮かべてしまいそうになる。
「遠慮しないで。今までとは違って、君は私の婚約者なんだから、遠慮せずに見てくれても構わないよ」
私の右手が急に中に浮かんだ。
それがクリスから手を取られたからだと、すぐに分かった。
そのまま右手の甲に柔らかい感触がした。
私は小さく深呼吸をして、にっこりと笑顔を作ってからクリスを見て、言った。
「ありがとうございます。そう言っていただけて、とても嬉しいです」
やはり、クリスの唇が私の右手の甲にあった。
気持ち悪くて手を振り払いたくなるが、それをすれば不敬になるだろう。
(いつまで、このままなのかしら?)
クリスは私の手の甲にキスをしたまま、ニヤニヤとした顔で私を見ていた。
彼の後ろに皇帝陛下と皇后陛下、それからウィリアムがおり、私たち二人を微笑ましそうに見ているが、表情に気が付いた私は固まり、私の足元に居るキャロラインは眉を寄せてクリスのことを見ている。
「……ねぇ、お兄様!時間までお姉様と2人で話してちゃだめ?」
クリスの表情に戸惑っていた私と、目が合うとキャロラインは私に小さく頷いた後、クリスにまるで強請るように聞いた。
彼はやっぱり家族には弱いようで、ニヤニヤとした笑顔を引っ込め、唇を離すとキャロラインの頭を撫でた。
「もうすぐ呼ばれるから、それまでなら良いよ」
「やったぁ!お兄様、大好きっ!」
わざとらしくクリスの足に抱きついたキャロラインは、すぐに体を離すと私の手を取った。
「それじゃあ、お姉様!あそこでお話しましょ」
「慌てなくても、大丈夫ですよ」
テラスへと案内された私は、キャロラインに頭を下げる。
「キャロライン、ありがとう。助かったわ」
「いいの……お兄様がごめんなさいね。私、初めてよ。お兄様を気持ち悪いと思ったの」
肩を竦めて言ったキャロラインに笑ってしまう。
見た目は7歳だというのに、大人っぽい仕草が妙に似合っていた。
「……ベネットお姉様、今日はお兄様の魂が一段と濁っているの。もしかしたら、お姉様に何かするつもりかもしれないわ――気を付けて」
(キャロラインはクリスが私を手篭めにすることは知らないはずなのに……魂の色一つで私の身に危険があるかもしれないと判断するなんて、正直驚いたわ)
「ええ、分かったわ。実はジャックからクリストファー様に関することで忠告を受けているの。そのための対策もしてきたから安心して」
不安そうな顔で私を見つめてくるキャロラインを安心させたくてそう言えば、彼女は途端に笑顔を浮かべた。
「さすが、お姉様の王子様だわ!やっぱり、逞しくって頭が良く回る人がお姉様とはお似合いね!」
キャロラインがジャックを褒めるので、私は自分の事のように嬉しくなった。
けれど、私は本当に彼とお似合いなのだろうか?
ついつい不安で7歳の女の子に本音を言ってしまう。
「ありがとう……ジャックとお似合いだと思ってくれて嬉しいわ。でも、私は彼に何かしてもらってばかりで、何も返せてないのがもどかしいの」
するとキャロラインはきょとんとした顔で呟いた。
「お姫様は王子様に守られるものではないの?」
純粋な彼女からの質問に苦笑しながら答えた。
「確かに、物語の中の主人公たちだったらそうかもしれないわ……でも、本当に人を好きになったら相手を支えたいと思ってしまうものよ」
「……お姉様、分からないわ」
私の話を聞いて、一生懸命考えてくれたがまだキャロラインにはこの内容は早かったようで、首を横に振った。
その物言いが年相応で可愛らしい。
小さく笑っていると、テラスの扉を叩く音が聞こえた。
「もう時間みたいね。戻りましょうか」
「うん……あのね、どうやったらお姉様の気持ちを理解出来るようになる?」
私が差し出した手を握り返しながら、キャロラインが聞いてくる。
「そうね……恋を知った時かしらね」
「……わかった」
分からなそうに頷いたキャロラインはやっぱり可愛かった。
2
あなたにおすすめの小説
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
悪役令嬢の物語は始まりません。なぜならわたくしがヒロインを排除するからです。
霜月零
恋愛
わたくし、シュティリア・ホールオブ公爵令嬢は前世の記憶を持っています。
流行り病で生死の境を彷徨った時に思い出したのです。
この世界は、前世で遊んでいた乙女ゲームに酷似していると。
最愛のディアム王子をヒロインに奪われてはなりません。
そうと決めたら、行動しましょう。
ヒロインを排除する為に。
※小説家になろう様等、他サイト様にも掲載です。
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる