今度こそ長生きしたいけど、憑依先が悪役令嬢とは聞いてませんっ!?

竹林 花奏(たけばやし かなで)

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83.クリストファーの誕生日②

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宮廷に到着し、馬車から降りると私は3人と別れ、使用人から宮廷内へと案内された。


案内された先には皇帝と皇后、それからクリストファーにウィリアム、キャロラインが居た。


私は4人に挨拶をする。


「帝国の太陽、守護する国母、帝国に光をもたらす皇子、皇女にご挨拶申し上げます」


「リーリア。よく来てくれた」


皇帝が私に話しかけた瞬間、その横を小さな人が私めがけて駆けてきて「お姉様!ずっと、会いたかったわ」と私の足に抱きつく。


「はい。久し振りですね」


彼女と顔の高さをあわせて微笑めば、ウィリアムがクリストファーに「兄上、キャロラインに先を越されましたね」と話しかけている。


クリストファーも「本当だね。でも、キャロラインはリーリアにずっと会いたがっていたから、今回は可愛い妹を許すよ」と笑って言った。


クリスは家族の前だとこんなにも優しいのに、何故彼らが居ない時は人を舐め回すように見たり、態度が悪くなるのだろうか。


私がそんなことを考えつつ、クリスを見ていると不意に彼と目が合った。


「そんなに見つめられると、さすがの私でも照れてしまうよ」


綺麗に微笑まれて、普通の令嬢ならこの笑顔に皆が騙されるのだろうなと思った。


「……不躾に見つめてしまい、申し訳ありません」


私は申し訳無さそうになふりをして、顔を下に向けた。


さっき、彼と目が合った時の視線が前世の義兄に似たものを感じたから、長時間クリスの顔を見ていると、美緒の頃みたいに引き攣った笑みを浮かべてしまいそうになる。


「遠慮しないで。今までとは違って、君は私の婚約者なんだから、遠慮せずに見てくれても構わないよ」


私の右手が急に中に浮かんだ。


それがクリスから手を取られたからだと、すぐに分かった。


そのまま右手の甲に柔らかい感触がした。


私は小さく深呼吸をして、にっこりと笑顔を作ってからクリスを見て、言った。


「ありがとうございます。そう言っていただけて、とても嬉しいです」


やはり、クリスの唇が私の右手の甲にあった。


気持ち悪くて手を振り払いたくなるが、それをすれば不敬になるだろう。


(いつまで、このままなのかしら?)


クリスは私の手の甲にキスをしたまま、ニヤニヤとした顔で私を見ていた。


彼の後ろに皇帝陛下と皇后陛下、それからウィリアムがおり、私たち二人を微笑ましそうに見ているが、表情に気が付いた私は固まり、私の足元に居るキャロラインは眉を寄せてクリスのことを見ている。


「……ねぇ、お兄様!時間までお姉様と2人で話してちゃだめ?」


クリスの表情に戸惑っていた私と、目が合うとキャロラインは私に小さく頷いた後、クリスにまるで強請るように聞いた。


彼はやっぱり家族には弱いようで、ニヤニヤとした笑顔を引っ込め、唇を離すとキャロラインの頭を撫でた。


「もうすぐ呼ばれるから、それまでなら良いよ」


「やったぁ!お兄様、大好きっ!」


わざとらしくクリスの足に抱きついたキャロラインは、すぐに体を離すと私の手を取った。


「それじゃあ、お姉様!あそこでお話しましょ」


「慌てなくても、大丈夫ですよ」


テラスへと案内された私は、キャロラインに頭を下げる。


「キャロライン、ありがとう。助かったわ」


「いいの……お兄様がごめんなさいね。私、初めてよ。お兄様を気持ち悪いと思ったの」


肩を竦めて言ったキャロラインに笑ってしまう。


見た目は7歳だというのに、大人っぽい仕草が妙に似合っていた。


「……ベネットお姉様、今日はお兄様の魂が一段と濁っているの。もしかしたら、お姉様に何かするつもりかもしれないわ――気を付けて」


(キャロラインはクリスが私を手篭めにすることは知らないはずなのに……魂の色一つで私の身に危険があるかもしれないと判断するなんて、正直驚いたわ)


「ええ、分かったわ。実はジャックからクリストファー様に関することで忠告を受けているの。そのための対策もしてきたから安心して」


不安そうな顔で私を見つめてくるキャロラインを安心させたくてそう言えば、彼女は途端に笑顔を浮かべた。


「さすが、お姉様の王子様だわ!やっぱり、逞しくって頭が良く回る人がお姉様とはお似合いね!」


キャロラインがジャックを褒めるので、私は自分の事のように嬉しくなった。


けれど、私は本当に彼とお似合いなのだろうか?


ついつい不安で7歳の女の子に本音を言ってしまう。


「ありがとう……ジャックとお似合いだと思ってくれて嬉しいわ。でも、私は彼に何かしてもらってばかりで、何も返せてないのがもどかしいの」


するとキャロラインはきょとんとした顔で呟いた。


「お姫様は王子様に守られるものではないの?」


純粋な彼女からの質問に苦笑しながら答えた。


「確かに、物語の中の主人公たちだったらそうかもしれないわ……でも、本当に人を好きになったら相手を支えたいと思ってしまうものよ」


「……お姉様、分からないわ」


私の話を聞いて、一生懸命考えてくれたがまだキャロラインにはこの内容は早かったようで、首を横に振った。


その物言いが年相応で可愛らしい。


小さく笑っていると、テラスの扉を叩く音が聞こえた。


「もう時間みたいね。戻りましょうか」


「うん……あのね、どうやったらお姉様の気持ちを理解出来るようになる?」


私が差し出した手を握り返しながら、キャロラインが聞いてくる。


「そうね……恋を知った時かしらね」


「……わかった」


分からなそうに頷いたキャロラインはやっぱり可愛かった。
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