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97.前世②
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「ああ、俺の前世は正樹だった」
私の目を真っ直ぐと見つめながら、ジャックがもう一度言った。
見た目や話し方、声は違うがそれでもジャックの中に確かに正樹さんの魂が宿っているのだろう。
不思議に思いながらも、ホッとしている私が居た。
「……そう、だったのね」
「やっぱり、美緒だったんだな」
ジャックは感慨深げに言うと、にっこりといつものジャックらしい強きな笑みを浮かべた。
「間違えていなくて良かった」
その言葉に私の目から涙がこぼれ落ちる。
「……大丈夫か?」
いつぞやの日の様に泣いている私にハンカチを差し出してくれた。
あの日と違うのは、私を愛おしげに見つめてくる彼の瞳だ。
私はハンカチを受け取りながらジャック——彼の中にある正樹さんの記憶に向かって言った。
「正樹さん、私……あの時は私のせいで、貴方を巻き込んでしまってごめんなさい。私が余計なことをしなければ、貴方は死ななかったのに……母に住所を教えていなければ、私たちは、貴方は死ぬことがなかったのに……本当に申し訳ありませんでした」
言った後、頭を下げた。
我ながらこの謝罪は、今更遅いと思う。
でも、あの時の自分の中に芽生えた後悔が消えない。
自分は……美緒としての罪の意識を軽くしたいだけなのかもしれない。
けれど、今私が好きなジャックの前世が正樹さんだと知って、私は謝らずにはいられなかった。
もちろん、正樹さんが今はジャックとして私を好きだったとしても、私に何か思うことはあるだろう。
それで許してもらえなければ、私はジャックとの今後を諦めなければならない。
(……そうなったら、教会でシスターになろうかしら)
無罪とは言え、私はこれから断罪と婚約破棄を一気に経験する。
普通であれば、これまでのリーリアの行動と皇太子殿下からの婚約破棄があれば、嫁に貰ってくれる貴族は限られてくる。
だが、今の私の両親であるサルバトレー公爵夫妻は私に優しい。
だから、私が教会のシスターになりたいと言えば渋りながらも許してくれるだろう。
それにシスターは過去に離婚されたり、何らかの理由で結婚しなかった未婚の女性が就く仕事だ。
シスターになれば、私は誰とも結婚しなくて済む。
「美緒……君は悪くない。確かに住所を教えたのは君かもしれない。しかし、普通の人間であれば好きな人を殺そうとなんて考えない。だから、君が責任を感じる必要はないよ。それに、僕は君を守りたいから勝手に前に出ただけで結局君を守れなかった。だから、これでおあいこにならない?——何より、俺は9歳で前世の記憶を思い出した。ベネットの頃から君が美緒だと分かっていたのだから、憎んでいたらあの頃から態度に出ていたはずだろう?正樹として、君のことを既に許しているから、どうか頭をあげて欲しい」
彼は最初は正樹さんとして、後半はジャックとして私に言ってくれた。
声はジャックだったのに、正樹さんの部分は正樹さんの声が重なって聞こえた気がする。
「……ありがとう」
顔を上げてそう言えば、エスコートしている手と反対の手で私の頭を優しく撫でてくれる。
「俺もあの頃は守れなくてすまなかった。今度は絶対に君を守るから、安心して欲しい」
(……あぁ、この優しさは正樹さんの頃と一緒だったのに、何故私は今まで気が付かなかったのかしら)
彼が私を守りたいと言ってくれて嬉しい。
でも、私は——。
「私も今回は守られてばかりでは嫌なの……私も今度こそジャックを守らせて?」
今だって彼やリチャードに守られてばかりで、私が彼らを守るなんで難しいかもしれない。
けれど、今私に与えられたベネットとしての魔法は光で、光魔法は治癒に特化している。
何より、私は他の人より魔力が高いので手遅れでなければ、相手の傷を完全に治すことが出来るのだ。
この力で、私なりに2人を——特にジャックを守りたい。
力強く言った私の姿にジャックは驚いていたが、やがてフッと笑って「あぁ、お互いに守り合おう」と言ってくれた。
「それで、今こんなことを聞くのもおかしな話だと思うが、教えてくれ。この世界はもしかして前世でゲームだったり、小説の中の世界だったりするだろうか?」
今日の私は、ジャックの言葉に驚きっぱなしだ。
前世の記憶持ちというだけでも驚きなのに、乙女ゲームの類に詳しくなさそうな正樹さんが、この世界に関する事まで把握しているなんて。
(でも、知識があるだけでゲームのタイトルまでは知らないみたいね)
「確かにここは乙女ゲームの世界よ。でも、何故そう思ったの?」
疑問に思ったことを正直に聞いてみた。
「俺には正樹の時に姉が居ただろう?その姉が悪役令嬢に転生した元日本人の女性の奮闘記?の小説をよく読んでいてな……俺も何冊か読まされた事があるんだ。そうか、こっちはゲームの方だったか」
ジャックに言われて、私たちを最初に引き合せてくれた高崎先輩のことを思い出した。
(……先輩はかなり男勝りだったけれど、そういった話も読むのね)
意外だと思った。
もちろん、口には出さないけど。
「意外だろう?……まぁ、そんな昔話はまた後でにして、今はこの世界のことを知りたい。よければ、知っている範囲で構わないから俺に教えてくれないか?」
私は彼の言葉に頷き、この世界のこと——乙女ゲームの内容を教えた。
私の目を真っ直ぐと見つめながら、ジャックがもう一度言った。
見た目や話し方、声は違うがそれでもジャックの中に確かに正樹さんの魂が宿っているのだろう。
不思議に思いながらも、ホッとしている私が居た。
「……そう、だったのね」
「やっぱり、美緒だったんだな」
ジャックは感慨深げに言うと、にっこりといつものジャックらしい強きな笑みを浮かべた。
「間違えていなくて良かった」
その言葉に私の目から涙がこぼれ落ちる。
「……大丈夫か?」
いつぞやの日の様に泣いている私にハンカチを差し出してくれた。
あの日と違うのは、私を愛おしげに見つめてくる彼の瞳だ。
私はハンカチを受け取りながらジャック——彼の中にある正樹さんの記憶に向かって言った。
「正樹さん、私……あの時は私のせいで、貴方を巻き込んでしまってごめんなさい。私が余計なことをしなければ、貴方は死ななかったのに……母に住所を教えていなければ、私たちは、貴方は死ぬことがなかったのに……本当に申し訳ありませんでした」
言った後、頭を下げた。
我ながらこの謝罪は、今更遅いと思う。
でも、あの時の自分の中に芽生えた後悔が消えない。
自分は……美緒としての罪の意識を軽くしたいだけなのかもしれない。
けれど、今私が好きなジャックの前世が正樹さんだと知って、私は謝らずにはいられなかった。
もちろん、正樹さんが今はジャックとして私を好きだったとしても、私に何か思うことはあるだろう。
それで許してもらえなければ、私はジャックとの今後を諦めなければならない。
(……そうなったら、教会でシスターになろうかしら)
無罪とは言え、私はこれから断罪と婚約破棄を一気に経験する。
普通であれば、これまでのリーリアの行動と皇太子殿下からの婚約破棄があれば、嫁に貰ってくれる貴族は限られてくる。
だが、今の私の両親であるサルバトレー公爵夫妻は私に優しい。
だから、私が教会のシスターになりたいと言えば渋りながらも許してくれるだろう。
それにシスターは過去に離婚されたり、何らかの理由で結婚しなかった未婚の女性が就く仕事だ。
シスターになれば、私は誰とも結婚しなくて済む。
「美緒……君は悪くない。確かに住所を教えたのは君かもしれない。しかし、普通の人間であれば好きな人を殺そうとなんて考えない。だから、君が責任を感じる必要はないよ。それに、僕は君を守りたいから勝手に前に出ただけで結局君を守れなかった。だから、これでおあいこにならない?——何より、俺は9歳で前世の記憶を思い出した。ベネットの頃から君が美緒だと分かっていたのだから、憎んでいたらあの頃から態度に出ていたはずだろう?正樹として、君のことを既に許しているから、どうか頭をあげて欲しい」
彼は最初は正樹さんとして、後半はジャックとして私に言ってくれた。
声はジャックだったのに、正樹さんの部分は正樹さんの声が重なって聞こえた気がする。
「……ありがとう」
顔を上げてそう言えば、エスコートしている手と反対の手で私の頭を優しく撫でてくれる。
「俺もあの頃は守れなくてすまなかった。今度は絶対に君を守るから、安心して欲しい」
(……あぁ、この優しさは正樹さんの頃と一緒だったのに、何故私は今まで気が付かなかったのかしら)
彼が私を守りたいと言ってくれて嬉しい。
でも、私は——。
「私も今回は守られてばかりでは嫌なの……私も今度こそジャックを守らせて?」
今だって彼やリチャードに守られてばかりで、私が彼らを守るなんで難しいかもしれない。
けれど、今私に与えられたベネットとしての魔法は光で、光魔法は治癒に特化している。
何より、私は他の人より魔力が高いので手遅れでなければ、相手の傷を完全に治すことが出来るのだ。
この力で、私なりに2人を——特にジャックを守りたい。
力強く言った私の姿にジャックは驚いていたが、やがてフッと笑って「あぁ、お互いに守り合おう」と言ってくれた。
「それで、今こんなことを聞くのもおかしな話だと思うが、教えてくれ。この世界はもしかして前世でゲームだったり、小説の中の世界だったりするだろうか?」
今日の私は、ジャックの言葉に驚きっぱなしだ。
前世の記憶持ちというだけでも驚きなのに、乙女ゲームの類に詳しくなさそうな正樹さんが、この世界に関する事まで把握しているなんて。
(でも、知識があるだけでゲームのタイトルまでは知らないみたいね)
「確かにここは乙女ゲームの世界よ。でも、何故そう思ったの?」
疑問に思ったことを正直に聞いてみた。
「俺には正樹の時に姉が居ただろう?その姉が悪役令嬢に転生した元日本人の女性の奮闘記?の小説をよく読んでいてな……俺も何冊か読まされた事があるんだ。そうか、こっちはゲームの方だったか」
ジャックに言われて、私たちを最初に引き合せてくれた高崎先輩のことを思い出した。
(……先輩はかなり男勝りだったけれど、そういった話も読むのね)
意外だと思った。
もちろん、口には出さないけど。
「意外だろう?……まぁ、そんな昔話はまた後でにして、今はこの世界のことを知りたい。よければ、知っている範囲で構わないから俺に教えてくれないか?」
私は彼の言葉に頷き、この世界のこと——乙女ゲームの内容を教えた。
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