【完結】氷の王と炎の王妃

藤井 紫

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後日譚 王の側近と王妃の侍女

【謝辞 & 宣伝】

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最後までお読みいただきありがとうございました°˖✧
大感謝です~°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°


レオナールが去った20年後の物語を書いたのが↓
『天国の扉 焔を継ぐ者』
左の同一作者リンクからいけます。

これがルークの6年前のシーランドの旅の物語、シーランド側の炎派と氷派の革命(?)を描いたお話です。
(時系列は、後日譚のプロローグから、このエピローグまで)
メインはジェードの息子たちですが、群像風でルーク(16)が一番成長する物語。
エリクス(18)もちょっとだけ、おじさん世代も影で頑張ります。

こちらも読んでいただけたら嬉しいです(*´人`*)

同じシリーズの宣伝させてくださ~い!
いっつも脇役トリオですが、ホープとギリアン(とヴィンセント)は、全てにキーパーソンとして登場します。

-----------自作宣伝---------------

『天国の扉』完結済み 52万字

 13歳の誕生日、ジェードは魔女の疑いをかけられ、聖地へ逃れる。そこで出会ったのは天使と金の髪の少年ハリーファだった。
 国に残されたホープは、ジェードを救おうと領主ヴィンセントのもとを訪れ、ヴァロニアの王位継承問題に巻き込まれていく。
 前世からの因縁と解放の物語。

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第1章 第1話より抜粋(ホープ13歳)

 星明りがちらつきはじめ、ジェードとホープはようやく父母の待つ自宅に帰宅した。
 石造りの小さな家の中は、暖炉の火と奥のかまどの残りの火のおかげでとても暖かい。いつもは人数分しか点けないロウソクも、今日はいつもより二本多く灯されている。部屋の中がいつもよりずっと明るく感じられた。
 父は暖炉に新しく薪をくべ、母は食事の用意をしている。双子の誕生日だと言うのに、今年はお祝いムードはない。すでに独立した二人の兄も、毎年末の双子の誕生日には実家に戻ってくるのだが、今年はその兄たちの姿もない。
「おかえり。ホープ、ジェード。今日は遅かったな」
 父親のジャックが二人に話しかけてきた。
 ジェードは毎日羊飼いの仕事を終えると教会へ行き、家族のために祈りを捧げている。その後、教会で待っている弟と一緒に家路につくのが日課だ。
「パパ、今日は牧師先生にお祓いを受けてきたのよ」
 ジェードは脱いだ上着を壁にかけると、奥にいる母親のそばに行き支度を手伝った。
 お祝いはないが、いつもと同じように他愛ない会話を交わしながら双子はテーブルについた。
「ねぇ聞いて、今日生まれた子羊、双子だったの!」
 ジェードは今日の感動を、双子の弟に伝えようと声がはずんだ。
「へぇ、ぼくらと一緒なんだね」
「そうなの。しかも雄と雌だったわ!」
 どちらともなく、今日誕生日の男女の双子と重ねあわせる。ジェードがホープの目を見ると、ホープはにやりとほほ笑んだ。言葉には出さないが、お互い祝福と感謝の気持ちは通じあっているようだった。
「双子羊ちゃん、本当に仲良しでかわいいのよ。生まれたばかりでも姉弟だってちゃんとわかってるの。でも雄と雌だから、乳断ちしたらすぐに別々の檻にわけられちゃうけど」
 いきなりの双子の別れ話も嫌だったが、ホープは姉弟と言う言葉にひっかかる。
「ねぇ、ジェード。後から生まれた羊が雌だったの?」
「先に生まれたのが女の子よ」
「じゃあ、兄妹になるんじゃないの?」
 双子の場合、人間は後から生まれた子が上になるのだ。なので、先に生まれたのは弟のホープで、後から生まれたのがジェードだった。母親のお産を手伝った姉からよく聞いた話だ。
 二人が話しているところに、母親は「今日は遅くなっちゃったわね」と、双子の前に食事を並べた。芋の入ったヤギ乳のスープとカゴに山盛りになったパンが、ロウソクのうす灯りの中で湯気をくゆらせている。
 ホープは目の前に置かれたパンに手を伸ばした。ジェードは手をあわせ小さく祈る。その様子を見てホープも手を引っこめると、素早く祈りのことばをつぶやいた。
 ジェードとホープはパンをちぎると母の作ってくれたスープにひたす。パンは作るのにも時間がかかり、小麦粉にするにも無駄が多い。贅沢品で普通の家庭では毎日食べられるものではない。父と母は特別にお祝いなど言わないが、今日にパンを焼いてくれたことに、ジェードは心の中でこっそり感謝した。
「それにしても、誰が忌年なんて決めたんだろう。そんなこと天使クライスの教えにはどこにも載ってないのにさ」
 隣に座る弟は、お祝いが出来ないことに不満な様子でぼやいていた。その様子を見て、ジェードは弟をにらんだ。
「ホー! そんなことを言っちゃダメよ。特に教会に勤めているあなたが言うべきじゃないわ。ついさっきも、牧師先生が言ってたでしょ、天使様はすべての出来事をご存じだって。そのうち罰が当たるわよ」
 まるで鏡に映ったような双子の弟に、ジェードは呆れた。
「だって、聖典にも載ってないのに、忌年の誕生日に贈り物をもらうと不吉なことが起こるって言う噂まであるし」
 ジェードの助言など聞かず、ぼやき続けるホープの言葉に、ジェードはどきりとした。
 ホープにばれないようにと、ウィルダーから貰った贈り物のペンダントは服の中に隠してある。ジェードは服の上からそれに触れるように、自分の胸をそっと押さえた。
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*   *   *   *   *



『天国の扉 炎を継ぐ者』完結済み 23万字

 聖地に住む少年ウサマは15歳で突然異能に目覚め、2年前に旅に出たまま戻らない両親を探す旅に出る。旅先のシーランドで出会ったのは、魔女に育てられた少女。
 ウサマを追ってヴァロニアに向かった兄アサドは、自分たちの出自を訪ね、従兄弟ルークと共に弟を追ってシーランドへ旅に出る。旅の先に出会ったのは、禁じられた思想『シュケム論』だった。

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第1章 第1話より抜粋(ホープ33歳)

 乾いた風が吹く午後。
 焼けた石畳の上を、風が吹き抜けていく。
 道沿いには小さな露店が並び、香辛料の粉と焼いたパンの匂いが混ざって漂ってくる。
 ひび割れた水路には水がさらさらと流れ、巡礼者たちの足元を静かに濡らしていた。
 その風の中に、ひとりの巡礼者が足を踏み入れた――。
 異国の騎士――ホープ・ノクシアルは、そんな人々の暮らしの気配をそっと眺めながら、小道を進んでいく。旅衣をまとったその姿には華美な気配はない。
 ホープは三十三歳にして、初めて聖地オス・ローにやってきた。
 彼がこの聖地を訪れた目的は――『ジェード』という名の女を探すことだった。
周りを見回すと、黒髪が多い。白い肌、小麦色の肌。黒い肌、色んな人が強い日差しの下を行き交う。
 そんな中に混じっている、金髪の男の子に目が留まる。
(気のせいかな……? ヴィンセントに似ている……)
 十歳くらいか、と考えているとその少年と目が合った。
 印象的な翠の瞳――。
 その少年は緩やかな石段を降りる。
 ホープは帽子を取って、軽く頭を下げる。その所作にはどこか騎士らしい気品があった。
「こんにちは。突然すまない。君、聖地の者かな?」
 少年が無言でうなずくと、ホープは微笑んだ。
「ぼくはホープ。――ホープ・ノクシアルといいます。ヴァロニアから来た巡礼者でね、少し……人を探しているんだ」
 少年が、ホープを警戒しているのは傍目からもわかった。
「……人探し、ですか?」
「うん。もし、案内してもらえるなら、少しだけ時間をもらえないかな。君のような落ち着いた子なら、頼りになりそうだと思って」
 少年は驚きつつも、その柔らかい声音に少し警戒心を緩めた。
「ジェードという名前の女性を探していてね。ぼくと同い年なんだ。だから、君から見たら、お母さんくらいの年齢になるかな」
 そう言って、彼は案内役に指名した少年を見つめた。
 金髪に翠の瞳を持つ少年。瞳の色は違うが、どこかヴィンセントの面影がある。思慮深げな目をした彼は、ホープの言葉に小さく首をかしげた。
「オス・ローには、そんな名前の人はいないと思います。東大陸フロリスの名前ですよね」
「……君の言うとおりかもしれない。ぼくは聖地に来るのは初めてなんだ。【天国の扉】まで案内してもらってもいいかな?」
「……いいですよ」
 少年は人の流れに乗って、大通りを一緒に歩いていく。
 家々の間を通る細い通りの上には、褪せた布が幾重にも張られ、陽の光をやわらかく濾過していた。
 地面には幾つかの祈りの石が並べられ、布の影が波のようにゆれている。
 少年は慣れた足取りでその影をくぐりながら歩き、ホープはその背中を静かに追った。
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