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第一章 奴隷皇子と亡命の魔女
皇族の奴隷(2)
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「サンドラ……?」
「ファールーク皇国の皇都よ。ご存じないのかしら?」
「ファ…ルーク……? じゃあ、ここは暗黒大陸なの?」
「そうです」
ジェードは驚いて言葉を失った。
中心の地を越えて、暗黒大陸まで来てしまっていたのだ。
ジェードが学校で見た地図は聖地オス・ローのある中央の地までしか載っていない。そこより左側の暗黒大陸は、途切れて載っていないのだ。
「正しくは西大陸ですけれどね」
リューシャの声に怒気が含まれた気がした。
「あなたは一体何者なの? ヴァロニア人だとは聞いているけれど」
「わ、わたしは……巡礼者です」
ジェードは羊飼いと言ったほうが良いのかと迷いながら答えた。
「巡礼ですって? オス・ローは二百年前にヴァロニアとシーランドの戦争の所為で崩壊したというのに」
女性が言うことは、ジェードが学校で習ったことと違う。
「……聖地で戦争をしたのは、シーランドと、ファールークでしょ?……」
ヴァロニアは関係ないはずだ。
リューシャはジェードを見て眉をしかめた。心なしか口調もきつくなりジェードを問い詰める。
「中央の地はファールークの領土です。現在も調停でヴァロニアからの国境超えは禁じられているのを知ってのこと?」
「そんなこと……知らないわ」
「自国民に御触れが行き渡らないほど、ヴァロニアでは王族が疲弊しているということね」
リューシャの言っていることは、ジェードにはまったくわからないことだった。王族が疲弊しているなど、村で暮らしていくには関係のないことだ。村を治める領主の話さえも、噂でしか聞いたことがない。
「では巡礼に来たというのなら、同行者は? 誰かと一緒に来たのでしょう? その者たちは何処へ行ったの?」
「同行者は、いません……。わたし一人で来たから」
その答えを聞いたリューシャはため息をもらし、疑いの眼差しをジェードに向けた。
疑われていることに、ジェードは少し胸が苦しくなった。一人で来たのは真実だ。だが、ヴァロニアから追い出された理由はわからない。
「では、聖地で一体何があったのですか?」
「せ、聖地で……」
「あなたはハリーファ殿下にお会いしたでしょう? 何があったのです」
その問いかけに、ジェードは聖地であったことを思い出した。
聖地で天使と出会い、金色の髪の少年を殺すという自分の天命を教えられたのだ。その後、生まれて初めて見た金色の髪の少年によって、砂色の世界は真っ赤に染められていった。
聖地で最後に見た光景が脳裏によみがえる。
ジェードは恐ろしい光景を思い出し、あの時恐怖で出せなかった言葉がもれた。
「いや……、嫌……」
そんなジェードの様子に、リューシャは少し辛そうな表情を見せた。
「……もう良いわ。少しお休みなさい」
そう言って、女性はジェードの手を引いてベッドに座らせた。
「落ち着いたら、わたくしには本当のことを話して頂戴。悪いようにはしないわ」
先程までのきつい口調とは変わって、リューシャはジェードの手を取ったまま、同情するようにほほえんだ。まるで天使のようなほほえみだ。ジェードには、聖地で少年を殺すように言ってきた【天使】よりも天使のようだ。
ジェードはリューシャにすがりつくように抱きついた。
「……殺されるわ……」
聖地で最後に見た光景が頭の中にくり返される。金色の髪の少年が敵意をむき出しにジェードをにらみつけている。
「え……?」
「……三人とも、あの子が殺したのよ」
「あなた、何を言っているの?」
「ここに連れてこられた時に、大人の死体があったのを見たでしょ! あれは全部あの子が殺したのよ!」
「あの子って……。ハリーファ様……ですか?」
リューシャの口からハリーファの名を聞いて、ジェードは両手で耳をふさぎ目を閉じてうずくまった。
リューシャは、信じられないと言うように頭を横にふり、眉をしかめてジェードを見つめた。
「ファールーク皇国の皇都よ。ご存じないのかしら?」
「ファ…ルーク……? じゃあ、ここは暗黒大陸なの?」
「そうです」
ジェードは驚いて言葉を失った。
中心の地を越えて、暗黒大陸まで来てしまっていたのだ。
ジェードが学校で見た地図は聖地オス・ローのある中央の地までしか載っていない。そこより左側の暗黒大陸は、途切れて載っていないのだ。
「正しくは西大陸ですけれどね」
リューシャの声に怒気が含まれた気がした。
「あなたは一体何者なの? ヴァロニア人だとは聞いているけれど」
「わ、わたしは……巡礼者です」
ジェードは羊飼いと言ったほうが良いのかと迷いながら答えた。
「巡礼ですって? オス・ローは二百年前にヴァロニアとシーランドの戦争の所為で崩壊したというのに」
女性が言うことは、ジェードが学校で習ったことと違う。
「……聖地で戦争をしたのは、シーランドと、ファールークでしょ?……」
ヴァロニアは関係ないはずだ。
リューシャはジェードを見て眉をしかめた。心なしか口調もきつくなりジェードを問い詰める。
「中央の地はファールークの領土です。現在も調停でヴァロニアからの国境超えは禁じられているのを知ってのこと?」
「そんなこと……知らないわ」
「自国民に御触れが行き渡らないほど、ヴァロニアでは王族が疲弊しているということね」
リューシャの言っていることは、ジェードにはまったくわからないことだった。王族が疲弊しているなど、村で暮らしていくには関係のないことだ。村を治める領主の話さえも、噂でしか聞いたことがない。
「では巡礼に来たというのなら、同行者は? 誰かと一緒に来たのでしょう? その者たちは何処へ行ったの?」
「同行者は、いません……。わたし一人で来たから」
その答えを聞いたリューシャはため息をもらし、疑いの眼差しをジェードに向けた。
疑われていることに、ジェードは少し胸が苦しくなった。一人で来たのは真実だ。だが、ヴァロニアから追い出された理由はわからない。
「では、聖地で一体何があったのですか?」
「せ、聖地で……」
「あなたはハリーファ殿下にお会いしたでしょう? 何があったのです」
その問いかけに、ジェードは聖地であったことを思い出した。
聖地で天使と出会い、金色の髪の少年を殺すという自分の天命を教えられたのだ。その後、生まれて初めて見た金色の髪の少年によって、砂色の世界は真っ赤に染められていった。
聖地で最後に見た光景が脳裏によみがえる。
ジェードは恐ろしい光景を思い出し、あの時恐怖で出せなかった言葉がもれた。
「いや……、嫌……」
そんなジェードの様子に、リューシャは少し辛そうな表情を見せた。
「……もう良いわ。少しお休みなさい」
そう言って、女性はジェードの手を引いてベッドに座らせた。
「落ち着いたら、わたくしには本当のことを話して頂戴。悪いようにはしないわ」
先程までのきつい口調とは変わって、リューシャはジェードの手を取ったまま、同情するようにほほえんだ。まるで天使のようなほほえみだ。ジェードには、聖地で少年を殺すように言ってきた【天使】よりも天使のようだ。
ジェードはリューシャにすがりつくように抱きついた。
「……殺されるわ……」
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「え……?」
「……三人とも、あの子が殺したのよ」
「あなた、何を言っているの?」
「ここに連れてこられた時に、大人の死体があったのを見たでしょ! あれは全部あの子が殺したのよ!」
「あの子って……。ハリーファ様……ですか?」
リューシャの口からハリーファの名を聞いて、ジェードは両手で耳をふさぎ目を閉じてうずくまった。
リューシャは、信じられないと言うように頭を横にふり、眉をしかめてジェードを見つめた。
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