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第三章 凋落騎士の策謀
臆病者の王太子(1)
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森に挟まれた街道を、二頭の馬がゆっくりと進んでいた。
ヘーンブルグ領を出たホープとヴィンセントの二人は、王都方面へと向かった。北東に向かう街道は、人の往来は全くない。
日が傾くに連れ、辺りは靄に包まれた。白い靄は二人の視界をさえぎり、外套をしっとりと濡らす。馬も、それに乗る人間も、白い息を吐いていた。寒さに顔が冷やされ、鼻や頬の感覚が鈍くなっていく。
ホープは、少しでも寒さを防ごうと、真新しい厚手の外套のフードを目深にかぶった。
「ジェードが村を出て、一ヶ月位経った頃からなんです。ジェードの声が聞こえたり、指の傷みたいな不思議な出来事がおこるのは」
道すがら、ホープは双子の姉ジェードと共有する不思議な感覚について、ヴィンセントに説明をした。
「姉君が聞いたという【天使】の声は、君には聞こえないのか?」
「……【天使】様の声は、ぼくには聞こえません。聞こえてくるのはジェードの声だけです……」
不思議な感覚はジェードと共有するのに、どうして自分には【天使】の声は聞こえないのか……。考えると、ホープの気持ちは沈んでいく。
「姉君には【天使】の声、君には【姉君】の声が聞こえるということか。君にとっては姉君が【天使】なんだな」
「えっ!?」
穏やかな微笑をたたえながら言うヴィンセントの台詞に、ホープは思わず顔が熱くなった。
ほんの一昨日から一緒に居るだけなのだが、この領主は時々ホープが聞いた事もないような、歯の浮くような気障な台詞を平気で言ってくる。その度にホープは赤面し動揺するのだが、どうやらヴィンセント本人は、至って真面目で、決してホープをからかっているつもりはないようだ。
森を抜けると、そこはヘーンブルグの『外』だった。靄は霧雨に変わった。
やがて街道は大きな四辻に差しかかり、そこでヴィンセントは行き先を東から北に変えた。
「ヴィンセント、王都はこっちでは?」
初めてヘーンブルグ領を出たホープだったが、一応の地図は頭に入っている。道の間違いをヴィンセントに告げた。
「いや、王都へは行かない。我々はローゼン領へ向かう。王太子に会いに行くんだ」
ホープは突然知らされた事実に驚いた。
「王太子様に? あの魔女狩りの書状は、王太子様から出されたものではないんでしょう? それに、王太子様は王都に居るんじゃないんですか? どうしてローゼン領に?」
「王太子は王都から追放されているんだ。今回は王太子の力を借りる」
「追放……?」
ヘーンブルグ領には王都や王族のゴシップなど、ほとんど情報が入ってこない。ホープが何も知らないのも、ヘーンブルグの人間としては普通のことだ。
霧雨に布製の手袋はすっかり濡れていた。ホープはかじかむ指先で手綱を引くと、ヴィンセントに続き馬首を北へと変えた。
ヘーンブルグ領を出たホープとヴィンセントの二人は、王都方面へと向かった。北東に向かう街道は、人の往来は全くない。
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ホープは、少しでも寒さを防ごうと、真新しい厚手の外套のフードを目深にかぶった。
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道すがら、ホープは双子の姉ジェードと共有する不思議な感覚について、ヴィンセントに説明をした。
「姉君が聞いたという【天使】の声は、君には聞こえないのか?」
「……【天使】様の声は、ぼくには聞こえません。聞こえてくるのはジェードの声だけです……」
不思議な感覚はジェードと共有するのに、どうして自分には【天使】の声は聞こえないのか……。考えると、ホープの気持ちは沈んでいく。
「姉君には【天使】の声、君には【姉君】の声が聞こえるということか。君にとっては姉君が【天使】なんだな」
「えっ!?」
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森を抜けると、そこはヘーンブルグの『外』だった。靄は霧雨に変わった。
やがて街道は大きな四辻に差しかかり、そこでヴィンセントは行き先を東から北に変えた。
「ヴィンセント、王都はこっちでは?」
初めてヘーンブルグ領を出たホープだったが、一応の地図は頭に入っている。道の間違いをヴィンセントに告げた。
「いや、王都へは行かない。我々はローゼン領へ向かう。王太子に会いに行くんだ」
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