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第1章 王国編

第10話 観察

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ドレイクはこのアースドラゴンのことを「アースドラゴン亜種」、略して亜種と呼ぶことにしていたが、亜種を観察し始めてすでに丸2日たっていた
観察していてわかったことは、戦闘能力に関しては抜群に優れているが知能に関してはあまり優秀でないということと、どうやらこのドラゴンは雑食だということだ
それも岩だろうが木だろうが無差別に食べているのだ

そして最も重要なことは、亜種の放つ光線は本来アースドラゴンの放つブレスとは別物だということだ
アースドラゴンのブレスは炎のような不定形の揺らめきをもつはずなのだが、亜種の光線は光線と形容したとおり、全くもって炎のようではなくまさしくビームなのだ
しかし、アースドラゴンのブレスについて長く研究してきたが、そのような特徴を持ったブレスを吐いた個体には遭遇したことがない
さらにいえば、翼の模様も今まで見たアースドラゴンの物とは若干異なっていて、この世のすべての動物は特定の種類の魔法の扱いに長けると、その身のどこかにそれを表す模様が現れるはずなのだ
ドラゴンは幼い頃から多くの魔法に適性があるため、その翼にはびっしりと模様があるのだが、亜種はどこを見ても土属性に優れていることを表す模様が浮かんでいないのだ、というよりも亜種の翼にはなんの模様も浮かんでいないのだ

このことから考えられるのは、亜種が実はアースドラゴンではない、もしくは何らかの原因で翼の模様が消えてしまったか見えなくなってしまった、そして最もあり得るのは、この個体は突然変異種であるという可能性だ
ドラゴンの突然変異など聞いたことはないが、足の数や腕の数が普通ではない家畜が生まれることがあるというのは聞いたことがある
このドラゴンも同様に魔法の扱いが下手に生まれてしまった特殊な個体なのではないだろうか

ドレイクがそんな風に考えていると、近くで正真正銘のドラゴンがブレスを吐く音が聞えてきた
亜種もその音に気がついたようだが、すぐに音とは反対方向に移動し始めた
後を追いかけようと腰を上げると、またもや咆哮とともにブレスを吐く音が聞えてきた

誰がこんなにドラゴンを怒らせたんだまったく
俺だったら絶対にドラゴンを怒らせるようなバカなまねはしないのに・・

・・あ、
冷や汗が頬をたれるのを感じた
ドラゴンは極度のストレスを受けるとストレスの対象を排除しようと暴走してしまうことがある、空腹はドラゴンのストレス要因第1位だろうなぁ、たぶん・・
そこまで考えるとおれは急いで音のした方に走っていった

音のした現場に到着すると、そこには木の枝からぶら下げられたデュークがいた
近くでは大きめの蜘蛛の大群が黒い煤になっていた
いくつかは原型をとどめていたから蜘蛛だったんだろうと予測できたのだ
そしてこれは、このブレスが俺に向けられることがないように今後は気をつけようと肝に銘じるきっかけとなった出来事だった
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