嫌われた大賢者と未来の竜王 ~「あれ、お前の鱗って金色だったっけ?」隠居した森で見つけたドラゴンの子供が成長しすぎて怖いです~

陽好

文字の大きさ
16 / 37
第1章 王国編

第16話 オスカー

しおりを挟む
治療が終わるとオスカー先生は再び本を開いた。カミラさんは雑談でもしててくれと言っていたけど、本を読んでいる人に話しかけるのは少し良くない気がする。あれ、そもそも何を話せばいいんだ? 人と話すことに関する経験値が少なすぎて何にもわからないぞ・・、 まあいっか、先生話す気なさそうだし。景色でも見てよっかな・・。そんな風に窓の外に目をやると、先生が突然話し始めた。

「ドラゴンの君に言うのもなんだかおかしいですけど、君はわたしの髪や肌の色について何も言わないんですね」

「あ、えっと、はい」

唐突に聞かれたその質問は僕が地球にいた頃のことを思い出させた。
どこの世界にも差別のような物はあるんだな・・、

「まぁ色が違うだけで騒ぐのはヒトだけですからね。そんな物をいちいち気にするなんていうのは全くおかしい! 君もそう思うでしょう」

「まぁ・・、そうですよね」

「ところで全く関係ないんですが君は今何歳なんですか?」

「ほっ、ほんとに関係ないですね、え~っと大体1ヶ月半くらいですかね」

「ほう、1ヶ月半でもうそんなに成長しているんですか。ドラゴンの成長というのは早いんですねぇ」

「まだ何も出来ないんですけどね」

「そうなんですか? ブレスも吐けないんですか?」

「・・、はい」

「あぁ、不躾な質問でしたね。申し訳ない。ただドラゴンと言えばブレスみたいな部分もありますのでね、ついつい聞いてしまったんです。本当に申し訳ない。」

先生は頭を下げた。

「い、いえ! 大丈夫です! と、ところで先生は医者なんですよね? どこで医術を学んだんですか?」

「そうですね~、全部話すと長いのでかいつまんで話しますね。
まぁ私は戦争孤児というやつでして、物心ついたときからずっと路上で生活していたんです。しかしある日、盗みで捕まってしまって王国の更生施設にいれられたんです。ただ路上で飢えに苦しみながら生活してきた私には天国のような場所でしたがね。そこで私は多くのことを事を学ばせていただきました。それで大体の人は2年以内に親元に帰されるんですが、私の場合は親がいなかったので里親の方が見つかるまでの1年はそこに雑用係としてとどまっていました。そして合計3年の月日がたったとき、当時は王国軍の医師をやっていた私の先生が私の里親になってくれまして、その方と生活していくうちに医術についてかなり詳しくなりましたね。まぁ後から聞いたら先生は小間使いが欲しかっただけなんだそうですがね、フフッ。」

「なるほど、・・すごい、ですね」

つい口をついて出てきた言葉は、なんのひねりもない「すごい」という言葉だった。きっと僕には想像できないくらいの過酷な過去を乗り越えてきたんだろうな、という思いが口をついて出たんだろう。
先生は不思議そうな顔で、

「なにがです?」

ときいてきた。

「いえ、大変だったんだろうなと思って」

「まあ、大変と言えば大変でしたけどね。たいしたことはありませんでしたよ。」

そして再び沈黙がおとずれた。
聞えるのは扉の外からのうめき声と、鳥の鳴く声だけだった。

その沈黙を破ったのは元気な少年の声だった。
ノックと共に部屋に入ってきた鈍い赤髪の少年は元気に叫んだ。

「オスカー先生! ドラゴンさんの治療が終わったらドレイクの方に来てってカミラさんが言ってる!」

「ありがとうマルス、すぐ行きますね。あ、そうだ、次からはもう少し静かに話していただけると嬉ですね。寝ている方も多いですから。」

「うん!」

マルスと呼ばれた少年は相変わらず元気いっぱいの返事をすると、走って行った。

「デューク君はここにいてもいいですけど、どうします?」

「あ、えっとじゃあ、ここにいようかな」

「わかりました。もし何かあったら呼んでください。なるべくすぐに戻りますので。」

「わかりました」

先生は扉を閉めて出て行った。
足音が遠ざかっていくのが聞えた。

―――――

しばらくすると、再び足音が聞えてきた。
どうやら一人ではなさそうだ。
足音はドンドン近づいてきて、扉の前まで来ると足音はとまった。

『コンコンッ』

ドアがノックされた。
どうしよう、返事した方がいいに決まってるけどなんて言おう。

『ドンドン!』

さっきより強い。
「先生はいません」と声をかけようとすると、扉の前から怒鳴り声が聞えてきた。

「おい! オスカー!! でてこい!!」

さきほどカミラさん怒鳴られたチビデブ男の声だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...