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第1章 王国編
第30話 岩
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「それじゃあどうぞ、召し上がってください」
「「・・いただきます」」
老人が出してきたのは食事と言ってもガチガチのパンと、もの凄い塩辛いハムだった。まあ毒が入っていなかっただけましだろう。
ドレイクは上着も抜かずに出てきた物を食べ終え、デュークももの凄い速さでパンとハムを飲み込んだ。
「それじゃあありがとうございました。いくらほどでしょうか?」
「では銅貨を10枚ほど」
「わかりました。1まい,2まい、3まい、4まい、5まい、6まい、・・あれ今日って何日でしたっけ?」
「え? ああ、今日は四の日ですよ」
「4か、そうだそうだ、今日は四の日でしたね。えーっと、5まい、6まい、7まい、8まい、9まい、10まい。はいじゃあさようなら」
「ありがとうございます」
「それじゃあ」
ドレイクはそう言うとさっさとその家を出て行った。デュークもそれについていく。老人の家からしばらく進んだところで、デュークがドレイクに話しかけた。
「ねえさっきのわざと? 12枚払ってたよ?」
「わざとに決まってんだろ、俺の事誰だと思ってるんだ?」
「見通し甘甘男」
「・・否定は出来んが違うそうじゃない。ああいうのは少し多く払っとくといいんだよ、足りないだなんだ言われたら面倒だろ? それに俺らはそんなに金使わないだろ? だったら困ってる人にあげたほうがいいじゃねえか」
「あとさ、なんで牧場主? どゆこと?」
「咄嗟に出てきたのがそれだったんだよ! いいだろ別に」
「あははっ、まあいいけどね」
「それにしても、たまにはドレイクもいいことするんだね」
「いつもいいことしてるわ」
「まあそういうことにしといてあげるよ」
王都に向かって歩く2人の上空には満月が浮かんでいた。
*****
ふ~む、牧場主ということは彼は本番は王城を攻撃する部隊と言うことか、あんなに若いのにさぞ優秀なのだろうなぁ。
本当にただの旅人の可能性もあったから一応乞食ジジイの演技は続けたが、ドラゴンを連れていて、かつ誰だと聞かれて牧場主などと言う旅人がいるはずないからな。
そうか・・、とうとう計画の第一段階を始動するのか・・
ドレイクとデュークの出て行ったぼろ小屋では、先ほどの男が一人でブツブツと呟きながら何かを考えているようだった。
そうだとすると先ほどのドラゴンがアレだったのだな。ふむ、しかし先ほどの青年は機転の利いた対応だったな。どうやってコインを渡してくるのかと思ったら日にちを聞いてそのまま重ねて数えるとは・・。
今日は満月の日で、渡された枚数は12枚、つまり計画の実行日は今日から2回目の満月の日か・・・・。
「ハッハッハッハッハ!! ついに来たぞ! ついにこのときが!!」
その男は立ち上がると何やら呪文を唱えた。するとその男の顔は、体は、みるみるうちに姿を変え、変化が止まるとそこにはがっしりとした壮年の男が立っていた。
男はそのまま小屋をでると、軽やかな足取りでどこかへと走り出した。
*****
ドレイクとデュークは結局一晩中王都に向かって歩き続けていた。周りには特に何もなく、同じような風景が続いているだけだった。
「結局寝なかったけどさ、意外と平気だね」
「まあそう思ってるだけで実際は集中力とか諸々の能力が下がってると思うけどな」
「あ、なんかある」
「ん、なんだあれ?」
「・・・・岩?」
近づくにつれてはっきりと見えるようになったそれは、ぐるりと縄を回された大きな岩だった。およそ2メートルほどの高さの岩に、太い麻縄のような物が回されており、所々に札が貼ってある。
「何これ?」
「いや、見たことないな」
「なんか呪いのお札みたいだね」
「なんだそれ?」
「え? 呪いのお札? 何って言われても・・、呪いは呪いだよ」
「なんだそれ? 聞いたことないぞ?」
「じゃあやっぱ違うかも」
縄をかけられたその大きな岩は、道から少し外れた周囲に何もないところにあった。まあそもそも四方1キロ見渡す限りほとんど何もないのだが・・
「なあデューク、気になるよな?」
「い、いや、気にならないかな、全然、全く、完全に!」
「いや気になるなぁ、近くで見てみようや」
「やだよ! だって何かわかんないんだよ!?!? 近づいたら食べられちゃうかもしれないじゃん!」
「岩が? 何言ってんだあり得ないだろ、普通は・・」
「あるかもしれないじゃん!(バサルモスかもしれないじゃん!!)」
デュークの必死の制止もむなしく、ドレイクはズンズンと岩に向かって進んでいく。そして、岩の目の前までやってきたドレイクは突然、岩に向かって白い光線を放った。光線を上下に岩に向かって当てている。
「ちょ! 何してんの!!」
「いや内側を見てみようと思って」
「なんで!!」
「いや別に壊して中見ようって訳じゃねえんだからいいじゃねえか」
「その光が嫌いだったらどうすんの!?」
「岩がか?」
「・・岩じゃないかもしれないじゃん!」
「・・・・いやどう見ても岩だろ」
そうドレイクが言った次の瞬間、耳を劈く咆哮と共に、目の前の岩が生えている地面がボコボコと隆起しはじめた。
そして数秒後、目の前には背中から先ほどの岩をはやした巨大なドラゴンのような生き物が立っていた。
「はぁ・・・・、最悪」
「逃げるぞ! デューク!!!」
「「・・いただきます」」
老人が出してきたのは食事と言ってもガチガチのパンと、もの凄い塩辛いハムだった。まあ毒が入っていなかっただけましだろう。
ドレイクは上着も抜かずに出てきた物を食べ終え、デュークももの凄い速さでパンとハムを飲み込んだ。
「それじゃあありがとうございました。いくらほどでしょうか?」
「では銅貨を10枚ほど」
「わかりました。1まい,2まい、3まい、4まい、5まい、6まい、・・あれ今日って何日でしたっけ?」
「え? ああ、今日は四の日ですよ」
「4か、そうだそうだ、今日は四の日でしたね。えーっと、5まい、6まい、7まい、8まい、9まい、10まい。はいじゃあさようなら」
「ありがとうございます」
「それじゃあ」
ドレイクはそう言うとさっさとその家を出て行った。デュークもそれについていく。老人の家からしばらく進んだところで、デュークがドレイクに話しかけた。
「ねえさっきのわざと? 12枚払ってたよ?」
「わざとに決まってんだろ、俺の事誰だと思ってるんだ?」
「見通し甘甘男」
「・・否定は出来んが違うそうじゃない。ああいうのは少し多く払っとくといいんだよ、足りないだなんだ言われたら面倒だろ? それに俺らはそんなに金使わないだろ? だったら困ってる人にあげたほうがいいじゃねえか」
「あとさ、なんで牧場主? どゆこと?」
「咄嗟に出てきたのがそれだったんだよ! いいだろ別に」
「あははっ、まあいいけどね」
「それにしても、たまにはドレイクもいいことするんだね」
「いつもいいことしてるわ」
「まあそういうことにしといてあげるよ」
王都に向かって歩く2人の上空には満月が浮かんでいた。
*****
ふ~む、牧場主ということは彼は本番は王城を攻撃する部隊と言うことか、あんなに若いのにさぞ優秀なのだろうなぁ。
本当にただの旅人の可能性もあったから一応乞食ジジイの演技は続けたが、ドラゴンを連れていて、かつ誰だと聞かれて牧場主などと言う旅人がいるはずないからな。
そうか・・、とうとう計画の第一段階を始動するのか・・
ドレイクとデュークの出て行ったぼろ小屋では、先ほどの男が一人でブツブツと呟きながら何かを考えているようだった。
そうだとすると先ほどのドラゴンがアレだったのだな。ふむ、しかし先ほどの青年は機転の利いた対応だったな。どうやってコインを渡してくるのかと思ったら日にちを聞いてそのまま重ねて数えるとは・・。
今日は満月の日で、渡された枚数は12枚、つまり計画の実行日は今日から2回目の満月の日か・・・・。
「ハッハッハッハッハ!! ついに来たぞ! ついにこのときが!!」
その男は立ち上がると何やら呪文を唱えた。するとその男の顔は、体は、みるみるうちに姿を変え、変化が止まるとそこにはがっしりとした壮年の男が立っていた。
男はそのまま小屋をでると、軽やかな足取りでどこかへと走り出した。
*****
ドレイクとデュークは結局一晩中王都に向かって歩き続けていた。周りには特に何もなく、同じような風景が続いているだけだった。
「結局寝なかったけどさ、意外と平気だね」
「まあそう思ってるだけで実際は集中力とか諸々の能力が下がってると思うけどな」
「あ、なんかある」
「ん、なんだあれ?」
「・・・・岩?」
近づくにつれてはっきりと見えるようになったそれは、ぐるりと縄を回された大きな岩だった。およそ2メートルほどの高さの岩に、太い麻縄のような物が回されており、所々に札が貼ってある。
「何これ?」
「いや、見たことないな」
「なんか呪いのお札みたいだね」
「なんだそれ?」
「え? 呪いのお札? 何って言われても・・、呪いは呪いだよ」
「なんだそれ? 聞いたことないぞ?」
「じゃあやっぱ違うかも」
縄をかけられたその大きな岩は、道から少し外れた周囲に何もないところにあった。まあそもそも四方1キロ見渡す限りほとんど何もないのだが・・
「なあデューク、気になるよな?」
「い、いや、気にならないかな、全然、全く、完全に!」
「いや気になるなぁ、近くで見てみようや」
「やだよ! だって何かわかんないんだよ!?!? 近づいたら食べられちゃうかもしれないじゃん!」
「岩が? 何言ってんだあり得ないだろ、普通は・・」
「あるかもしれないじゃん!(バサルモスかもしれないじゃん!!)」
デュークの必死の制止もむなしく、ドレイクはズンズンと岩に向かって進んでいく。そして、岩の目の前までやってきたドレイクは突然、岩に向かって白い光線を放った。光線を上下に岩に向かって当てている。
「ちょ! 何してんの!!」
「いや内側を見てみようと思って」
「なんで!!」
「いや別に壊して中見ようって訳じゃねえんだからいいじゃねえか」
「その光が嫌いだったらどうすんの!?」
「岩がか?」
「・・岩じゃないかもしれないじゃん!」
「・・・・いやどう見ても岩だろ」
そうドレイクが言った次の瞬間、耳を劈く咆哮と共に、目の前の岩が生えている地面がボコボコと隆起しはじめた。
そして数秒後、目の前には背中から先ほどの岩をはやした巨大なドラゴンのような生き物が立っていた。
「はぁ・・・・、最悪」
「逃げるぞ! デューク!!!」
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