嫌われた大賢者と未来の竜王 ~「あれ、お前の鱗って金色だったっけ?」隠居した森で見つけたドラゴンの子供が成長しすぎて怖いです~

陽好

文字の大きさ
30 / 37
第1章 王国編

第30話 岩

しおりを挟む
「それじゃあどうぞ、召し上がってください」

「「・・いただきます」」

 老人が出してきたのは食事と言ってもガチガチのパンと、もの凄い塩辛いハムだった。まあ毒が入っていなかっただけましだろう。
 ドレイクは上着も抜かずに出てきた物を食べ終え、デュークももの凄い速さでパンとハムを飲み込んだ。

「それじゃあありがとうございました。いくらほどでしょうか?」

「では銅貨を10枚ほど」

「わかりました。1まい,2まい、3まい、4まい、5まい、6まい、・・あれ今日って何日でしたっけ?」

「え? ああ、今日は四の日ですよ」

「4か、そうだそうだ、今日は四の日でしたね。えーっと、5まい、6まい、7まい、8まい、9まい、10まい。はいじゃあさようなら」

「ありがとうございます」

「それじゃあ」

 ドレイクはそう言うとさっさとその家を出て行った。デュークもそれについていく。老人の家からしばらく進んだところで、デュークがドレイクに話しかけた。

「ねえさっきのわざと? 12枚払ってたよ?」

「わざとに決まってんだろ、俺の事誰だと思ってるんだ?」

「見通し甘甘男」

「・・否定は出来んが違うそうじゃない。ああいうのは少し多く払っとくといいんだよ、足りないだなんだ言われたら面倒だろ? それに俺らはそんなに金使わないだろ? だったら困ってる人にあげたほうがいいじゃねえか」

「あとさ、なんで牧場主? どゆこと?」

「咄嗟に出てきたのがそれだったんだよ! いいだろ別に」

「あははっ、まあいいけどね」

「それにしても、たまにはドレイクもいいことするんだね」

「いつもいいことしてるわ」

「まあそういうことにしといてあげるよ」

 王都に向かって歩く2人の上空には満月が浮かんでいた。


*****


 ふ~む、牧場主ということは彼は本番は王城を攻撃する部隊と言うことか、あんなに若いのにさぞ優秀なのだろうなぁ。
 本当にただの旅人の可能性もあったから一応乞食ジジイの演技は続けたが、ドラゴンを連れていて、かつ誰だと聞かれて牧場主などと言う旅人がいるはずないからな。
 そうか・・、とうとう計画の第一段階を始動するのか・・

 ドレイクとデュークの出て行ったぼろ小屋では、先ほどの男が一人でブツブツと呟きながら何かを考えているようだった。

 そうだとすると先ほどのドラゴンがアレだったのだな。ふむ、しかし先ほどの青年は機転の利いた対応だったな。どうやってコインを渡してくるのかと思ったら日にちを聞いてそのまま重ねて数えるとは・・。
 今日は満月の日で、渡された枚数は12枚、つまり計画の実行日は今日から2回目の満月の日か・・・・。

「ハッハッハッハッハ!! ついに来たぞ! ついにこのときが!!」

 その男は立ち上がると何やら呪文を唱えた。するとその男の顔は、体は、みるみるうちに姿を変え、変化が止まるとそこにはがっしりとした壮年の男が立っていた。
 男はそのまま小屋をでると、軽やかな足取りでどこかへと走り出した。


*****


 ドレイクとデュークは結局一晩中王都に向かって歩き続けていた。周りには特に何もなく、同じような風景が続いているだけだった。

「結局寝なかったけどさ、意外と平気だね」

「まあそう思ってるだけで実際は集中力とか諸々の能力が下がってると思うけどな」

「あ、なんかある」

「ん、なんだあれ?」

「・・・・岩?」

 近づくにつれてはっきりと見えるようになったそれは、ぐるりと縄を回された大きな岩だった。およそ2メートルほどの高さの岩に、太い麻縄のような物が回されており、所々に札が貼ってある。

「何これ?」

「いや、見たことないな」

「なんか呪いのお札みたいだね」

「なんだそれ?」

「え? 呪いのお札? 何って言われても・・、呪いは呪いだよ」

「なんだそれ? 聞いたことないぞ?」

「じゃあやっぱ違うかも」

 縄をかけられたその大きな岩は、道から少し外れた周囲に何もないところにあった。まあそもそも四方1キロ見渡す限りほとんど何もないのだが・・

「なあデューク、気になるよな?」

「い、いや、気にならないかな、全然、全く、完全に!」

「いや気になるなぁ、近くで見てみようや」

「やだよ! だって何かわかんないんだよ!?!? 近づいたら食べられちゃうかもしれないじゃん!」

「岩が? 何言ってんだあり得ないだろ、普通は・・」

「あるかもしれないじゃん!(バサルモスかもしれないじゃん!!)」

 デュークの必死の制止もむなしく、ドレイクはズンズンと岩に向かって進んでいく。そして、岩の目の前までやってきたドレイクは突然、岩に向かって白い光線を放った。光線を上下に岩に向かって当てている。

「ちょ! 何してんの!!」

「いや内側を見てみようと思って」

「なんで!!」

「いや別に壊して中見ようって訳じゃねえんだからいいじゃねえか」

「その光が嫌いだったらどうすんの!?」

「岩がか?」

「・・岩じゃないかもしれないじゃん!」

「・・・・いやどう見ても岩だろ」

 そうドレイクが言った次の瞬間、耳を劈く咆哮と共に、目の前の岩が生えている地面がボコボコと隆起しはじめた。
 そして数秒後、目の前には背中から先ほどの岩をはやした巨大なドラゴンのような生き物が立っていた。

「はぁ・・・・、最悪」

「逃げるぞ! デューク!!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...