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第1章 王国編
第33話 到着
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――2日後
「いや~、やっとだな」
「すごい遠かったね」
「ああ、もう二度と歩いてなんて旅したくねえな」
王都の外壁から3キロほどの場所をドレイクと人間の姿になったデュークが歩いていた。王都に入るに当たって身元を確認されるのだが、ドレイクは帝国の天才賢者として名を馳せた時代があったため、王都に入る前に間違って射殺されることが無いように、まだ門が辛うじて見える程度の距離なのにもかかわらず既に防御魔法を展開していた。
「いいか、お前は俺の弟子、俺はカミラ・ロジェに頼まれて手紙を渡しに来ただけで、決して単独で王都を陥落させにきた訳ではない。手紙を中将に渡しに来ただけだからな」
「もう分かったよ、何回言うの」
「おまえ絶対くしゃみするなよ、したとしても絶対変化の術解くなよ! もしもお前がドラゴンに戻っちゃったら絶対単騎突撃しにきたと思われるからな」
「わぁかってるってば、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「こんなに緊張してるのなんて久しぶりすぎて駄目なんだよ!」
「そんなにビクビクしてたら駄目だよ! ほらもっと堂々としてなきゃ」
そんな風なやりとりを繰り広げながら二人は門に向かって歩いて行った。どうやらこちら側から王都に入る人は少ないようで、門のところにはほとんど人がいなかった。
「そこで止まれ~! 身分を証明するモノを提出しろ!」
「はい、これです」
ドレイクはそう言って一枚の上等な紙を衛兵に渡した。兵士はその紙を見ると眉間にしわを寄せ、小声で隣の男に耳打ちをした。耳打ちされた男はどこかへ向かって走って行った。
「お前達はここでしばらく待て」
「わかりました」
衛兵に案内されるままに門の内側にある部屋に通され、しばらくそこで待つように言われた。部屋に入るときに荷物はすべて回収されてしまったが、特に何をされるわけでも無かった。
「全然だいじょぶそうじゃん」
「まだ分からないぞ、ここの衛兵が誰を呼びに行ったのか、ソレによっては全然大丈夫じゃ無い」
「あぁ、まぁね」
デュークはドレイクが心配しすぎなのでは無いかとも思ったが、用心に越したことは無いからまあいいかと窓の外を眺め始めた。
しばらく窓の外を眺めていると日は段々と傾き、すでに外は夕焼けで赤く染まりだしていた。すでにかなりの時間をこの部屋で過ごしているが、一向に扉が開く気配は無い。
いつまで待たせるつもりなんだとそう思っていると、扉は突然開き鎧を着た背の低い男が入ってきた。
「食事だ。もう少しここで待て」
背の低い男はそれだけ言ってパンと水と干し肉を机におくと出て行ってしまった。あまりの硬さに驚きながらパンのようなモノで机を叩くと「カンカンッ」という竹を打ち付けたような音がした。
「これなに?」
「パンじゃないか?」
「・・だよね?」
しかし食べてみればそのパンは思ったほどの硬さでは無く、単純に中がスカスカなせいで音が響いただけだった。まあパンというよりは苦い煎餅のようだったが・・
パンと肉を食べ終わると外は既に暗くなり、部屋の中はドレイクの魔法で作られた光の球が無ければ何も見えないほどの暗さだった。
緊張していたはずのドレイクも、あまりにも長時間待たされたせいで緊張の「き」の字くらいしか残っていなさそうだった。
そしてデュークが炎でも出した遊ぼうかと指に緑色の炎を灯すと、タイミングよく扉が開いた。
先ほどの背の低い男に続いて背の高い痩身の男が入ってきた。背の高い男が扉を閉めると背の低い男がいった。
「上官が貴様らの取り調べを行う。嘘はつかないように」
「ようこそ王都へ、王国陸軍第3師団(以下略)のアルトゥル・バウス大尉だ。今回はどのような用事でいらっしゃったのかな、帝国臣民の賢者殿?」
バウス大尉の声は僅かな感情も感じ取れないほど淡々としていたが、なぜかとても怖かった。
「いや~、やっとだな」
「すごい遠かったね」
「ああ、もう二度と歩いてなんて旅したくねえな」
王都の外壁から3キロほどの場所をドレイクと人間の姿になったデュークが歩いていた。王都に入るに当たって身元を確認されるのだが、ドレイクは帝国の天才賢者として名を馳せた時代があったため、王都に入る前に間違って射殺されることが無いように、まだ門が辛うじて見える程度の距離なのにもかかわらず既に防御魔法を展開していた。
「いいか、お前は俺の弟子、俺はカミラ・ロジェに頼まれて手紙を渡しに来ただけで、決して単独で王都を陥落させにきた訳ではない。手紙を中将に渡しに来ただけだからな」
「もう分かったよ、何回言うの」
「おまえ絶対くしゃみするなよ、したとしても絶対変化の術解くなよ! もしもお前がドラゴンに戻っちゃったら絶対単騎突撃しにきたと思われるからな」
「わぁかってるってば、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「こんなに緊張してるのなんて久しぶりすぎて駄目なんだよ!」
「そんなにビクビクしてたら駄目だよ! ほらもっと堂々としてなきゃ」
そんな風なやりとりを繰り広げながら二人は門に向かって歩いて行った。どうやらこちら側から王都に入る人は少ないようで、門のところにはほとんど人がいなかった。
「そこで止まれ~! 身分を証明するモノを提出しろ!」
「はい、これです」
ドレイクはそう言って一枚の上等な紙を衛兵に渡した。兵士はその紙を見ると眉間にしわを寄せ、小声で隣の男に耳打ちをした。耳打ちされた男はどこかへ向かって走って行った。
「お前達はここでしばらく待て」
「わかりました」
衛兵に案内されるままに門の内側にある部屋に通され、しばらくそこで待つように言われた。部屋に入るときに荷物はすべて回収されてしまったが、特に何をされるわけでも無かった。
「全然だいじょぶそうじゃん」
「まだ分からないぞ、ここの衛兵が誰を呼びに行ったのか、ソレによっては全然大丈夫じゃ無い」
「あぁ、まぁね」
デュークはドレイクが心配しすぎなのでは無いかとも思ったが、用心に越したことは無いからまあいいかと窓の外を眺め始めた。
しばらく窓の外を眺めていると日は段々と傾き、すでに外は夕焼けで赤く染まりだしていた。すでにかなりの時間をこの部屋で過ごしているが、一向に扉が開く気配は無い。
いつまで待たせるつもりなんだとそう思っていると、扉は突然開き鎧を着た背の低い男が入ってきた。
「食事だ。もう少しここで待て」
背の低い男はそれだけ言ってパンと水と干し肉を机におくと出て行ってしまった。あまりの硬さに驚きながらパンのようなモノで机を叩くと「カンカンッ」という竹を打ち付けたような音がした。
「これなに?」
「パンじゃないか?」
「・・だよね?」
しかし食べてみればそのパンは思ったほどの硬さでは無く、単純に中がスカスカなせいで音が響いただけだった。まあパンというよりは苦い煎餅のようだったが・・
パンと肉を食べ終わると外は既に暗くなり、部屋の中はドレイクの魔法で作られた光の球が無ければ何も見えないほどの暗さだった。
緊張していたはずのドレイクも、あまりにも長時間待たされたせいで緊張の「き」の字くらいしか残っていなさそうだった。
そしてデュークが炎でも出した遊ぼうかと指に緑色の炎を灯すと、タイミングよく扉が開いた。
先ほどの背の低い男に続いて背の高い痩身の男が入ってきた。背の高い男が扉を閉めると背の低い男がいった。
「上官が貴様らの取り調べを行う。嘘はつかないように」
「ようこそ王都へ、王国陸軍第3師団(以下略)のアルトゥル・バウス大尉だ。今回はどのような用事でいらっしゃったのかな、帝国臣民の賢者殿?」
バウス大尉の声は僅かな感情も感じ取れないほど淡々としていたが、なぜかとても怖かった。
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