インスタントフィクション

ハギワラ

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溜飲

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水道から水をコップに注ぎ、テーブルにおいてしばらく眺める。透明な水は同じく透明なコップと同化して、そこには一片の曇りもないことを告げている。
 右手でそれを、持ち上げてみる。しっかりとした重みが伝わる。腕の震えに合わせて水面が揺れぐ。
 口に近づける。唇に触れるまで近づけても何も匂わない。水はやはり匂わないものなんだなと思う。
 水が口に注がれる。口を少し開け、舌を下の歯の裏に添わせる。水が入ってくる。しっとりとしたそれは一切の迷いなく口の中を侵してゆく。歯を、舌を、口内全体を舐って体の奥に入り込もうとする。それを私は受け入れる。それが私を生かしていると知っているから。
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