最強のチー

クロクマ

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帝都では濃い日常

第十八話 現実はそんなに甘くない

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 俺達は森での三ヶ月間では感じられなかったものを今嫌という程感じている。
 それは、圧倒的な実力の差と絶望。

 震えが止まらない、尋常ではないほどの汗が出る。ありえない信じられない、そんな言葉で現実逃避しようとしてもその存在は確かに目の前にいる。

 実際、天狗になっていたかもしれない。チートなスキルとそこから来る自信で、しかしここは現実リアル、しかも日本とは違い一つの命が軽く一撃で敵を屠ることができる魔法の概念が存在する世界だ。

「ち、ちくしょう……」

 うまく言葉が出ない、『恐怖吸収』でも吸収しきれないほどの恐怖で吐き気さえもする。

 『少年よ…』

 黒い龍は喋った…と言うより念話のようなもので語りかけてきた。

 『お前で六人目だ…』

 何の話だ、と返事をする事は出来なかった、それは殺されたとかではなく、強すぎる存在を前に俺の意識が長く持たず気絶してしまったからだ。
 そして龍は呟く、

 『主からは十人来ると聞いていたがなかなか皆個性が強いな…』


====


 「……知らない天井だ」

 お決まりのセリフを言ってみたがそこは龍と出会った草原ではなく赤い夕日が差し込み清潔に保たれている部屋か小屋?のベッドの上で意識が戻った。
 俺の精神はあんなにも怖い事が起こったが今は不思議と穏やかな気持ちである。
 周りを見渡すと人が住むには最低限の物しかなく実に殺風景な所だった。
 枕元には猫型ではなくスライムらしい丸いナデシコが寝ているしかしアスカが見当たらない『ワールドマップ』を発動し探すと隣の部屋に居た。そしてここは北アメリカ大陸の帝国の帝都『メディラム』の外れのどこかの家の中らしい。
 早速ナデシコを抱き上げアスカの元へ行く。

「アスカ、大丈夫か?」

 部屋のドアを開けアスカに語りかけると目が覚めたらしく混乱した顔をしていたが俺を見て泣きながら駆け寄って抱きついてきた。

「あぁ、アキ…あれは夢だったの?」

「夢、だといいんだけどな…」

「わっ!何抱きついてんのよ!」

 アスカの鉄拳が頬にめり込む。

「ばぶっ!そっちが先だろ…」

「う、うるさい!ここはどこよ!」

「帝都だ、俺が考えるにあの龍に転移か何かでここに送られた」

「なんでそんな事を?」

「さぁな、でも無事だったんだ帝都にも着いたし、次龍に会うときまでにギャフンと言わせれるくらい強くなろう」

 目標が一つ増えこれから忙しくなりそうだが俺は龍が言っていたことが頭に引っかかる六人目とは一体なんのことか。

「取り敢えずこの家を調べよう」

「そうね」

 『ピィ~?』

「起きたかナデシコ」

 ご丁寧に街外れの家に転移してくれたが何があるか不安なので家を調べることにした。

 家は二階建てで割と大きく宿屋の様に部屋がたくさんあった。一階は居間になっており六人がけの大きなテーブルやキッチンなどがあった。
 二階には六つの部屋があり、窓はあるがどれも同じように殺風景であった。さらに庭もありその広さは100メートル走が余裕で出来るくらい広い。
 一通り家の確認を終え居間に戻ったら、テーブルの上に一枚の手紙が置いてある。さっき居間を調べた時何も無かったのに俺達が庭に出ている間に誰かが置いたのだろう。
 差出人は大体予想は付くが…

 「さて、龍か神様かどっちかだな」

 手紙を手に取り読み始めた。

====

 どうも、お久しぶりです。神です。

 今回の件で私の眷属の黒龍にお会いしたと思いますがどうでしたか?

 そして彼が言ったことに疑問を持つかも知れませんが今はまだ話せません。
 
 最後にこの家はあなた達の為に用意りた物です。あ、ここに永住しろとかではないので好きに改造するなり何なり使ってください。

 では、失礼致します…

  by神

====

「まさかあの龍が眷属だったとは…」

「ねぇアキ?創造主様に会ったことあるんだよね?どんな人?」

「美人で神々しいくて、あと…残念」

「残念?よくわかんないわね」

「今日はもう寝て明日街を散策しよう」

「賛成!」

 『ピィ!』

 俺達は早めの夕食を食べ寝ることにした。

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