追放王子の流刑地脱出劇!〜背に腹はかえられないので罪人をパーティに入れようと思います!〜

天海二色

文字の大きさ
29 / 35
第四章 王城が大変なことになっているんだが?

第二十九話 いざ、帰城!

しおりを挟む
 サランディア王国、王都の王城。その空の上に白い魔法陣が浮かびあがり、眩いほどの光を放つ。
 そのしばらく後、魔法陣の中心から金髪金眼の青年、レオナルトが姿を現し……重力に従い落下した。

「うわぁあああっ!?」

 彼が現れたのを皮切りに、魔法陣からはグレンにリック、ルゥも光の粒子から姿を形成し、空へ放り出される。

「ひぇえええ! 高いです~っ!!」
「レオお前っ、どこに転送してんだよ!? 落下死一直線じゃねぇか!!」
「そっ、そう言われてもだな! そもそもジズが私の集中を乱さなければ、座標を間違うことなど……っ!」
「そのジズ、レオくんに引っ付いてきているみたいだけど」

 焦るレオナルト達と対照的に、落ち着き払っているルゥがレオナルトの顔、正確には頭の上を指差す。
 そこには鳩サイズとなった極彩色の怪鳥、ジズがちょこんと座っていた。ここが自分の巣だ、とでも言うかのように堂々と。

「はぁあああ!? 私の転送魔法に突っ込んできたのか、こやつ!?」

 レオナルトが叫ぶ間にも落下は続き、地上がぐんぐんと迫ってくる。
 王城の高い塔の屋根が槍のように迫り、吹き抜ける風が肌を切るようだった。しかしこの乱気流に晒されている中、魔法を使うことは難しい。折角、ドラゴンを討ち倒し王都へ帰ってきたというのに、このままでは仲間もろとも屋根のシミとなってしまう。

「っ! ええい、小言は後だ! ジズよ! 私の頭を間借りしたくば、大きくなって私達を助けてくれ!!」

 そこでレオナルトは半ばヤケクソでジズに助けを請うと、

「クェーッ!」

 返事をするかのように鳴き、レオナルトの頭から飛び立つ。
 そしてぼふんっと軽快な音を立て、一瞬の内に城の上空を覆うほどに巨大化すると、レオナルト達の下へ回り込む。

「うおっ!?」
「あだっ!」
「いたっ!」
「おっと」

 ぼふんっ
 そして固く尖った屋根ではなく、柔らかな羽毛の上に落ちた四人は、各々悲鳴をあげながらも怪我なくジズの背中へ乗ることができた。

「お、おおお……。ありがとう、ジズ。……いや元はといえば、貴殿が原因な気がするが……。ま、まぁ助かったのだからよしとしよう」

 言葉が通じているのかわからないものの、律儀に礼を伝えるレオナルト。
 ジズは理解しているのかいないのか、「クェーッ!」といつも通りけたたましく鳴いている。

「わ、わぁ~っ! 僕たち、飛んでますぅ!」
「風が気持ちいいねぇ」
「下は阿鼻叫喚になっているみてぇだがな」

 初めての飛行を堪能するリックとルゥ。
 グレンはジズの頭と翼の隙間から地上の様子を伺い、突如として現れた巨大な怪鳥に慌てふためく街の人々を眺めていた。彼の発言に、レオナルトはハッとする。

「いかん! このままでは民を混乱させてしまう! 討伐隊も組まれることだろう! ジズよ! 地上へ降り立ち、その身を小さくしてくれ! 我が儘を言ってすまないが、これは貴殿を傷付けない為でもある!」
「クェーッ!」

 レオナルトの言葉を聞いたジズは一際大きく鳴くと、彼の願い通り、着地をしてくれた。
 王城の細長く尖った屋根の上に。

「……ちょっ、ジ、ジズよ、そこにとまっては……」

 屋根が壊れる。
 その言葉は紡がれることはなかった。レオナルトが言い切る前にジズの体重の負荷に負けた屋根にヒビが入り、崩壊を始めたのだから。

「あぁああああ!? 王城の屋根がぁっ!?」

 レオナルトが頭を抱え悲鳴をあげる。
 無数の瓦礫と化した屋根はガラガラと音を立てて地上へ向け落下し、王城の庭園へと落ちた。
 そこは丁度、地下牢の真上で――
 ドゴッ
 高所から落ちた瓦礫によって庭園に、地下牢の屋根に大穴が空く様を、レオナルトは顔を真っ青にして眺めることしかできなかった。

「クェエエ」

 レオナルトの心境などどこ吹く風なジズは、欠伸をするかのように一言鳴くと、支えにならなかった屋根を蹴り飛ばし、再び飛び立つ。
 そして今度は庭へ降り立ち、背伸びをしてレオナルト達を背中から落とした後、シュルシュルと体を鳩サイズまで小さくした。その状態で庭園にへたり込むレオナルトの頭の上に乗った。
 レオナルトはジズに頭の上でくつろがれながら、呆然と、砲弾でも撃ち込まれたかのような庭園の惨状を眺めていた。

「レオ? お~い、レオ~」

 口を半端に開けたまま動かないレオナルトの眼前で、グレンが試しに手を振ってみるものの、反応はない。完全に思考を停止してしまっているようだ。

「駄目だ、魂抜けてるわこいつ」
「困ったねぇ。僕らは初めて王都に来るのだし、彼の案内がなければ全く動けないのだけれど」
「そっ、それどころか侵入者になってしまいませんかぁ? ここ、王城の敷地内ですよねぇ?」

 リックはキョロキョロと辺りを見回し、声を震わせて言う。
 わざとではないとはいえ、無許可で王城の敷地に入ってしまったのは事実。しかもジズが王城の屋根を破壊してしまっている。投獄されてもおかしくない状況であった。

「それにしても静かだね。屋根が壊れるなんてイレギュラーが起きたっていうのに、全く騒がれていない」

 ルゥは王城の近衛騎士に動きがないことを不思議がり、周囲の様子を伺う。
 王城の敷地内ならば警備の一人や二人、巡回しているはずなのに、ここには人っ子一人いない。

「レオくん、しっかりして。何か、起きているよ」
「まさか、生きていたとは」

 ルゥがレオナルトの肩に手を置き、意識を引き戻そうとしたその時。
 庭園に空いた大穴から、大臣が浮遊しながら現れた。彼の斜め後ろにはオーウェンの姿もある。彼の魔法によって地下牢から飛んできたのだ。そのまま地上へ降り、大臣は苦々しげにレオナルトを睨む。

「悪運の強い子供だ」
「むっ! 私は成人しているぞ、大臣!」
「そういう問題じゃねぇだろ、レオ!」

 子供扱いされたことに怒るレオナルトへ突っ込みつつ、グレンは重心を低くして構えを取る。
 大臣から、隠そうともしていない敵意を感じ取ったからだ。

「しかもこの神聖な王城に罪人を入れ込むなど、言語道断。全員、首をはねられても文句は言えないぞ」
「彼らは私の大事な仲間だ! よく知ろうともせず愚弄するなど、この私が許さん!!」

 大臣への怒りから思考がクリアとなったレオナルトは立ち上がり、険しい表情を浮かべた。
 尤もジズは変わらず彼の頭の上に乗っているので、いささかシュールな絵になってしまっているが。

「しかし、罪人に加えモンスターを連れているだなんて。まさにスキャンダルだ。ここに観客がいないのが非常に残念だが……」

 大臣は冷たく笑い、ゆっくりと手を掲げた。

「折角だ、予行演習としよう」

 それを合図に、レオナルト達の周囲に無数の魔法陣が展開され、数十人にもなる近衛騎士が召喚される。オーウェンが魔法で呼び出したのだ。
 虚な目をした彼らは一斉に剣を抜き、その切先をレオナルト達へ向けてきた――!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...