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第五章 恋する乙女大作戦編
第88話 点と線の襲撃
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「おおっと!」
銀の細剣が目に突き刺さる直前、パラチオンはグッと体勢を低くして水銀の攻撃を躱した。
「あら。いい位置に頭が来たわね」
ゴッ!
しかし水銀の攻撃は細剣だけで終わらず、体勢を低くし下がったパラチオンの頭、正確には顎目掛けて蹴りが入る。
その蹴りは躱し切れず、靴のつま先がめり込んでパラチオンは後方へ吹っ飛んだ。だが勢いそのままパラチオンは身体を大きく逸らし床に手を付け、ぐるんとバク転をし蹴りの衝撃を受け流す。
諸に蹴りを喰らった彼の顎は腫れていて、パラチオンは眉を潜めながらそこを軽くさすった。
「やってくれたな、カマ野郎」
「首を落としたつもりだったのだけれど、相変わらず頑丈ねアンタ」
水銀は呆れた顔で言った。何せ、蹴りを入れた水銀の足の方が少し痺れているからだ。
ウミヘビは、宿す毒素が強い程に身体が頑丈に作られる。それは外傷によって強力な毒素を体外に溢れないよう、容易に穴を空けられないようにと考えられた、人間側の都合である。
「硬い殻を壊すのって疲れるのよねぇ。だからいつも通り、絞め殺してあげるわ」
「クハッ! お前の動きは今までの手合わせで飽きるほど見てきたんだ! タネが割れた古臭い手で、この俺様をやり込めると思うなよ!」
「お馬鹿。手合わせ程度でボクの手の内、全部見たつもりになっているんじゃないわよ」
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
広間の中央、射線を遮る物が何もない場所に立つパラチオンに向けて、2階からニコチンが銃弾を放つ。
その発砲音を聴きパラチオンは即座に回避行動へ移った。
「それに今のアンタは多勢に無勢。今までのおさらいだけで、このボクを出し抜けると思わないで頂戴な」
ドドドドドッ!
ニコチンは1発ずつ撃つ威力の高い弾丸から連射性の高い弾丸へ構えを一切変えずに切り替え、パラチオン1人を狙って撃ち込み続ける。
パラチオンに当たらなかった連射弾は床へ細かい穴を空け、ヒビを広げていく。時間が経つ程、ニコチンの射撃を許す程に足場がどんどん悪くなっていく。
しかしパラチオンはそれとは関係のない所で、苛立ちを覚えていた。
「ニコチンお前、本調子じゃないな?」
普段と比べ射撃精度が劣っている、ニコチンの銃撃に対して。
「そんな半端な状態で俺様をやり込もうと!? ただでさえお前は俺様の下位互換だというのに、舐められたものだな!!」
「うるせぇ。こっちは起きたばっかだってのに、強制招集されて渋々お前ぇの相手してやってんだ。有り難がれや。けどまぁ、寝起きの肩慣らしにゃ、丁度いいかもなァッ!」
ニコチンは石柵の上に乗り、拳銃を構え直す。
――両手で。
「ハッ! 鬱陶しい!」
ドドドドドドドドッ!
構える拳銃が2丁に増えた事により、シンプルに弾数が増えパラチオンを追い詰めていく。
ドンッ! ドンッ!
しかも片方の拳銃は連射をし逃げ場を限定し、その逃げた先に向かって発射が単発ずつな代わりに、威力の高い銃弾をもう片方の拳銃で撃ち込むという、中々エゲツない戦法を1人でこなしている。
だがそれでも、電光石火の如く神殿を動き回るパラチオンを捕らえられない。
(……っ! ここっ!)
パラチオンが1階の壁際、石柱の側まできてニコチンの射線を少し遮れる場所まで来た時。
石柱の上部、2階の廊下の裏側。暗闇に溶け込みダガーナイフを楔代わりに刺して掴まり、ずっとこの瞬間を狙っていたタリウムが飛び降り、ダガーナイフをパラチオンに向け振り下ろす。
視界の外、それも真上からの奇襲にパラチオンの反応も遅れ、一撃を許す事となってしまった。
それによってダガーナイフはパラチオンの足の甲に深々と刺さり、彼は床の石畳に串刺しとなる。
「ハッ! 体重に加えて、毒素を抽射器の先端に一点周知し俺様を傷物にしたか。それも骨を避けて刺すとは中々の精度だ。……が、その程度で俺様を殺れるとでも?」
「殺れなくとも、いいんスよ……!」
パラチオンの手刀がタリウムに迫ってくる。だがタリウムは全体重と全力を込め、ナイフがパラチオンの足から抜けない事だけに注力し、決してその場を離れなかった。
(俺の攻撃を意に介さないパラチオンが、先輩の弾丸は防御し躱している。つまり効くんだ、先輩の毒素なら!)
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
当然、その隙をニコチンが見逃す筈もなく。
タリウムの読み通りニコチンの銃撃が2階から雨の如く降り注ぐ。その結果、床も石柱も壁も2階の足場まで穴だらけとなり、周囲は崩落。次いで辺り一面を砂埃で包んだ。
「っと。俺様に傷を付けた事は褒めてやろう」
しかし崩落の中にパラチオンの姿はなく、タリウムのみが銃撃と瓦礫の直撃によって死亡判定を受けランダム転移をしていた。
パラチオンは足先を自ら斬り落とし、その場を離れ回避をしたのだ。ただし斬り落とした足先も瞬く間に再生し、靴こそ壊れてしまったが身体は何事もなかったかのように元通りに戻ってしまう。
「俺様諸共蜂の巣にするつもりだったか? 後輩を捨て身にさせといて失敗とは残念だったなぁ、ニコチン?」
「別に俺が頼んだ訳じゃねぇよ。タリウムが勝手にやった事だ」
パラチオンは壊れた靴に用はないと、両足分さっさと脱ぎ捨てる。なお床に広がった青い血は試合の妨げになるとして、自動的に消える設定となっている。
こうでもしなければ毒素の強いウミヘビ、特にパラチオンが出血する度、近くにいた者へ死亡判定がかかってしまい、試合の体を取れないからだ。
素足になった所で仕切り直しをと、パラチオンはニコチンにの居る2階に移動しようと足に力を込め飛び上がる。
「本当、思考が単純ねぇ」
飛び上がる最中、パラチオンは天窓から神殿に差し込む太陽光を反射し、キラキラと光る細い線が軌道上にある事に気付いた。
だが、気付いた所で回避は取れない。電光石火の如く動けるパラチオンの跳躍は、弾丸のように直進し、反射神経と反応速度は追い付かず、追い付いた所で足場のない空中では取れる手段など何もなく。
「動きが読みやすいったらないわ」
ザンッ!
訳もわからぬまま、水銀のワイヤー並みに細く伸ばした液体金属とそこに纏わせた毒素、加えて自分自身が生み出した勢いによって、パラチオンは首を落とされた。
銀の細剣が目に突き刺さる直前、パラチオンはグッと体勢を低くして水銀の攻撃を躱した。
「あら。いい位置に頭が来たわね」
ゴッ!
しかし水銀の攻撃は細剣だけで終わらず、体勢を低くし下がったパラチオンの頭、正確には顎目掛けて蹴りが入る。
その蹴りは躱し切れず、靴のつま先がめり込んでパラチオンは後方へ吹っ飛んだ。だが勢いそのままパラチオンは身体を大きく逸らし床に手を付け、ぐるんとバク転をし蹴りの衝撃を受け流す。
諸に蹴りを喰らった彼の顎は腫れていて、パラチオンは眉を潜めながらそこを軽くさすった。
「やってくれたな、カマ野郎」
「首を落としたつもりだったのだけれど、相変わらず頑丈ねアンタ」
水銀は呆れた顔で言った。何せ、蹴りを入れた水銀の足の方が少し痺れているからだ。
ウミヘビは、宿す毒素が強い程に身体が頑丈に作られる。それは外傷によって強力な毒素を体外に溢れないよう、容易に穴を空けられないようにと考えられた、人間側の都合である。
「硬い殻を壊すのって疲れるのよねぇ。だからいつも通り、絞め殺してあげるわ」
「クハッ! お前の動きは今までの手合わせで飽きるほど見てきたんだ! タネが割れた古臭い手で、この俺様をやり込めると思うなよ!」
「お馬鹿。手合わせ程度でボクの手の内、全部見たつもりになっているんじゃないわよ」
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
広間の中央、射線を遮る物が何もない場所に立つパラチオンに向けて、2階からニコチンが銃弾を放つ。
その発砲音を聴きパラチオンは即座に回避行動へ移った。
「それに今のアンタは多勢に無勢。今までのおさらいだけで、このボクを出し抜けると思わないで頂戴な」
ドドドドドッ!
ニコチンは1発ずつ撃つ威力の高い弾丸から連射性の高い弾丸へ構えを一切変えずに切り替え、パラチオン1人を狙って撃ち込み続ける。
パラチオンに当たらなかった連射弾は床へ細かい穴を空け、ヒビを広げていく。時間が経つ程、ニコチンの射撃を許す程に足場がどんどん悪くなっていく。
しかしパラチオンはそれとは関係のない所で、苛立ちを覚えていた。
「ニコチンお前、本調子じゃないな?」
普段と比べ射撃精度が劣っている、ニコチンの銃撃に対して。
「そんな半端な状態で俺様をやり込もうと!? ただでさえお前は俺様の下位互換だというのに、舐められたものだな!!」
「うるせぇ。こっちは起きたばっかだってのに、強制招集されて渋々お前ぇの相手してやってんだ。有り難がれや。けどまぁ、寝起きの肩慣らしにゃ、丁度いいかもなァッ!」
ニコチンは石柵の上に乗り、拳銃を構え直す。
――両手で。
「ハッ! 鬱陶しい!」
ドドドドドドドドッ!
構える拳銃が2丁に増えた事により、シンプルに弾数が増えパラチオンを追い詰めていく。
ドンッ! ドンッ!
しかも片方の拳銃は連射をし逃げ場を限定し、その逃げた先に向かって発射が単発ずつな代わりに、威力の高い銃弾をもう片方の拳銃で撃ち込むという、中々エゲツない戦法を1人でこなしている。
だがそれでも、電光石火の如く神殿を動き回るパラチオンを捕らえられない。
(……っ! ここっ!)
パラチオンが1階の壁際、石柱の側まできてニコチンの射線を少し遮れる場所まで来た時。
石柱の上部、2階の廊下の裏側。暗闇に溶け込みダガーナイフを楔代わりに刺して掴まり、ずっとこの瞬間を狙っていたタリウムが飛び降り、ダガーナイフをパラチオンに向け振り下ろす。
視界の外、それも真上からの奇襲にパラチオンの反応も遅れ、一撃を許す事となってしまった。
それによってダガーナイフはパラチオンの足の甲に深々と刺さり、彼は床の石畳に串刺しとなる。
「ハッ! 体重に加えて、毒素を抽射器の先端に一点周知し俺様を傷物にしたか。それも骨を避けて刺すとは中々の精度だ。……が、その程度で俺様を殺れるとでも?」
「殺れなくとも、いいんスよ……!」
パラチオンの手刀がタリウムに迫ってくる。だがタリウムは全体重と全力を込め、ナイフがパラチオンの足から抜けない事だけに注力し、決してその場を離れなかった。
(俺の攻撃を意に介さないパラチオンが、先輩の弾丸は防御し躱している。つまり効くんだ、先輩の毒素なら!)
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
当然、その隙をニコチンが見逃す筈もなく。
タリウムの読み通りニコチンの銃撃が2階から雨の如く降り注ぐ。その結果、床も石柱も壁も2階の足場まで穴だらけとなり、周囲は崩落。次いで辺り一面を砂埃で包んだ。
「っと。俺様に傷を付けた事は褒めてやろう」
しかし崩落の中にパラチオンの姿はなく、タリウムのみが銃撃と瓦礫の直撃によって死亡判定を受けランダム転移をしていた。
パラチオンは足先を自ら斬り落とし、その場を離れ回避をしたのだ。ただし斬り落とした足先も瞬く間に再生し、靴こそ壊れてしまったが身体は何事もなかったかのように元通りに戻ってしまう。
「俺様諸共蜂の巣にするつもりだったか? 後輩を捨て身にさせといて失敗とは残念だったなぁ、ニコチン?」
「別に俺が頼んだ訳じゃねぇよ。タリウムが勝手にやった事だ」
パラチオンは壊れた靴に用はないと、両足分さっさと脱ぎ捨てる。なお床に広がった青い血は試合の妨げになるとして、自動的に消える設定となっている。
こうでもしなければ毒素の強いウミヘビ、特にパラチオンが出血する度、近くにいた者へ死亡判定がかかってしまい、試合の体を取れないからだ。
素足になった所で仕切り直しをと、パラチオンはニコチンにの居る2階に移動しようと足に力を込め飛び上がる。
「本当、思考が単純ねぇ」
飛び上がる最中、パラチオンは天窓から神殿に差し込む太陽光を反射し、キラキラと光る細い線が軌道上にある事に気付いた。
だが、気付いた所で回避は取れない。電光石火の如く動けるパラチオンの跳躍は、弾丸のように直進し、反射神経と反応速度は追い付かず、追い付いた所で足場のない空中では取れる手段など何もなく。
「動きが読みやすいったらないわ」
ザンッ!
訳もわからぬまま、水銀のワイヤー並みに細く伸ばした液体金属とそこに纏わせた毒素、加えて自分自身が生み出した勢いによって、パラチオンは首を落とされた。
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