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第六章 恋⬛︎⬛︎乙女荵ウ縺ョ謌螟ァ――改め、アメリカ遠征編
第111話 舞踏会
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窓ガラス越しに見える空を背景に、カラフルな珊瑚状の菌糸が生える展望台の中に、4匹もの大きなクラゲことアイギスが優雅に漂っている。ここがアクアリウムの中だと錯覚してしまうような、異質な光景。
3匹は広々とした展望台を自由に泳ぎ、行手の障害となる菌糸を触手で壊し、死滅させている。残り1匹はフリッツの周りを円を描くようにぐるぐる回って、迫り来る障害こと菌糸を触手で薙ぎ払い、死滅させている。
アイギスからは積極的に攻撃しよう、などという意思は感じられない。ただ皆が皆、好き勝手に漂っている。思うがまま動いている。その邪魔となる菌糸を排除している。それだけ。
それだけで、展望台に蔓延っていた刺々しい菌糸を瞬く間に一掃してしまった。
宿主であるフリッツから離れ本来の、人間大のサイズとなったアイギスにとって、行動を狭める菌糸は許容出来ないのだ。
「アイギスって、防衛本能が強いだけで攻撃性は低いんじゃなかったの!?」
そんな納得のいかない光景を目の当たりにしたネフェリンが吠える。彼女が幾ら菌糸を駆使してフリッツを串刺しにしようとしても尽く邪魔をされてしまい、結局傷の1つも付けれずに、展望台に生えていた菌糸はなくなってしまった。
出番のないシアンなぞ飽きてしまって、いつの間にかブロックソファに座り欠伸をしている。完全にだらけてしまっている。
「この子達は踊るのが好きでね。広い場所に出ると、ダンスホールを作るのに夢中になるんだ。つまり遊んでいるだけ。何も攻撃や防御を強制する事だけが手段じゃないさ。こういった考え、寄生菌には難しかったかな?」
わかりやすく煽ってくるフリッツに、ネフェリンの頬が引き攣る。
「さて。菌糸による攻撃が効かないとわかった所で、降伏するつもりはないかい?」
「誰が降伏なんて。……それに貴方、そんなに沢山アイギスを使役すれば、直ぐに限界が来るんじゃない?」
ネフェリンが指摘したのと時同じくして、1匹のアイギスがフリッツの身体の中へと戻ってきた。
途端にフリッツの身体がぐらりと揺れ、倒れないよう踏ん張ったものの力が抜けているのが見て取れる。動き回ってエネルギーを消費したアイギスから、血が抜き取られているのだ。
「ほら貧血になった。軟弱ね」
ネフェリンはくすくすと笑いながら足元から菌糸を生やすと、針のように鋭く尖った先端を降り、剣のように構える。
彼女は自らの手で直接、串刺しにするつもりだ。
(アイギスには菌糸を排除する傍ら、毒も撒いて貰ったけど彼女に効いている様子がない。麻酔や鎮静剤の類も含めて。ステージ5が動きを鈍らせるぐらいの量を使用したのだけれど……。これが、ステージ6か)
アイギスを漂わせている間、ネフェリンの観察はした。球体型自動人形を浮遊させ、撮影記録もした。クスシのアイギスだけでどれだけ通用するかという実験は、もう終えていいだろう。
フリッツはそう判断すると空中に漂わせていたアイギスを全て呼び寄せ、自分の身体の中へ戻す。そしてシアンが座っているブロックソファがある所まで後ろに下がる。
「シアンくん、待たせてしまったね」
「はい?」
「戦闘を、許可する」
「おっ! それはつまり……処分して、ええんです?」
「うん。やはり生捕りは、現状無理だ。協力もしてくれないとなれば、処分するしかない」
フリッツからの正式な戦闘許可。
それを得られたシアンは棒飴を咥えたまま歪な笑みを浮かべると、ゆっくりと席から立ち上がった。
「どうして私を殺せる前提で話をしているの? 幾ら菌糸を壊せても、私自身には手も足も出ないでしょうに!」
折った菌糸を剣代わりに、ネフェリンが迫ってくる。ソファブロックから立ち上がった体勢のまま、棒立ちでいるシアンに向けて。
ステージ6となった今の自分ならば、ウミヘビの青い血液も怖くない。以前と比べて俊敏さも腕力も格段に上がっている。だから頑丈なウミヘビの身体を貫き、心臓を潰せば殺せる筈だ。
彼女はそう思っていた。
「あぁ、嬉しいわぁ。遠征先での戦闘なんて何年振りやろか」
しかしネフェリンが握っていた鋭く尖った菌糸の先端は、真っ二つに折れていつの間にか床に転がっていた。
シアンが折ったのだ。コンクリートをも壊す硬さを持つ菌糸を、手刀一つで。
「せや! お姉さんステージ6とか【誕生日】とか『珊瑚サマ』とか、ラボが把握してへん情報を持っとるんやろ? 吐いてくれる間は手加減したる! ゆっくりお喋りしよかぁ」
「なん、なんで貴方なんかに吐かないといけないの!」
「吐いてくれへんの? ならお姉さん、壊れんようキバリや。……直ぐ終わると、つまらないやろ?」
そう言ってシアンの紫色の瞳がネフェリンの姿を映す。
それはまるで獲物を狙う飢えた獣の目。ギラギラと光る猛禽類の目。そんな彼の目に寒気を覚えたネフェリンは、一気に後退すると床から天井から珊瑚状の菌糸を大量に生やし、シアンとの間に壁を作った。
ガシャンッ!
しかし菌糸の壁は、一瞬で瓦解し床へ叩き付けられる。そして菌糸の重さで、ドシンと叩き付けられた衝撃で、床が振動しゴゴゴゴと揺れる。
「何や。柔らかいなぁ。拍子抜けや」
その菌糸の壁を易々と破壊したシアンは、つまらなそうに青い髪を左手でかいていた。彼の右手には刃の付いていないサバイバルナイフが1本。
それを一振りしただけで、大砲でも打ち込んだかのような穴を空けてしまったのだ。しかもその穴から流し込まれた毒素によって菌糸は瞬く間に、溶けるように死滅していっている。
「もっと歯応えあるやつ出せへんの?」
一歩、シアンがネフェリンに歩み寄る。
ネフェリンは彼を自分に近付けさせない為、再び菌糸を生やし、鋭い先端を四方八方から仕向け串刺しにしようとする。
だがその菌糸もシアンがサバイバルナイフを持ったまま、くるりとその場で一回転すれば、四方八方から仕向けられたそれは容易に折れて重量に従い床へと落ちた。斬ったのだ、全てを。目に見えない速さで。
菌糸が落ちる衝撃でまた、ビルが揺れる。
「はぁ~? ステージ6ゆうてもなんちゅーか、大した事あらへんなぁ。あ、でも毒耐性が強いのは感染者本人って話やったっけ? ニコちゃんの毒にも耐えたとか! いやぁ、楽しみやわぁ! お姉さんも是非耐え切って欲しいわぁ!」
にこにこと満面の笑みを浮かべながら、シアンは一歩、また一歩とネフェリンに近寄ってゆく。
襲い掛かる菌糸を、サバイバルナイフ1本でいなして。
「根性、見せたってや。お姉ぇ~さん?」
そしてネフェリンの眼前まで接近したシアンは、サバイバルナイフの切先を彼女に向けて振り下ろした。
3匹は広々とした展望台を自由に泳ぎ、行手の障害となる菌糸を触手で壊し、死滅させている。残り1匹はフリッツの周りを円を描くようにぐるぐる回って、迫り来る障害こと菌糸を触手で薙ぎ払い、死滅させている。
アイギスからは積極的に攻撃しよう、などという意思は感じられない。ただ皆が皆、好き勝手に漂っている。思うがまま動いている。その邪魔となる菌糸を排除している。それだけ。
それだけで、展望台に蔓延っていた刺々しい菌糸を瞬く間に一掃してしまった。
宿主であるフリッツから離れ本来の、人間大のサイズとなったアイギスにとって、行動を狭める菌糸は許容出来ないのだ。
「アイギスって、防衛本能が強いだけで攻撃性は低いんじゃなかったの!?」
そんな納得のいかない光景を目の当たりにしたネフェリンが吠える。彼女が幾ら菌糸を駆使してフリッツを串刺しにしようとしても尽く邪魔をされてしまい、結局傷の1つも付けれずに、展望台に生えていた菌糸はなくなってしまった。
出番のないシアンなぞ飽きてしまって、いつの間にかブロックソファに座り欠伸をしている。完全にだらけてしまっている。
「この子達は踊るのが好きでね。広い場所に出ると、ダンスホールを作るのに夢中になるんだ。つまり遊んでいるだけ。何も攻撃や防御を強制する事だけが手段じゃないさ。こういった考え、寄生菌には難しかったかな?」
わかりやすく煽ってくるフリッツに、ネフェリンの頬が引き攣る。
「さて。菌糸による攻撃が効かないとわかった所で、降伏するつもりはないかい?」
「誰が降伏なんて。……それに貴方、そんなに沢山アイギスを使役すれば、直ぐに限界が来るんじゃない?」
ネフェリンが指摘したのと時同じくして、1匹のアイギスがフリッツの身体の中へと戻ってきた。
途端にフリッツの身体がぐらりと揺れ、倒れないよう踏ん張ったものの力が抜けているのが見て取れる。動き回ってエネルギーを消費したアイギスから、血が抜き取られているのだ。
「ほら貧血になった。軟弱ね」
ネフェリンはくすくすと笑いながら足元から菌糸を生やすと、針のように鋭く尖った先端を降り、剣のように構える。
彼女は自らの手で直接、串刺しにするつもりだ。
(アイギスには菌糸を排除する傍ら、毒も撒いて貰ったけど彼女に効いている様子がない。麻酔や鎮静剤の類も含めて。ステージ5が動きを鈍らせるぐらいの量を使用したのだけれど……。これが、ステージ6か)
アイギスを漂わせている間、ネフェリンの観察はした。球体型自動人形を浮遊させ、撮影記録もした。クスシのアイギスだけでどれだけ通用するかという実験は、もう終えていいだろう。
フリッツはそう判断すると空中に漂わせていたアイギスを全て呼び寄せ、自分の身体の中へ戻す。そしてシアンが座っているブロックソファがある所まで後ろに下がる。
「シアンくん、待たせてしまったね」
「はい?」
「戦闘を、許可する」
「おっ! それはつまり……処分して、ええんです?」
「うん。やはり生捕りは、現状無理だ。協力もしてくれないとなれば、処分するしかない」
フリッツからの正式な戦闘許可。
それを得られたシアンは棒飴を咥えたまま歪な笑みを浮かべると、ゆっくりと席から立ち上がった。
「どうして私を殺せる前提で話をしているの? 幾ら菌糸を壊せても、私自身には手も足も出ないでしょうに!」
折った菌糸を剣代わりに、ネフェリンが迫ってくる。ソファブロックから立ち上がった体勢のまま、棒立ちでいるシアンに向けて。
ステージ6となった今の自分ならば、ウミヘビの青い血液も怖くない。以前と比べて俊敏さも腕力も格段に上がっている。だから頑丈なウミヘビの身体を貫き、心臓を潰せば殺せる筈だ。
彼女はそう思っていた。
「あぁ、嬉しいわぁ。遠征先での戦闘なんて何年振りやろか」
しかしネフェリンが握っていた鋭く尖った菌糸の先端は、真っ二つに折れていつの間にか床に転がっていた。
シアンが折ったのだ。コンクリートをも壊す硬さを持つ菌糸を、手刀一つで。
「せや! お姉さんステージ6とか【誕生日】とか『珊瑚サマ』とか、ラボが把握してへん情報を持っとるんやろ? 吐いてくれる間は手加減したる! ゆっくりお喋りしよかぁ」
「なん、なんで貴方なんかに吐かないといけないの!」
「吐いてくれへんの? ならお姉さん、壊れんようキバリや。……直ぐ終わると、つまらないやろ?」
そう言ってシアンの紫色の瞳がネフェリンの姿を映す。
それはまるで獲物を狙う飢えた獣の目。ギラギラと光る猛禽類の目。そんな彼の目に寒気を覚えたネフェリンは、一気に後退すると床から天井から珊瑚状の菌糸を大量に生やし、シアンとの間に壁を作った。
ガシャンッ!
しかし菌糸の壁は、一瞬で瓦解し床へ叩き付けられる。そして菌糸の重さで、ドシンと叩き付けられた衝撃で、床が振動しゴゴゴゴと揺れる。
「何や。柔らかいなぁ。拍子抜けや」
その菌糸の壁を易々と破壊したシアンは、つまらなそうに青い髪を左手でかいていた。彼の右手には刃の付いていないサバイバルナイフが1本。
それを一振りしただけで、大砲でも打ち込んだかのような穴を空けてしまったのだ。しかもその穴から流し込まれた毒素によって菌糸は瞬く間に、溶けるように死滅していっている。
「もっと歯応えあるやつ出せへんの?」
一歩、シアンがネフェリンに歩み寄る。
ネフェリンは彼を自分に近付けさせない為、再び菌糸を生やし、鋭い先端を四方八方から仕向け串刺しにしようとする。
だがその菌糸もシアンがサバイバルナイフを持ったまま、くるりとその場で一回転すれば、四方八方から仕向けられたそれは容易に折れて重量に従い床へと落ちた。斬ったのだ、全てを。目に見えない速さで。
菌糸が落ちる衝撃でまた、ビルが揺れる。
「はぁ~? ステージ6ゆうてもなんちゅーか、大した事あらへんなぁ。あ、でも毒耐性が強いのは感染者本人って話やったっけ? ニコちゃんの毒にも耐えたとか! いやぁ、楽しみやわぁ! お姉さんも是非耐え切って欲しいわぁ!」
にこにこと満面の笑みを浮かべながら、シアンは一歩、また一歩とネフェリンに近寄ってゆく。
襲い掛かる菌糸を、サバイバルナイフ1本でいなして。
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