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我々の部は、既存の部活の枠に嵌まらなかった生徒で構成されている。
我々の活動の目的は、その生徒たちが寄り集まると、どの様なことが起き、どの様な結果を生み出すのかを観察していくことにある。この活動が、既存の部活に馴染めない生徒の傾向を知る為のテストケースとなり、いずれは無部活生徒の発生抑制に繋がり、新たな学生の受け皿に成り得るのかを判断していきたい。そこで、結成間もない我が部が今回ご報告するのは、集まった生徒の概要と、そこから予想する部の展望である。プライバシーに関わるので明言はしないが、過去の失敗などに起因するネガティブなものや、自身の成長や変化を望んだポジティブなもの、そして実家の手伝いなどの現実的なものなど、様々な理由で我々は集った。
こうして書き起こしていると、集まった面々には既にアイデンティティ、確固たる自分が、形を帯び始めていることに気が付いた。思うに、部活というのはアイデンティティの定まらない生徒が大半を占めている。確固たる意思で入部するものは少なく、さらにその道で食べていこうと考えている者は稀なケースと言えるだろう。ほとんどのキッカケは、興味や場の流れ、友人関係などにもたらされ、各部のアイデンティティに染め上げられていく。未発達の若者に手早く社会規範と協調性を植え付ける為の社会システム、それが部活動なのだ。
しかし、部のアイデンティティというのは、いかんせん時代の風潮に置き去りにされるものである。例えば、運動部での上下関係や滅私奉公のスタンスが、社会において各種ハラスメントの原因になっていることは明白である。将来、職業セミナーで注意されるような人格を植え付けるのはナンセンスと言えるだろう。その遠因は、階級社会を引き継ぎながら、民主主義を謳い、平等を掲げながら、資本主義を軸とする、この国の矛盾にあると考えられるが、論点がズレるので、割愛する。つまり、既存の部活と反りが合わないというのは、確固たる自分を持ち、部のアイデンティティに拒絶反応を見せるからである。
我々も、人間なのだ。生まれは皆違い、学校の外にもコミュニティが在り、それぞれのものさしで今を生きている。ならば、自由に部を創造する機会があって然るべきなのではないか。たとえ一代限りでも、個々に合った形体を取って何が悪いのか。これからの部活に必要なのは、長きに渡る伝統でも、きらびやかなトロフィーでもない。利害が一致したもの同士で結成される、緩やかな関係性なのだ。我々はそれを試す第一歩となろう。目的で個人を縛らず、個人から目的が生まれ出でるようにする。事実、我々の間にも、結束が生まれようとしている。誰が旗を振るわけでもなく、個人の意思が一つに収斂されつつあるようだ。
この先、どのような目的が発生してくるのか。先行きが大変気になる案件であると言えるだろう。
SE部部長 栗柄鎬
「失礼しました」
6月の第一水曜日、活動報告の結果を持ち、私は生徒会室を後にした。
部室へ戻ると、部員が雁首揃えて待っていてくれた。支倉姉弟は、大事な日だからと入り時間を遅らせてまで来てくれている。
私は唇を固く結び、全員の顔を見渡した。皆も固唾を呑んで、私の顔を見返してくる。彼らに、結果を伝えねばならない。口を開こうとすると、押し留めている感情が噴き出してしまいそうになる。今すぐにでも全てを吐露したくなりながら、私は結果だけを伝えようと努めた。
「みんな・・・・・・ごめんッ!」
感情が表情に出てきてしまう前に、私は踵を返して、部室を出ていってしまった。
と、見せ掛けて、彼らの死角に入ったら、すぐに反転、待ち伏せの構えを取る。思惑通り、私の行動が奇行過ぎて、何だ何だと部員達は追い掛けてきた。そして、笑顔で待ち受ける私とすぐに対面し、面食らうことになる。
先頭は、支倉姉だった。
「うわっ!! お前、何で!?」
次いで現れた支倉弟、幸坂さんもビックリしている。
「あっはっは、諸君あれを見たまえ!」
私が指差した先は、部室入り口の上部、そこに取り付けた我らの表札である。そう、我々の活動は認められたのだ。
「てめぇ、栗柄!?」
支倉姉に胸ぐらを掴み上げられた。なんとも言えない微妙な表情をしている。
「お前のせいでパニックだ! てめぇ、一芝居打ちやがったな!!」
「うぐっ、ちょっとしたサプライズだよ。こうすれば、感動も一塩かと・・・いやあ、皆の顔見てると笑い出しちゃいそうで困ったよ」
「何がサプライズだ! 驚けば良いのか、喜べば良いのか判らなくなっちまったじゃあねぇか!?」
ああ、だからそんな微妙な表情を。ゆっくりと窒息していく中、幸坂さんが話し掛けてきた。
「あ、あの・・・お取り込み中、失礼します」
「・・・ふぁい・・・何でしょう・・・?」
「あの表札なんですけど・・・何故、文字が金ぴかなんですか?」
そう、幸坂さんの言う通り、掲げている表札は、黒い光沢のある土台に、金の文字でSocial experimentと書かれている。
「あぁ・・・あれは、期待の証で・・・生徒会と教職員が気を回して・・・ああなったらしいよ」
「そうなんですか・・・でも、あれはちょっと、恥ずかしいというか・・・その」
「そうだよね・・・だから、普通のにしてくれと頼んでおいた・・・よ。そしたら・・・最も感心な報告書だった証として・・・取っておいてくれと・・・正式なものは、後日来るから」
「それなら、良かったです」
「・・・ところで、幸坂さん・・・助けてもらえないでしょうか? そろそろ、意識が・・・」
だんだんと、視界が霞んできました。
「えっと、駄目です。今回のは悪ふざけが過ぎてます」
「そんな・・・ご無体な」
「心配する気持ちを弄んではいけませんよ。支倉さん、懲らしめてあげてください!」
「何だかよく判らねぇが、分かった!」
さらに、絞め上げる力が増してきた。これは、冗談抜きで命の危機だ。意識がもたない。条件反射で拘束を解いてしまう前に、私から支倉姉が引き離された。支倉弟である、弟と比べたら小柄な姉は羽交い締めにされ、宙に浮いている。どことなく、磔に見えてくる光景だ。
「離せ、明良! 何で止める!?」
「・・・これ以上は駄目だ、姉さん」
どこまで察しているのやら、とりあえず助けられた礼は言っておかないと。
「ごほっ・・・すまない明良、ありがとう」
「うむ・・・こちらこそ、姉が暴走してしまってすまない。だが、原因は栗柄自身だ。ここは両成敗にして欲しい」
「いや、全面的に俺が悪かったよ。以後気を付けます」
「ああ・・・そうしてくれ。これからが、有るんだからな」
「ああ、そうだな」
私は支倉弟と頷き合い、心の中で拳を突き合わせた。支倉明良、なかなかの男っ振りである。
「何をイチャイチャしてんだお前らは! 明良、早く放せ!?」
「おお、忘れた」
じたばたと暴れる支倉姉の頭に、私は手を置いた。
「心配掛けてごめんな。それと、一番に飛び出してきてくれて、ありがとな」
「な、何だよ、いきなり・・・」
「それは・・・こうされるの、暁乃は嫌がると思って?」
「・・・あん?」
次の瞬間、繰り出された蹴りを、私は後ろに飛び退いて、ひらりと回避した。
「ふっ、甘いな」
「ちっ・・・おい明良、こいつ反省してないぞ!」
「・・・これはOKだな」
「何でだよ!?」
「姉さん、満更でも無さそうだから」
「喜んでないからな!?」
「それから、幸坂さん。悪ふざけも大概にしますので、これからも御協力願えますか?」
「はい、もちろん・・・その、私も悪ノリしてしまって、すみません」
「いえいえ、気にしないでください。こんな事、泉さんに比べれば・・・あれ? 泉さんは?」
部室の前に、泉さんの姿は無かった。何となく、察しのついた私は、荒ぶる支倉姉を二人に任せ、部室内へと戻ってみた。案の定、そこにはパソコンをいじる泉さんの姿があった。
「何で来なかったんだ? 認められたぞ、俺達の部活」
「貴方のリアクションが下手くそ過ぎて、すぐに結果が読めたの。笑いを噛み殺しているのがすぐに分かったわ」
「そうか、流石は泉さん。身震いするほど目敏いな」
「言葉の選択に悪意を感じるのだけれど・・・まあ、良いわ。それよりも、貴方は学校側の弱味でも握っているの? 特製の表札だなんて、少し好意的過ぎるのではないかしら?」
「やっぱり? あれ渡された時、報告書が好評だったからって言われたけど・・・ああいうのって、一日やそこらで用意出来るものなのかな?」
「よっぽど器用な学校関係者が書いたのでなければ、無理ね」
「だろうな・・・つまりこの状況は前々から想定されていたというわけか」
「容易く承認された部の申請、好意的な生徒会、高評価過ぎる報告書・・・それは何を意味するのかしらね?」
「考え過ぎかもな。申請はただ規定に添って認められただけで、生徒会が好意的なのは部費が掛からないから、報告書に関しては実力の可能性があるし、報告書ってほとんど箇条書きらしいぞ?」
「そうね、そうであることを願うわ」
「まあ、そういう陰謀めいた考えも嫌いじゃあないぞ。退屈しのぎに探りでも入れてみるか・・・」
「好きにして・・・ところで、そろそろ貴方を殺したいのだけど?」
「わあ、どストレート・・・オブラートに包むってことを知らないの?」
「仕方ないわ、私だもの」
「どんな理屈だよ・・・」
「私は契約を守っているのだから、貴方にも契約を守る義務あると思うのだけど?」
「むぅ・・・・・・なら、殺し合いっぽい事でもするか?」
「というと?」
「サバゲー」
「・・・何故?」
「趣味で通ってるところがあるんだ。あそこなら、本気で闘えるぞ?」
「そう・・・悪くないわね、遊びに乗じて始末してしまうのも」
「あの場所で、そんなこと言ってられないと思うけど。じゃあ、気が向いたら言ってくれ」
「ええ、コンディションを仕上げたら、宣告するわ」
「・・・引っ掛かりはするが、とりあえず話は終わったな。それじゃあ、これから祝勝会でもするか? 支倉家で」
「・・・悪くないわね、支倉さん嫌がりそうで」
「うわ、歪んでる・・・」
「ふふっ・・・今更。端から観る分は可愛いわよ、支倉さんの反応は。だから、からかうのでしょう?」
「あはは、面白いの間違いだろう? さて、じゃあ皆に提案してくるから、パソコンを消しておけよ?」
「ええ、分かっているわ・・・収穫してからでも良いかしら?」
「お、おう・・・早めにな」
ゲームに集中し出した泉さんを背を向けて、私は幸坂さん、支倉姉弟のところへ舞い戻った。
「へい、皆の衆。これから祝勝会をしようじゃないか、支倉家で!」
その直後、明良の拘束から逃れた暁乃に、ラリアットを決められた事は予定調和と言えるだろう。
我々の活動の目的は、その生徒たちが寄り集まると、どの様なことが起き、どの様な結果を生み出すのかを観察していくことにある。この活動が、既存の部活に馴染めない生徒の傾向を知る為のテストケースとなり、いずれは無部活生徒の発生抑制に繋がり、新たな学生の受け皿に成り得るのかを判断していきたい。そこで、結成間もない我が部が今回ご報告するのは、集まった生徒の概要と、そこから予想する部の展望である。プライバシーに関わるので明言はしないが、過去の失敗などに起因するネガティブなものや、自身の成長や変化を望んだポジティブなもの、そして実家の手伝いなどの現実的なものなど、様々な理由で我々は集った。
こうして書き起こしていると、集まった面々には既にアイデンティティ、確固たる自分が、形を帯び始めていることに気が付いた。思うに、部活というのはアイデンティティの定まらない生徒が大半を占めている。確固たる意思で入部するものは少なく、さらにその道で食べていこうと考えている者は稀なケースと言えるだろう。ほとんどのキッカケは、興味や場の流れ、友人関係などにもたらされ、各部のアイデンティティに染め上げられていく。未発達の若者に手早く社会規範と協調性を植え付ける為の社会システム、それが部活動なのだ。
しかし、部のアイデンティティというのは、いかんせん時代の風潮に置き去りにされるものである。例えば、運動部での上下関係や滅私奉公のスタンスが、社会において各種ハラスメントの原因になっていることは明白である。将来、職業セミナーで注意されるような人格を植え付けるのはナンセンスと言えるだろう。その遠因は、階級社会を引き継ぎながら、民主主義を謳い、平等を掲げながら、資本主義を軸とする、この国の矛盾にあると考えられるが、論点がズレるので、割愛する。つまり、既存の部活と反りが合わないというのは、確固たる自分を持ち、部のアイデンティティに拒絶反応を見せるからである。
我々も、人間なのだ。生まれは皆違い、学校の外にもコミュニティが在り、それぞれのものさしで今を生きている。ならば、自由に部を創造する機会があって然るべきなのではないか。たとえ一代限りでも、個々に合った形体を取って何が悪いのか。これからの部活に必要なのは、長きに渡る伝統でも、きらびやかなトロフィーでもない。利害が一致したもの同士で結成される、緩やかな関係性なのだ。我々はそれを試す第一歩となろう。目的で個人を縛らず、個人から目的が生まれ出でるようにする。事実、我々の間にも、結束が生まれようとしている。誰が旗を振るわけでもなく、個人の意思が一つに収斂されつつあるようだ。
この先、どのような目的が発生してくるのか。先行きが大変気になる案件であると言えるだろう。
SE部部長 栗柄鎬
「失礼しました」
6月の第一水曜日、活動報告の結果を持ち、私は生徒会室を後にした。
部室へ戻ると、部員が雁首揃えて待っていてくれた。支倉姉弟は、大事な日だからと入り時間を遅らせてまで来てくれている。
私は唇を固く結び、全員の顔を見渡した。皆も固唾を呑んで、私の顔を見返してくる。彼らに、結果を伝えねばならない。口を開こうとすると、押し留めている感情が噴き出してしまいそうになる。今すぐにでも全てを吐露したくなりながら、私は結果だけを伝えようと努めた。
「みんな・・・・・・ごめんッ!」
感情が表情に出てきてしまう前に、私は踵を返して、部室を出ていってしまった。
と、見せ掛けて、彼らの死角に入ったら、すぐに反転、待ち伏せの構えを取る。思惑通り、私の行動が奇行過ぎて、何だ何だと部員達は追い掛けてきた。そして、笑顔で待ち受ける私とすぐに対面し、面食らうことになる。
先頭は、支倉姉だった。
「うわっ!! お前、何で!?」
次いで現れた支倉弟、幸坂さんもビックリしている。
「あっはっは、諸君あれを見たまえ!」
私が指差した先は、部室入り口の上部、そこに取り付けた我らの表札である。そう、我々の活動は認められたのだ。
「てめぇ、栗柄!?」
支倉姉に胸ぐらを掴み上げられた。なんとも言えない微妙な表情をしている。
「お前のせいでパニックだ! てめぇ、一芝居打ちやがったな!!」
「うぐっ、ちょっとしたサプライズだよ。こうすれば、感動も一塩かと・・・いやあ、皆の顔見てると笑い出しちゃいそうで困ったよ」
「何がサプライズだ! 驚けば良いのか、喜べば良いのか判らなくなっちまったじゃあねぇか!?」
ああ、だからそんな微妙な表情を。ゆっくりと窒息していく中、幸坂さんが話し掛けてきた。
「あ、あの・・・お取り込み中、失礼します」
「・・・ふぁい・・・何でしょう・・・?」
「あの表札なんですけど・・・何故、文字が金ぴかなんですか?」
そう、幸坂さんの言う通り、掲げている表札は、黒い光沢のある土台に、金の文字でSocial experimentと書かれている。
「あぁ・・・あれは、期待の証で・・・生徒会と教職員が気を回して・・・ああなったらしいよ」
「そうなんですか・・・でも、あれはちょっと、恥ずかしいというか・・・その」
「そうだよね・・・だから、普通のにしてくれと頼んでおいた・・・よ。そしたら・・・最も感心な報告書だった証として・・・取っておいてくれと・・・正式なものは、後日来るから」
「それなら、良かったです」
「・・・ところで、幸坂さん・・・助けてもらえないでしょうか? そろそろ、意識が・・・」
だんだんと、視界が霞んできました。
「えっと、駄目です。今回のは悪ふざけが過ぎてます」
「そんな・・・ご無体な」
「心配する気持ちを弄んではいけませんよ。支倉さん、懲らしめてあげてください!」
「何だかよく判らねぇが、分かった!」
さらに、絞め上げる力が増してきた。これは、冗談抜きで命の危機だ。意識がもたない。条件反射で拘束を解いてしまう前に、私から支倉姉が引き離された。支倉弟である、弟と比べたら小柄な姉は羽交い締めにされ、宙に浮いている。どことなく、磔に見えてくる光景だ。
「離せ、明良! 何で止める!?」
「・・・これ以上は駄目だ、姉さん」
どこまで察しているのやら、とりあえず助けられた礼は言っておかないと。
「ごほっ・・・すまない明良、ありがとう」
「うむ・・・こちらこそ、姉が暴走してしまってすまない。だが、原因は栗柄自身だ。ここは両成敗にして欲しい」
「いや、全面的に俺が悪かったよ。以後気を付けます」
「ああ・・・そうしてくれ。これからが、有るんだからな」
「ああ、そうだな」
私は支倉弟と頷き合い、心の中で拳を突き合わせた。支倉明良、なかなかの男っ振りである。
「何をイチャイチャしてんだお前らは! 明良、早く放せ!?」
「おお、忘れた」
じたばたと暴れる支倉姉の頭に、私は手を置いた。
「心配掛けてごめんな。それと、一番に飛び出してきてくれて、ありがとな」
「な、何だよ、いきなり・・・」
「それは・・・こうされるの、暁乃は嫌がると思って?」
「・・・あん?」
次の瞬間、繰り出された蹴りを、私は後ろに飛び退いて、ひらりと回避した。
「ふっ、甘いな」
「ちっ・・・おい明良、こいつ反省してないぞ!」
「・・・これはOKだな」
「何でだよ!?」
「姉さん、満更でも無さそうだから」
「喜んでないからな!?」
「それから、幸坂さん。悪ふざけも大概にしますので、これからも御協力願えますか?」
「はい、もちろん・・・その、私も悪ノリしてしまって、すみません」
「いえいえ、気にしないでください。こんな事、泉さんに比べれば・・・あれ? 泉さんは?」
部室の前に、泉さんの姿は無かった。何となく、察しのついた私は、荒ぶる支倉姉を二人に任せ、部室内へと戻ってみた。案の定、そこにはパソコンをいじる泉さんの姿があった。
「何で来なかったんだ? 認められたぞ、俺達の部活」
「貴方のリアクションが下手くそ過ぎて、すぐに結果が読めたの。笑いを噛み殺しているのがすぐに分かったわ」
「そうか、流石は泉さん。身震いするほど目敏いな」
「言葉の選択に悪意を感じるのだけれど・・・まあ、良いわ。それよりも、貴方は学校側の弱味でも握っているの? 特製の表札だなんて、少し好意的過ぎるのではないかしら?」
「やっぱり? あれ渡された時、報告書が好評だったからって言われたけど・・・ああいうのって、一日やそこらで用意出来るものなのかな?」
「よっぽど器用な学校関係者が書いたのでなければ、無理ね」
「だろうな・・・つまりこの状況は前々から想定されていたというわけか」
「容易く承認された部の申請、好意的な生徒会、高評価過ぎる報告書・・・それは何を意味するのかしらね?」
「考え過ぎかもな。申請はただ規定に添って認められただけで、生徒会が好意的なのは部費が掛からないから、報告書に関しては実力の可能性があるし、報告書ってほとんど箇条書きらしいぞ?」
「そうね、そうであることを願うわ」
「まあ、そういう陰謀めいた考えも嫌いじゃあないぞ。退屈しのぎに探りでも入れてみるか・・・」
「好きにして・・・ところで、そろそろ貴方を殺したいのだけど?」
「わあ、どストレート・・・オブラートに包むってことを知らないの?」
「仕方ないわ、私だもの」
「どんな理屈だよ・・・」
「私は契約を守っているのだから、貴方にも契約を守る義務あると思うのだけど?」
「むぅ・・・・・・なら、殺し合いっぽい事でもするか?」
「というと?」
「サバゲー」
「・・・何故?」
「趣味で通ってるところがあるんだ。あそこなら、本気で闘えるぞ?」
「そう・・・悪くないわね、遊びに乗じて始末してしまうのも」
「あの場所で、そんなこと言ってられないと思うけど。じゃあ、気が向いたら言ってくれ」
「ええ、コンディションを仕上げたら、宣告するわ」
「・・・引っ掛かりはするが、とりあえず話は終わったな。それじゃあ、これから祝勝会でもするか? 支倉家で」
「・・・悪くないわね、支倉さん嫌がりそうで」
「うわ、歪んでる・・・」
「ふふっ・・・今更。端から観る分は可愛いわよ、支倉さんの反応は。だから、からかうのでしょう?」
「あはは、面白いの間違いだろう? さて、じゃあ皆に提案してくるから、パソコンを消しておけよ?」
「ええ、分かっているわ・・・収穫してからでも良いかしら?」
「お、おう・・・早めにな」
ゲームに集中し出した泉さんを背を向けて、私は幸坂さん、支倉姉弟のところへ舞い戻った。
「へい、皆の衆。これから祝勝会をしようじゃないか、支倉家で!」
その直後、明良の拘束から逃れた暁乃に、ラリアットを決められた事は予定調和と言えるだろう。
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