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懐かしの味を楽しむ二人
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「そういや時間進める方法だっけ? あるぜ」
「「あるのかよっ!」」
俺とカオリの声が綺麗にハモる。
だったら早く言えっつーの。
「いやぁ魔法を使うって発想がなかったからよ。知識としてはあったんだが、思いつかなかったぜ。はっはっは」
「どうやるんだ? えらーい魔導師さんが長い時間と金をかけてやっと数時間進むとか、しょっぱい効果じゃないだろうな」
「いやぁ100倍近く時間を経過させるんじゃねぇか? それに俺でも手軽に使える簡単さだ。えーと確かこの辺に……あった、こいつだ」
ダルギスが取り出したのは十字の描かれた綺麗な黒石である。
妙な感じ……確かに強い魔力が込められているように思えた。
「こいつを対象の上に置いて呪いを唱えると、その物に流れる時間が数百倍になるんだ」
「ほほー! すごいじゃないそんなのあるなんて! まさに発酵食品を作るため魔法だよー!」
「よくそんな便利な魔法が存在してるな。局所的にしか使えそうもないのにさ」
「仲間を埋葬する為のものだからな」
「「あ……」」
ダルギスの言葉に、俺たちの盛り上がりはぴたりと止まる。
「冒険の途中で仲間が死ぬだろ? 埋葬する暇も手間もない。かと言って仲間が魔物に喰われるのも忍びない。そういう時はこいつを使うんだ。瞬く間に干からびて、そのうち風化してしまう。共に戦った仲間のためのマジックアイテム。死の際に自分で使ってもいいし、人数分もっていくのが冒険者の嗜みだ」
「へ、へぇー」
なんかいきなりエグい話が出てきた。
まぁでも確かに、戦いや死が間近にある世界ならそんな魔法が発展してもおかしくはないか。
そうでもしないとダンジョン内は死体だらけになってしまうもんな。
とてもじゃないがそんなところで冒険は出来ない。鬱になってしまいそうだ。
どうせなら復活させてほしいところだが、そこまでは出来ないようだ。
やはり死んでも生き返れるのはゲームだけか。
死なないように気を付けよう。
「ま、まぁとにかくさ、やってみようぜ」
「だねだねー」
「おうよ。それじゃ見ててくんな。……死はあまねくもの、誰彼にありて。勇者よ迷う事なく空の国へと昇りたまえ」
ダルギスが呪文を唱えると、石を乗せた樽がゆっくりと変色していく。
見た目にもすごい速さで時間が経っているのがわかる。
「……あ」
不意に声を上げるカオリ。
「お?」
「ちょっ、止めて止めて! 今すぐー!」
「なんだ。もういいのか?」
「じゃなくて! いいから」
業を煮やしたカオリが石を払いのけると、即座に樽のフタを開ける。
中では具と水分が分離し、残念なことになっていた。
「あちゃー……これ時々混ぜながらじゃないとダメなんだよねー塩とかも入れないとだし、地味に手間がいるのよー」
「おおう、そういやそんな事言ってたな」
「フタを半分空けて混ぜながら作るとか、何なら石を中に入れたまま混ざればいんじゃね?」
「おーユキトくんナイスアイデアー!」
「作りかけの樽ならまだあるぜ」
「よーし! もっかい挑戦だー!」
俺たちは何度かそれを繰り返した。
混ぜすぎて風味が飛んだり、味がなくなったり、あるいは混ぜなすぎて分離したり腐ったり……それでも負けずに繰り返した。
醤油の為ならえんやこらである。
そしてついに――――
「で、出来た……!」
樽の中の液体は深く、澄んだ黒を湛えていた。
醤油っぽいニオイもする。
「よしよし、それっぽいのが出来たねー」
「あとはこれを絞るんだっけか?」
「そんな感じー早速やってみよー」
分厚い布を用意して樽に被せ、傾けるとトクトクと赤黒い液体が出てきた。
おーすごい。見た目完全に醤油じゃん。
ちょっと感動。
カオリはそれを小皿にすくい、俺たちに配る。
「じゃあじゃあ二人とも、味見をどうぞ」
「では」「いただきます」
受け取った小皿を舐めると、確かに醤油の味がした。
ちょっと苦いというか淀みのようなものを感じるが、味は確かに醤油だ。
「すげえなカオリ。本当に醤油出来ちまったよ」
「んーまだまだって感じだけどね。でも本当にそれっぽくなったのは私も驚きだよー知識としては知ってたけど、流石に作ったことはなかったから」
「いやぁ、大したもんだホント」
「せやろ。もっと褒めていいよ」
「天才、好奇心の塊、知識欲の鬼」
「でへへーそれほどでもあるっすー」
カオリの頭をぐりぐりと撫でると、されるがままになっている。
この反応、本人としても結構嬉しいっぽい。
「ほほう、これが醤油ってやつか。不思議な味だが確かにいろんなものに合いそうだ」
「俺らの故郷ではかなりの料理にこれが使われてるんだぜ」
と言っても意外と俺は使わないかも。
煮物系もコンソメベースが好きだし、筑前煮とか豚汁くらいかな。
がっつり使うよりは薄味派です。
「私は結構使うよー野菜と醤油+アルファを混ぜてレンチンしたら何でも美味しい!」
「あーよく教えてもらったっけ。レンチンマスターさん流石です」
「レンチンなら任せろー」
俺の料理の半分はカオリに教えてもらったものだ。
特に、レンジでチンする料理はほぼカオリ直伝である。
レンチンは手間も暇もかからない楽ちん料理なので、仕事から帰って作る分には助かっていた。
野菜を刻んで味付けしてレンジでチン。
冷蔵庫に入れておけば何日か食べられるし、洗い物も少なくて済むという。
控えめに言って楽さの極みである。
異世界にもレンジとラップがあれば……流石にそこまでは望むべくもないか。
残念である。
「「あるのかよっ!」」
俺とカオリの声が綺麗にハモる。
だったら早く言えっつーの。
「いやぁ魔法を使うって発想がなかったからよ。知識としてはあったんだが、思いつかなかったぜ。はっはっは」
「どうやるんだ? えらーい魔導師さんが長い時間と金をかけてやっと数時間進むとか、しょっぱい効果じゃないだろうな」
「いやぁ100倍近く時間を経過させるんじゃねぇか? それに俺でも手軽に使える簡単さだ。えーと確かこの辺に……あった、こいつだ」
ダルギスが取り出したのは十字の描かれた綺麗な黒石である。
妙な感じ……確かに強い魔力が込められているように思えた。
「こいつを対象の上に置いて呪いを唱えると、その物に流れる時間が数百倍になるんだ」
「ほほー! すごいじゃないそんなのあるなんて! まさに発酵食品を作るため魔法だよー!」
「よくそんな便利な魔法が存在してるな。局所的にしか使えそうもないのにさ」
「仲間を埋葬する為のものだからな」
「「あ……」」
ダルギスの言葉に、俺たちの盛り上がりはぴたりと止まる。
「冒険の途中で仲間が死ぬだろ? 埋葬する暇も手間もない。かと言って仲間が魔物に喰われるのも忍びない。そういう時はこいつを使うんだ。瞬く間に干からびて、そのうち風化してしまう。共に戦った仲間のためのマジックアイテム。死の際に自分で使ってもいいし、人数分もっていくのが冒険者の嗜みだ」
「へ、へぇー」
なんかいきなりエグい話が出てきた。
まぁでも確かに、戦いや死が間近にある世界ならそんな魔法が発展してもおかしくはないか。
そうでもしないとダンジョン内は死体だらけになってしまうもんな。
とてもじゃないがそんなところで冒険は出来ない。鬱になってしまいそうだ。
どうせなら復活させてほしいところだが、そこまでは出来ないようだ。
やはり死んでも生き返れるのはゲームだけか。
死なないように気を付けよう。
「ま、まぁとにかくさ、やってみようぜ」
「だねだねー」
「おうよ。それじゃ見ててくんな。……死はあまねくもの、誰彼にありて。勇者よ迷う事なく空の国へと昇りたまえ」
ダルギスが呪文を唱えると、石を乗せた樽がゆっくりと変色していく。
見た目にもすごい速さで時間が経っているのがわかる。
「……あ」
不意に声を上げるカオリ。
「お?」
「ちょっ、止めて止めて! 今すぐー!」
「なんだ。もういいのか?」
「じゃなくて! いいから」
業を煮やしたカオリが石を払いのけると、即座に樽のフタを開ける。
中では具と水分が分離し、残念なことになっていた。
「あちゃー……これ時々混ぜながらじゃないとダメなんだよねー塩とかも入れないとだし、地味に手間がいるのよー」
「おおう、そういやそんな事言ってたな」
「フタを半分空けて混ぜながら作るとか、何なら石を中に入れたまま混ざればいんじゃね?」
「おーユキトくんナイスアイデアー!」
「作りかけの樽ならまだあるぜ」
「よーし! もっかい挑戦だー!」
俺たちは何度かそれを繰り返した。
混ぜすぎて風味が飛んだり、味がなくなったり、あるいは混ぜなすぎて分離したり腐ったり……それでも負けずに繰り返した。
醤油の為ならえんやこらである。
そしてついに――――
「で、出来た……!」
樽の中の液体は深く、澄んだ黒を湛えていた。
醤油っぽいニオイもする。
「よしよし、それっぽいのが出来たねー」
「あとはこれを絞るんだっけか?」
「そんな感じー早速やってみよー」
分厚い布を用意して樽に被せ、傾けるとトクトクと赤黒い液体が出てきた。
おーすごい。見た目完全に醤油じゃん。
ちょっと感動。
カオリはそれを小皿にすくい、俺たちに配る。
「じゃあじゃあ二人とも、味見をどうぞ」
「では」「いただきます」
受け取った小皿を舐めると、確かに醤油の味がした。
ちょっと苦いというか淀みのようなものを感じるが、味は確かに醤油だ。
「すげえなカオリ。本当に醤油出来ちまったよ」
「んーまだまだって感じだけどね。でも本当にそれっぽくなったのは私も驚きだよー知識としては知ってたけど、流石に作ったことはなかったから」
「いやぁ、大したもんだホント」
「せやろ。もっと褒めていいよ」
「天才、好奇心の塊、知識欲の鬼」
「でへへーそれほどでもあるっすー」
カオリの頭をぐりぐりと撫でると、されるがままになっている。
この反応、本人としても結構嬉しいっぽい。
「ほほう、これが醤油ってやつか。不思議な味だが確かにいろんなものに合いそうだ」
「俺らの故郷ではかなりの料理にこれが使われてるんだぜ」
と言っても意外と俺は使わないかも。
煮物系もコンソメベースが好きだし、筑前煮とか豚汁くらいかな。
がっつり使うよりは薄味派です。
「私は結構使うよー野菜と醤油+アルファを混ぜてレンチンしたら何でも美味しい!」
「あーよく教えてもらったっけ。レンチンマスターさん流石です」
「レンチンなら任せろー」
俺の料理の半分はカオリに教えてもらったものだ。
特に、レンジでチンする料理はほぼカオリ直伝である。
レンチンは手間も暇もかからない楽ちん料理なので、仕事から帰って作る分には助かっていた。
野菜を刻んで味付けしてレンジでチン。
冷蔵庫に入れておけば何日か食べられるし、洗い物も少なくて済むという。
控えめに言って楽さの極みである。
異世界にもレンジとラップがあれば……流石にそこまでは望むべくもないか。
残念である。
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