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第17話 婚約の報告
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この所オーレルム領はお目出度い事ばかりが続いている。今年も春の収穫は豊作で、夏期へと良い形でバトンを繋げた。
そこに王子の誕生日が重なり、その上エストリアの婚約まで決まった。領民から人気の高い彼女の婚約者は、レアル王国第3王子のオズワルドである。
彼もまたこの地に来て以降、領民達の好感度が高まっている王族だ。その2人が婚約した事は、また一つ領内を盛り上げる要因となった。
「エストリア様―――! おめでとうございますーー!!」
「うちの姫様をお願いします!!」
「エストリアおねーちゃんおめでとう!!」
オズワルドが婚約を申し込んだ数日後、オーレルム邸の正門前で正式な婚約発表が行われた
既にその話は領内に知れ渡ってはいたが、噂話と公式発表はまた別である。こうして領主から直々に発表される事は大切だ。
これからエストリアとオズワルドは、1日かけて領内を周って結婚する事を領民に知らせに行く。
この風習は民と領主の距離が近いオーレルム領特有のもの。普通の領地では領民の方が都市部に集まるのだが、ここでは真逆の行事が行われる。
領主の一族が婚約する際には、こうして貴族側が各街や村を周るのだ。オーレルム邸を出発した馬車に揺られながら、護衛達と共にエストリア達はマルカの街を出て行く。
「なんと言うか、新鮮だな」
「我が領ではこれが当たり前なのです」
「本当に、良い土地柄をしているな」
オズワルドにとっては、オーレルム領の風習はどれも新鮮だ。何をするにしても領民達との距離感が近い。
田舎特有の温かみは、この国の王都にはないものだ。それは決して冷たいという意味ではないが、少し効率的に物を考えすぎている面は否めない。
王族の誕生日を王都全域で祝ったりはしないし、貴族が婚約したからと言ってこれ程の騒ぎにはならない。
目出度い事は皆で祝おうという、オーレルム領の独自性が強く表れているだけだ。
既に王都にもオズワルドの婚約は報告が行っているので、もうすぐ行われる婚約式の後に王都でも軽いお披露目は行われる予定だ。
「これからはオズワルド様もここで暮らすのですよ」
「ふふっ、そうだな。これからが楽しみだ」
「まだまだお見せ出来ていない場所も、私がご案内しますね!」
暗殺者を差し向けられたという事実がある以上は、これまで要塞都市マルカから離れた場所には行かなかった。
しかしこうして、オーレルム家の令嬢と婚約すれば立場は大きく変わる。
王都の貴族ではない相手との結婚は、明確に王座に就く気が無いとの表明にもなる。
オーレルム領に婿入りという形で王都を出る事が確定しており、これでもまだ王位を賭けて暗殺を狙う意味は薄い。
言葉だけの表明とは異なり、将来を決めたのだからこれ以上の証はない。
エストリアは王妃候補としての教育も受けておらず、辺境伯家で騎士として生きて来た。
王子の婚約者がその様な経歴の女性では、今から王位を目指すのはほぼ不可能に近い。
「これでもう暗殺の心配もありませんね」
「その為に利用したみたいで、申し訳ないとは思っている」
「いえ! 王族を守れたのですから、騎士としても臣下としても光栄ですよ!」
婚約のタイミングを思えば、エストリアを利用した様にも見えてしまう。そんなつもりは一切無かったオズワルドには、その事がどうしても気になっていた。
あくまでも1人の女性として本気で結婚したいと願ったに過ぎない。この地で共に生きたいと、そう考えた結果だ。
だがエストリアは、そんな事は気にしていない。結果としてオズワルドが守れたのなら、それで良いと本気で思っている。
大体そんな理由で結婚を求める様な相手ではない事も理解している。オズワルドが優しい王子である事は、もう十分に知る機会はあったのだから。
「それに私は幸せですよ、その……オズワルド様みたいな、素敵な方が婚約者で……」
「俺だって……幸せ、だぞ。貴女はとても、魅力的な女性だ」
「み、魅力的だなんて……そんな」
婚約したばかりの、初々しい空気が馬車の中には充満している。なにせお互いに初めて恋した者同士であり、どちらも恋愛に関しては超のつく初心者だ。
オズワルドは知る限りの知識を使って、どうにかこうにか婚約を申し込んだだけ。必死になって年上の女性へアプローチをしただけだ。
ここからどうすれば良いかなど、まだまだ若いオズワルドには分からない。出来る事と言えば、だだ愚直に好意を示す事だけだ。
それに関してはエストリアも同じであり、年上の女性としてどうリードして良いか分からない。しかしだからこそ、嚙み合う部分もあったりする。
「世辞ではないぞ。本当に、貴女は美しい。外見だけでなく、その生き方も全て」
「お、オズワルド様ったら……」
「もう敬称は必要ない。俺達はその、夫婦になるのだからな」
そう言うとオズワルドは向かいに座ったエストリアの手を取る。彼女の手の甲にもう片方の手を重ねて、エストリアの手を包んだ。
これからは婚約者として、共に生きる者として日々を過ごす。新たな繋がりを示すかの様に、エストリアは彼の手を握り返した。
そこに王子の誕生日が重なり、その上エストリアの婚約まで決まった。領民から人気の高い彼女の婚約者は、レアル王国第3王子のオズワルドである。
彼もまたこの地に来て以降、領民達の好感度が高まっている王族だ。その2人が婚約した事は、また一つ領内を盛り上げる要因となった。
「エストリア様―――! おめでとうございますーー!!」
「うちの姫様をお願いします!!」
「エストリアおねーちゃんおめでとう!!」
オズワルドが婚約を申し込んだ数日後、オーレルム邸の正門前で正式な婚約発表が行われた
既にその話は領内に知れ渡ってはいたが、噂話と公式発表はまた別である。こうして領主から直々に発表される事は大切だ。
これからエストリアとオズワルドは、1日かけて領内を周って結婚する事を領民に知らせに行く。
この風習は民と領主の距離が近いオーレルム領特有のもの。普通の領地では領民の方が都市部に集まるのだが、ここでは真逆の行事が行われる。
領主の一族が婚約する際には、こうして貴族側が各街や村を周るのだ。オーレルム邸を出発した馬車に揺られながら、護衛達と共にエストリア達はマルカの街を出て行く。
「なんと言うか、新鮮だな」
「我が領ではこれが当たり前なのです」
「本当に、良い土地柄をしているな」
オズワルドにとっては、オーレルム領の風習はどれも新鮮だ。何をするにしても領民達との距離感が近い。
田舎特有の温かみは、この国の王都にはないものだ。それは決して冷たいという意味ではないが、少し効率的に物を考えすぎている面は否めない。
王族の誕生日を王都全域で祝ったりはしないし、貴族が婚約したからと言ってこれ程の騒ぎにはならない。
目出度い事は皆で祝おうという、オーレルム領の独自性が強く表れているだけだ。
既に王都にもオズワルドの婚約は報告が行っているので、もうすぐ行われる婚約式の後に王都でも軽いお披露目は行われる予定だ。
「これからはオズワルド様もここで暮らすのですよ」
「ふふっ、そうだな。これからが楽しみだ」
「まだまだお見せ出来ていない場所も、私がご案内しますね!」
暗殺者を差し向けられたという事実がある以上は、これまで要塞都市マルカから離れた場所には行かなかった。
しかしこうして、オーレルム家の令嬢と婚約すれば立場は大きく変わる。
王都の貴族ではない相手との結婚は、明確に王座に就く気が無いとの表明にもなる。
オーレルム領に婿入りという形で王都を出る事が確定しており、これでもまだ王位を賭けて暗殺を狙う意味は薄い。
言葉だけの表明とは異なり、将来を決めたのだからこれ以上の証はない。
エストリアは王妃候補としての教育も受けておらず、辺境伯家で騎士として生きて来た。
王子の婚約者がその様な経歴の女性では、今から王位を目指すのはほぼ不可能に近い。
「これでもう暗殺の心配もありませんね」
「その為に利用したみたいで、申し訳ないとは思っている」
「いえ! 王族を守れたのですから、騎士としても臣下としても光栄ですよ!」
婚約のタイミングを思えば、エストリアを利用した様にも見えてしまう。そんなつもりは一切無かったオズワルドには、その事がどうしても気になっていた。
あくまでも1人の女性として本気で結婚したいと願ったに過ぎない。この地で共に生きたいと、そう考えた結果だ。
だがエストリアは、そんな事は気にしていない。結果としてオズワルドが守れたのなら、それで良いと本気で思っている。
大体そんな理由で結婚を求める様な相手ではない事も理解している。オズワルドが優しい王子である事は、もう十分に知る機会はあったのだから。
「それに私は幸せですよ、その……オズワルド様みたいな、素敵な方が婚約者で……」
「俺だって……幸せ、だぞ。貴女はとても、魅力的な女性だ」
「み、魅力的だなんて……そんな」
婚約したばかりの、初々しい空気が馬車の中には充満している。なにせお互いに初めて恋した者同士であり、どちらも恋愛に関しては超のつく初心者だ。
オズワルドは知る限りの知識を使って、どうにかこうにか婚約を申し込んだだけ。必死になって年上の女性へアプローチをしただけだ。
ここからどうすれば良いかなど、まだまだ若いオズワルドには分からない。出来る事と言えば、だだ愚直に好意を示す事だけだ。
それに関してはエストリアも同じであり、年上の女性としてどうリードして良いか分からない。しかしだからこそ、嚙み合う部分もあったりする。
「世辞ではないぞ。本当に、貴女は美しい。外見だけでなく、その生き方も全て」
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「もう敬称は必要ない。俺達はその、夫婦になるのだからな」
そう言うとオズワルドは向かいに座ったエストリアの手を取る。彼女の手の甲にもう片方の手を重ねて、エストリアの手を包んだ。
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