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第3章
第139話 物量の魔術師
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真っ白な空間で戦い続けていたアイナとアヴァリティアの戦いは、遂に決着を迎えようとしていた。
お互いに傷は負っているものの、アイナは軽傷だがアヴァリティアの方はそうではない。それなりのダメージを受けており、衣服の破損が広範囲に渡っている。
傷そのものは回復魔術で治療済みだが、失った血液までは戻っていなかった。戦えない程の負傷ではないが、普段多り動く事は難しい状態だ。
しかし何よりも大きな問題は、残存魔力の量である。流石に余裕が無くなって来たアヴァリティアに対して、アイナはまだまだ余裕があった。
「貴女、人間ですか?」
「もちろんそうよ。失礼ね」
「その割に全く魔力が減っていない様に見えますが?」
神子ではないアイナが、誰よりも突出している点は魔力量にある。魂とリンクする工房内に設置された、複数の魔力炉が常に魔力を供給し続けているのだ。
もちろん無限ではないし、限界は存在している。どう足掻いても人間に完璧な物を生み出す事は出来ない。
欠点や限界は必ずどこかに生まれてしまう。それでもアイナが作った魔力炉は優秀で、Sランク同士の戦いでも競り勝つ事が可能となる。
アイナの本質は兵器であり、戦力が個人の人間とは違う。炉心からエネルギーを受け取って動く兵器群と言っても良い。
精神が死ぬかも知れない危険な行為を繰り返し、魂を歪めてまで手に入れた特異性。清志の様な代々Sランクをやっている家系が相手でもない限り、最終的には物量で押し切ってしまえる。
「どういう体をしているのです?」
「女性に聞く事じゃないわね」
「秘密、という事ですか」
アイナの周囲には、複数の銃火器を持ったロボットアームが浮かんでいる。お得意の物量作戦を行う時の定番スタイルだ。
対するアヴァリティアの周囲には、今となっては氷の礫が少々残っている程度。撃ち合いになれば押し負けるのは確定で、近接戦に持ち込んだとしてもかなり厳しい。
残された魔力量も考慮すれば、ここで敗北宣言をすべき状況だろう。だが彼はその道を選ばない。七つの大罪という集団は、世間に許しを乞う必要がないからだ。
世界を壊すか敗北するか、そのどちらかだけを選び続ける。その過程で自分が負けるのであれば、喜んでその身を捧げる覚悟を持っているのだ。
「まだやる気なの?」
「どちらかが倒れるまで、ここからは出られませんよ?」
「はぁ……そう」
未だに戦う意思を捨てないアヴァリティアに、アイナは呆れと共にため息を零す。幼い頃のアイナであれば、容赦なく殺す道を選んだ。
危険な相手だと分かっているし、日本の法では龍脈の巫女を誘拐なんて重罪である。しかし今のアイナはもう、意味も無く人を殺さない。
どうしても殺さねばならない状況でも無い限りは、命を奪う選択はしない。これまでに執行者として活躍して来た過程で学んだ事、そして思い出した父の言葉。
犯罪は許せない事だけど、犯人は容赦なく殺していい相手ではない。ちゃんと人として裁き、人の身で悔い改めるべきだ。
そんな父の想い出が、アイナの在り方を変えて行った。だから今回もアイナは、ここで殺す判断はしない。
「さて、終わりにしましょうか思想家さん」
「その呼び方には少々思う所がありますが良いでしょう。望む所です」
「掃射!」
周囲に浮かぶ銃火器群が、大量の弾丸を発射する。9mm弾から戦車砲まで、多種多様な弾がアヴァリティアに殺到した。
彼も黙ってやられるつもりは毛頭なく、必死の抵抗を続けていく。氷塊で砲弾を迎撃し、大量の氷弾で銃弾を叩き落とす。
分厚い氷の壁で身を守り、的確な反撃を繰り返した。Sランク同士だから出来る、無茶苦茶な物量のぶつかり合い。
常人なら5分ともたない激しい攻防が巻き起こる。よほど特殊な空間なのか、普通の屋内なら更地になっている程の激戦でも見た目は変わっていない。
「これで終わり!」
「グッ!」
「食らえ!」
アイナ自慢のオリジナル兵器がいつの間にか出現していた。魔導式電磁加速砲が、40口径という巨大な砲門を唸らせる。
見た目だけで威力悟ったアヴァリティアは、音速で飛翔する砲弾を氷の壁を重ねて防御の構え。
何枚も重ねた氷の壁を、プラズマ化した弾丸が容赦なく破壊していく。激しい破壊音が白い空間に響き渡る。
どうにかギリギリで防いだアヴァリティアだったが、全ての守りを失ってしまう。破壊された氷の壁の向こうには、二丁の大型拳銃を構えたアイナが立っている。
射撃能力に優れたアイナは、この状況で狙いを外す事はない。同時に二つの拳銃から発砲音が響き、次の瞬間にはアヴァリティアの両肩が正確に打ち抜かれた。
1秒ほど遅れてアイナの周囲からも発砲音が響き、続けて両足の太股に弾丸が吸い込まれて行った。
両肩と両足を打ち抜かれては、流石のアヴァリティアも戦闘を継続する事は出来ない。ゆっくりと近付いて行ったアイナが、最後のトドメに入る。
片方の拳銃をアヴァリティアの頭部に向けて引き金を引く。銃口から飛び出た魔力弾が命中した瞬間、アヴァリティアの姿が霧散しつつ強烈な光を発生させた。
お互いに傷は負っているものの、アイナは軽傷だがアヴァリティアの方はそうではない。それなりのダメージを受けており、衣服の破損が広範囲に渡っている。
傷そのものは回復魔術で治療済みだが、失った血液までは戻っていなかった。戦えない程の負傷ではないが、普段多り動く事は難しい状態だ。
しかし何よりも大きな問題は、残存魔力の量である。流石に余裕が無くなって来たアヴァリティアに対して、アイナはまだまだ余裕があった。
「貴女、人間ですか?」
「もちろんそうよ。失礼ね」
「その割に全く魔力が減っていない様に見えますが?」
神子ではないアイナが、誰よりも突出している点は魔力量にある。魂とリンクする工房内に設置された、複数の魔力炉が常に魔力を供給し続けているのだ。
もちろん無限ではないし、限界は存在している。どう足掻いても人間に完璧な物を生み出す事は出来ない。
欠点や限界は必ずどこかに生まれてしまう。それでもアイナが作った魔力炉は優秀で、Sランク同士の戦いでも競り勝つ事が可能となる。
アイナの本質は兵器であり、戦力が個人の人間とは違う。炉心からエネルギーを受け取って動く兵器群と言っても良い。
精神が死ぬかも知れない危険な行為を繰り返し、魂を歪めてまで手に入れた特異性。清志の様な代々Sランクをやっている家系が相手でもない限り、最終的には物量で押し切ってしまえる。
「どういう体をしているのです?」
「女性に聞く事じゃないわね」
「秘密、という事ですか」
アイナの周囲には、複数の銃火器を持ったロボットアームが浮かんでいる。お得意の物量作戦を行う時の定番スタイルだ。
対するアヴァリティアの周囲には、今となっては氷の礫が少々残っている程度。撃ち合いになれば押し負けるのは確定で、近接戦に持ち込んだとしてもかなり厳しい。
残された魔力量も考慮すれば、ここで敗北宣言をすべき状況だろう。だが彼はその道を選ばない。七つの大罪という集団は、世間に許しを乞う必要がないからだ。
世界を壊すか敗北するか、そのどちらかだけを選び続ける。その過程で自分が負けるのであれば、喜んでその身を捧げる覚悟を持っているのだ。
「まだやる気なの?」
「どちらかが倒れるまで、ここからは出られませんよ?」
「はぁ……そう」
未だに戦う意思を捨てないアヴァリティアに、アイナは呆れと共にため息を零す。幼い頃のアイナであれば、容赦なく殺す道を選んだ。
危険な相手だと分かっているし、日本の法では龍脈の巫女を誘拐なんて重罪である。しかし今のアイナはもう、意味も無く人を殺さない。
どうしても殺さねばならない状況でも無い限りは、命を奪う選択はしない。これまでに執行者として活躍して来た過程で学んだ事、そして思い出した父の言葉。
犯罪は許せない事だけど、犯人は容赦なく殺していい相手ではない。ちゃんと人として裁き、人の身で悔い改めるべきだ。
そんな父の想い出が、アイナの在り方を変えて行った。だから今回もアイナは、ここで殺す判断はしない。
「さて、終わりにしましょうか思想家さん」
「その呼び方には少々思う所がありますが良いでしょう。望む所です」
「掃射!」
周囲に浮かぶ銃火器群が、大量の弾丸を発射する。9mm弾から戦車砲まで、多種多様な弾がアヴァリティアに殺到した。
彼も黙ってやられるつもりは毛頭なく、必死の抵抗を続けていく。氷塊で砲弾を迎撃し、大量の氷弾で銃弾を叩き落とす。
分厚い氷の壁で身を守り、的確な反撃を繰り返した。Sランク同士だから出来る、無茶苦茶な物量のぶつかり合い。
常人なら5分ともたない激しい攻防が巻き起こる。よほど特殊な空間なのか、普通の屋内なら更地になっている程の激戦でも見た目は変わっていない。
「これで終わり!」
「グッ!」
「食らえ!」
アイナ自慢のオリジナル兵器がいつの間にか出現していた。魔導式電磁加速砲が、40口径という巨大な砲門を唸らせる。
見た目だけで威力悟ったアヴァリティアは、音速で飛翔する砲弾を氷の壁を重ねて防御の構え。
何枚も重ねた氷の壁を、プラズマ化した弾丸が容赦なく破壊していく。激しい破壊音が白い空間に響き渡る。
どうにかギリギリで防いだアヴァリティアだったが、全ての守りを失ってしまう。破壊された氷の壁の向こうには、二丁の大型拳銃を構えたアイナが立っている。
射撃能力に優れたアイナは、この状況で狙いを外す事はない。同時に二つの拳銃から発砲音が響き、次の瞬間にはアヴァリティアの両肩が正確に打ち抜かれた。
1秒ほど遅れてアイナの周囲からも発砲音が響き、続けて両足の太股に弾丸が吸い込まれて行った。
両肩と両足を打ち抜かれては、流石のアヴァリティアも戦闘を継続する事は出来ない。ゆっくりと近付いて行ったアイナが、最後のトドメに入る。
片方の拳銃をアヴァリティアの頭部に向けて引き金を引く。銃口から飛び出た魔力弾が命中した瞬間、アヴァリティアの姿が霧散しつつ強烈な光を発生させた。
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