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第1章
第18話 価値観の違い
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「ただいまー茉莉」
「アイナ、お疲れー」
事件の発端となったデパートへと戻って来たら、茉莉が救助活動を終えて休憩していた。どうやら犠牲は少数で済んだらしく、死亡者はごく僅かだった。
ゼロで無かった事は悔やまれる。いつもそうだ、どうしても防げない犠牲がある。どれだけ強くなっても、掌から溢れて行く命は無くならない。
いつもこうして、悲しい気分を味わう事になるんだ。少しでも早く、凶悪な犯罪者を撲滅したい。
「亮二はどうしたの?」
「あー飲み物買いに行かせたんよ」
「そう言う事」
茉莉と亮二の2人は、幼馴染で婚約者の関係になる。私としては、正直結構羨ましい。子供の頃からずっと一緒で、結婚まで決まっている。
対して私はこの有り様。せっかく若い学生なのに、そんな青春とは程遠い。寄って来る男と言えば、パパの地位に目が眩んだ者ばかり。
魔術師としては問題児だから、そっち方面は芳しくない。そしてパートナーは出来たけど、清志は日本の名家の生き残り。私では、到底結婚相手になり得ない。
先日の歓迎会で、学園長が教えてくれた。天皇家とも繋がりのある家系らしく、襲撃に会い壊滅状態にある事は隠蔽されている。
本家子息の清志と、従姉である学園長が活躍する事で神坂家の健在を何とかアピールしているそうな。本当はもう、2人しか生き残っていないのに。
国としての威信については、私とて軍人だ。そう言った政治的判断には理解がある。良い人だなとは思うけど、そんな複雑な立場に居る清志と恋愛は出来ない。
「はぁ~良いよねぇ茉莉は婚約者居て」
「どした急に? アイナ美人だし、恋人ぐらい余裕っしょ?」
「出来たらこんな話しないってー」
小さい頃は、放り込まれた環境とか色々あって。女の子らしい生活とは無縁だった。おまけに禁呪でSランクになったものだから、魔導協会預かりとなって軟禁生活。
お父さんの知人である今のパパが養子にしてくれて、軟禁生活から軍人の娘に生活は変化。学校なんて必要ないと言ったけど、行きなさいと強引に学校へ行く事になった。
勉強以外に興味はなく、帰ったらすぐ鍛錬の日々。そんな日々だったから友達や恋人なんて殆ど出来なかった。
途中で色々あって、少しだけ友人は出来たけど。それでも私は、基本的に友人は年上の軍人ばかりだ。
お母さんの話を聞いていたから、恋愛と結婚に憧れはある。だからそれなりには、ちゃんと経験したいと思っている。ただ禁呪と諸々の影響で、子供は難しいかも知れないけど。
「誠実で執行者に理解ある男性を希望します!」
「いや、多分うちの学校になら一杯居るって」
「え、そう? 声掛けただけで逃げられない?」
そんな雑談をしていた時だった。同様に処理が終わったらしい清志が戻って来たのが見えた。無事に終わったと聞いているけど、何故だか表情はあまり良くない様に見える。何かあったのだろうか。
「お帰り~」
「どう言うつもりだアイナ!」
「え、ちょっ、何?」
「何怒ってんのアンタ?」
どうやら私にご立腹らしい。何か変な事をしただろうか。アメリカと日本では処理手順が違うなんて、少なくとも聞いた記憶なない。
魔導協会の対応は全世界共通の筈。怒られる様な事は……あ、もしかしてボヤ騒ぎ? あれはその、私のせいじゃないって言うか。
「あー日本ってそう言う所煩いんだ? ごめんね、あのボヤについては」
「そうじゃない! 何で確保なんだ! 何故生かした!」
「……え?」
「A級犯罪者なんて、どうせ死刑で生きる価値もない。さっさと地獄へ送るべきだろ!」
そう言う話、だったのね。そっか、清志もそっち側だったんだね。……分かってはいる、A級犯罪者は何があろうと死刑だ。
死刑が確定している裁判なんて、人間のエゴでしかない。そしてこの世には、普通の刑罰なんか生温い本物の地獄が実在している。
神が架空の存在だと、世界中で思われていた頃には信じられていなかった。だけど、神や魔術が実在する様に、天国も地獄も実際に存在する。
そして当然ながら現世で罪を犯した者は、それ相応の罰を受ける。それは魂ある存在である以上、何者も逆らえない森羅万象の理。
だから人間による罰など意味はない、そう考える者は少なくない。幾ら罰と言えど人間には倫理がある。しかし地獄にはそんなモノは無い。
「言いたい事は分かるよ? でも私は、出来るだけ生かして捉えたい」
「何でだよ!? 俺と同じなんだろ!? なら分かるだろ!?」
「ちょちょちょい! 落ち着きなってば! アイナに怒る事じゃないって!」
「お、おい! 何やってんだ清志!」
戻って来た亮二と、隣に居た茉莉が詰め寄る清志を止めに入る。今日まで一緒に居て、初めて見たパートナーの怒りの感情だった。
言いたい事はちゃんと分かる。私だって、昔はそうだった。絶対に生かして帰さない。そう思って居た時期は確かにある。だから清志の気持ちが良く分かり過ぎる程に、伝わって来る。
「私も昔はそうだったよ……今は違うけど」
「どうして!?」
「だから落ち着けって! お前ちょっとおかしいぞ!」
「今日はここまで! ね? 一旦落ち着いて明日にしよ?」
日本での初仕事としては、満足行く結果だった。あくまで仕事の内容は。だけどパートナーとの関係は、これまでで一番悪い状態になった。
「アイナ、お疲れー」
事件の発端となったデパートへと戻って来たら、茉莉が救助活動を終えて休憩していた。どうやら犠牲は少数で済んだらしく、死亡者はごく僅かだった。
ゼロで無かった事は悔やまれる。いつもそうだ、どうしても防げない犠牲がある。どれだけ強くなっても、掌から溢れて行く命は無くならない。
いつもこうして、悲しい気分を味わう事になるんだ。少しでも早く、凶悪な犯罪者を撲滅したい。
「亮二はどうしたの?」
「あー飲み物買いに行かせたんよ」
「そう言う事」
茉莉と亮二の2人は、幼馴染で婚約者の関係になる。私としては、正直結構羨ましい。子供の頃からずっと一緒で、結婚まで決まっている。
対して私はこの有り様。せっかく若い学生なのに、そんな青春とは程遠い。寄って来る男と言えば、パパの地位に目が眩んだ者ばかり。
魔術師としては問題児だから、そっち方面は芳しくない。そしてパートナーは出来たけど、清志は日本の名家の生き残り。私では、到底結婚相手になり得ない。
先日の歓迎会で、学園長が教えてくれた。天皇家とも繋がりのある家系らしく、襲撃に会い壊滅状態にある事は隠蔽されている。
本家子息の清志と、従姉である学園長が活躍する事で神坂家の健在を何とかアピールしているそうな。本当はもう、2人しか生き残っていないのに。
国としての威信については、私とて軍人だ。そう言った政治的判断には理解がある。良い人だなとは思うけど、そんな複雑な立場に居る清志と恋愛は出来ない。
「はぁ~良いよねぇ茉莉は婚約者居て」
「どした急に? アイナ美人だし、恋人ぐらい余裕っしょ?」
「出来たらこんな話しないってー」
小さい頃は、放り込まれた環境とか色々あって。女の子らしい生活とは無縁だった。おまけに禁呪でSランクになったものだから、魔導協会預かりとなって軟禁生活。
お父さんの知人である今のパパが養子にしてくれて、軟禁生活から軍人の娘に生活は変化。学校なんて必要ないと言ったけど、行きなさいと強引に学校へ行く事になった。
勉強以外に興味はなく、帰ったらすぐ鍛錬の日々。そんな日々だったから友達や恋人なんて殆ど出来なかった。
途中で色々あって、少しだけ友人は出来たけど。それでも私は、基本的に友人は年上の軍人ばかりだ。
お母さんの話を聞いていたから、恋愛と結婚に憧れはある。だからそれなりには、ちゃんと経験したいと思っている。ただ禁呪と諸々の影響で、子供は難しいかも知れないけど。
「誠実で執行者に理解ある男性を希望します!」
「いや、多分うちの学校になら一杯居るって」
「え、そう? 声掛けただけで逃げられない?」
そんな雑談をしていた時だった。同様に処理が終わったらしい清志が戻って来たのが見えた。無事に終わったと聞いているけど、何故だか表情はあまり良くない様に見える。何かあったのだろうか。
「お帰り~」
「どう言うつもりだアイナ!」
「え、ちょっ、何?」
「何怒ってんのアンタ?」
どうやら私にご立腹らしい。何か変な事をしただろうか。アメリカと日本では処理手順が違うなんて、少なくとも聞いた記憶なない。
魔導協会の対応は全世界共通の筈。怒られる様な事は……あ、もしかしてボヤ騒ぎ? あれはその、私のせいじゃないって言うか。
「あー日本ってそう言う所煩いんだ? ごめんね、あのボヤについては」
「そうじゃない! 何で確保なんだ! 何故生かした!」
「……え?」
「A級犯罪者なんて、どうせ死刑で生きる価値もない。さっさと地獄へ送るべきだろ!」
そう言う話、だったのね。そっか、清志もそっち側だったんだね。……分かってはいる、A級犯罪者は何があろうと死刑だ。
死刑が確定している裁判なんて、人間のエゴでしかない。そしてこの世には、普通の刑罰なんか生温い本物の地獄が実在している。
神が架空の存在だと、世界中で思われていた頃には信じられていなかった。だけど、神や魔術が実在する様に、天国も地獄も実際に存在する。
そして当然ながら現世で罪を犯した者は、それ相応の罰を受ける。それは魂ある存在である以上、何者も逆らえない森羅万象の理。
だから人間による罰など意味はない、そう考える者は少なくない。幾ら罰と言えど人間には倫理がある。しかし地獄にはそんなモノは無い。
「言いたい事は分かるよ? でも私は、出来るだけ生かして捉えたい」
「何でだよ!? 俺と同じなんだろ!? なら分かるだろ!?」
「ちょちょちょい! 落ち着きなってば! アイナに怒る事じゃないって!」
「お、おい! 何やってんだ清志!」
戻って来た亮二と、隣に居た茉莉が詰め寄る清志を止めに入る。今日まで一緒に居て、初めて見たパートナーの怒りの感情だった。
言いたい事はちゃんと分かる。私だって、昔はそうだった。絶対に生かして帰さない。そう思って居た時期は確かにある。だから清志の気持ちが良く分かり過ぎる程に、伝わって来る。
「私も昔はそうだったよ……今は違うけど」
「どうして!?」
「だから落ち着けって! お前ちょっとおかしいぞ!」
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