30 / 184
第1章
第30話 見えない目的
しおりを挟む
謎の不死者が発見されてから半月ほど、問題の不死者事件は増加の一途を辿っていた。最初は1体か2体が同じ場所に出現する程度であった。
しかし今となっては、複数箇所に何体も現れる様になっていた。そんな日々の中で、アイナの魔力が最も効果的であると判明した。その為にアイナと清志の2人は、今や連日の様に対処に追われていた。
『2人共、次は広隆寺よ!』
「また? ちょっと多くないか?」
「処理は楽だけど、面倒よね」
既に陽は落ちているので、一般人や観光客が遭遇する危険はない。対処法もアイナが魔力弾を撃ち込むか、清志が阻害魔術を当てるだけ。
しかしあちこち移動せねばならない2人にとっては面倒事でしかない。わざわざSランクの2人を使う程では無い相手だが、最も効率が良く迅速なので頼らざるを得ない。
魔導協会としても痛し痒しと言った状況となっていた。相変わらず出所は不明で、使われる死体に共通点はない。
人種も様々で性別にも偏りは無かった。どこかで墓荒らしがあったとの情報も無く、完全に後手に回っていた。
脅威度も低く、どうしても殆どの主力は西山製薬の調査に割かれていた。その状況が更に足を引っ張る原因となっていた。
「どこからこんなに死体を調達しているんだ?」
「病院辺りじゃない?」
「この数、個人では無理だよなぁ」
こちらの調査も行われてはいるものの、容疑者すら特定出来ないままだった。何せやっている事があまりにも限定的過ぎる。
死体に生命力を与える技術こそ目を引くものの、出来上がるのは風変わりな動く死体。組織的にやっているとしても、目的があまりにも不透明だ。
ネクロマンシーの新たな発展が目的だとしても、進歩とは到底言えない微妙な結果。これなら既存の魔術を発展させた方がマシだろう。
聖水等が効かないと言うメリットが一応はあるが、その割には弱すぎる。精密な作業が出来る程の意思も無く、戦闘能力は微妙の一言に尽きる。
生前の記憶なども持ち合わせておらず、会話も不可能と特筆すべき所もない。詐欺か何かに利用する事も出来そうにない。
「そもそも目的が不明よね」
「そうなんだよな。あんなの何に使う気なんだ」
「肉壁?」
「それも微妙だろう」
見えて来ない犯人の目的に、困惑を隠せない2人。魔導協会自体も愉快犯的な行いに戸惑うばかりだ。白昼堂々と街中に放つならともかく、人が少ない場所に適当に放置するだけ。
せめて人的被害を目的としたテロ行為ならまだ理解出来るが、今の所は目立った被害は出ていない。せいぜい運悪く遭遇して、襲われた数人が居る程度。
それらも軽症で済んでいる為、問える罪も大した事はない。せいぜい死体遺棄と軽度の違法な魔術実験程度だ。
数年刑務所に放り込まれるだけで終わる。たちの悪いイタズラの域を出ておらず、警察も本腰を入れてはいない。
せめて使われた遺体が行方不明者であったなら、事件性も高くなって来るのだが。残念ながらどの遺体も、病院等で死亡が確認された後のものばかりだった。
「あそこよ、清志」
「今回は俺がやるよ」
「オッケー、任せたわ」
境内を彷徨いていた不死者に向かって、清志が一気に踏み込む。阻害魔術を乗せた掌底が、綺麗に顎を捉え不死者が数メートル転がる。
数秒ほど倒れた体が痙攣していたが、生命力を付与する魔術が効力を失うと物言わぬ死体へと戻る。何度も繰り返された単純な作業。特に問題もなく、無事に不死者の制圧は完了した。
「やっぱり、アイナの魔力弾ほど即効性はないな」
「まあ呪いだからね。阻害魔術とも違うし」
「こうやって比べると、エグい効果だよな」
清志の使う阻害魔術は、高度な呪術を利用した物ではあるがアイナの呪い程強力ではない。複数の禁呪を重ねた呪縛は、通常の阻害魔術よりも遥かに高い効果を持っていた。
Cランク魔術師の阻害魔術の場合は、この変わった不死者を完全に停止させるのに数分掛かる。Sランクの清志は、呪術の専門家ではないがそれでもしっかりと習得した身だ。
それでも完全に停止させるまでに数秒を要する。しかしアイナの魔力は、命中した瞬間に生命力を付与する魔術を吹き飛ばす。そこに効力の差がはっきりと出ていた。
『待って2人とも! まだ反応があるわ!』
「……みたいだな」
「コイツら、一体どこから来たの?」
いつの間にか、清志とアイナを包囲する形で不死者達が集まって来ていた。今までの相手とは違い、明らかに明確な目的を持っていた。
真っ直ぐに2人に向かって移動している。これまでに複数体が一緒に出現した場合、全く統率など取れていなかった。
しかし今回に限っては、明らかに統率の取れた行動に出ている。隙間無く2人を囲む様に、じりじりと距離を詰めて行く。
いつの間にか数十体の動く死体が、この場所に集まって来ている。まるで最初から、ここで待伏せでもしていたかの様に。
「ぞろぞろと面倒な」
「こんなのが数だけ居てもねぇ」
アイナの使う2丁の銃から発射される魔力弾と、清志の阻害魔術が付与された大鎌が不死者達を次々と仕留めて行く。
集団行動を取れる様になったとは言っても、所詮は低位の不死者に相当する雑魚。瞬く間に数十体の不死者は、元の死体へと戻って行った。
「なんだったんだ?」
「流石にSランク2人は、想定して無かったんじゃない?」
「……それもそうか」
あくまでこの2人だから、これ程簡単に圧倒出来ただけに過ぎない。もしこれがCランクコンビであったならば、それなりに苦戦を強いられたであろう。
そしてそれは現実のものとなる。この件で魔術師に怪我人が出るのは、この事件から数日後の事だった。
しかし今となっては、複数箇所に何体も現れる様になっていた。そんな日々の中で、アイナの魔力が最も効果的であると判明した。その為にアイナと清志の2人は、今や連日の様に対処に追われていた。
『2人共、次は広隆寺よ!』
「また? ちょっと多くないか?」
「処理は楽だけど、面倒よね」
既に陽は落ちているので、一般人や観光客が遭遇する危険はない。対処法もアイナが魔力弾を撃ち込むか、清志が阻害魔術を当てるだけ。
しかしあちこち移動せねばならない2人にとっては面倒事でしかない。わざわざSランクの2人を使う程では無い相手だが、最も効率が良く迅速なので頼らざるを得ない。
魔導協会としても痛し痒しと言った状況となっていた。相変わらず出所は不明で、使われる死体に共通点はない。
人種も様々で性別にも偏りは無かった。どこかで墓荒らしがあったとの情報も無く、完全に後手に回っていた。
脅威度も低く、どうしても殆どの主力は西山製薬の調査に割かれていた。その状況が更に足を引っ張る原因となっていた。
「どこからこんなに死体を調達しているんだ?」
「病院辺りじゃない?」
「この数、個人では無理だよなぁ」
こちらの調査も行われてはいるものの、容疑者すら特定出来ないままだった。何せやっている事があまりにも限定的過ぎる。
死体に生命力を与える技術こそ目を引くものの、出来上がるのは風変わりな動く死体。組織的にやっているとしても、目的があまりにも不透明だ。
ネクロマンシーの新たな発展が目的だとしても、進歩とは到底言えない微妙な結果。これなら既存の魔術を発展させた方がマシだろう。
聖水等が効かないと言うメリットが一応はあるが、その割には弱すぎる。精密な作業が出来る程の意思も無く、戦闘能力は微妙の一言に尽きる。
生前の記憶なども持ち合わせておらず、会話も不可能と特筆すべき所もない。詐欺か何かに利用する事も出来そうにない。
「そもそも目的が不明よね」
「そうなんだよな。あんなの何に使う気なんだ」
「肉壁?」
「それも微妙だろう」
見えて来ない犯人の目的に、困惑を隠せない2人。魔導協会自体も愉快犯的な行いに戸惑うばかりだ。白昼堂々と街中に放つならともかく、人が少ない場所に適当に放置するだけ。
せめて人的被害を目的としたテロ行為ならまだ理解出来るが、今の所は目立った被害は出ていない。せいぜい運悪く遭遇して、襲われた数人が居る程度。
それらも軽症で済んでいる為、問える罪も大した事はない。せいぜい死体遺棄と軽度の違法な魔術実験程度だ。
数年刑務所に放り込まれるだけで終わる。たちの悪いイタズラの域を出ておらず、警察も本腰を入れてはいない。
せめて使われた遺体が行方不明者であったなら、事件性も高くなって来るのだが。残念ながらどの遺体も、病院等で死亡が確認された後のものばかりだった。
「あそこよ、清志」
「今回は俺がやるよ」
「オッケー、任せたわ」
境内を彷徨いていた不死者に向かって、清志が一気に踏み込む。阻害魔術を乗せた掌底が、綺麗に顎を捉え不死者が数メートル転がる。
数秒ほど倒れた体が痙攣していたが、生命力を付与する魔術が効力を失うと物言わぬ死体へと戻る。何度も繰り返された単純な作業。特に問題もなく、無事に不死者の制圧は完了した。
「やっぱり、アイナの魔力弾ほど即効性はないな」
「まあ呪いだからね。阻害魔術とも違うし」
「こうやって比べると、エグい効果だよな」
清志の使う阻害魔術は、高度な呪術を利用した物ではあるがアイナの呪い程強力ではない。複数の禁呪を重ねた呪縛は、通常の阻害魔術よりも遥かに高い効果を持っていた。
Cランク魔術師の阻害魔術の場合は、この変わった不死者を完全に停止させるのに数分掛かる。Sランクの清志は、呪術の専門家ではないがそれでもしっかりと習得した身だ。
それでも完全に停止させるまでに数秒を要する。しかしアイナの魔力は、命中した瞬間に生命力を付与する魔術を吹き飛ばす。そこに効力の差がはっきりと出ていた。
『待って2人とも! まだ反応があるわ!』
「……みたいだな」
「コイツら、一体どこから来たの?」
いつの間にか、清志とアイナを包囲する形で不死者達が集まって来ていた。今までの相手とは違い、明らかに明確な目的を持っていた。
真っ直ぐに2人に向かって移動している。これまでに複数体が一緒に出現した場合、全く統率など取れていなかった。
しかし今回に限っては、明らかに統率の取れた行動に出ている。隙間無く2人を囲む様に、じりじりと距離を詰めて行く。
いつの間にか数十体の動く死体が、この場所に集まって来ている。まるで最初から、ここで待伏せでもしていたかの様に。
「ぞろぞろと面倒な」
「こんなのが数だけ居てもねぇ」
アイナの使う2丁の銃から発射される魔力弾と、清志の阻害魔術が付与された大鎌が不死者達を次々と仕留めて行く。
集団行動を取れる様になったとは言っても、所詮は低位の不死者に相当する雑魚。瞬く間に数十体の不死者は、元の死体へと戻って行った。
「なんだったんだ?」
「流石にSランク2人は、想定して無かったんじゃない?」
「……それもそうか」
あくまでこの2人だから、これ程簡単に圧倒出来ただけに過ぎない。もしこれがCランクコンビであったならば、それなりに苦戦を強いられたであろう。
そしてそれは現実のものとなる。この件で魔術師に怪我人が出るのは、この事件から数日後の事だった。
0
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活
シン
ファンタジー
世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。
大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。
GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。
ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。
そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。
探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。
そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。
たまに有り得ない方向に話が飛びます。
一話短めです。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる