44 / 184
第1章
第44話 死神様の圧迫面接 前編
しおりを挟む
突然の襲撃も対処し、報告も済んだ清志とアイナは一時帰宅していた。襲撃から時間もかなり経過し、日付が変わりつつあった。
2人はまだまだ体力的に余裕があったものの、未成年をこれ以上働かせたくない波多野により強引に帰されてしまった。
少々不完全燃焼気味だった為に、アイナはまだ眠る気になれず自室でストレッチをしていた。執行者と軍人を掛け持ちしているアイナは、純粋な体力だけなら清志よりもある。
それもあってもう少し体を動かしたい気分で居た。そんなアイナの下へと、1人の女神が来訪する。
「お邪魔するわよ」
「あれ? 黄泉津大神様? 清志は?」
「良いから着いて来なさい」
「え、ちょっと」
有無を言わさず歩き出す黄泉津大神の後をアイナが追う。トレーニングウェア姿のまま外出する事になった為に、少々肌の露出が普段より多い。
清志がこの場に居なかったのは幸いだろう。アイナは大して気にしないが、清志の方は目のやり場に困るに違いない。
漆黒の和服に身を包んだ美女と、軽装の美少女が深夜の住宅街を歩く。時間も時間なので、他に歩いている人間は誰も居ない。
静かな街並みを歩く2人に、これと言った会話はない。沈黙に耐えかねたアイナが、黄泉津大神に問い掛ける。
「あの、今からどこへ?」
「静かにしなさい」
「は、はぁ」
何も答えるつもりは無いと言わんばかりの対応だ。アイナは黄泉津大神との接点が少なく、まだ人物像を良く掴めていない。
噂に聞く程度の知識しか持っておらず、そう詳しくはない。元々あまり表に出て来るタイプではないので、公式なデータもかなり少ない。
神話として伝わっている内容に加えて、清志との活躍程度しか殆どの人間は知らないのだ。本来なら醜い姿の筈なのに、何故か美しい姿でいる事など不明な点は多い。
しかし大して仲良くもなれていないのに、そんな失礼な事を女性に聞くなんてアイナには出来ない。
清志から聞いた限りでは、自由奔放で少々陰険な所があると言うだけ。それぐらいしかアイナは良く知らないのだ。
「この辺りで良いでしょう」
「えっと……こんな所で何を?」
住宅街から結構な距離を歩き、人気の無いパチンコ屋の跡地で黄泉津大神は歩みを止めた。こんなだだっ広い何もない所に、夜な夜なやって来て何をしようと言うのか。
その真意を全く理解出来ていないアイナは困惑した。わざわざこんな所まで来たのも意味不明で、こんな行動に出る黄泉津大神の意思も謎のまま。
そもそも碌な説明もないまま、ただ歩かされて来ただけだ。アイナから見れば全てが謎だらけだ。だからこそ、それほど注意をしていなかった。
相手はパートナーが仕える女神様だ、油断するなと言う方が難しい。アイナがつい視線を周囲に向けようとした、その瞬間に大鎌の切っ先がアイナの首元を掠める。
「っ!?」
「腑抜けては居ない様ね」
「どう言うつもりですか!?」
突然斬り掛かられたアイナとしては、文句の一つでも言いたくなる。幾ら自由奔放だと言っても、自身の神子が組んでいるパートナーを斬り殺して良い理由はない。
何より今の一撃は、アイナでなければ確実に首を狩られていた。間違いなくその一太刀には殺意が込められていた。
冗談だと笑って済ませられない明らかな敵対の意思。そんなものを向けられる理由が、アイナには全く思い当たる節がない。せめて理由ぐらいは知りたいと願っても許されるだろう。
「お前のせいで、あの子は変わってしまった」
「あの子って、清志の事ですか?」
「あの子は強くないといけない。弱さを持ってはいけないの」
「意味が分かりませんよ!」
清志の使う死神の大鎌は本来、黄泉津大神の武器である。神子として契約を交わしたから、清志も扱えるだけで元々の持ち主である黄泉津大神も当然扱う事が出来る。
何より、大鎌での戦闘を清志に教えたのは黄泉津大神である。つまりその腕は清志よりも高い水準にある。
現世に出る為にかなり神格を落としていても、その高い戦闘能力は健在だ。清志にも劣らない猛攻がアイナを襲う。
「女神よ、ちょっと待って下さらぬか!」
「精霊風情が口を挟むな!」
「ヘンリー、話は聞いて貰えなさそうよ」
女神の暴挙についヘンリーが口を挟むも、素気なく返されてしまった。普段は清志達の行動にはあまり口を出さない彼であっても、今回ばかりは流石に黙っては居られない。
このままではパートナーが斬り殺されてしまう。孫の様にアイナの面倒を見てきたヘンリーにとっては、たまったものではない。良く分からない理由で死神に魂を狩られては困る。
「お前に清志は守れない」
「何だか分からないけど、力試しって事かしら?」
「歪な魂の小娘よ、ここで死んで貰う」
「上等、やってやるわ!」
これまで一度も見せて来なかった、アイナの本気モード。彼女がSランクになれた、そのカラクリが動き始める。
公式記録にも載せられていない、アイナの秘密と禁呪の果てに得た物。命懸けで手に入れたその力が、初めて日本の大地で全力使用される。
異色の錬金術師アイナ・クラーク・三島と、太古から存在する死の神、黄泉津大神の戦いが始まった。
2人はまだまだ体力的に余裕があったものの、未成年をこれ以上働かせたくない波多野により強引に帰されてしまった。
少々不完全燃焼気味だった為に、アイナはまだ眠る気になれず自室でストレッチをしていた。執行者と軍人を掛け持ちしているアイナは、純粋な体力だけなら清志よりもある。
それもあってもう少し体を動かしたい気分で居た。そんなアイナの下へと、1人の女神が来訪する。
「お邪魔するわよ」
「あれ? 黄泉津大神様? 清志は?」
「良いから着いて来なさい」
「え、ちょっと」
有無を言わさず歩き出す黄泉津大神の後をアイナが追う。トレーニングウェア姿のまま外出する事になった為に、少々肌の露出が普段より多い。
清志がこの場に居なかったのは幸いだろう。アイナは大して気にしないが、清志の方は目のやり場に困るに違いない。
漆黒の和服に身を包んだ美女と、軽装の美少女が深夜の住宅街を歩く。時間も時間なので、他に歩いている人間は誰も居ない。
静かな街並みを歩く2人に、これと言った会話はない。沈黙に耐えかねたアイナが、黄泉津大神に問い掛ける。
「あの、今からどこへ?」
「静かにしなさい」
「は、はぁ」
何も答えるつもりは無いと言わんばかりの対応だ。アイナは黄泉津大神との接点が少なく、まだ人物像を良く掴めていない。
噂に聞く程度の知識しか持っておらず、そう詳しくはない。元々あまり表に出て来るタイプではないので、公式なデータもかなり少ない。
神話として伝わっている内容に加えて、清志との活躍程度しか殆どの人間は知らないのだ。本来なら醜い姿の筈なのに、何故か美しい姿でいる事など不明な点は多い。
しかし大して仲良くもなれていないのに、そんな失礼な事を女性に聞くなんてアイナには出来ない。
清志から聞いた限りでは、自由奔放で少々陰険な所があると言うだけ。それぐらいしかアイナは良く知らないのだ。
「この辺りで良いでしょう」
「えっと……こんな所で何を?」
住宅街から結構な距離を歩き、人気の無いパチンコ屋の跡地で黄泉津大神は歩みを止めた。こんなだだっ広い何もない所に、夜な夜なやって来て何をしようと言うのか。
その真意を全く理解出来ていないアイナは困惑した。わざわざこんな所まで来たのも意味不明で、こんな行動に出る黄泉津大神の意思も謎のまま。
そもそも碌な説明もないまま、ただ歩かされて来ただけだ。アイナから見れば全てが謎だらけだ。だからこそ、それほど注意をしていなかった。
相手はパートナーが仕える女神様だ、油断するなと言う方が難しい。アイナがつい視線を周囲に向けようとした、その瞬間に大鎌の切っ先がアイナの首元を掠める。
「っ!?」
「腑抜けては居ない様ね」
「どう言うつもりですか!?」
突然斬り掛かられたアイナとしては、文句の一つでも言いたくなる。幾ら自由奔放だと言っても、自身の神子が組んでいるパートナーを斬り殺して良い理由はない。
何より今の一撃は、アイナでなければ確実に首を狩られていた。間違いなくその一太刀には殺意が込められていた。
冗談だと笑って済ませられない明らかな敵対の意思。そんなものを向けられる理由が、アイナには全く思い当たる節がない。せめて理由ぐらいは知りたいと願っても許されるだろう。
「お前のせいで、あの子は変わってしまった」
「あの子って、清志の事ですか?」
「あの子は強くないといけない。弱さを持ってはいけないの」
「意味が分かりませんよ!」
清志の使う死神の大鎌は本来、黄泉津大神の武器である。神子として契約を交わしたから、清志も扱えるだけで元々の持ち主である黄泉津大神も当然扱う事が出来る。
何より、大鎌での戦闘を清志に教えたのは黄泉津大神である。つまりその腕は清志よりも高い水準にある。
現世に出る為にかなり神格を落としていても、その高い戦闘能力は健在だ。清志にも劣らない猛攻がアイナを襲う。
「女神よ、ちょっと待って下さらぬか!」
「精霊風情が口を挟むな!」
「ヘンリー、話は聞いて貰えなさそうよ」
女神の暴挙についヘンリーが口を挟むも、素気なく返されてしまった。普段は清志達の行動にはあまり口を出さない彼であっても、今回ばかりは流石に黙っては居られない。
このままではパートナーが斬り殺されてしまう。孫の様にアイナの面倒を見てきたヘンリーにとっては、たまったものではない。良く分からない理由で死神に魂を狩られては困る。
「お前に清志は守れない」
「何だか分からないけど、力試しって事かしら?」
「歪な魂の小娘よ、ここで死んで貰う」
「上等、やってやるわ!」
これまで一度も見せて来なかった、アイナの本気モード。彼女がSランクになれた、そのカラクリが動き始める。
公式記録にも載せられていない、アイナの秘密と禁呪の果てに得た物。命懸けで手に入れたその力が、初めて日本の大地で全力使用される。
異色の錬金術師アイナ・クラーク・三島と、太古から存在する死の神、黄泉津大神の戦いが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる