死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第1章

第55話 人造神の真実

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 アイナと和真かずまの戦闘は、膠着状態にあった。お互いに決定打が無い為に、両者共に打つ手なし。正確に言えば、アイナにはまだ手がある。
 しかしその手を使えば、地下にあるこの場は崩落して全員生き埋めだ。生存者をまだ全員救助出来ていないこの段階で、そんな方法を取れば最悪の未来が待っている。
 民間人の多い場所では全力を出せない清志せいじと同じく、崩落の危険がある場所ではアイナに全力は出せない。強大な力はその分、様々な制約が付き纏う。

 何もかもを破壊する、破壊神になりたいのなら話は別だが。そうでは無く人々を守り、犯罪者を裁くのが目的である以上は仕方がない。
 特にアイナは犯人を生きたまま捕縛する事を優先している以上、尚の事そんな手段を選ぶ訳にはいかない。
 死なないからと生き埋めにするのは確かに有効ではある。だがその戦法は、最初からアイナの選択肢には無い。

「そろそろ諦めたらどうです?」

「それはこっちのセリフよ」

「アナタ方には止められませんよ」

「どう言う意味かしら?」

 互いに遮蔽物に身を隠しながら、言葉を交わし合う。お互いがチャンスを狙い合っているので、簡単には動けない。
 そんな状況だからこそ、和真は話術で勝ちを狙いに行く。無駄であると理解させつつ、隙を見つけて逃走する。
 その機会を狙ってはいるが、アイナとてそれを許す程愚かではない。戦いが始まってから暫く、ずっとこの状況が続いていた。

「私の人造神は特別ですからね、黄泉津大神とて殺せません」

「随分と自信があるみたいね? 理由を聞いても?」

「……良いでしょう、無駄と分かればアナタも諦めるしかない」

 アイナは情報を聞き出す機会を狙う。そして和真はそれを理解した上で、自らの技術について話を始める。
 カラクリがバレた所で、今この場ではどうする事も出来ない。その絶対の自信から来る、余裕の態度がアイナの神経を逆撫でする。
 しかしそれでも、今は話を聞き出すしか突破の足掛かりはない。結局の所は、アイナ達には情報が不足しているのだから。
 ただ暴れ回るだけでは解決しない。腹立たしくても、この男の演説を聞くしかないのだ。

「今回の技術は信仰と供物、そしてスーフィズムを融合させた成果です」

「信仰と供物ですって?」

「ええそうです。我が社の人気アプリを利用しているんですよ」

 和真が利用したのは、スマートフォンのアプリであった。西山製薬が提供している、健康管理アプリにその要がある。
 その中では、健康を司る神様としてとある架空のマスコットキャラクターが登場している。
 自分の魔力を少量捧げると、そのキャラクターが利用者の健康状態を正確に測定してくれると言うサービスだ。
 少しゲームっぽいそのシステムと、自分に合う食生活や適切な運動量が正確に分かる事で人気を博した。
 1000万以上ダウンロードされた人気のアプリであり、今でも沢山のユーザーがいる。

「それが何だって言うの?」

「分かりませんか? 神様に魔力を捧げるのです。信仰と供物が成立しているでしょう?」

「それだけで本物の神は造れないでしょう」

 神々と言う存在には、信仰が非常に重要だ。信じ崇める人々のお陰で、存在が確立される。神様と思われていない存在では神にはなれない。
 太古から人々が、神の存在を信じ崇め続けたからこそ今まで続いている。誰も崇めないただの偶像では駄目なのだ。
 逆を言えば信じ崇める者達が居れば、偶像でも神に成り得る。もちろんそれは数人程度では不可能だ。それこそ何万人もの信仰が必要となる。
 そして供物は、神への一番の捧げ物だ。その内容は様々で、食べ物や製造物など色んな形がある。

 供物を捧げると言う行為は、信仰の中でも重要な意味を持つ。誰でも出来る上に、分かり易く形に残る。
 もし神を新たに造るならば、信者と供物を集めるのが一番早いとされている。そう言う意味では、確かに成立している。
 しかし電子データでしかないただのキャラクターでは、仮に成立しても信仰を受け取る先がない。
 神として成立している存在には、必ず御神体や神殿などその祈りが集約される物体がある。そしてそれらは、必ず一定以上の魔力を帯びている。

「だからこその彼女なのです! 素晴らしい逸材ですよ、森下翔子もりしたしょうこと言う存在は!」

「森下さん? 何故ここで彼女が?」

「彼女は他人の魔力を100%受け取る事が出来るのです!」

 和真の行った事は単純だった。信仰と供物を成立させ、アプリを通して集めた魔力を翔子に集約したのだ。
 一度の利用でユーザーが捧げる魔力は少量だ。しかしそれが1000万以上のダウンロード数と、2年に渡るサービス期間があればどうだろうか。
 730日分もの蓄積があれば、かなりの魔力量になる。その大量の魔力と森下翔子を合わせ、スーフィズムの魔術形態を利用する。
 スーフィズムは神の力を人間に降ろす魔術だが、今回は大量の魔力を逆に人造神の方に送り込む。
 翔子と彼女をモデルにした架空の神をリンクさせる事で、強引に成立させたのだ。

「そんな方法で……出来てしまったと言うの」

「アナタの目の前に答えがあるでしょう?」

「なら、アナタを止めるには」

「アナタ達には電子データ、壊せないでしょう?」

 それが和真の自信の正体だ。電子データである本体がある以上は、翔子だけを倒しても止まらない。今ここに居る翔子は、現世に召喚した黄泉津大神と同じだ。
 その肉体を破壊しても本体は消えない。そして現状の清志とアイナには、電子データをどうにかする手段が無いのだ。
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