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第1章
第57話 空を貫く閃光
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アイナから翔子を消耗させる様に頼まれた清志は、手加減を辞めて本来の力を全力で使用する事に決めた。
清志が使える神子としての全力は、黄泉の国から強力な軍勢を呼び出す事。神に近しい亡者達の軍勢が、恐ろしい鬼達がその力を振るえばただの人間など相手にもならない。
神話の神々ですら追い詰める様な者達が、跳梁跋扈している黄泉の国。その戦力を好きに使えるのが清志の本領だ。
「開門! 黄泉比良坂!」
清志の後方に巨大な千引の岩の幻影が現れる。その大岩を清志の大鎌が切り裂き真っ二つに割れる。
それにより現世と黄泉の国の間にある壁が消え去った。黄泉から続く黄泉比良坂からは、亡者や鬼達の叫び声が轟く。
清志が切り裂いた空間から、冷たい空気が流れ込む。清志の後ろにあった半透明の空間が徐々に鮮明になって行く。
古びた巨大な鳥居が現れ、周囲に死臭が漂い始める。体感温度が数度下がったかの様な、急激な寒気が翔子の体を襲う。
「な、何よ? 何なのよこれ!?」
「ただ死なないだけの神なんて、神としては三流なのよ小娘」
怯える翔子を見てニヤリと黄泉津大神が笑う。すると徐々に美しかった顔は崩れ落ち、黄泉津大神本来の顔へと変わって行く。
肌は腐敗により腐り落ち、崩れた醜い顔へと変化する。綺麗だった和服もボロ布へと代わり、まさに人間のイメージそのままの死神の衣装となる。
体の周りを紫電が纏わりつき、もはや女神とは思えぬ姿となる。どこからどう見ても悪の側にしか見えないビジュアルだ。
そんな悍ましい姿に翔子は悲鳴を上げてへたり込む。先程までとは打って変わって、ホラー映画の世界へと変貌した空間に更なる追い討ちが掛かる。
「グオオオオオオオオオ!!」
「ひぃっ!? 今度は何!?」
「黄泉醜女、ターゲットはアイツだ」
黄泉津大神にも負けない悍ましいビジュアルをした、醜く爛れた肌の鬼女が黄泉比良坂より現れる。
素早く野山を駆け、その剛腕で全てを破壊する恐ろしき神話の鬼。2m以上もある巨大な背丈に、ボサボサの髪。
窪んだ眼窩からは紅い輝きが妖しく光る。モンスターパニックの3D映像の方が幾らかマシな怪物の登場に、へたり込んだ翔子は最早声も上げられない。
「悪いけど、君を消耗させないといけないんでね」
「あ……あぁ……」
「君が死ぬ程のダメージを受け続ければ、流石に本体も平気じゃないんだろ?」
黄泉津大神と清志、2人が本気を出せばこの通り。ハリウッドのホラー映画も真っ青な空間の出来上がりだ。
実際非常に危険な力で、街中で使えば黄泉醜女達が大暴れしてしまう。その為の制限、それ故の手加減なのだ。
清志の忠告も聞かずに、ただ死なないだけの力を得ただけで増長してしまった事を翔子は悔いる事になる。
例え死なず痛みを感じ無かったとしても、醜い化け物達に襲われる恐怖心までは消せないのだから。
清志が黄泉の国と現世を繋いだ頃、アイナは策を弄しながら和真と対峙していた。時折撃ち合いながら、有利な位置を奪い合う。
流石に戦闘経験の浅い和真であっても、アイナの魔力弾とその阻害効果が厄介である事に気付いたらしい。
幾ら死なないとは言っても、アイナの魔力弾が持つ阻害効果までは無力化出来ない。その身に浴び続ければ、超回復の効果に支障が出る可能性があった。
実際に死なない兵士と化したテロリストとアイナが戦った際に、微妙に回復効果が下がる場面があった。
和真はその理由をエラーか何かだと判断していたが、それが誤りであると痛感させられていた。
目の前の少女は、自分の障害に成り得るのだと評価を改めていた。
「しつこい人ですね君も」
「それが取り柄なのよね。今まで犯人、逃がした事ないの」
「ハハ、それは凄い」
「お陰で狂犬だの猟犬だの可愛くない渾名を付けられちゃった」
会話で何とか時間稼ぎをしたいのは、和真だけでなくアイナもまた同じだ。最高の結果を齎す為には、無駄の無い計算と位置取りが肝心だ。
そちらは相棒に任せて、とにかく和真に真意を悟られないのが大切だった。そして今の位置だと、少々アイナとしては宜しく無い。
一度でも失敗したら、アイナの狙いがバレてしまう。絶対に一発で決める必要があった。それには最高の位置から最高の角度で撃つ必要がある。
大凡の見当は付いているので、後はそこまで移動するのみ。しかしその場合、和真に隙を与えてしまう。
「見逃してくれても良いのでは? 私は妻を生き返らせたいだけなんでね」
「そう言う事情には同情するけど、やり方がアウトなのよ!」
和真は和真なりに、こんな研究に手を出した理由があったらしい。徐々に余裕が無くなって来たのか本音が漏れ始めた。
悪党にも悲しい過去があると言うのは定番だが、だからと言って何をやっても許される訳では無いのだ。
これまでに奪って来た命のツケは払わねばならない。そんな会話と攻防の末、最高のポジションにアイナが到着した。絶好のタイミングでの到着にアイナは全力で魔術を行使する。
「全炉心起動! 10番まで兵士を用意」
「どこまで老人をこき使うのかね」
「良いからやって!」
アイナが使う機械兵士軍団。その中でも人型のロボット達10体が工房から転送されてくる。これらもヘンリーが操作している。
どれもが重武装で、ガトリング砲や対戦車ライフルなどその全てがとても人間に向けて使う火器ではない。
しかし一発で成功させたいアイナは、情け容赦を捨てる。相手が人間でも、死なない以上はミンチより酷い状態になっても別に良いだろうとの考えだ。本当に容赦がない。
「ちょっ、幾ら何でもやり過ぎじゃないですか!?」
「煩い! 全機撃て!」
突如現れたロボット達のあまりの重武装に慄く和真の抗議を無視して、弾丸の雨あられが即座にバラ撒かれる。
未来から来たキリングマシーンでも相手にしているのかと言わんばかりの猛攻に、和真は何度も何度も穴だらけにされる。
使用火器が強力過ぎて、机や壁に隠れた程度では意味がない。一カ所に釘付けにされた和真は何も出来ない。
死なないと言うのは確かに厄介ではあるが、ただそれだけでは過剰な攻撃には耐えようがない。
「兵器生成! 射角調整頼むわよ!」
「まだ働けと? 厳しい嬢ちゃんじゃわ」
「さぁ、行くわよ!」
錬金術師アイナの本懐、どこでも魔術さえ使えれば兵器を作り出せる。今回作り出したのは、彼女自慢のオリジナル兵器。
加速魔術の術式を砲身に組み込み、魔力を電力に変換する機能を搭載したアイナ特製の魔導式超電磁加速砲。
アイナが使える兵器の中で、最高峰の火力を有する兵器の1つだ。複数の魔力炉を持つアイナの魔力量を利用した力技兵器。
その性質上、一度撃てば砲身が駄目になる為使い捨てになる。40口径の巨大な弾を発射する砲身は、室内に収まるギリギリのサイズだ。
デカくて取り回しも悪いが、こう言う時には最高に役に立つ優れものだ。砲身を天井に向け、ヘンリーが射角を調整する。
「な、何を……」
「貫けぇ!」
砲身に刻まれた加速魔術と電磁加速により発射された、アイナ特製の特殊AP弾は天井を貫き地下の岩盤をも突き進む。
地上に向かって発射された、プラズマ化した弾丸は音速で飛翔する。一瞬で天空まで駆け抜けた砲弾が、空中に光の帯を描いた。
その途中にあった、西山製薬のサーバールームに破壊の傷跡を残しながら。
「今よ清志!」
『ああ!』
清志が使える神子としての全力は、黄泉の国から強力な軍勢を呼び出す事。神に近しい亡者達の軍勢が、恐ろしい鬼達がその力を振るえばただの人間など相手にもならない。
神話の神々ですら追い詰める様な者達が、跳梁跋扈している黄泉の国。その戦力を好きに使えるのが清志の本領だ。
「開門! 黄泉比良坂!」
清志の後方に巨大な千引の岩の幻影が現れる。その大岩を清志の大鎌が切り裂き真っ二つに割れる。
それにより現世と黄泉の国の間にある壁が消え去った。黄泉から続く黄泉比良坂からは、亡者や鬼達の叫び声が轟く。
清志が切り裂いた空間から、冷たい空気が流れ込む。清志の後ろにあった半透明の空間が徐々に鮮明になって行く。
古びた巨大な鳥居が現れ、周囲に死臭が漂い始める。体感温度が数度下がったかの様な、急激な寒気が翔子の体を襲う。
「な、何よ? 何なのよこれ!?」
「ただ死なないだけの神なんて、神としては三流なのよ小娘」
怯える翔子を見てニヤリと黄泉津大神が笑う。すると徐々に美しかった顔は崩れ落ち、黄泉津大神本来の顔へと変わって行く。
肌は腐敗により腐り落ち、崩れた醜い顔へと変化する。綺麗だった和服もボロ布へと代わり、まさに人間のイメージそのままの死神の衣装となる。
体の周りを紫電が纏わりつき、もはや女神とは思えぬ姿となる。どこからどう見ても悪の側にしか見えないビジュアルだ。
そんな悍ましい姿に翔子は悲鳴を上げてへたり込む。先程までとは打って変わって、ホラー映画の世界へと変貌した空間に更なる追い討ちが掛かる。
「グオオオオオオオオオ!!」
「ひぃっ!? 今度は何!?」
「黄泉醜女、ターゲットはアイツだ」
黄泉津大神にも負けない悍ましいビジュアルをした、醜く爛れた肌の鬼女が黄泉比良坂より現れる。
素早く野山を駆け、その剛腕で全てを破壊する恐ろしき神話の鬼。2m以上もある巨大な背丈に、ボサボサの髪。
窪んだ眼窩からは紅い輝きが妖しく光る。モンスターパニックの3D映像の方が幾らかマシな怪物の登場に、へたり込んだ翔子は最早声も上げられない。
「悪いけど、君を消耗させないといけないんでね」
「あ……あぁ……」
「君が死ぬ程のダメージを受け続ければ、流石に本体も平気じゃないんだろ?」
黄泉津大神と清志、2人が本気を出せばこの通り。ハリウッドのホラー映画も真っ青な空間の出来上がりだ。
実際非常に危険な力で、街中で使えば黄泉醜女達が大暴れしてしまう。その為の制限、それ故の手加減なのだ。
清志の忠告も聞かずに、ただ死なないだけの力を得ただけで増長してしまった事を翔子は悔いる事になる。
例え死なず痛みを感じ無かったとしても、醜い化け物達に襲われる恐怖心までは消せないのだから。
清志が黄泉の国と現世を繋いだ頃、アイナは策を弄しながら和真と対峙していた。時折撃ち合いながら、有利な位置を奪い合う。
流石に戦闘経験の浅い和真であっても、アイナの魔力弾とその阻害効果が厄介である事に気付いたらしい。
幾ら死なないとは言っても、アイナの魔力弾が持つ阻害効果までは無力化出来ない。その身に浴び続ければ、超回復の効果に支障が出る可能性があった。
実際に死なない兵士と化したテロリストとアイナが戦った際に、微妙に回復効果が下がる場面があった。
和真はその理由をエラーか何かだと判断していたが、それが誤りであると痛感させられていた。
目の前の少女は、自分の障害に成り得るのだと評価を改めていた。
「しつこい人ですね君も」
「それが取り柄なのよね。今まで犯人、逃がした事ないの」
「ハハ、それは凄い」
「お陰で狂犬だの猟犬だの可愛くない渾名を付けられちゃった」
会話で何とか時間稼ぎをしたいのは、和真だけでなくアイナもまた同じだ。最高の結果を齎す為には、無駄の無い計算と位置取りが肝心だ。
そちらは相棒に任せて、とにかく和真に真意を悟られないのが大切だった。そして今の位置だと、少々アイナとしては宜しく無い。
一度でも失敗したら、アイナの狙いがバレてしまう。絶対に一発で決める必要があった。それには最高の位置から最高の角度で撃つ必要がある。
大凡の見当は付いているので、後はそこまで移動するのみ。しかしその場合、和真に隙を与えてしまう。
「見逃してくれても良いのでは? 私は妻を生き返らせたいだけなんでね」
「そう言う事情には同情するけど、やり方がアウトなのよ!」
和真は和真なりに、こんな研究に手を出した理由があったらしい。徐々に余裕が無くなって来たのか本音が漏れ始めた。
悪党にも悲しい過去があると言うのは定番だが、だからと言って何をやっても許される訳では無いのだ。
これまでに奪って来た命のツケは払わねばならない。そんな会話と攻防の末、最高のポジションにアイナが到着した。絶好のタイミングでの到着にアイナは全力で魔術を行使する。
「全炉心起動! 10番まで兵士を用意」
「どこまで老人をこき使うのかね」
「良いからやって!」
アイナが使う機械兵士軍団。その中でも人型のロボット達10体が工房から転送されてくる。これらもヘンリーが操作している。
どれもが重武装で、ガトリング砲や対戦車ライフルなどその全てがとても人間に向けて使う火器ではない。
しかし一発で成功させたいアイナは、情け容赦を捨てる。相手が人間でも、死なない以上はミンチより酷い状態になっても別に良いだろうとの考えだ。本当に容赦がない。
「ちょっ、幾ら何でもやり過ぎじゃないですか!?」
「煩い! 全機撃て!」
突如現れたロボット達のあまりの重武装に慄く和真の抗議を無視して、弾丸の雨あられが即座にバラ撒かれる。
未来から来たキリングマシーンでも相手にしているのかと言わんばかりの猛攻に、和真は何度も何度も穴だらけにされる。
使用火器が強力過ぎて、机や壁に隠れた程度では意味がない。一カ所に釘付けにされた和真は何も出来ない。
死なないと言うのは確かに厄介ではあるが、ただそれだけでは過剰な攻撃には耐えようがない。
「兵器生成! 射角調整頼むわよ!」
「まだ働けと? 厳しい嬢ちゃんじゃわ」
「さぁ、行くわよ!」
錬金術師アイナの本懐、どこでも魔術さえ使えれば兵器を作り出せる。今回作り出したのは、彼女自慢のオリジナル兵器。
加速魔術の術式を砲身に組み込み、魔力を電力に変換する機能を搭載したアイナ特製の魔導式超電磁加速砲。
アイナが使える兵器の中で、最高峰の火力を有する兵器の1つだ。複数の魔力炉を持つアイナの魔力量を利用した力技兵器。
その性質上、一度撃てば砲身が駄目になる為使い捨てになる。40口径の巨大な弾を発射する砲身は、室内に収まるギリギリのサイズだ。
デカくて取り回しも悪いが、こう言う時には最高に役に立つ優れものだ。砲身を天井に向け、ヘンリーが射角を調整する。
「な、何を……」
「貫けぇ!」
砲身に刻まれた加速魔術と電磁加速により発射された、アイナ特製の特殊AP弾は天井を貫き地下の岩盤をも突き進む。
地上に向かって発射された、プラズマ化した弾丸は音速で飛翔する。一瞬で天空まで駆け抜けた砲弾が、空中に光の帯を描いた。
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「今よ清志!」
『ああ!』
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